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示談の謝罪文はどう書く? 謝罪の方法や注意点を解説
刑事事件の加害者になってしまった後に自身の行為を反省し、被害者へ謝りたいと考えることがあるかもしれません。謝罪は被害者の不安や怒りを緩和させるために、また刑事処分の軽減を目指すために必要不可欠な行為ですが、物理的にあるいは被害者感情からして直接の謝罪は難しいケースが多々あります。
しかし難しいからといって謝罪をしないのは不誠実ですし、期待するような刑事処分の軽減を得ることはできないでしょう。そのため実際には「謝罪文」を作成し、弁護士を通じて渡す方法がよくとられます。
本コラムでは刑事事件の加害者が被害者へ送る謝罪文の書き方や注意点、示談との関係や効果などについて解説します。
1、加害者が謝罪文を書く意味・示談との関わり
加害者が被害者へ謝罪しようと思っても、本人に会って直接謝罪するのは難しいケースが多いのが現実です。逮捕・勾留時や、被害者の住所・電話番号などを知らない時には、連絡を取ること自体が物理的に困難であり、そうでなくても被害者は加害者への怒りや恐怖心などから直接会うのを拒否するからです。
被害者へ謝罪の気持ちを伝えるために「謝罪文」を送る方法があります。直接でなくても本人の言葉で書かれた謝罪文を渡すことで、被害者の不安や処罰感情を緩和させることにつながります。それにより、被害者が示談交渉に応じるきっかけにもなります。
謝罪文は弁護士から渡すのが一般的です。加害者は被害者の個人情報を知らないケースが多く、被害者保護の観点から捜査機関も教えてくれません。仮に被害者が知人や店舗などでどこに連絡すればいいか分かるとしても、弁護士がクッションとなり適切なタイミングで送ることで、被害者を不必要に驚かせたり怖がらせたりする事態を回避できます。
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2、示談とは
被害者への謝罪と並行して、示談交渉が行われることが一般的です。示談の意味、示談交渉の流れを確認しましょう。
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(1)示談の意味
示談とは、私人同士のトラブルを合意によって解する方法のことです。示談は民事上の賠償問題等を解決するための手続きですが、刑事事件の解決に向けて示談が行われる場合が多数あります。
刑事事件の示談とは、加害者が被害者に謝罪したうえで金銭での賠償を尽くし、被害回復を実現させることです。また、被害者から「処罰を望まない」という内容の宥恕(ゆうじょ)文言を得る、被害届の取下げや告訴の取消し、事件の内容を第三者に口外しないといった約束事を定めることもあります。 -
(2)示談交渉の対象となる犯罪
刑事事件で示談が可能なのは被害者がいる犯罪です。暴行や傷害などの暴力犯罪、強制わいせつや盗撮などの性犯罪、窃盗や詐欺などの財産犯罪などが典型でしょう。
一方、薬物犯罪、賭博罪などの被害者不在の犯罪や、被害者が「国」である公務員に対する犯罪などは示談ができません。
また、公然わいせつや児童買春などは、健全な性秩序や児童一般の健全育成が保護法益とされており、特定の個人が被害者となるわけではないため、示談にはなじみません。この場合でも、目撃者や児童といった実質的な被害者と示談をすることは可能ですが、財産犯等における示談と比べると、効果は限定的です。 -
(3)示談交渉の流れ
示談交渉は以下の流れで行われるのが一般的です。
● 被害者への連絡
被害者への連絡は、連絡先を知らない、知っていても拒否されるなどの理由から弁護士を介して行います。弁護士が検察官に被害者と示談交渉をしたい旨を伝え、検察官が被害者の承諾を得たうえで弁護士に限り連絡先を教えるという流れです。
● 示談内容の話し合い
被害者との話し合いの中で、示談金の額や支払い方法、その他の誓約事項を定めます。誓約事項には口外禁止や接近禁止等があります。
● 示談書の作成
示談は口頭でも成立しますが、双方の認識の相違などからトラブルになりかねないため、示談書を作成するのが鉄則です。特に処分の軽減を目指して示談をする場合は検察官や裁判所に示談書のコピーを提出する必要があるため示談書が不可欠です。
● 示談内容の履行
加害者は示談金を支払い、被害者は告訴の取消しなどの誓約事項を履行します。
ここまでの流れを円滑に進めるには示談に関する知識や経験が不可欠なので、一般の方には困難です。早期に示談を成立させて事件の解決につなげるには、弁護士へ相談して示談を一任することをおすすめします。
