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親告罪とは何? 詐欺と親告罪はどのような関係にあるのか解説
もし、親族から詐欺罪で告訴されたらどうすればいいのでしょうか?
親族間の詐欺罪には、親告罪が適用されます。親告罪とは、被害者からの告訴がなければ検察が起訴(公訴)できない罪のことです。
親告罪は、親族間で発生した詐欺罪などの財産に関する犯罪のほか、名誉毀損(きそん)罪・侮辱罪のように、犯罪の事実が公にされることで、被害者のプライバシーが侵害されたり、不利益が生じたりするおそれがある犯罪について適用されます。
今回は、親告罪の定義や適用される犯罪にはどんな罪があるのか、詐欺と親告罪の関係、詐欺罪で逮捕された場合の流れや量刑・時効について弁護士がわかりやすく解説するとともに、親族から詐欺罪で告訴された場合の対処方法について解説をします。
1、親告罪とは?
親告罪とは、被害者からの告訴がなければ、刑事事件として起訴することができない罪のことです。告訴とは、被害者が警察や検察に対して犯罪の事実を口頭または書面で申告し、犯人への訴追・処罰を求める手続きです。告訴する権利は、被害者が死亡している場合などを除き、原則として被害者と法定代理人(被害者が未成年の場合)のみです。
親告罪が設けられている理由は、主に次の3つです。
- 事件の事実が明るみに出ることで、被害者の利益やプライバシーが侵害されるおそれがある(名誉毀損罪・侮辱罪・ストーカー規制法違反・誘拐罪など)
- 親族間の犯罪であるため、親族間の話し合いで解決をするのが望ましい(親族間の窃盗罪・詐欺罪・不動産侵奪罪など)
- 軽微な犯罪であるため、謝罪や弁済など当事者同士の話し合いで解決するのが望ましい(過失傷害罪・器物損壊罪など)
なお、平成29年刑法改正により、改正前までは親告罪とされていた強制わいせつ罪、強制性交等罪などの性犯罪は、非親告罪となりました。
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2、親告罪にあたる罪(絶対的親告罪と相対的親告罪)について
親告罪は、絶対的親告罪と相対的親告罪に分類されます。それぞれの意味と現行法で親告罪となる罪の例を紹介します。
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(1)絶対的親告罪
絶対的親告罪とは、被害者と加害者の関係性に関わらず、常に被害者からの告訴が起訴の条件となる親告罪です。
次の犯罪などが絶対的親告罪にあたります。
- 信書開封罪
- 秘密漏示罪
- 過失傷害罪
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 器物損壊等罪
- ストーカー規制法違反
- 未成年者略取・誘拐罪
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(2)相対的親告罪
相対的親告罪とは、親族間など被害者と加害者に一定の関係性がある場合に限り、被害者からの告訴が起訴の条件となる親告罪です。
刑法における親族とは、民法第725条で定められている親族の範囲(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)が準用されます。
刑法では「親族相盗例」の規定により、配偶者・直系血族・同居の親族間の罪が免除されており、さらに親族相盗例の対象となる罪について、配偶者・直系血族・同居の親族以外の親族間における罪を親告罪としています。
具体的には、親族間における次の犯罪などが相対的親告罪にあたります。
- 詐欺罪
- 電子計算機使用詐欺罪
- 背任罪
- 窃盗罪
- 恐喝罪
- 横領罪
- 業務上横領罪
- 遺失物等横領罪
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3、詐欺と親告罪について
詐欺罪は、刑法第246条に規定されており、人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする犯罪です。わかりやすくいえば、お金などの財産をだましとることです。
「聞いていた話と違うから詐欺だ」というケースがありますが、人をだましただけで、金品などの財物を受け取ることや財産上の利益を得ることを目的としない行為は、詐欺罪に当たりません。
詐欺罪は被害が発生しても、窃盗罪など他の刑事事件に比べて警察や検察などが認知することは難しく、被害者からの被害届の提出や告訴により認知されることがほとんどです。
詐欺罪が成立するためには、次の4つの構成要件がすべて必要です。
