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賄賂罪は民間人でも成立する? 刑罰やどのように発覚するのかを解説
金品やサービスなどと引き換えに、特定のメリット得た場合に賄賂罪に問われ、重い罰を受ける可能性があります。
では、具体的にどういった行為が賄賂の授受にあたり、どのような流れで発覚するのでしょうか。また、民間人は賄賂の授受をしても罪に問われることはないのでしょうか。
今回は賄賂罪をテーマに、犯罪の概要や刑罰の内容、犯罪発覚の経路などを中心に解説します。
1、賄賂罪とは?
賄賂罪とは、収賄罪(刑法第197条~第197条の4)と贈賄罪(刑法第198条)の総称です。
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(1)収賄罪と贈賄罪
収賄罪は、賄賂を受け取る側を規制する犯罪です。この規定は、主体(被疑者)が公務員であることから、公務の公正性を保持するために設けられています。ここでいう公務員には、刑法第7条1項に定義されている公務員以外にも、公務員になろうとする方や、特別法上、公務員とみなされる方(みなし公務員)など、幅広い範囲の方が含まれます。
贈賄罪は、賄賂を贈る側を規制する犯罪で、主体は賄賂を渡す人です。収賄罪の主体が公務員という身分に限定されているのに対し、贈賄罪にそのような制限はありません。賄賂を贈って便宜を図ってもらう人であれば、民間人でも贈賄罪の主体となり得るわけです。 -
(2)賄賂罪が成立する要件
刑法第197条1項前段に、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」と規定されています(単純収賄罪)。
「職務に関し」とは、賄賂が公務員の不正な職務への対価性を有していることを指しています。たとえば、民間人である友人から公務員に対して、子どもの面倒を見てくれたお礼として食事をごちそうになっても、通常は賄賂にはあたりません。また、賄賂は金品に限られず、人の需要、欲望を満たす一切の利益を含むとされています。たとえば、許認可や入学などの口利きをする、異性を紹介するなどのサービスも賄賂に含まれます。
賄賂を受け取るだけでなく、要求や約束をしても収賄罪が成立します。請託(不正な頼みごとをすること)がなく、また不正行為が実際におこなわれていなくても罪に問われます。贈賄罪も、賄賂を贈る行為のみならず、その申し込みや約束をした場合にも処罰の対象となります。
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2、賄賂罪の刑罰内容
単純収賄罪の刑罰は「5年以下の懲役」ですが、請託があれば受託収賄罪(刑法第197条1項後段)として「7年以下の懲役」が科されます。不正行為が実際におこなわれた場合には加重収賄罪(同法第197条の3)として非常に罪が重くなり「1年以上20年以下の懲役」に処せられます。
このほか、次のケースではすべて「5年以下の懲役」が適用されます。
- 第三者供賄罪(刑法第197条の2) 公務員が請託を受けて第三者に賄賂を供与させ、またはその供与の要求、約束をしたとき。
- 事前収賄罪(刑法第197条2項) 公務員になろうとする人が将来の職務に関して請託を受けて、賄賂の収受、要求、約束をしたとき。
- 事後収賄罪(刑法第197条の3、3項) 公務員だった人が在籍中に請託を受けて不正行為などをし、退職してから賄賂の収受、要求、約束をしたとき。
- あっせん収賄罪(刑法第197条の4) 公務員が請託を受け、他の公務員に働きかけて不正行為などをさせたことの報酬として、賄賂を収受、要求、約束をしたとき。
収賄罪は懲役刑しか規定がなく、罰金刑はありません。また収受した賄賂は没収または追徴されます(刑法第197条の5)。これに対して贈賄罪の刑罰は「3年以下の懲役または250万円以下の罰金」が規定されており、懲役刑または罰金刑が科せられます。
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3、賄賂罪は民間人でも成立する
民間人が金品やサービスを受け取っても、刑法の収賄罪に問われることはありません。しかし、民間人であっても賄賂の収受や約束などをすると、罪に問われる可能性があります。
たとえば、会社法第967条では取締役や会計参与などの贈収賄罪を定めています。取締役などの職務には一定の公共的な性質があることから、公正な商取引を守るために設けられています。刑罰は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」です。
また、同法第960条の特別背任罪で処罰される可能性もあります。刑罰は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金または併科」です。
