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窃盗罪の慰謝料相場はある? 示談の意味や交渉の進め方
窃盗罪の加害者側の立場になった場合、もっとも望むであろうことは、やはり「なんとか被害者に許しをもらって、処罰を避けられないか」ということでしょう。
そのためには、被害者との示談成立は必須だといえます。示談といえば示談金は欠かせず、実際のところどのくらいのお金がかかるのかが気になる方もいるかもしれません。
たとえわずかな被害であっても、莫大な慰謝料の支払いを求められるのではないかと不安を抱えている方は少なくないはずです。ここでは、窃盗事件における「慰謝料」について解説します。
1、窃盗罪で捕まったら慰謝料を払わなければならない?
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(1)早期示談を目指すべき理由
窃盗罪で逮捕されてしまった場合は、被害者との示談を進めるのが量刑の軽減を期待できるもっとも有効な方策だといえます。
窃盗罪は、以下の刑罰が科せられるおそれがあります。
刑罰
10年以下の懲役または50万円以下の罰金
(刑法第235条)
したがって、示談成立は何を差し置いてでも早急に対処すべき事項となるでしょう。
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(2)示談金とは?
窃盗事件における示談の成立を目指すうえで避けて通れないのが「示談金の交渉」です。
示談金とは、次の2つを合算した金銭を指します。- 損害賠償金:商品代金や物品の時価など、窃盗による実質的な損害に相当する賠償金
- 慰謝料:窃盗被害による精神的な苦痛の補填(ほてん)
また、示談金の中には、窃盗の際に壊してしまった設備・機材・備品などの弁償や、被害者が精神的な負担によって通院した際の治療費なども含まれます。
加害者側には一方的に金銭の支払い責任が発生するので、負担が大きいように感じるかもしれません。
しかし、犯してしまった罪を償うために必要な行動だともいえます。 -
(3)示談金を支払うメリット
なにより、示談金を支払うことで、加害者側も一定のメリットを享受できます。
- 検察官や裁判所は被害者の処罰感情を重視するので、示談が成立していれば不起訴や刑罰の軽減が期待できる
- 加害者には不法行為に対する賠償責任があるので、話し合いで解決できれば民事訴訟を回避できる
刑事事件において示談成立を目指すのは、慰謝料を含めた示談金を支払い、被害者に許しを得るかわりに、重すぎる刑罰が科されることを回避することを目指すという目的があるのです。
2、窃盗罪の慰謝料に相場はあるの?
多くの方が「窃盗事件の慰謝料の相場を知りたい」とお望みでしょう。
しかし、窃盗事件の慰謝料には相場は存在しません。
なぜなら、単純に窃盗事件といっても、被害の程度や事件の悪質性、被害者の処罰感情などは個々の事件によって大きな差があるからです。
慰謝料を含む示談金の金額は「この場合はこれだけを支払うこと」といった法律の定めも、ガイドラインのようなものも存在しません。
高額になることもありますし、加害者側と被害者側が話し合った結果お互いが納得できれば、たとえ少額であっても認められるのです。
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、窃盗罪の慰謝料が高額になりやすいケース
ただし、次のようなケースの窃盗事件では、慰謝料が高額になりやすいといえます。
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(1)盗んだ金品が高額の場合
実質的な損害を補償する賠償金が高額になることに伴い、高額な金品を盗んだことを謝罪する意図で慰謝料が高くなる可能性があります。
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(2)窃盗被害を受けたことで、被害者が精神的に強い苦痛を感じた場合
自らが犯罪被害に巻き込まれたというショックから、精神的に強い苦痛を感じる被害者は少なくありません。
精神的な被害に金額をつけることはできませんが、被害者が精神的なケアのために医療機関で治療やカウンセリングを受ける事態になれば、慰謝料は高額になるでしょう。 -
(3)被害者が、加害者への処罰を強く望んでいる場合
被害者が「どうしても犯人が許せない」と、かたくなに処罰を望んで譲らないケースでは、被害者を納得させるためにも、慰謝料が高くなりがちです。
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(4)加害者が窃盗の常習犯である場合
窃盗罪の常習犯による被害であれば、被害者としても悪い印象を抱くのが必至であり、わずかな慰謝料では納得してもらえないことがあります。
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(5)加害者の社会的地位が高い、高収入であるという場合
窃盗事件の被害者としては「加害者側もそれ相応の痛手は甘んじて受け入れてほしい」と感じるものです。
一流企業の社員や企業の役員、公務員などの社会的地位が高い人、事業の成功などで高収入を得ている人が加害者であれば、一般的な収入の人よりも高額な慰謝料を請求されるおそれがあります。
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
4、当事者間で金額の感覚にズレがあるときはどうする?
