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個人の脱税はバレにくい? 税務調査のタイミングと脱税による刑罰
法人における脱税事件のニュースを見て、「個人の脱税はどうなるのだろう」と感じたことはないでしょうか。
会社員が副業をして一定額以上の収入があった場合、FXなどの投資で多額の利益を得た場合、個人事業主として事業を営む場合などには確定申告が必要です。
「確定申告しないといけないけど面倒だし、個人のことなんてバレないだろう」などと思うのは間違いです。故意に申告しない場合や一部の収入を隠して申告したような場合には、個人であっても刑罰を受ける可能性があります。
今回は個人の脱税をテーマに、刑罰の内容や脱税が発覚するタイミング、税務調査などについて解説します。
1、脱税はどのような刑罰になるのか
脱税をすると、どのような刑罰を受けるのかを確認しましょう。
脱税をした本人に科される刑罰は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科」です(所得税法第238条)。罰金については、脱税した額が1000万円を超える場合、脱税した額まで増額されます。
これらの刑罰に加え、行政処分として加算税や延滞税を課されます。加算税のひとつである重加算税は、納税額を意図的に隠ぺいし悪質だと判断された場合に課税されるもので、税率は35%~40%と非常に重いペナルティーです。
脱税をしたばかりに、もともと払うべき額よりも多くの税金を払うことになってしまいます。
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2、脱税が発覚するタイミング
脱税は、どのように発覚するのでしょうか。また、どのような調査が行われるのかを解説します。
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(1)個人の無申告はバレない?
脱税が刑事事件として扱われるのは、法人に限ったことではありません。手口が悪質で巧妙、脱税した金額が大きい場合などには個人であっても事件化し、刑罰を受ける可能性があります。個人の無申告や税金の不正還付は、違法行為である点に変わりはないのです。脱税が発覚しない保証はどこにもないという点は理解しておくべきでしょう。
個人の脱税が発覚するタイミングとしては、次のような事実があった場合が考えられます。
- 個人の口座に大量の入金があった
- 副業の発注元に税務調査が入った
- 仕事関係者、知人などが税務署にタレコミをした
- 前年の確定申告と比べ、所得金額等が大幅に異なる内容だった
- 事業の内容と照らして所得の額が不自然に少ない
こうした事実をきっかけにして税務調査が行われ、脱税が明らかになるケースが多いでしょう。
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(2)任意調査と強制調査
税務調査には、任意調査と強制調査があります。
任意調査は、一般に税務調査と呼ばれるものです。申告漏れや不正を見つけ、指導するのが目的の調査です。国税通則法・第74条の2において、国税局や税務署の職員が納税者への質問、帳簿書類の検査、提出の求めをすることを認めています。
強制調査は、国税通則法第131条1項、132条1項の規定にもとづく調査のことで、犯則調査や査察調査と呼ばれます。
租税職員は、犯則嫌疑者や参考人に対して質問や帳簿書類の検査などができます。また、裁判官が発布する令状により一定の場所に立ち入り、捜索・差し押さえをすることができます。国税局査察部(通称マルサ)による、刑事告発を目的として行われます。
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3、税務調査はどのように行われるのか
税務調査では、まずは雑談を交えながら申告内容や業務の種類など、概況の聴き取りが行われます。その後、所得の金額や売り上げの計上時期に不明な点はないか、経費の内訳は適正か、在庫の計上漏れはないかといった点について、帳簿や領収書、預金通帳などの資料をもとに調査されます。
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(1)任意調査のタイミングと注意点
任意調査は、通常は「○月○日に調査したいのですが、よろしいですか?」と事前に連絡が入ります。調査に必要な資料は、納税者の側で用意します。仮想隠蔽が想定されるケースや、現金決済が多い業態の場合、事前の連絡がないこともありますが、調査に入る際には納税者の同意を得てから開始されます。
いずれにしても、いきなり税務署の職員がやってきて、強制的に自宅に立ち入るようなことはありません。悪質な脱税のケースを除けば、誠実に対応し追徴分を含む税金を支払うことで、刑事事件に発展する可能性は低いと言えるでしょう。
ただし、正当に調査する職員の質問に答えない場合や、書類の提出を拒むと刑罰を受けるおそれがあります(国税通則法第128条2号、3号)。任意とはいえ、実質的に拒否することは困難なのが任意調査です。誠実な対応が望ましいでしょう。 -
(2)強制調査のタイミングと注意点
強制調査(犯則調査)は、納税者の同意が不要であり、ある日突然行われます。事前の情報収集は、納税者の知らない間に実施されています。内偵調査で疑いが濃厚になった段階でマルサが入り、強制調査で脱税が決定的になれば捜査機関に引き継がれます。そうなると、いよいよ逮捕・起訴のおそれが高まることになります。
もっとも、強制調査で脱税が認められても、必ず逮捕されるわけではありません。逮捕は、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に認められる手続きだからです。逮捕を回避するためには、証拠がそろっているのに否認したり、共犯者に連絡するなどして証拠隠滅を図ったりしないことです。
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4、脱税で逮捕されるか不安な場合は弁護士に相談
脱税の罪で逮捕されるおそれがある場合は、弁護士への相談をおすすめします。
脱税が罪となるのは、税金の支払いを不正に免れようとする意思(故意)が必要です。計算ミスや解釈間違い、申告するべきだと知らなかった場合などには、基本的に「申告漏れ」になり、追徴課税で済むケースが多いでしょう。不起訴処分となれば刑罰を受けることも、前科がつくこともありません。
弁護士は証拠を収集し、「故意ではなく過失である」「故意を証明する証拠がない」等の点を主張し、不起訴処分を目指します。
万が一起訴された場合は、弁護士は悪質性が低いこと、修正申告や納税を行っていて反省しているといった事実をもとに、刑の減軽や執行猶予つき判決を求めます。実刑判決を回避できれば、日常生活を送りながらやり直しを図ることができるでしょう。
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5、まとめ
脱税行為は、納めるべき税金額が多くなる、刑罰を受けて前科がつく、社会的信用を失うなど、何ひとつとしてメリットはありません。重い罰を受けないためにも、税金制度に関して理解を深め、正しく申告・納税することが大切です。
申告するべき所得があるのに確定申告をしなかったなど、脱税行為をしてしまい罪に問われるのか不安がある方は、弁護士への相談も検討してみましょう。ベリーベスト法律事務所でご相談をお受けしますので、まずはご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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