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弁護士コラム

2023年08月07日
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特殊詐欺のリクルーターとは? 逮捕されたら罪はどうなる?

特殊詐欺のリクルーターとは? 逮捕されたら罪はどうなる?
特殊詐欺のリクルーターとは? 逮捕されたら罪はどうなる?

令和5年6月、上司の息子になりすまして80代の女性から現金100万円をだまし取った疑いで20代の男が逮捕されました。この事件では、すでに上司の息子役だった10代の男が受け子として逮捕されていますが、警察が共犯者などの捜査を進めていったところ、逮捕された20代の男が事件に関与していた疑いが強くなったとのことです。警察によると、逮捕された男は特殊詐欺の「リクルーター」とみられています。

特殊詐欺は組織的におこなわれる犯罪で、組織のなかにはさまざまな役割分担があります。リクルーターもそのひとつです。

本コラムでは、特殊詐欺における「リクルーター」とはどのような役割なのか、どのような罪に問われるのかを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、特殊詐欺の「リクルーター」とは? どのような役割なのか?

まずは、特殊詐欺における「リクルーター」とはどのような役割なのかを確認していきましょう。

  1. (1)「リクルーター」の意味

    リクルーターとは、本来、仕事を探している求職者や新卒の学生とコミュニケーションを取って就職活動を成功につなげる支援をおこなう人を指す用語です。
    狭い意味では企業における採用担当者のことを指しますが、現在は多くの企業が現場の社員などを採用活動に巻き込むことでより自社にマッチしている人材を探す制度を取っており、このような取り組みを広くリクルーター制度とも呼んでいます。

  2. (2)特殊詐欺における「リクルーター」とは

    特殊詐欺は組織的におこなわれるため、犯行に加担してくれる人材を探さなくてはなりません。
    そこで登場するのが「リクルーター」です。

    特殊詐欺におけるリクルーターとは、特殊詐欺とは無関係だった人を詐欺グループに引き込む役割を担っています。本来のリクルーターとはかけ離れた用法ですが「人材集め」という点で似た意味をもつのでこのような使われ方をしているようです。

    特殊詐欺のリクルーターは、友人・知人、学生時代の同期生や先輩・後輩など自らの人脈を使って人材を集めることもあるようですが、現在はTwitterなどのSNSを使って「短時間で高収入」などと呼びかける手口が主流となっています。

  3. (3)リクルーターは特殊詐欺グループの上位に位置する

    特殊詐欺グループにはさまざまな役割があります。

    グループを作り、特殊詐欺の実行を首謀するのが「首魁(しゅかい)」で、主に暴力団員などの反社会勢力の者が頂点に立っているケースがみられます。
    とはいえ、特殊詐欺グループと首魁との関係は秘密になっている部分が多く、グループを摘発しても首魁にたどり着くケースはめずらしいというのが現状です。

    実際に犯行を指揮する人物は「指示役」で、犯行のシナリオや所有者にたどり着かない電話番号や振込先の口座などを「道具屋」と呼ばれるヤミ業者から調達します。

    指示役に近いところで、うその内容の電話を被害者にかけてだますのが「かけ子」です。
    うそにだまされた被害者のもとに赴いて、現金やキャッシュカードなどを直接受け取るのが「受け子」で、だまし取ったキャッシュカードを使ってATMから現金を引き出す役割が「出し子」と呼ばれます。

    リクルーターは、組織のなかではかけ子と同じ、あるいはその下のポジションで、受け子や出し子を募ったり、実際の犯行では指示役と受け子・出し子との間に立って連絡役を務めたりもします。
    グループのなかでは指示役に近い上位の役割で、組織の全容を知る可能性が高い存在であるため、厳しい目が向けられやすいといえるでしょう

2、リクルーターが問われる罪とは? 人を紹介しただけでも犯罪になる?

特殊詐欺におけるリクルーターの役割を端的にいえば「人を集める」ことです。
では、人を集めて紹介しただけで実際の犯行には加担していない存在であるリクルーターは、どのような罪になるのでしょうか?

  1. (1)詐欺罪

    詐欺罪は刑法第246条に定められている犯罪で「人を欺いて財物を交付させた者」を処罰の対象とします。
    息子などを装って「不倫相手を妊娠させてしまい手術費用と慰謝料が必要」などとお金をだまし取る「オレオレ詐欺」や、「過去に使用した有料サイトの未払い料金がある」などとだましてお金を振り込ませる「架空請求詐欺」などが代表的な手口です。

    詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です
    罰金の規定はないので、有罪判決を受けると必ず懲役が言い渡されるという点に注目すると、厳しい刑罰が設けられている重罪だといえます。