慰謝料や示談金の金額は、加害者側から提案することがあれば、被害者側から請求するかたちで提示されることもあります。
そして、加害者側の立場からみると、明らかに事案の内容から考慮すれば「高すぎる」と感じる金額が提示されることもあるでしょう。
慰謝料や示談金の金額が、加害者と被害者との間で大きくズレている場合は、次のような対処法が考えられます。
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(1)高額であっても支払う意思はあるが、すぐにはお金を用意できない場合
「毎月いくらずつ支払う」といった分割支払いの約束を提案して了承を得られれば、時間はかかりますが負担は軽減できます。
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(2)提示された慰謝料や示談金が高額すぎて支払えない場合
裁判所に申し立てを行い、支払額を確定してもらう訴訟を提起することで、総合的な事情から判断して裁判所が金額を決定してくれます。
ただし、窃盗事件は長くても逮捕から23日後には起訴・不起訴が決定します。
短期間で民事訴訟がスムーズに決着するとは考え難いので、急を要する状況では現実的ではない方法でしょう。
また、基本的に加害者は不法行為に対する賠償義務があるため、裁判所に対しては「一切支払わない」という姿勢をとるべきではありません。
いくらなら支払えるのか、支払いの原資はどこから捻出するのかなど、裁判所が判断するための材料を加害者側が用意する必要があります。 -
(3)直接の示談交渉は困難。弁護士に相談を
これらの方法は、いずれも加害者が個人で示談交渉するのは難しい面があります。
そもそも感覚にずれがある場合は特に、加害者と被害者が直接会って話し合うと冷静になれずかえって溝が深まってしまうおそれがあります。
そうなれば、適切なタイミングで示談を成立させることが困難になります。
そこで、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼をして、話し合いを進めていくことを強くおすすめします。
5、示談には謝罪文も用意を。書き方のポイント
謝罪は口頭で伝えるのではなく、反省の気持ち、罪の重さを自覚し被害者に心からおわびを伝える謝罪文として手紙にしたためることが一般的です。
当然のことながら、単に謝罪文を書けばよいわけではありません。
相手に謝罪の気持ちや反省していることが伝わらないのでは意味がないためです。
つまりもっとも大切なのは丁寧に、かつ誠実に気持ちを伝えることに他ならないといえます。
ここからは謝罪文の書き方で気を付けるべきポイントについて解説します。
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(1)謝罪文は便せんに手書きが基本
謝罪文を作成する際はパソコンなどの活字は避けてください。
活字は気持ちが伝わりにくい上に、冷たい印象を与えます。
またパソコンなどで作成した場合、加害者本人ではなく、弁護士などが書いたのかもしれないと思わせる可能性もあります。
誠意が伝わらないという意味では逆効果にさえなってしまいます。
下書きを作成する際にはパソコンで作成しても構いませんが、実際の謝罪文は心を込めて手書きしましょう。
字がきれいでないという方も手書きし、できるだけ丁寧に書くように意識しましょう。
また謝罪文を書く用紙は、便せんを使用してください。
ただし、障害などによって手書きが難しい場合はこの限りではありません。
弁護士に相談してください。 -
(2)言葉遣いに注意
当然のことですが、謝罪文は被害者だけが読むとは限りません。
被害者の家族や事件関係者、携わっている弁護士などが読む可能性があります。失礼のない言葉遣いになるように意識して書きましょう。
失礼のない手紙にするためには、作成した謝罪文を事前に弁護士に目を通してもらうことをおすすめします。
ただでさえ犯罪被害に遭ってデリケートになっている被害者サイドとしては、言葉遣いの誤りが気に障ることも十分考えられます。くれぐれも言葉遣いには注意しましょう。 -
(3)相手の立場に立って書くこと
文面が自分の言い訳や意見を並べた言い訳がましいものになっていては、被害者心理を逆なでしてしまいます。
まず伝えるべきこと、感じてもらうべきことは反省の念と謝罪の気持ちです。
被害を受けた相手の心情を理解した上で、作成するべきです。 -
(4)マニュアルの丸写しはNG
普段、謝罪文を書く機会というのもめったにないでしょう。
そのため、どういった文面で書けばよいのか悩んでしまうかと思います。
そこでインターネットで調べることは多くの方がすることです。
しかし、そこで見つけたテンプレートや例文を丸写しにした、おそまつな謝罪文を作成してしまう例も見受けられます。
これは形式として、一見きれいにまとまった謝罪文になっているように感じますが、被害者にはテンプレートの丸写しであると伝わってしまいます。
形だけでの謝罪文は、反省の念が感じられないばかりか、被害者を侮辱したように感じさせるリスクがあります。マニュアルの丸写しは避けることをおすすめします。
6、謝罪文に書いた方がよい内容とは