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3、謝罪文の書き方と注意点、謝罪方法
被害者がいる事件で示談交渉を検討するのなら、大前提として被害者に真剣な謝罪を尽くすことが必要です。刑事処分の軽減を考えるあまり、謝罪もせずに示談交渉を求めても被害者に受け入れてもらえません。
謝罪の方法としては謝罪文を渡すケースが多いため、ここで謝罪文の書き方や注意点を確認しましょう。
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(1)謝罪文を書くときの考え方
謝罪文は被害者の気持ちになって書くこと、自分の言葉で書くことが大切です。誰かが書いた文章やテンプレートを丸写ししたような謝罪文では、誠意が伝わることはないでしょう。中身のない文章では被害者感情を逆なでし、示談はしないという意思を強固にしてしまうおそれすらあります。
被害者の立場になり、自分で言葉を見つけて書くことで、自身の罪と向き合い、被害者への謝罪の気持ちと反省を深めることにもつながります。 -
(2)謝罪文で書くべき内容と注意点
文章は自分で考えて書きますが、何を書くべきかについては知っておく必要があります。支離滅裂な文章では誠意は伝わりませんし、謝罪の文章のみに終始すればよいというものでもありません。
● 謝罪の文章
最初に謝罪の文章を書きます。被害者にケガを負わせた場合は、心配しており早期の回復を願っているといった内容も書くのがよいでしょう。
● なぜ犯罪をしてしまったのか
被害者はなぜ自分が被害に遭わなければならなかったのかを知りたがっているため、事件を起こした理由や背景などを書きます。ただし、生い立ちの苦労や自分の家庭の事情を長々と書き連ねるのは逆効果です。どんな事情も犯罪をしてよい理由になりませんし、複雑な事情があったとしても、被害者に一切関係のないことだからです。
事件のきっかけが被害者にあるような文章も、責任転嫁と捉えられるため避けましょう。
● 二度と罪を犯さないために何をしていくのか
「二度としません」などの漠然とした内容に終始しないよう、具体的に書きましょう。また実際に実行できなければ口先だけだと思われ、示談の結果に影響がでるため、確実に実行できる内容であることも大切です。
● 謝罪の文章
最後にもう一度謝罪したうえで、被害弁済したい気持ちがある旨を記載して締めくくります。ただし、具体的な金額や支払い方法などは、示談交渉で決める内容なので謝罪文には書かず、あらためて弁護士から連絡をすると書きます。 -
(3)被害者の名前が分からないときの書き方
被害者の名前が分からないときは「被害者様」と書くのが一般的です。もともとは知らなかったのに何らかの経緯で被害者の名前を聞いてしまったという場合も、被害者様と書きましょう。被害者が加害者から名前を知られたことについて、不信感や不安感を抱き、交渉が難航するおそれが高いからです。
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(4)謝罪文は弁護士を通じて渡す
作成した謝罪文は弁護士にチェックしてもらったうえで、弁護士に渡してもらいます。加害者が被害者の住所・居所を知る術はないですし、仮に知っていても被害者の感情に配慮すれば直接渡すべきではありません。
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4、謝罪を早くした方が良い理由
謝罪の時期はできるだけ早くするのが望ましいでしょう。遅くなるほど誠意が伝わりにくいのはもちろんですが、ほかにも以下の理由があります。
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(1)示談交渉を早期に開始できる
謝罪は示談交渉の大前提であり、きっかけとなるものです。謝罪によって初めて被害者の心境の変化が生じ、示談交渉に応じてくれる可能性を高めることができます。
謝罪なしに示談交渉は開始できません。被害者は被害に遭ったことで大変な憤りや、つらい感情を抱いているはずです。謝罪すらしてこない不誠実な相手と示談交渉を進めることなどできない、と感じても無理はありません。結果として、刑事事件に関する示談の効果も生じないことになります。 -
(2)不起訴処分や執行猶予の可能性が高まる
示談の効果とは、示談が評価されて不起訴処分を得ることや、刑が減軽される可能性が生じることなどを指します。