- 欺罔(ぎもう)行為……被害者をだますこと
- 錯誤……被害者が事実とは違うことを事実であると認識すること
- 交付……被害者が自分の意思で加害者に財物あるいは財産上の利益を交付すること
- 移転……加害者が財物あるいは財産上の利益を受け取ること
さらに、上記4つの結果として「損害の発生……被害者に損害が発生すること」が認められることも必要です。
また、詐欺罪は刑法第252条・第244条により、被害者が「配偶者、直系血族または同居の親族」であった場合は刑が免除され、「それ以外の親族」の場合には親告罪になることが規定されているのです。
親告罪である理由としては、親族間の犯罪であるため、親族間の話し合いで解決をするのが望ましいとされているからです。
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4、詐欺罪の量刑や時効について
詐欺罪の量刑は、刑法第246条で「10年以下の懲役」と定められています。つまり詐欺罪には、罰金刑がないため有罪となれば懲役刑が科されることになります。それだけ重い罪と見なされているといえるでしょう。また、未遂であった場合にも詐欺未遂罪が適用され、量刑は完遂した場合と同じ「10年以下の懲役」となっています。
なお詐欺は、刑事告訴のほかに、契約の取り消しや損害賠償金の支払いを求める民事訴訟が提起されることもあります。
- 刑事上の時効 刑事上の時効は公訴時効と呼ばれ、成立すれば検察は公訴できなくなります。詐欺罪の公訴時効は7年で、詐欺行為が完了した時点から起算します。一方、親告罪が適用される親族間での時効は告訴時効と呼ばれ、被害者が加害者を知った時から6か月となっています。
- 民事上の時効 民事の時効は消滅時効と呼ばれます。詐欺行為による損害賠償請求の時効は、損害の事実と加害者を知った時から3年以内、かつ詐欺行為の発生から20年以内、となっています。
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5、詐欺罪で逮捕されたらどうなるか
刑事事件において、詐欺罪で逮捕された場合は、最大23日間も身柄を拘束される可能性がでてきます。
逮捕されると、警察は48時間以内に検察へ送致するか、釈放するかを決定します。もし検察に送致され、検察官から裁判所に勾留請求された場合は10日間、延長された場合は最大20日間勾留が続き、起訴・不起訴の判断がなされます。起訴されれば高い確率で有罪の判決が下るでしょう。
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6、親族間の詐欺であれば早期の示談を
詐欺罪での起訴・不起訴、量刑などの判断には、次のようなことが考慮されます。
- 初犯であるか
- 被害額を弁済しているか
- 被害額の大きさはどれくらいか
- 行為の悪質性
- 示談の有無
特に、被害者が親族である場合は、示談交渉を進めて告訴を取り下げてもらうことが有効です。親族間の詐欺罪は親告罪なので、被害者が告訴を取り下げれば、それ以上刑事手続きは進められることはできず、逮捕された場合も、すみやかに釈放されることになります。
もし、被害者が告訴を取り下げなくても、示談交渉を進めて謝罪や弁済の意思を示すことは、起訴・不起訴処分や量刑の判断に影響を与えます。
しかし、逮捕されている場合には、加害者本人が示談交渉することはできません。また、家族や身近な人が被害者と示談交渉すると、感情のもつれなどにより、示談交渉がスムーズに進まないことも懸念されます。
刑事事件では、スピーディーな対応ができるか否かが大きな分かれ目になります。詐欺や窃盗など刑事事件の経験豊富な弁護士なら、示談交渉を進めながら、警察・検察と交渉し、早期釈放を実現する可能性を高めます。
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7、まとめ
親告罪の定義、詐欺と親告罪の関係、親族間での詐欺が起きた場合の示談の有効性について解説しました。万が一、詐欺罪の疑いをかけられた場合には、逮捕や起訴を避けるために、被害者との間ですみやかに示談交渉を進める必要があります。しかし、親族間であっても、示談交渉を当事者同士で進めることは大変困難です。スムーズに示談交渉のためには、弁護士に依頼することをお勧めします。
詐欺事件で示談が必要な方はベリーベスト法律事務所にご相談ください。実績豊富な弁護士があなたをサポートし、早期解決に向けて全力を尽くします。
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