では、具体的に謝罪文に盛り込んだほうがよいとされる内容をいくつかご紹介しましょう。ただし、これはあくまでも一般的な例に過ぎません。
前述したとおり、ご紹介した具体例を丸写しすることは逆効果になりますので、くれぐれも参考程度にとどめてください。
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(1)謝罪の言葉
反省の気持ちとおわびの気持ちを伝えることが謝罪文の目的です。
したがって、当然のことながら謝罪の言葉は欠かせません。
言い訳などは組み込まず、シンプルにおわびの気持ちを記してください。 -
(2)犯行動機など
被害者からすると、なぜこんなひどいことを と思う気持ちがあるものです。
そのため、なぜ窃盗をしてしまったのかという理由や、動機に至る思いを記載します。ここでも自分の都合ばかりを前面に出した言い訳がましい言葉は避けてください。 -
(3)与えた損害および示談金(損害賠償金)について
いくら謝罪文とはいえ、謝罪の気持ちと犯行に至った理由だけでは不十分です。
あなたが起こした窃盗によって、被害者にどのような損害を与えてしまったのか、その罪の重さをどう捉えているのかを伝えましょう。
さらに起こしてしまった罪や損害に対して、加害者としてどのように弁済する意思があるのかを、具体的な金額や方法を記して提示します。 -
(4)再発防止に向けて
今回起こした事件を真摯に反省し、再発防止に向けてどのように取り組もうとしているのかについても触れるようにしてください。
そして最後にもう一度、被害者やご家族に対しての謝罪の気持ちを表す言葉をしたためましょう。謝罪文は基本的に1枚ではなく複数枚を使用し、しっかりと気持ちを伝えることが大切です。
またご紹介した具体例は個別のケースによって異なりますので、注意が必要です。
謝罪文を書きあげたら、ご自分の名前はもちろん被害者の名前、謝罪文を作成した日付を記載してください。当然ですが、被害者やご家族の名前の後ろには「様」を付けるようにしましょう。 -
(5)被害者の連絡先が分からない場合
被害者に謝罪文を送りたいが住所が分からない場合は、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。
捜査関係者は基本的に、加害者や加害者関係者に対して被害者の情報を教えることはありません。
逆に教えてもいないのに住所が知られて謝罪文が届いたとしたら、非常に驚くと同時に不快感を与えてしまうこととなります。
7、慰謝料などの相談を弁護士事務所に依頼するメリット
窃盗事件における慰謝料の支払いについては、ご自身だけで決めてしまうことは非常に危険です。弁護士に相談し、交渉を一任することをおすすめします。
慰謝料の支払いについて弁護士に相談・依頼することで、次のようなメリットが得られます。
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(1)適切な慰謝料額におさめることができる
窃盗事件にまつわる慰謝料に相場はありません。
しかし、刑事事件に関する知見が豊富な弁護士であれば、類似の事案でどの程度の慰謝料請求を裁判所が認めたのかというデータが蓄積されています。
法外に高額な慰謝料を請求されても、事案の内容や被害の程度などに照らして適切な慰謝料額に落ち着けるようはたらきかけることができるでしょう。 -
(2)示談交渉の経過を検察官に伝えてもらえる
被害者側が過度に多額の慰謝料を求め、示談交渉が難航または破断に陥ったとしても、弁護士に依頼していれば悲観することはありません。
なぜなら、弁護士であれば、過剰な要求をされているという事実を検察官に伝えて考慮を求めるはたらきかけができるためです。
検察官によっては被害者に対して和解に水を向けてくれることもあるでしょう。
早期の事件解決に向けた強力なサポートとなるはずです。 -
(3)証拠を集めて最適なかたちで示談交渉ができる
弁護士に任せることで、加害者側に有利な証拠をスムーズに収集して、最適なかたちで示談交渉を進められることが期待できます。
窃盗は当然に責めを受ける行為ではありますが、酌量の余地がないわけでもありません。
加害者本人の反省文や家族による嘆願書など、情状酌量に役立つ証拠を収集して示談交渉に臨むことで、加害者の同意を得て慰謝料額も適切な範囲に落ち着かせることが期待できます。
8、まとめ
窃盗事件は、相手に怪我を負わせたなどの重大な悪質性がない事件であると考えられます。ある意味では「お金で弁済し、許しを乞うことができる」ともいえる犯罪です。
もちろん、お金を支払えば何でも許されるというわけではありませんが、加害者が真摯な反省をしているという姿勢は、慰謝料を含めた示談金に反映させることができます。
その結果、実質的な損害だけでなく被害者の気持ちも落ち着かせることが可能だといえます。
慰謝料の相場についてはケース・バイ・ケースなので、弁護士に一任して適切な金額での交渉を望みしましょう。
窃盗事件の加害者側となり、慰謝料の相場・金額や示談交渉の進め方にお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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