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強盗罪の種類ごとに刑罰の重さはどう違う? 逮捕後の対処法についても解説
覆面の犯人がナイフや銃を持って銀行やコンビニなどへ押し入り、銀行員や店員を脅して金品を奪い取る。これが強盗の一般的なイメージではないでしょうか。
しかし、強盗と呼ばれる犯罪はそれだけにとどまらず、さまざまな種類があります。強盗のような重大犯罪ではなく、もっと軽い罪だと思っていた行為が、実は強盗に該当するという場合もあるのです。また、強盗して相手を傷つけたり死なせたりした場合、目的や意図によって罪名や刑罰の重さが変わってくることもあります。
自分や家族が強盗の容疑で逮捕されるようなケースでは、強盗罪に関する知識の有無で、採れる対処法も異なるでしょう。そこで今回は、強盗罪の種類や刑罰、罪を犯してしまった場合の対処方法などについて弁護士が解説します。
1、強盗罪の二つの種類~一項強盗と二項強盗
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(1)二つの強盗罪
強盗罪について定めた刑法第236条には、第一項と第二項があります。第一項、第二項には異なる強盗行為が規定されているため、わかりやすく「一項強盗」「二項強盗」と呼んで区別されています。
第一項では「暴行または脅迫を用いた他人の財物の強取」が、第二項では「暴行または脅迫を用いた財産上不法の受益」または「他人に受益させる行為」が、それぞれ強盗罪として規定されています。
これだけではイメージしにくいでしょうから、具体例を見てみましょう。 -
(2)一項強盗の具体例
冒頭でも挙げたように、銀行やコンビニなどへ押し入り凶器を示して金品を奪う行為が、典型的な一項強盗です。犯罪の成立には、被害者の反抗を抑圧する程度の暴行や脅迫を、財物奪取の手段とする必要があります。暴行・脅迫の程度の判断は、原則として客観的になされます。また、暴行・脅迫はあくまでも財物を奪う手段なので、殴ったついでにお金を盗ったようなケースでは、一項強盗は成立しません。
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(3)二項強盗の具体例
タクシーに乗ったりレストランで飲食をしたりして、支払いを免れる目的で暴行・脅迫を行うのが、二項強盗です。酒類を飲んで悪酔いしてタクシー運転手を殴った場合などが典型的です。直接的にお金や物品を奪えば一項強盗なのに対し、二項強盗の場合はサービスの対価を支払わないという行為態様であるため、利益強盗ともいわれます。
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(4)刑罰の違い
一項強盗と二項強盗では、刑罰の重さは変わりません。どちらも5年以上の有期懲役と定められています。金銭や物品を強取する場合でも、本来支払うべき対価の支払いを免れる場合でも、それにより不法な利益を上げたことには変わらないと考えられるためです。
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2、強盗致死傷罪の種類とは~内容と刑罰の違い
財物を奪い取るだけではなく、強盗によって相手を傷つけ、あるいは死なせてしまった場合の罪名についても見ていきましょう。
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(1)それぞれの罪名
強盗をして相手を傷つけた場合は強盗致傷罪、相手を死なせてしまった場合は強盗致死罪が成立します。これらの罪は、傷害や死亡という結果について意図していなかった、つまり故意がないときの話です。
強盗の際に最初から相手を傷つけようと思って傷つける場合は強盗傷人罪、相手を殺そうという殺意がある場合は強盗殺人罪が成立します。なお、相手に傷害を負わせようとする意思はあったが殺そうとまでは思っていなかったが、結果として被害者が死んでしまったような場合は、強盗致死罪として扱われます。 -
(2)強盗関連罪の刑罰
強盗は、財物を奪うだけではなく相手を傷つけるおそれも高い犯罪です。そこで、被害者の負傷や死亡という結果が発生したら、それに応じて刑罰の重さも異なります。
まず、強盗致傷罪および強盗傷人罪の法定刑は無期または6年以上の有期懲役です。刑法に定められた刑罰の重さは同じですが、相手を傷つけようという故意のある強盗傷人罪のほうが、裁判で下される刑罰は一般的に重くなる傾向があります。
次に、強盗致死罪および強盗殺人罪の法定刑は死刑または無期懲役です。財物を奪った揚げ句に相手まで死亡させたという点から、非常に重い刑罰が定められているのです。また、裁判員裁判の対象事件となります。
いずれの罪も負傷か死亡かという結果だけで刑罰が決まるのではありません。奪った金品の価値や多寡、初犯か再犯か、被害者の負傷の程度、複数犯なら事件においてどのような役割を担ったかなど、さまざまな要素が勘案されます。
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3、強盗致死傷罪で逮捕されたらどうなる?
