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弁護士コラム

2025年02月10日
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被害届が受理されない時はどうすべき? 受理されるコツと拒否された場合の対処法

被害届が受理されない時はどうすべき? 受理されるコツと拒否された場合の対処法
被害届が受理されない時はどうすべき? 受理されるコツと拒否された場合の対処法

被害届が受理されないケースに悩んでいる方は少なくありません。もしかしたらあなたも、犯罪被害を経験し、警察に被害届を提出したにもかかわらず受理されない状況に苦しんでいるのではないでしょうか?

犯罪被害を警察に相談する際、被害届の提出が必要ですが、必ずしも受理されるとは限りません。むしろ、「相手と話し合ってみてください」や「弁護士に相談してみてください」といった対応を受けることもあるのです。

被害届が受理されない理由とは何でしょうか? そして、受理してもらう方法はあるのでしょうか?

本記事では、
・ 被害届が受理されない主な理由
・ 被害届を確実に受理してもらうためのポイント
・ 被害届が受理されない場合の対処法
などについて、弁護士が分かりやすく解説します。

この記事が、犯罪被害に遭われながらも警察に対応してもらえない問題に直面している方々にとっての手助けとなれば幸いです。

1、被害届が受理されない! そもそも被害届とは?

被害届とは、何らかの犯罪の被害に遭ったときに、その犯罪事実を警察に申告するための書面のことをいいます

警察に犯罪の捜査を開始してもらうためには、まず犯罪の発生とその内容を認識してもらわなければなりません。
そのために被害者がなし得る手段の一つが「被害届の提出」です。

被害届には、自分自身の情報や、被害に遭った日時・場所、被害の模様・被害品等の被害内容、犯人の特徴や遺留品などを記載して提出します
そして、警察は提出された被害届は必ず受理しなければなりません。

なぜならば、警察の内部規則である犯罪捜査規範に「警察官は、犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない」と定められているからです(犯罪捜査規範第61条)

しかし、実際には被害届を受理しないようなケースもあります。

嫌がらせやいたずら目的であれば受理されませんし、被害届の内容を検討した上で、証拠が不十分であったり被害が軽微であるなど、刑事事件としての処理が難しいと判断された場合には受理されないこともあります

警察の業務が多忙なために、軽微な事案や証拠不十分な事案では受理されないケースがあることも否定できません。

また、被害届の提出はあくまで捜査のきっかけの1つですから、受理されたからといって全ての被害届が刑事事件として立件してもらえるものではありません

被害届に関する詳しい内容については、こちらの記事も併せて参考にしてください。

2、被害届が受理されない主な理由5つ

被害届は全て受理することが規定されているものの、実際には被害届が受理されないことも珍しくありません。

被害届が受理されない場合には理由があります
被害届が受理されない主な理由として、次の5つが挙げられます。

  1. (1)民事事件にあたる

    警察は原則的に刑事事件のみを取り扱い、民事事件には介入しないという「民事不介入の原則」があります。

    そのため、民事事件と判断されるトラブル内容の場合、警察は介入することができないため、被害届も受理されません

    民事事件に該当するようなトラブルとしては、例えば以下のようなものが挙げられます。


    • 交通事故などの事案でもっぱら物損など財産上の損害をめぐるトラブル貸金の返還請求
    • 不倫問題
    • 相続トラブル
    • 給料に関するトラブル


    民事事件は私人間のトラブルであり、金銭的な請求や物の所有権など個人の権利の存否について争うものです

    一方で、刑事事件は犯人の特定や犯罪の成否、具体的な刑罰の範囲(量刑など)を公権的に判断するためのものです。

    民事事件だと判断されれば警察は介入できないため、当事者同士の協議や弁護士への相談を促されるでしょう。

  2. (2)被害が軽微

    被害が軽微な場合だと、受理されないようなケースもあります。

    例えば、お金をだまし取られた(詐欺)ようなケースであっても、被害額が数百円程度で、勘違いの内容が些細な場合は軽微な被害だと判断されることもあります。

    被害が軽微だと他の重要な事件が優先されることになるため、被害届が受理されない可能性が高いと言えます

    ただし、被害が軽微だとしても同様の犯人から被害に遭ったという人が多数いる場合や、今後も被害者が多数出ることが予想される場合には被害届が受理されて捜査が行われるようなこともあります。

  3. (3)被害の発生から時間が経過している

    被害が発生してから時間がかなり経過しているという場合は、被害届が受理されない可能性があります。
    主に以下のような2パターンが考えられます。

    ① 公訴時効を過ぎている場合
    公訴時効とは、犯罪行為が終わったときから一定の期間が経過すれば、裁判が打ち切られるため(免訴)、検察が事実上起訴できなくなるという制度です(刑事訴訟法253条1項、337条4号)。

    犯罪の重さや特徴ごとに公訴時効は異なりますが、窃盗、詐欺、横領、暴行、脅迫、刑の軽い性犯罪(盗撮や痴漢、青少年条例違反)などは、被害に遭ってから数年が経過すると公訴時効期間が過ぎてしまう可能性が高まります