  2. (2)窃盗罪

    特殊詐欺の手口のなかには、刑法第235条の窃盗罪が適用されるものもあります。
    窃盗罪は「他人の財物を窃取した者」、つまり人の物を盗んだ者を罰する犯罪ですが、特殊詐欺のうち「キャッシュカード詐欺盗」と呼ばれる手口では、詐欺罪ではなく、窃盗罪が適用されます。

    まず、警察や銀行職員などを装ったかけ子が被害者に電話をかけて「あなたのキャッシュカードが不正に利用されています」などとうそをつきます。
    次に、警察官や銀行職員を装った受け子が被害者宅を訪ねて「手続きをするので、封筒に暗証番号を書いた紙とキャッシュカードを入れてください」などと申し向けます。
    言うとおりにすると「割り印をするので印鑑をもってきて」などと言われてその場を離れることになりますが、そのすきに、あらかじめ用意していたニセのカードが入った封筒とすり替えられてしまうのです。
    すぐに中身を確認すればすり替えられたことは見抜けますが「連絡をするまで封を開けてはいけません」などと念押しされるので、被害が発覚するまでに時間がかかってしまうようです。

    この手口は、被害者のすきをついてキャッシュカードを手にしていることから「うそをついてだます」という行為があるものの、自ら財物を差し出させたわけではないので、詐欺罪ではなく窃盗罪が適用されます。

    後は、出し子がATMからお金を引き出す行為も、権利者である銀行の意思に反した形で現金の占有を移転させることで窃盗罪が成立します。

    窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です

  3. (3)自分がだましたり盗んだりしていないのに罪に問われるのか?

    特殊詐欺は刑法の詐欺罪や窃盗罪に問われる犯罪です。
    実際に犯罪の実行を指示したり、かけ子として被害者をだましたり、受け子として被害者からお金やキャッシュカードを受け取ったりしていれば、これらの罪を免れることはできないでしょう。

    すると、実際の犯行に関与していないリクルーターは、特に罪にはならないように思えるかもしれませんが、リクルーターは特殊詐欺事件の「共犯」になると考えられています。
    自分自身が犯罪を実行したわけではなくても、特殊詐欺の実行に欠かせない人集めという部分で加担しているので、実行犯らと同じく罪を問われるのです

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3、リクルーターの罪の重さは共犯の中身によって変わる

リクルーターとして特殊詐欺に加担してしまったのであれば、罪を免れるのは難しいでしょう。
しかし「特殊詐欺に加担するとは思ってもいなかった」「うすうすあやしいとは感じていたが『人を紹介して』と言われて断れなかったので紹介しただけ」といったかたちで巻き込まれたケースもあるかもしれません。
実は、リクルーターの罪の重さは「共犯」の中身によって変わります。

  1. (1)積極的に特殊詐欺に加担していれば「共同正犯」

    特殊詐欺の受け子や出し子を集めてグループに紹介するというリクルーターとしての関与をしていた場合、通常は組織的な犯行において重要な役割を担ったとして、刑法第60条の「共同正犯」になります。
    共同正犯とは、複数人が共同して犯罪を実行することを意味し、その役割にかかわらず全員が正犯、つまり「犯人」として扱われるため、実行犯を含めて全員が同じ罪として責任を問われます

    リクルーターとして人を集めて紹介しただけでなく、実際の犯行でも指示役と受け子・出し子との間に立って連絡役を担っていたなど、特殊詐欺の犯行に深く関与していた場合は、その関与の度合いが犯情として重く評価され、実行犯より厳しく処罰されることもあり得ます。

  2. (2)特殊詐欺への関与が薄ければ「幇助」

    特殊詐欺に関与しているという認識はあったものの、単に「人を紹介しただけ」で報酬の受け取りやその後の具体的な計画を把握していないなど実際の犯行への関与が薄い場合は、刑法第62条1項の「幇助(ほうじょ)」にあたる可能性が出てきます。

    幇助とは、正犯の犯罪行為を容易にすることを意味します
    受け子や出し子の調達は特殊詐欺の犯行を容易にする行為なので、詐欺幇助や窃盗幇助として罰せられることになるというわけです

    幇助は、正犯に対して「従犯」という立場になり、刑法第63条によって「正犯の刑を減軽する」と定められています。減軽とは、刑事裁判において言い渡される判決を決める際に、犯罪ごとの法定刑を減じて判断する制度です。

    詐欺罪・窃盗罪はいずれも有期の懲役が科せられる犯罪なので、法定刑の上限・加減がそれぞれ2分の1に減じられます。懲役の上限が「10年以下」から「5年以下」に減じられたうえで量刑が決まるので、正犯・共同正犯よりも刑罰が軽くなる可能性が高まるでしょう。

