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収賄とは? 収賄にあたる行為の具体例、罪の種類と成立する要件を解説
公務員の職務においては、許可や公共事業の関係で一般企業と関わりをもつ機会があります。このとき、企業によっては、公務員に対して賄賂を贈ることで自社に便宜を取り計らってもらおうとする場合があります。
公務員が賄賂を受け取ることは、「収賄罪」という犯罪にあたります。検察統計調査によると、令和元年には54人が収賄罪で逮捕されました。全国で多くの公務員が賄賂を受け取っており、刑事事件にまで発展しているのです。
本コラムでは、収賄罪とはどのような罪なのか、収賄罪の種類や成立する要件などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説いたします。
1、収賄罪とは
まず、「収賄」にあたる行為の具体例や、収賄罪の時効について解説いたします。
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(1)収賄罪とは
「収賄」とは、公務員が賄賂(わいろ)を受け取る行為のことを指します。なお、公務員に賄賂を贈る行為のことは「贈賄」と呼ばれます。
「賄賂」とは、職務行為と対価関係にある利益のことを指します。金品を贈ったり受け取ったりすることは、公務員と民間企業や民間人との間だけでなく、民間企業同士の間でも発生することがありえます。しかし、刑法における収賄罪の規定は、「職務の公正とそれに対する国民の信頼」を守るために設けられております。そのため、刑法の収賄罪では、犯罪の主体は公務員に限定されているのです。 -
(2)収賄にあたる行為の具体例
前述のように、賄賂とは職務行為と対価関係にある利益のこととされており、有形無形を問わず、人の需要や欲望を満たす一切の利益が含まれるとされています。金銭や商品券などの金品だけでなく、飲食店やゴルフの接待や性的サービス、就職のあっせん、裏口入学なども賄賂となり得るのです。
収賄罪は、賄賂を受け取るだけでなく、賄賂を「要求」することによっても成立します。この場合、相手が要求に応じるかどうかに関わらず、賄賂を要求した時点で犯罪が成立するのです。
また、賄賂を受け取ると「約束」することも、収賄罪にあたります。要求することと同様に、実際に賄賂が贈られるかどうかに関わらず、受け取る約束した時点で収賄罪は成立します。 -
(3)収賄罪の時効
収賄罪の公訴時効は5年です。これに対し、贈賄罪の公訴時効は、3年となっています。つまり、賄賂を受け取る側の時効の方が、贈る側の時効よりも長いのです。このため、贈賄側のみ公訴時効が完成する、という場合もありえます。
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2、収賄罪の種類と成立する要件
収賄罪には、さまざまな類型があります。ここでは、収賄罪の種類や成立要件、罰則について解説いたします。
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(1)単純収賄罪
単純収賄罪(刑法197条1項前段)とは、公務員が、その職務に関して、賄賂を収受・要求・約束した場合に成立する犯罪です。収賄罪の基本型であり、法定刑は「5年以下の懲役」となっています。
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(2)受託収賄罪
受託収賄罪(刑法197条1項後段)は、単純収賄が「請託を受けて」行われた場合に成立します。「請託」とは、職務に関して依頼を受けて承諾することです。
「賄賂を贈る見返りに、このようなことをしてください」という具体的な要求があることにより、公務員の職務行為と賄賂との関係が明白になって、職務の公正と国民の信頼が害される危険が高まります。つまり、受託収賄罪は単純収賄罪よりも重たい犯罪なのです。そのため、法定刑は単純収賄罪よりも重たい「7年以下の懲役」となっています。 -
(3)事前収賄罪
事前収賄罪(刑法197条2項)とは、たとえば選挙に立候補していたり官公庁への就職が内定していたりするなどの「公務員になろうとする人」が、将来担当することになる職務に関して、請託を受けて、賄賂を収受・要求・約束した場合に成立する犯罪です。
ただし、選挙で落選するなどして、実際に公務員にならなかった場合には事前収賄罪は成立しません。
法定刑は「5年以下の懲役」となっています。 -
(4)第三者供賄罪
第三者供賄罪(刑法197条の2)とは、公務員自らが賄賂を受け取らなくても、請託を受けて第三者に賄賂を供与させる、または供与を要求・約束した場合に成立する犯罪です。法定刑は「5年以下の懲役」です。
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(5)加重収賄罪
加重収賄罪(刑法197条の3)は、公務員が、単純収賄、受託収賄、事前収賄、第三者供賄のいずれかの罪を犯した上で、不正行為を行う、または本来するべき行為を行わなかった場合に成立します(刑法197条の3第1項)。
また、不正行為を行った後に、賄賂の収受・要求・約束をした場合(第三者供与も含む)にも、加重収賄罪は成立します(刑法197条の3第2項)。
法定刑は、1年以上の有期懲役と、ほかの収賄罪に比べても特に重く設定されております。公務員によって不正行為が行われることは、職務の公正さと国民の信頼が著しく害するという点で、社会的影響が甚大であるためです。 -
(6)事後収賄罪
事後収賄罪(刑法197条の3第3項)は、「過去に公務員であった人」が、在職中に請託を受けて職務上不正行為を行った、または本来するべき行為をしなかったことに関して、賄賂の収受・要求・約束をした場合に成立します。法定刑は「5年以下の懲役」です。
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(7)あっせん収賄罪
あっせん収賄罪(刑法197条の4)は、公務員が請託を受けて、他の公務員に不正行為をさせたり、または本来するべきことをさせないようにあっせんしたりした場合に成立します。法定刑は「5年以下の懲役」です。
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3、まとめ
収賄罪にはいくつもの類型があり、成立要件はそれぞれ異なっています。収賄の対象となる行為の種類は幅広いため、本人が「この行為は収賄罪ではないだろう」と思っていても実際には収賄罪が成立している、という事例が多々あるのです。
収賄罪が発覚すると、懲戒免職を受けたり、辞職後であっても罪に問われたりする可能性があります。公務員の方で、業者から接待を受けてしまい収賄罪にあたらないか心配になっていたり、すでに収賄罪で警察から事情聴取を受けていたりする場合は、まずはベリーベスト法律事務所にまでご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士がお話をうかがい、適切な対応のためのアドバイスや法的サポートを提供いたします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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