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強盗と窃盗の違いとは? 横領・万引き・恐喝との違いを弁護士が解説
警察庁が公表している「平成29年の刑法犯に関する資料」によると、平成29年中の窃盗による被害総額は666.6億円にものぼります。
ところが、他人の現金や財産などを不法に奪う犯罪は窃盗だけではありません。強盗・恐喝・横領も、やはり同じく「盗む」や「盗る」と形容される犯罪です。
窃盗のように他人の財産を不法に奪う犯罪を財産犯と呼びますが、窃盗と他の財産犯とはどのような違いがあるのでしょうか? 特に、ニュースなどでも注目されやすく話題に上がることが多い強盗と窃盗にはどのような差があるのでしょう?
ここでは、強盗と窃盗の違いを主軸に、万引き・ひったくり・恐喝・横領などとの違いにも触れていきます。
1、強盗と窃盗の違いは暴行や脅迫をしたかで変わる
強盗罪とは、刑法第236条に規定されている犯罪です。
「暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」と規定されています。
一方、窃盗罪とは刑法第235条に規定されています。
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」とされています。
強盗と窃盗、どちらも他人の財物を奪い、不法に自分のものにしてしまうという点では共通していますが、両者は手段に違いがあります。
強盗罪は「強取」ですから、財産を奪う際に暴行・脅迫が用いられます。たとえば、銀行強盗をイメージしてください。
窓口の係員に暴力を振るって現金を奪ったり、刃物や銃を突きつけて脅すことで抵抗を抑圧したりといった手段が用いられているでしょう。これを刑法学では「窃盗の機会に暴行・脅迫を用いる」と表現します。
窃盗罪では「窃取」が用いられますが、窃取とは本来「目を盗んで密かにとる」といった意味があります。他人に危害を加えず、密かに盗み取る行為が窃取です。たとえば、空き巣をイメージしてください。
誰にも見つからないように他人の家に忍び込み、金品を盗んで再び見つからないように逃走します。
強盗と窃盗の違いは、窃盗がおこなわれる際に暴行・脅迫が手段として用いられるか否かにあると考えておけばよいでしょう。ただし、窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金で、強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役です。
言葉にしてしまえば「暴行・脅迫を用いる」というだけの違いしかありませんが、強盗罪で有罪判決を受ければ5年以上の懲役刑に科せられるという意味では、刑罰の重さには大きな差があるといえます。
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2、窃盗罪から強盗罪に切り替わるケース
強盗罪は、窃盗の機会に暴行・脅迫が用いられた場合に成立します。しかし、故意に相手に強い危害を加える意思がなく、自分では窃盗の目的さえ達成すればよいと考えていても、結果的に強盗罪に問われるケースがあります。
代表的な展開が「ひったくりが強盗罪になった」というケースです。
ひったくりとは、相手が持っているバッグなどを背後から奪い去るような手段で盗む、窃盗の手口のひとつです。財物を奪う際に暴行・脅迫を用いることはありませんが、もしバッグの持ち主が奪われないように必死で抵抗した際に暴行を加えるなどすれば、窃盗罪ではなく強盗罪が成立します。
また、バッグを必死につかんで放そうとしない持ち主を引きずって転倒させた場合も暴行とみなされ強盗罪が成立します。
この際に、引きずられたことで転倒したバッグの持ち主が負傷した場合は、刑法第240条の「強盗致傷罪」が適用されます。
また、バッグを取り返すために追いかけてきた被害者に対して暴行・脅迫を加えた場合には、刑法第238条の「事後強盗罪」が成立します。
さらに、暴行によって相手を死亡させてしまった場合には、刑法第240条の「強盗致死罪」が適用されます。
そのほかにも、次のようなケースでは窃盗罪が強盗罪に切り替わります。
- 空き巣のために他人の家に侵入したところ、帰宅してきた住人に発見されてしまい暴行を加えた
- 万引きを警備員に発見されてしまい突き飛ばして逃走した
比較的よくある窃盗の手口が、思いもよらず、刑罰が重たい強盗罪に発展してしまうことがあるのです。
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3、窃盗と強盗の刑罰
窃盗罪と強盗罪とでは、法定刑に大きな差があります。
- 窃盗罪……10年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 強盗罪……5年以上の有期懲役
この数字だけを見ると、窃盗罪のほうが刑罰が重たいように誤解する方がいますが、窃盗罪で5年を超える懲役刑が科せられるのはまれです。
被害金額が数千万円を超えるような高額窃盗事件、空き巣など住居侵入を伴う窃盗の常習犯で多数の余罪がある事件、組織的に窃盗を繰り返す悪質性が高い事件などでない限り、5年以上の実刑判決が下されることはほとんどないでしょう。
ところが、強盗罪では「最低でも5年以上の有期懲役」が下されます。
有期懲役とは1ヶ月以上20年以下の懲役刑を指すため、強盗罪では最高で20年もの長い懲役刑が下される可能性があります。
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(1)窃盗罪の量刑
窃盗罪で起訴された場合、10年以下の懲役または50万円以下の罰金の範囲内でどの程度の量刑が科せられるのかは、次の要素をもとに判断されます。
- 前科前歴の有無、あれば窃盗の前科前歴は何件あるか?
