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弁護士コラム

2021年07月29日
  • 財産事件
  • 占有離脱物横領

占有離脱物横領罪は他の横領罪や窃盗罪と何が違う? 逮捕後の流れや裁判例

占有離脱物横領罪は他の横領罪や窃盗罪と何が違う? 逮捕後の流れや裁判例
占有離脱物横領罪は他の横領罪や窃盗罪と何が違う? 逮捕後の流れや裁判例

誰の物か分からない物を勝手に自分の物として使ってしまうと、「占有離脱物横領罪」に問われるおそれがあります。たとえば放置されて所有者が分からない自転車を乗り回す行為や、路上に落ちていた財布を警察署に届け出ずに自分の懐に入れてしまう行為などが該当します。

占有離脱物横領罪は窃盗罪とよく似ており、ほかにも「横領」がつく犯罪が存在するため、どのようなケースで成立するのか判別が難しい犯罪です。

本コラムでは占有離脱物横領罪をテーマに、犯罪の成立要件や類似犯罪との違いを解説します。どんなケースで有罪になるのか、科される刑の重さはどれくらいかを確認するために、実際の裁判例も見ていきましょう。

1、占有離脱物横領罪とは

犯罪が成立する要件や刑罰の内容について解説します。

  1. (1)占有離脱物横領罪とは

    占有離脱物横領罪は、占有を離れた他人の物を横領する犯罪です(刑法第254条)。条文上は遺失物等横領罪といいますが、警察から検察庁へ送致される際には占有離脱物横領罪という罪名が用いられます。両者は同じものだと考えればよいでしょう。

    占有とは、対象物を事実上支配している状態をいいます。現実に保有している場合や自宅・車に置いてある場合だけでなく、公園のベンチなどに置き忘れて短時間が経過した場合でも占有が認められる可能性があります。

  2. (2)犯罪の成立要件

    占有離脱物横領罪は「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」を「横領すること」で成立します。

    遺失物とは、占有者の意思にもとづかずに占有を離れ、誰にも占有されていない物をいいます。いわゆる落とし物です。
    遺失物を拾った人は、速やかに遺失者に返還するか、警察署に届け出なければなりません(遺失物法第4条)。これを怠り自分の物として扱うと同罪が成立します。

    漂流物とは湖に浮いている物や川に流れ着いた物などのことです。
    その他占有を離れた他人の物とは、遺失物・漂流物以外の占有離脱物をいい、誤配達された荷物や店員が誤って多く渡してしまったおつりなどが該当します。

    横領とは、不法領得(ふほうりょうとく)の意思にもとづき、他人の物を自分の物にすることをいいます。
    不法領得の意思とは、権利者を排除して、その経済的用法に従い利用・処分する意思をいい、要するに自分の物として自由に扱おうとする意思のことです。たとえば遺失物を警察署に届けようと思って少しの時間保有していた場合は、不法領得の意思がないので横領にはあたりません

  3. (3)刑罰の内容

    刑罰は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」です。なお、科料とは1000円以上1万円未満の金銭を徴収する刑をいいます。

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2、他の横領罪との違い

刑法第38章が定める「横領の罪」は、以下の3種類があります。

  • 単純横領罪
  • 業務上横領罪
  • 遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)


つまり占有離脱物横領罪は横領罪のひとつです。占有離脱物横領罪とほかの横領罪との違いを見ていきましょう。

  1. (1)単純横領罪との違い

    単純横領罪は、自己の占有する他人の物を横領する犯罪です(刑法第252条)。たとえば友人から預かっていた高級時計を勝手に売りに出す行為などが該当します。

    両罪の違いは、単純横領罪が「自己の占有する」他人の物を横領するのに対し、占有離脱物横領罪は「占有を離れた」他人の物を横領する点です。
    また単純横領罪が成立するためには委託者と本人との間に委託信任関係が存在することが前提ですが、占有離脱物横領罪にはもともと委託信任関係は存在しません。

    単純横領罪は、委託信任関係を裏切って委託された物を領得するため、占有離脱物横領罪よりも重大な罪だといえるでしょう

    したがって刑罰は「5年以下の懲役」と重く定められています。懲役刑しか規定がないため、有罪になれば執行猶予がつかない限り刑務所へ収監されます。

  2. (2)業務上横領罪との違い

    業務上横領罪とは、業務上、自己の占有する他人の物を横領する犯罪です(刑法第253条)。

    業務とは、委託を受けて金銭その他の財物を占有・保管することを内容とする事務をいいます。たとえば営業職の社員が顧客から集金した売上金を私的に流用する、法定後見人が被後見人の財産を自分のために消費するなどの行為です。

    業務上横領罪も、「自己の占有する」他人の物を横領する点、相手方との委託信任関係が存在する点で、占有離脱物横領罪とは異なります。
    また業務上横領罪は業務上の委託信任関係を裏切る行為であることから、単純横領罪よりもさらに重大だといえます。そのため刑罰も「10年以下の懲役」と、単純横領罪以上に重く定められています。

