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窃盗の共犯で家族が逮捕! 実行犯以外も罪になる? 共犯成立の要件は?
犯罪は自らが単独で行う場合だけでなく、複数人が共同して行う場合があります。これを「共犯」といい、窃盗罪は共犯者がいることが珍しくありません。
一般的に、共犯者は実行犯と比較して罪が軽いとイメージされる方もいらっしゃいます。身内が窃盗罪の共犯で逮捕されてしまったと聞けば、実行犯ではない以上、重い罪に問われることがないと考えるかもしれません。しかし、窃盗の実行犯でなくても罪に問われることがあります。逮捕、起訴され、有罪になる可能性もありますので、共犯だからと軽く考えることはできないのです。
今回は、窃盗罪の共犯に着目し、共犯が成立する要件や共犯をしてしまったときの対応を中心に解説します。
1、共犯とは? 盗んでいなくても窃盗罪で逮捕されることはあるの?
盗んだ実行犯ではなくても、窃盗罪で逮捕されることがあります。「共犯」と呼ばれる立場の人です。
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(1)共犯者も同じ罪に問われる
窃盗の共犯者が逮捕されることの根拠は刑法第60条にあります。
【刑法第60条】
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
これを共同正犯といいます。正犯とは、犯行を主導する人を指し、一般的には主犯と呼ばれます。上記の条文から、主犯と同等の立場で窃盗を行った者は、主犯と同じ罪に問われることが分かります。
窃盗罪の刑罰は刑法第235条で「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と規定されていますので、共同正犯として有罪になれば、この範囲内で罪に問われることになります。 -
(2)実行犯以外も共犯になる
物をふたり一緒に盗んだのであれば、ふたりが同じ罪に問われることについて異論はないでしょう。他方、物を盗んだ実行犯以外は罪が軽くなると思われがちです。しかし、必ずしもそうではありません。
実行犯以外でも要件を満たすと、実務上は「共謀共同正犯」として共同正犯とみなされます。つまり、実行犯と同じ罪に問われるということです。 -
(3)窃盗をそそのかすことも罪になる
人をそそのかして窃盗の実行を決意させることも共犯の一種です。これを教唆犯(きょうさはん)といい、実際に物を盗んだわけではなくても、窃盗の実行行為をした人と同じ刑罰で裁かれます。
その根拠として、刑法第61条は「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」としています。
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2、どのような場合、共犯は成立する?
共犯がどのような場合に成立するのか、共同正犯および教唆犯について、もう少し掘り下げて見ていきましょう。
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(1)共同正犯の成立要件と具体例
共同正犯が成立するには次の3つの要件が必要です。
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① 共同や正犯の意思
共同して物を盗み、自分たちのものにしようとする意思です。
② 共謀の事実
窃盗の目的を遂げるために共同してたくらむことです。事前に細かく計画を立てる必要はなく、現場で共謀することや、黙示的なものでも共謀が認められる場合があります。
③ 行為の実行
共謀した内容にもとづき、窃盗を実行することです。
たとえば、何人かで一緒に窃盗の計画を立て、そのうちの一人が実際に物を盗む役割を担い、残りは見張りや逃走車を運転する役割を担ったとします。
この場合、見張り役や運転手役も、共同して窃盗する意思があり、窃盗を計画し、実際に窃盗が実行されているため、共同正犯が成立します。
もっとも、窃盗の手助けをした本人に行動の選択をする自由がなかった場合などは共犯の中でも「従犯(じゅうはん)」となり、主犯と比較して罪が軽くなります(刑法第62条、63条)。
たとえば、リーダー的立場にある人から指示され、不本意ながらも見張り番をしてしまったケースです。 -
(2)教唆犯の成立要件と具体例
教唆犯が成立するには2つの要件を満たす必要があります。
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① 教唆行為をした
教唆の方法はさまざまですが、たとえば「万引きをしてこい」と指示することや、「〇〇という方法だと盗みやすい」と手口を教えることなどが該当します。もともとは犯行の意思がなかった人に対して犯行を決意させる行為ですので、すでに窃盗を企てている人に指示や情報提供をしても教唆にはあたりません。
② 相手が犯行を実行した
教唆をした結果として、正犯が窃盗を実際に行うと教唆犯が成立します。教唆行為があっても相手が実行に移さなければ教唆犯として処罰されません。