- 被害金額はいくらか?
- 被害の弁償や謝罪はなされているか?
万引き、置き引きなどのように「つい魔が差した」とも弁解ができる手口の場合は、執行猶予付きの懲役刑や罰金刑で済まされることがあります。ただし、空き巣や居空きなどの住居侵入を伴う手口、車上ねらいや自販機ねらいといった常習性が高く余罪が多い手口では、実刑判決が下される傾向があります。 -
(2)強盗罪の刑罰は罪の重さで異なる
強盗罪の刑罰は、どのような状況で強盗をはたらいたのか、強盗によってどのような結果が発生したのかなどによって適用される罪名が異なり、刑罰の重さも変わります。
- 強盗罪······5年以上の有期懲役
- 事後強盗罪······5年以上の有期懲役
- 強盗致傷罪······無期または6年以上の有期懲役
- 強盗致死罪······死刑または無期懲役
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4、他人の財物を奪う「横領・万引き・恐喝」との違い
強盗罪・窃盗罪のほか、他人の財物を奪う犯罪・手口を挙げていきましょう。
- 横領罪(刑法第252条) 他人から預かり保管中の財物を処分する行為は横領罪に問われます。「処分する」とは、自分のものにする、売却するなどのほか、よそに保管するなど一切の処分行為を含みます。
- 万引き(刑法第235条) 万引きとは、窃盗罪の手口のひとつです。
- 恐喝罪(刑法第249条) 他人を恐喝して財物を交付させた場合、恐喝罪が成立します。「恐喝する」とは、相手の反抗を抑圧する至らない程度の暴行・脅迫を加え、財物交付を要求することを指します。
他人の財物を勝手に自分のものにする点では窃盗罪と共通していますが、誰の占有下にあるのかに違いがあります。他人の占有下にあるものを奪うのが窃盗罪、他人から預かり自らの占有下にあるものを奪うのが横領罪です。
横領罪の法定刑は5年以下の懲役刑です。
営業中の店舗で、陳列されている商品を盗んだ場合に成立します。
軽微な犯罪と思われがちですが、刑法に照らせばれっきとした窃盗罪であるため、決して軽んじてはいけません。
懲役10年以下または50万円以下の罰金の範囲で、比較的に低い刑罰が科せられますが、常習であれば実刑判決が下されるおそれがあります。
暴行・脅迫を用いるという点では強盗罪と共通していますが、反抗を抑圧する程度と、被害者に自ら財物を差し出させる行為に違いがあります。反抗を抑圧するに足りるものか否かは、犯人及び被害者の性別、年齢、犯行の状況、凶器の有無等の具体的事情を考慮して判断されます。たとえば、強盗事件では刃物などの凶器が使用されることが多い一方で、恐喝罪では刃物の使用がありません。
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5、まとめ
強盗罪と窃盗罪では、暴行・脅迫が用いられるという点に大きな差があります。そして、万引きが見つかって逃走する際やひったくりで被害者に抵抗を受けた場合などには、思いもよらず強盗に発展する可能性があります。
5年以上の有期懲役という非常に重たい刑罰が科せられないためには、被害者との示談成立が重要です。また、強盗罪・窃盗罪だけでなく、横領罪や恐喝罪といった財産犯罪でも、事件化を防ぎ刑罰を回避するには示談成立が有効です。
ベリーベスト法律事務所では、強盗罪・窃盗罪をはじめとした財産犯事件の弁護実績が豊富な弁護士が在籍しています。
おひとりで悩みを抱える前に、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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