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違法アップロードで訴訟沙汰に! どのような刑事罰が与えられるのか
テレビドラマや映画、楽曲など、他人が権利をもつ著作物の無断アップロードは犯罪です。
テレビやネット上のCMでも盛んに広報されているので「犯罪になる」ということは広く知られているはずですが、YouTubeなどの動画投稿サイトをみると依然として違法にアップロードされた動画が数多く存在します。
多くのユーザーが違法アップロードを繰り返している状況から「どうせバレない」「バレても大した問題にはならない」と軽く考えている方も多いようです。このような状況から、日本民間放送連盟はCM動画を配信し、放送番組の違法アップロード撲滅に努めています。
このコラムでは、違法アップロードで権利者に刑事告訴されてしまったとき、どのような刑罰を受けてしまうのかについて解説します。
1、違法アップロードは著作権法違反
さまざまな場面で「無断アップロードは犯罪」という広報活動が展開されていますが、具体的にはどのような犯罪にあたるのでしょうか?
● 知的財産を守る「知的財産基本法」
映像作品や楽曲などをはじめとした著作物は、知的財産基本法第2条1項によって「知的財産」と定義されています。知的財産基本法は、各分野における知的財産権の保護が定められていますが、この法律には罰則が定められていません。
● 著作物の無断アップロードは「著作権法」に違反する
著作物の無断アップロードを罰するのは「著作権法」です。著作権法第119条1項は著作権侵害に関する罰則を定めています。
【著作権法第119条1項】
著作権、出版権または著作隣接権を侵害した者は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれらを併科する。
著作物の使用については、著作権法第30条1項において私的使用に限り複製が認められていますが、これを著作権者に無断でインターネット上に公開する行為はあきらかに私的利用の範囲を超えており著作権侵害となるでしょう。
テレビ番組や映画などの映像作品のほか、雑誌や漫画などの出版物、CDや有料配信されている音楽データなどはすべて著作物にあたります。有料提供されている映像作品や楽曲データなどが無断アップロードされて無料でダウンロードされてしまうと、著作権者が被る損害は計り知れません。
そこで著作権法は著作権侵害について、刑法などで規定されているさまざまな犯罪行為と比較しても非常に厳しい罰則を規定しているのです。
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2、違法アップロードで刑事告訴されることはあるのか
著作権法第123条1項は、第119条・第120条の2第3号および第4号・第121条の2・第122条の2第1項について、告訴がなければ公訴を提起できない「親告罪」であると定めています。つまり、著作権侵害にあたる違法アップロードは、著作権者が捜査機関に告訴しないと罪には問われません。
告訴といえば、被害者の強い処罰意思に基づく厳格な手続きですが、違法アップロードをして刑事告訴という手段に訴えられてしまう可能性はあるのでしょうか?