強盗致死傷罪で逮捕されてから刑事裁判に至るまでの流れを説明します。
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(1)逮捕から検察官送致まで
強盗致死傷罪の容疑で逮捕されると、警察での取り調べが始まります。この段階では、犯人かどうか、証拠はあるのかといったことを取り調べます。一通りの取り調べが終わると、今度は起訴するかどうかの判断をするため検察へ事件が送致されます。取り調べから検察官送致までの手続きは、逮捕後48時間以内に済ませなければならないと定められています。
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(2)検察官送致から起訴まで
事件が検察へ送られると、検察はそこから24時間以内に、勾留という身体拘束を行うかについて判断をします。一定の要件を充たす場合は、勾留請求が認められ、被疑者は原則10日以内の身体拘束を受けます。もっとも、必要があれば一度だけ延長が認められるため、最長で20日間となります。
その後、起訴された場合は起訴後勾留がなされ、数ヶ月から半年ほど待って刑事裁判が行われます。 -
(3)逮捕後に家族ができること
逮捕されてから少なくとも72時間は被疑者の家族であっても面会はできず、会えるのは弁護士のみとされています。
被疑者の家族としては、72時間が過ぎてからの面会や差し入れのほか、被害者との示談や不起訴処分ないし減刑を求めて弁護士への依頼をすることが考えられます。
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4、減刑を目指すには被害者との示談が重要
強盗の種類や被害者の死傷の状況によって刑罰は大きく異なりますが、不起訴処分や減刑を求めるために重要なのは、被害者との示談成立です。
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(1)示談の目的と効果
刑罰にはさまざまな目的がありますが、国が被害者に代わって処罰するという側面もあります。したがって、被害者が重い処罰を求めないというのであれば、検察もあまり重い求刑をせず、また裁判官も量刑判断の際に考慮する可能性が高いでしょう。
示談を成立させる際に、被害者から「許してあげてもいい」という趣旨の宥恕意思を示してもらうことで、不起訴処分や減刑につながる場合があります。 -
(2)減刑を目指すために
示談のほかにも、強盗で生じた被害額の弁償、慰謝料などの賠償金の支払い、反省や再発防止策などの具体的提示など、減刑を目指してできることはさまざまにあります。
それに加えて、主犯ではなかった、困窮などによりやむにやまれず犯行に及んだなど、情状酌量につながりそうな事情があれば積極的に主張していくことも大事です。
いずれの方法も、法律に関する知識や強盗事件の対応経験が求められます。早期釈放や減刑を目指すのであれば、事件後できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。弁護士であれば、減刑に向けて被疑者とその家族ができることについてアドバイスや提案が可能です。
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5、まとめ
今回は強盗罪のほか、強盗致死傷罪や強盗傷人罪、強盗殺人罪の違いや逮捕された場合の対処法についてご説明しました。
強盗は類型的に被害者の身へ危険が及ぶことの多い犯罪であり、財物を無理やり奪うこととあわせて非常に罪が重く定められています。そのため、強盗罪では微罪処分なども受けられず、取り調べも厳しいものとなり、身柄拘束期間も長期に及ぶと考えられます。
強盗といっても、相手を傷つけたのが故意かどうかなどによって刑罰の重さも変わってくる可能性があります。弁護の方針によって最終的な刑期などが左右されることもあるため、身柄の早期解放や減刑を求める方は、刑事弁護の実績豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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