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3、窃盗罪との違い

窃盗罪は、他人の財物を窃取する犯罪です(刑法第235条)。万引きやひったくり、乗り物盗などが典型でしょう。占有離脱物横領罪も窃盗罪も、他人の物を自分の物にしてしまう犯罪であることは共通しています。

両罪の違いは、窃盗罪が他人の占有下にある物を自分の物とするのに対し、占有離脱物横領罪は誰の占有下にもない物を自分の物にしてしまう点です。財物に対する他人の占有を排除して強制的に自分の占有下に移動させるという意味で、窃盗罪のほうがより悪質だといえるでしょう。したがって窃盗罪の刑罰は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と、占有離脱物横領罪よりも重く定められています

もっとも、実際の事件でどちらの罪が適用されるのかは判断が難しく、裁判で争われるケースもあります。たとえば路上に置いてある自転車を自分の物として乗って帰ってしまった場合、自転車の所有者が一時的に置いておいただけだと判断されれば窃盗罪、所有者が不明で長期間放置されていれば占有離脱物横領罪とみなされる可能性があります。

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4、占有離脱物横領罪の裁判例

占有離脱物横領罪に関する裁判例を3つ紹介します。

  1. (1)執行猶予期間中の再犯で再度の執行猶予が付された事例

    【千葉地方裁判所 平成25年3月6日判決】
    1年半の間に計4回にわたり、路上に放置されていた盗難自転車を持ち去って自分の物にした事件です。被告人は犯行の前年、本件と同様の行為により占有離脱物横領罪で懲役10か月・執行猶予5年の判決を受けており、執行猶予期間中の再犯でした。

    本件の判決は「懲役10か月・保護観察付き執行猶予4年」です
    裁判官は、執行猶予期間中に4件の犯行におよんでいること、同種前歴が多数あることから常習性が根深く、動機も短絡的だと言わざるを得ないと指摘しました。
    一方で、被害額が比較的低いこと、被告人の認知判断能力が標準よりも低いと診断されていること、支援センターの相談員が行政の支援が可能である旨を述べていることなどから、再度の執行猶予が付されました。

  2. (2)普通乗用車を横領したうえで人身事故を起こして実刑となった事例

    【神戸地方裁判所 平成14年5月10日判決】
    シンナーを吸引しながら、置き去りにされた普通乗用車を無免許運転し、警察から逃走する目的で無謀な運転をしたことにより、ほかの車両の運転者などに加療約1週間を要する傷害を負わせた事件です。

    判決は「懲役1年10か月」の実刑です
    裁判官は、シンナーへの依存性が顕著で無免許運転の常習性も著しく、占有離脱物横領罪の被害者や事故の被害者らに損害賠償の措置もとられていないことなどから、被告人の刑事責任は重いと指摘しています。被害者の傷害の程度が軽いことや父親が監督指導を約束していることなど、被告人のために酌むべき事情を考慮しても実刑は免れないとしました。

  3. (3)盗難自転車の横領と非現住建造物の放火で実刑となった事例

    【広島地方裁判所 平成15年1月7日判決】
    歩道に放置されていた盗難自転車を横領した占有離脱物横領事件と、車上荒らしの目的でビルの車庫に侵入したうえで放火した建造物侵入、非現住建造物等放火事件です。

    被告人は平成14年3月、歩道に放置されていた盗難自転車を乗り去って横領しました。また同年6月には、駐車中の自動車から金品を窃取するためにビルの車庫に侵入したが、めぼしい金品を発見できなかったため、その腹いせやストレス発散、罪証を隠滅する目的で放火を行い、3日後には別のビルで同様の事件を起こしています。

    判決は「懲役4年」の実刑です
    裁判官は、占有離脱物横領事件について、窃盗目的の住居侵入や自動車窃盗などの前科があることから、この種の犯行に常習性が認められ、悪質な犯行であるとしました。
    また建造物侵入、非現住建造物等放火事件については、ビル上階の住人らの生命に重大な危険を生じさせたこと、被害回復や慰謝の措置を何も講じていないことなどから、刑事責任は重大であるとし、実刑判決を言い渡しました。

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5、占有離脱物横領罪で逮捕されるのはどのような場合?