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(1)刑事告訴を受けるおそれが強い
警察庁生活安全局が公表している「著作権侵害事犯に対する検挙状況について」という資料をみると、著作権侵害事件の検挙件数は過去10年で大幅に増加しています。平成19年では137件でしたが、平成28年には1.7倍の238件を記録しました。平成28年の事件に注目すると、インターネット利用における事件が91.2%を占めており、違法アップロードには厳しい対応が待っているといえます。
このような状況をみれば、著作権者が刑事告訴に踏み切る可能性は非常に高いといえるでしょう。 -
(2)悪質な違反は「非親告罪」へと改正された
平成30年12月の著作権法改正によって、以下のような、一部の悪質な違反は「非親告罪」となりました。
- 著作権侵害が対価を得ることを目的としている
- 権利者の利益を害することを目的としている
- 権利者の利益が不当に害されることとなる
この改正によって、映像・楽曲などを無断でアップロードする行為や、いわゆる「海賊版」と呼ばれる出版物など、は著作権者の告訴がない場合でも公訴の提起が可能になりました。
また、非親告罪化されたことで、著作権者は告訴(加害者を罰するよう司法機関に求めること)ではなく、被害届(司法機関に犯罪事実があったと伝えること)による捜査の発動が可能となり、著作権侵害への刑事責任の追及に対するハードルが下がったと考えられるでしょう。
刑事責任の追及が容易になったことで、損害賠償などを含めた民事責任の追及も強まることが予想されます。
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3、著作権侵害にあたる行為を具体的に解説
著作権法は、著作権侵害に対して厳しい罰則を規定しています。では、どんな行為が著作権侵害になるのでしょうか? ここでは典型的な著作権侵害行為を解説します。
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(1)映像作品などを無断でアップロードする
テレビ番組の録画、隠し撮りした映画作品、他人が動画投稿サイトにアップロードした動画など、映像作品を権利者に断りなくアップロードする行為は、著作権侵害にあたります。
映像作品そのものを無断でアップロードするのはもちろんですが、部分的にカットするなどの編集を加える、テロップなどを追加して改変するといった方法をとっても著作権侵害は免れません。 -
(2)楽曲を無断で使用する
CDや有償ダウンロード配信による音楽・楽曲データを、自身が作成した動画のBGMなどに無断で使用する行為は著作権侵害にあたります。
また、自身のブログ記事などにおいて無断で歌詞を掲載すると著作権侵害にあたるので、厳に慎むべきでしょう。 -
(3)雑誌・漫画などをスキャンしてアップロードする
平成28年に開設された海賊版の漫画ビューアサイトによって出版業界が大打撃を受け、政府の要請によって接続が遮断されたうえで、運営者が刑事告訴された事件を覚えている方もいらっしゃるでしょう。
雑誌や漫画などの出版物をスキャナーでデータとして取り込み、無断でアップロードする行為もあきらかな著作権侵害です。出版物の全体ではなく、部分的に切り取った状態でアップロードしても著作権侵害は免れません。
なお、上記以外にも他人の著作物をコピーし頒布する、市販ゲームを改造するといった行為も、著作権法違反となります。
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4、著作権侵害の疑いで刑事告発された場合はどうする?
著作権侵害の一部が非親告罪化されたことで、違法アップロードに対する「告発」が盛んになることが予想されます。それでは、もし告発を受けた場合はどのように対応すべきなのでしょうか?
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(1)「告発」とは
「告発」とは、被害者ではない第三者が、捜査機関に犯罪が存在することを申告し処罰を求める手続きです(刑事訴訟法第239条)。著作権侵害事件では、著作物の権利者だけでなく、販売元などが処罰を求めてアクションを起こすケースもあるので、告発を受ける可能性は十分にあるでしょう。
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(2)告発・告訴を受けたら弁護士に相談を
著作権者ではない第三者から告発を受けてしまった場合は、直ちに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談してサポートを依頼すれば、著作物の権利者との間で示談交渉を進めることが可能です。権利者との和解が成立していれば、第三者が告発しても検察官が起訴に踏み切る可能性は大幅に軽減されます。
民事上の損害賠償などの訴訟トラブルに発展する可能性を少なくするためにも、示談による和解は重要です。
また、著作権法違反の容疑で逮捕されてしまった場合は、事件の全容解明に時間がかかるため、長期の身柄拘束を受けるおそれが高いでしょう。
著作権法に違反することを知りつつ故意にアップロードしたのか、収益目的であるのかなどが重要なポイントになるので、取り調べの段階から弁護士によるアドバイスを受けるのが得策です。
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5、まとめ
さまざまな場面で広報されているように、著作物の違法アップロードは犯罪です。厳しい刑事罰を科せられるおそれがあるので、もし著作権侵害を訴えられたら直ちに弁護士に相談しましょう。
著作権侵害トラブルで逮捕・刑罰や高額な賠償を求められる事態を回避したいなら、著作権侵害事件の解決実績を豊富にもつベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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