検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができます(刑事訴訟法248条)。そして、被疑者がすでに深い反省と謝罪の意思を示し、示談が成立している場合は、このような謝罪や示談がなされていない場合と比べ、刑罰を科す必要性は低いと判断されやすくなります。
特に起訴にあたり被害者の告訴を必要とする「親告罪」では、告訴の取消しを含めて示談が成立し、告訴の取消しがなされれば、必ず不起訴になるため、示談の効果は大きいといえます。
逮捕・勾留されている場合は、起訴・不起訴の判断までに最長でも23日間しか猶予がありません。そのため、できるだけ早く示談交渉を始める必要性が高いといえます。
起訴された場合も、裁判官は量刑の決定に際しては、被害者への謝罪や示談の有無を含め総合的に判断します。示談は被告人に有利な事情のひとつなので、示談が成立しなかった場合と比べ、刑が減軽される可能性が高まります。執行猶予付き判決となる、懲役ではなく罰金刑となる、実刑の場合も刑期が短くなるといった効果を期待できるでしょう。
また逮捕・勾留された事件では、起訴後、引続き勾留がなされることがありますが、示談が成立すると、被害者に接触して、証拠隠滅を図るおそれがなくなったり、予想される刑罰が軽いものとなることで、逃亡する可能性が小さくなったりするため、保釈も認められやすくなります。
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5、示談に応じてもらえない場合にできること
示談交渉を開始したものの、被害者の処罰感情が強い、示談金を一括で払えないなどで示談にできない場合もあります。しかし、「どうせ示談にできないなら何もしなくても同じ」と考えるのは間違いです。
結果として謝罪と示談が受け入れられなかった場合でも、謝罪や被害弁済の気持ちと実際の行動があったのか、最初から何もしなかったのでは、検察官や裁判官の評価は異なるからです。
示談に応じてもらえない場合は以下の方法があります。
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(1)示談金が払えない場合は分割払いを約束する
示談金は一括で支払うのが基本ですが、資力がないなどの理由から一括での支払いが困難な場合もあります。分割で確実に支払うと約束し、被害者がこれを承諾してくれれば、分割払いによる示談も可能です。
分割払いではまだ被害回復が完了していないため、示談の効果は限定的です。しかしお金がないからといって、被害弁済をやめてしまうよりは誠意があると判断されます。定職に就いている場合や、頭金を多めに支払い分割の期間が短い場合などは、全額が支払いされる見込みが高いと判断されやすくなるでしょう。 -
(2)供託や贖罪(しょくざい)寄付を行う
被害者に謝罪と被害弁済を申し出たものの、示談金の受け取りを拒否された場合は「供託」を検討します。法務局管轄の供託所に金銭を納付することで、被害回復に向けた努力をしたとして、被疑者・被告人に有利な事情として扱われる場合があります。
また被害者が弁護士にすら氏名や住所を教えてくれない場合、公務執行妨害罪など示談が不可能な犯罪の場合には「贖罪寄付」を検討します。これは、刑事事件の被疑者・被告人が反省の気持ちを表すために、弁護士会や慈善団体などに寄付する方法です。弁護士を介して寄付を行い、弁護士が寄付の証明書を検察官や裁判官に示すことで、反省や謝罪の気持ちを表明することができます。
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6、まとめ
刑事事件の加害者が行う被害者への謝罪は、被害者の苦痛を少しでも取り除くために不可欠な行動であると同時に、示談交渉の大前提となるものです。
誠意ある謝罪なしには示談交渉を開始することさえできないことがあり、示談の成立による刑事処分への効果も期待できません。直接の謝罪は難しいケースが多いですが、心をこめた謝罪文を作成することで、謝罪や反省の気持ちを示すことができます。
ただし、被害者のつらい状況を考えれば、謝罪文の作成には極めて繊細な配慮が求められます。
謝罪文の書き方や謝罪の方法、その後に行う示談交渉については弁護士に相談のうえ、進めましょう。刑事事件の解決実績が豊富な、ベリーベスト法律事務所の弁護士が力を尽くします。まずはご連絡ください。
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ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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