占有離脱物横領罪で逮捕される場合や逮捕されない場合、逮捕された後の流れを確認しましょう。

  1. (1)現行犯逮捕される場合

    現行犯逮捕とは、犯行の最中や直後に、逮捕状によらず逮捕することをいいます。現行犯逮捕は警察官だけでなく、目撃者や被害者などの私人にも可能です。
    占有離脱物横領事件で現行犯逮捕されるのは、たとえば落とし物を探しに現場に戻った被害者や事件の目撃者などから追及を受け、警察に通報されるケースが考えられます

  2. (2)通常逮捕される場合

    通常逮捕とは逮捕状にもとづく原則的な逮捕のことです。逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどの要件を満たした場合に適用されます。

    占有離脱物横領事件で通常逮捕されるケースとしては、被害者から被害届が提出され、捜査を経て逮捕に至る場合が考えられます。路上に設置された防犯カメラの映像や目撃者の情報などから犯人として特定され、逮捕されるでしょう

    また放置自転車を横領した場合、自転車に乗っているところを巡回中の警察官から呼び止められ、防犯登録番号などから他人の自転車であると判明したため、取り調べを受けて通常逮捕に至るケースもあり得ます。

  3. (3)逮捕されない場合

    犯人として特定されても、逃亡・証拠隠滅などの逮捕要件を満たさなければ逮捕されません。逮捕されなかった場合は在宅事件として扱われます。日常生活を送りながら捜査機関から出頭要請があれば応じて取り調べを受けることになります。

    なお、逮捕される身柄事件と逮捕されない在宅事件は、捜査に際して身柄拘束をともなうかどうかの違いがあるに過ぎません。在宅事件でも起訴されるケースがあることは知っておきましょう。

  4. (4)微罪処分になる場合

    警察が認知した事件は原則として検察庁へ送致されますが、ごく軽微な事案では例外的に送致されず警察限りの処分となる場合があります。これを微罪処分といいます。微罪処分になると厳重注意で済み、起訴されたり刑を科されたりすることはありません。

    ただし微罪処分にするかどうかは各地方検察庁の指示のもと警察が決定するため、占有離脱物横領罪だからといって確実に微罪処分となるわけではありません。

  5. (5)逮捕された後の流れ

    逮捕された場合は、警察から取り調べを受けたうえで48時間以内に検察庁へと送致されます。送致を受けた検察官はさらに取り調べを行い、24時間以内に被疑者を起訴・不起訴にするかどうか、それとも、勾留請求をして捜査を継続するかどうかを判断します
    検察官が引き続き身柄を拘束して捜査する必要があると判断すると、裁判官に勾留を請求し、勾留が認められると被疑者は最長で20日間の身柄拘束を受けます。
    そして、勾留が満期を迎えるまでに、検察官が再び起訴・不起訴を判断します。

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6、占有離脱物横領罪に対する弁護活動

占有離脱物横領罪は「ちょっとした出来心」で犯しやすい罪ですが、悪質な場合は逮捕・勾留され、有罪になるおそれもあります。占有離脱物横領罪の疑いをかけられたら弁護士のサポートが必要です

  1. (1)逮捕・勾留を阻止する

    逮捕・勾留されてしまうと最長で23日間もの身柄拘束を受けるおそれがあり、会社や学校、家庭など日常生活へ大きな影響を与えてしまいます。これを回避するため、弁護士は検察官や裁判官に対し、客観的事実をもとに逃亡や証拠隠滅のおそれがない旨を主張するなど、逮捕・勾留を阻止するよう活動します

  2. (2)不起訴処分を目指す

    仮に少額の罰金や科料の刑で済まされたとしても、有罪になれば前科がついてしまいます。前科がつくと一定の職業に就けないなどの不利益が生じるため、これは避ける必要があります。
    日本の司法制度では起訴された後の有罪率が99%以上と極めて高いため、起訴されないこと、つまり不起訴処分となることが重要です。

    具体的には、被害者に被害品を返還して丁寧に謝罪をすること、反省の態度を示して捜査に協力することなどが有効です。弁護士が状況に応じて有効な方策を検討し、全面的にサポートします。

  3. (3)示談交渉を行う

    被害者との示談が成立すれば不起訴処分や刑の減軽につながる可能性が高まります。被害者が警察に通報する前の早い段階であれば、示談によって通報を回避でき、事件化されない可能性もあります。

    たとえば放置自転車を横領したケースでは、防犯登録番号などから自転車の本来の所有者(被害者)が判明することがあるでしょう。この場合は、被害者に真摯(しんし)に謝罪のうえ、自転車の費用相当額や慰謝料を支払うことで示談が成立する可能性があります。

    ただし、横領した本人が示談を求めても信用されないと予想されるため、弁護士が代理で示談交渉を進めることが大切です

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7、まとめ

誰の占有下にもない他人の物を横領すると占有離脱物横領罪に問われるおそれがあります。また、事案によっては窃盗罪が成立し、より重い罪が適用される場合も考えられます。占有離脱物横領罪の刑罰はほかの刑法犯と比べれば軽いものですが、有罪になれば前科がついてしまい、不利益が生じるおそれがあります。
もしも占有離脱物を横領してしまい不安に感じているのなら、弁護士へ相談するのが賢明です。おひとりで悩まず、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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