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3、共犯の意思や実行行為があった場合、逮捕後にすべきこと
共犯をする意思があり、実際に共犯として窃盗を犯して逮捕された場合は、不起訴処分の獲得や減刑に向けた活動が必要です。具体的に何をするべきなのか、以下に解説します。
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(1)被害者との示談
示談が成立していると不起訴処分や減刑となる可能性が出てきます。示談を成立させるためには、被害者に心からの謝罪と弁済を行うことが大切です。
一般的に、示談書では「宥恕(ゆうじょ)条項」といい、被害者が処罰を望まない旨の文言を盛り込みます。宥恕意思は検察官や裁判官が処分を決める際の大きな要素となるため重要な項目です。
また窃盗の場合は弁済することで一定の被害回復がなされた証しとなります。 -
(2)反省と再犯防止策
反省の意思があるかどうかも重要です。反省していなければ更生への期待が低く、再度罪を犯す可能性が高いとみなされるため、厳しい処分を受けるおそれがあるでしょう。
実行犯ではない共犯の場合は言い逃れしようとする人もいますが、前述のとおり共犯者も罪に問われますので、共犯をした事実を素直に認めて反省の意思を示すことが肝心です。
再犯防止策を講じる必要もあります。たとえば、仲間との関係を断ち切る旨の誓約書を書くことや、ご家族が家庭環境を整え、本人を監督する体制をつくることです。ご家族が監督する旨の誓約書を書くこともあります。 -
(3)適切な対応は弁護士へ相談を
刑事事件では逮捕から起訴、不起訴までに時間的な猶予がないため、スピーディーかつ有効な対処を講じなくてはなりません。上記の対応を本人やご家族が適切に行うことは難しくなりますので、弁護士への依頼が賢明な選択です。
弁護士は被害者感情に配慮しつつ、早期に示談交渉を進め、同時に検察官や裁判官へのはたらきかけを行います。弁護士を介することで不起訴処分の獲得や減刑に期待できますので、ご家族はできるだけ早いタイミングで相談しましょう。
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4、共犯の意思や事実がない場合は、証拠を集めて無実を主張
共犯の意思や事実がないにもかかわらず、逮捕のリスクが生じてしまうケースがあります。この場合も、一刻も早く弁護士へ相談し、無実を主張する必要があります。
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(1)共犯を疑われるケース
本人には全く身に覚えがないのに共犯を疑われるケースとしては、たまたま現場に居合わせたケースや、主犯が自らの罪を軽くするためにうそをつくケースなどがあります。「自分は窃盗をするつもりがなかったがそそのかされた」などと教唆犯に仕立てられることもあるでしょう。
こうした場合、事実無根なのだから弁護士を呼ばなくてもいずれ解決するだろうと思うかもしれませんが、そうではありません。運悪くアリバイがない場合や、主犯がうまくつじつまをあわせる供述をした場合は、犯人にされてしまうおそれがあります。 -
(2)証拠集めと無実の主張は弁護士を頼るべき
無実の証明は、疑われている本人自身が行う必要がありますが、決して簡単ではありません。下手に動けば警察から証拠隠滅をたくらんでいると疑われるかもしれませんし、当事者ではないご家族が証拠を集めることも限界があります。
また、共犯事件の場合は、共犯者が連絡を取り合い、証拠を隠滅しないように、警察が被疑者全員の身柄拘束に踏み切るケースも多くあります。これではアリバイなどの証拠を集めることなどできませんし、取り調べで厳しい追及をされ、やってもいない犯行を供述してしまうリスクも生じます。
無実であっても速やかに弁護士へ相談することが大切です。証拠集めのアドバイスを受けられるほか、逮捕されてしまった場合でも弁護士が直ちに本人と面会し、取り調べへの適切な対応を伝えてくれます。
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5、まとめ
窃盗事件では実際に物を盗む人だけでなく、見張り役などが用意されることがありますが、要件を満たせば共犯として実行犯と同じ罪に問われてしまいます。教唆によって窃盗事件を起こしても同様です。盗む行為をしていないから無罪になるとはいえず、有罪になれば前科がついてしまいます。
窃盗の共犯として身内の方が逮捕されてしまったのであれば、速やかに弁護士へご相談ください。共犯の事実がある場合、無実の場合、いずれの場合においても、弁護士の力が不可欠です。
ベリーベスト法律事務所は刑事事件の解決実績が豊富にあります。逮捕されたご本人やご家族にとって最良の結果となるよう尽力しますので、ぜひ一度ご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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