    そのため、被害に遭った場合は早急に被害届を提出すべきだと言えます。

    一方で、殺人罪や強盗致死罪など一定の重大な犯罪(人を死亡させた罪のうち、死刑に当たるもの)については公訴時効が設けられていません(刑事訴訟法250条1項柱書)。

    ② 時間が経過しすぎている・証拠が乏しい
    2つ目の理由として、犯罪から時間が経過しているとか、客観的証拠に乏しくまたは目撃証人がいない事件などでは証拠が見つかりにくいという問題もあります。

    立件に向けた証拠の確保が困難であると判断された場合には、被害届が受理されないこともあります

  4. (4)犯人の特定が困難

    警察が捜査しても犯人の特定が難しいと判断されるような事件の場合には、被害届が受理されないことがあります

    近年では海外サイトなどを通じた詐欺被害が増えていますが、多くは犯人の特定が難しいと言われています。

    インターネットを通してやり取りをしていて詐欺被害などに遭った場合、相手の顔も住所も分からず、さらに被疑者が海外にいるような場合には捜査権限が及ばないことが多いため、警察側も被害届の受理に慎重になります。

    しかし、被害額が大きい場合や、被害人数が多い場合には、被疑者不詳であっても、悪質性が高い詐欺事件として被害届が受理される可能性があります。

  5. (5)警察の業務が多忙

    警察には1日に何通もの被害届が提出されています。
    全ての被害届を受理していれば、警察では人手不足が生じてしまうでしょう。

    そのため、警察は被害届の内容を検討した上で受理・不受理を判断しています

    犯罪捜査規範によれば、業務が多忙だからという理由で被害届を不受理とすることは認められないはずですが、警察の内部規則であるため、現実問題としては不受理のケースが多発しています。

    そのため、本当に犯罪被害に遭い、加害者の処罰を求めたい場合には、被害届を受理してもらうためのポイントを知ることが重要となってきます。

3、被害届を受理してもらうためのポイント3つ

警察には被害届を受理する義務があることは、先ほどもご説明しました。

警察庁からも各都道府県警察の長などに宛てて、被害届の内容が明白な虚偽または著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理するように呼びかけているところです。

そこで、被害届の内容に虚偽がなく、合理性があること伝えれば受理される可能性が高まるといえます

具体的には、次の3つのポイントを押さえ、被害届を提出するようにしましょう。

  1. (1)客観的な証拠をできる限り集める

    被害届を提出する際には、客観的な証拠をできる限り集めて提出するようにしましょう。

    なぜならば、口頭で被害に遭ったことを伝えても、被害内容を裏付ける証拠がなければ犯罪の被害に遭ったことを立証できないと判断される可能性があるからです。
    場合によっては被害自体が虚偽の可能性があると考えられてしまうため、まずは被害内容を証明するための証拠が重要となります。

    また、客観的証拠によって刑事事件に該当することを証明できれば、警察も被害届を受理しやすくなります。

    さらに、犯人を特定できるような証拠があるほうが被害届を受理してもらえる可能性が高まるでしょう。
    犯人の特定は警察が行うものだというイメージがあるかもしれませんが、全ての事件を警察が一から捜査することは困難です。

    そのため、事件に関する全ての証拠を集める必要はないものの、犯人の特定に繋がるような証拠や、捜査の足がかりとなるような証拠の提出は重要だといえます

    とくにインターネットを介した詐欺事件のような犯人の特定が難しい事件では、犯人に繋がるような証拠がなければ被害届は受理されにくい傾向にあります。

  2. (2)被害に遭った経緯を具体的かつ詳細に説明する

    警察に被害を相談する際には、被害に遭った経緯を具体的かつ順序立てて説明することが重要です。

    例えば、居酒屋に居合わせた客と口論の末に暴行や傷害の被害に遭ったのであれば、どのような経緯で暴行や傷害の被害に遭うことになったのかを順序立てて話していきましょう。

    何月何日の何時頃に誰と○○という居酒屋に行き、どのような経緯で相手と口論になり、どのような暴行が起き、その結果どのような被害を受けたのか、というように説明します。

    このように順序立てて具体的に説明すれば、警察は刑事事件として立件できるのか判断しやすくなります。

    もし具体的に被害を説明できず、事件の時系列もバラバラに話してしまえば、警察は被害の全容を把握しにくくなり、被害届が受理されない恐れがあります。
    警察に相談する前に、まずは被害に遭った経緯や被害内容を具体的にまとめておくようにしましょう

  3. (3)被害届の目的を明確に伝える

    警察に相談する際には、被害内容だけではなく被害届の目的を伝えることも大切です。
    殺人や強盗の場合であれば被害目的を伝えなくても、犯人を検挙して刑事罰を与えてほしいという目的が明確だといえます。

    しかし、暴力団の嫌がらせやストーカー行為などの被害に遭っている場合には、「警告」や「中止命令」をしてほしいのか、「逮捕」してほしいのか、目的を明確に伝える必要があります