取締役などではない一般の社員の場合、会社法の贈収賄罪や特別背任罪には問われません。
しかし、会社に対して損害が発生したことを理由に、刑法第247条が定める背任罪が成立してしまうおそれがあります。
刑法の背任罪に問われると「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。罪に問われなかったとしても、深刻なモラル違反として周囲から厳しい目を向けられたり、就業規則にもとづく懲戒処分を受けたりする可能性があります。
贈賄罪(刑法198条)は民間人であっても処罰の対象です。公務員に何らかの条件と引き換えに賄賂を贈れば罪に問われます。
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4、賄賂が発覚する流れ
収賄、贈賄が発覚するきっかけとしては、次のようなものがあります。
- 国税局や税務署による税務調査
- 社員による内部通報
- 競合他社の告発
- 定期的な外部監査
- 合弁相手による調査
たとえば、企業の担当者が市の職員に対して賄賂を贈り、不正入札という見返りを得たとします。
典型的な発覚経路は税務調査です。売上が大幅に増加した企業や、赤字から急に黒字になった企業などは税務調査の対象となりやすいため、不正入札によって多大な利益を得たようなケースでは税務調査からの発覚が十分に考えられます。
必ずしも自社の税務調査が発端となるわけではありません。取引先の税務調査によって贈賄の一端が発覚し、芋づる式に調査の対象になることもあり得ます。
税務署は極めて高い情報収集能力を有していますし、調査官はこれらの手口を熟知しています。
したがって、企業が贈賄資金を捻出するために架空経費の計上や収益の除外などを行ったとしても、架空経費や収益の除外はすぐに発覚し、使途が不明な支出が指摘されます。その後、調査官によるヒアリングによって追及される、指摘を受けて社内調査をおこない贈賄が把握されるといった流れです。
刑事事件に発展しそうな事案に関しては警察・検察が引き継ぎ、贈賄の相手方にも捜査の手がおよび、実態解明に向けた活動がなされるでしょう。
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5、弁護士に相談するメリット
賄賂罪で逮捕された場合には、速やかに弁護士へ相談されることをおすすめいたします。
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(1)早期の面会で事態の深刻化を回避する
逮捕から72時間は、被疑者は外部と連絡を取ることも、家族や知人などと会うこともできません。自分ひとりだけで捜査機関の取り調べに対応しなければならず、ご自身の発言や態度で事態を深刻化させてしまうリスクがあります。
また、一般的に刑事事件では勾留段階に入ると家族などと面会できるようになりますが、賄賂罪は組織的におこなわれることが多く、証拠隠滅のおそれなどから勾留段階で接見禁止が付く場合があります。
このように逮捕された被疑者は一定期間、面会を禁止されますが、弁護士との面会は制限なく認められています。弁護士からアドバイスを受ければ、取り調べに適切な対応がしやすくなります。弁護士を介してご家族とのやり取りも可能なので精神的な支えにもなるでしょう。 -
(2)弁護士の活動内容
罪を認める場合には刑罰を受ける可能性が高いため、執行猶予付き判決の獲得や、なるべく量刑を考慮してもらうように弁護活動をします。
弁護士のアドバイスをもとに警察や検察の捜査に協力し、反省の意思を示すことが重要です。贖罪寄付をする、受け取った金銭や優遇措置などを返金・辞退するなどの方法もあります。家族に監督を約束してもらう、行為の様態が悪質とまではいえない旨を主張するなどの活動もおこないます。
否認する場合には、弁護士が面会し、黙秘権をどのように行使するのかなどを含め、今後の対応を慎重に見極めます。職務との関連性がなく賄賂にはあたらないこと、証拠や証人の証言に不合理な点があることなどの意見書を検察官へ提出し、あるいは法廷で無罪を主張します。
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6、まとめ
公務員は職務の性質から公正性が求められるため、私生活においても金品やサービスの受け渡しには十分に注意を払わなければなりません。公務員だけの問題ではなく、民間人でも便宜を図ってもらう目的で金銭やサービスのやり取りが発生すれば罪に問われる可能性があります。
賄賂罪の容疑がかかった場合や逮捕された場合、弁護士の力が不可欠です。賄賂罪についてお困りであればベリーベスト法律事務所の弁護士がサポートします。まずはご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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