    なぜならば、刑事裁判のための立件が困難と判断された場合でも、警告や禁止命令・中止命令などの行政上の措置ならば警察に動いてもらえる可能性があるからです。

    「警察にどうにかしてほしい」という抽象的な要求では、警察もどのように動くべきか判断に困ってしまうでしょう。

    そのため、警察に相談する前に被害届の目的を明確にしておき、相談時には具体的に要求を伝えるようにしましょう。

4、どうしても被害届が受理されないときの対処法

  1. (1)弁護士が介入して告訴状を提出する

    被害届を受理してもらうためのポイントを押さえて警察に相談したものの、被害届がどうしても受理されない場合には、弁護士が介入して告訴状を提出するという方法があります。

    被害届は単に犯罪被害の事実を申告するための書面ですが、告訴状は被害の事実を申告したうえで処罰を求めるための意思表示をする書面です。

    被害届の場合、警察に受理されたからといって必ず捜査が行われるとは限りません。

    しかし、告訴状の場合は受理されれば、警察は速やかにその事件に関する書類及び証拠物を検察官に送付すべき義務を負います(刑事訴訟法242条)。

    つまり、告訴が受理されれば事実上捜査が開始されるということです。

  2. (2)弁護士に依頼すると、告訴状を受理してもらえる可能性が高まる

    ただし、告訴状は警察にこのような厳しい手続きが課せられるため、被害届よりも受理されにくい傾向にあります。
    そのため、法律的にしっかりと検討を加えて準備した上で告訴状を作成し、犯罪の発生と内容を把握してもらえるだけの証拠とともに提出すべきです。

    ご自身で告訴を行うことも不可能ではありませんが、弁護士に依頼して法律の知識を踏まえた上で手続きを進めてもらう方が告訴状を受理してもらえる可能性が高まるでしょう。

5、被害届が受理されず困ったときは弁護士に相談

警察に被害届が受理されなければ、そのまま諦めてしまうという方も多いのではないでしょうか。

しかし、受理されないからといって諦める必要はありません。
弁護士に相談すれば次のようなサポートを受けることができ、問題解決に向けて何らかの対処を講じられる可能性が高まります。

  1. (1)被害届や告訴状の提出を代行してもらえる

    弁護士に依頼すればあなたの代理人になってもらうことができ、代理人として被害届や告訴状を提出してもらうことができます。

    被害届や告訴状はご自身で提出することもできますが、専門家である弁護士に作成してもらった方が受理される可能性が高まるといえます。
    なぜならば、法の知識を持って適切に被害届や告訴状を作成できるからです。

    端的かつ具体的に被害内容や犯人の情報についてまとめて記載し、警察に受理してもらえるように働きかけます。

    警察も、弁護士が介入した場合、かりに不受理としてもどのような点がネックになっているのか伝えやすく、それを踏まえた主張や証拠の補充によって正式受理がされやすくなります。

  2. (2)証拠の収集もサポートしてもらえる

    弁護士に相談すれば、犯罪被害に遭ったこと証明するための証拠や、犯人を特定するための証拠探しのサポートもしてもらえます。

    証拠集めは被害届や告訴状を受理してもらうための大切な工程であり、証拠があれば受理してもらえる可能性が高まります

    どのような証拠が有力なのかを精査するだけではなく、証拠の集め方や立証の戦略についてもアドバイスを得られますし、弁護士会照会などの手段を活用して証拠を入手してもらえることもあります。

    そのため、被害届や告訴状を提出する前の段階から弁護士に相談することをおすすめします。

  3. (3)加害者と示談交渉をしてもらうことも可能

    どうしても被害届や告訴が受理されないようなケースもありますが、そんなときでも弁護士のサポートを受けて、民事事件として加害者に対して損害賠償請求や権利の主張を行うことができます。

    具体的には、弁護士が代理人として加害者と示談交渉を行い、示談が成立しない場合には民事裁判で争うことも可能です

    弁護士が介入すれば裁判の前に示談が成立する可能性も高まるでしょう。

    また、加害者に刑事罰を科すことができないとしても、慰謝料などの損害を賠償したり、謝罪の文言を示談書に盛り込むことで、被害や被害感情を認めさせ、社会的・金銭的な制裁を加えることができます。

6、まとめ

警察に被害届を提出しても、犯人の特定が難しい場合や、時間が経過した場合、被害が軽微な場合、証拠が不十分な場合、民事事件に該当すると判断された場合などには受理してもらえない可能性があります。

被害届を受理してもらえる可能性を高めるには、証拠集めや明確な説明、法律的な理論づけが重要なポイントになってきます。

ご自身で対応が難しい場合や、被害届がなかなか受理してもらえない場合には、弁護士に相談してみてください。

弁護士は代理人として被害届を提出するだけではなく、被害届が受理されない場合には告訴状の提出や民事事件としての解決などの対処で問題解決を目指すことができます。

被害届が受理されないからといって諦めるのではなく、まずは弁護士に相談してみましょう。

本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

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