  3. (3)特殊詐欺であるとまったく知らなかった場合は無罪

    共同正犯には「自分の犯罪として実行する意思がある」こと、幇助には「他人の犯罪行為を容易にする意思がある」ことという要件があります。
    すると、単に「人を紹介してほしい」と頼まれただけで、特殊詐欺の受け子・出し子として紹介した認識がまったくなかったといったケースでは、共同正犯も幇助も成立しないので処罰されません。つまり、「無罪になる」というのが刑法の考え方です。

    ただし、リクルーターとして被疑をかけられた人が「特殊詐欺に関わるとはまったく知らなかった」と主張しても、警察・検察官・裁判官は簡単には信用してくれません。本当はおかしいと思いながら、構わず行為してしまった場合は、未必の故意として犯罪自体は成立してしまいますので、まったく疑いを抱かなかった根拠の証明を、実際には求められます

    特殊詐欺の指示役と密に連絡を取り合っていたり、実際に犯行がおこなわれていた最中に指示役や受け子・出し子と連絡を取り合っていたり、特殊詐欺グループから多額の報酬を得ていたりすれば「知らなかったはずがない」と評価されてしまうおそれが強いでしょう。

4、特殊詐欺のリクルーターとして被疑をかけられたら弁護士に相談を

特殊詐欺のリクルーターとして被疑をかけられてしまえば、逮捕・勾留による身柄拘束を受けたり、刑事裁判で厳しい刑罰を科せられたりする可能性があります。
心あたりがあるなら、大きな不利益を被ってしまう前に弁護士への相談を急いでください。

  1. (1)どのような罪にあたるのかの正確な判断が可能

    弁護士に相談すれば、自分の行為がどのような罪に問われるのかを知ることができます。
    まずは、リクルーターとして自分が処罰の対象となるのかどうかを判断するためにも、刑法をはじめとした法令の知識を豊富にもつ弁護士に相談すべきです。

  2. (2)逮捕や長期の身柄拘束を回避するための弁護活動が期待できる

    警察に逮捕されると、その後の勾留とあわせて最大23日間にわたる身柄拘束を受けます。
    さらに、検察官が起訴に踏み切れば刑事裁判が終了するまで勾留が解かれないおそれもあるので、会社からの解雇、学校からの退学、家族関係の悪化など、さまざまな不利益が生じてしまうでしょう。

    早い段階で弁護士に相談すれば、弁護士を通じて警察に情報提供をおこない、紹介した人が特殊詐欺を実行する前に犯行を阻止できる可能性が高まります。

    紹介した人がすでに特殊詐欺を実行しており、警察が被害を認知していれば、警察に自ら「自首」をしても特殊詐欺グループのメンバーが接触してくるおそれがあるので、逮捕を避けるのは難しいかもしれません。
    ただし、弁護士が客観的な証拠を示して積極的に特殊詐欺に関わっていたわけではないことが証明されれば、勾留期間が短くなったり、起訴後の保釈が認められやすくなったりする可能性もあります

  3. (3)処分の軽減や無罪の主張などのサポートが期待できる

    特殊詐欺のリクルーターは、たとえ自分自身が被害者をだましたり、お金やキャッシュカードを受け取ったりしたわけではなくても、共犯として詐欺罪・窃盗罪に問われます。

    ただし、積極的に特殊詐欺に加担したわけではない、特殊詐欺グループのなかでも上位ではなく組織の中枢からも遠い存在だったといったケースでは、共同正犯として実行犯と同じ扱いを受けるのではなく、従犯である幇助と認められるかもしれません。
    共同正犯ではなく幇助と認められれば刑が減軽されるので、結果として処分が軽くなる可能性が高まります。

    また、特殊詐欺に関与するとはまったく知らず、単に「人を紹介してほしい」と求められて友人や知人などを紹介しただけの場合は、故意がないので法的に判断すれば無罪です。
    とはいえ「知らなかった」「深い関係ではない」と主張するだけでは、減軽や無罪を望むのは難しいでしょう。被疑をかけられている本人にとって有利な証拠を集めて裁判官に示す必要があるので、刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士のサポートは必須です。

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5、まとめ

特殊詐欺の受け子や出し子を募ってグループに引き込むのが「リクルーター」です。
単なる人集めではなく、特殊詐欺を実行する指示役と受け子・出し子の間に立って橋渡しをすることも多いので、被害者をだましたり、直接お金やキャッシュカードをだまし取ったりしていなくても犯人として厳しく処罰されてしまいます。

とはいえ、単に人を紹介しただけで積極的に特殊詐欺の犯行には関与していなかったり、本当に特殊詐欺とは知らずに友人・知人などを紹介してしまったりするケースもあるはずです。
逮捕や厳しい刑罰を避けたいと考えるなら、刑事事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士のサポートが欠かせません。

特殊詐欺のリクルーターとして被疑をかけられてしまったときは、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。経験豊富な弁護士が、逮捕・勾留による身柄拘束や厳しい刑罰の回避に向けて全力でサポートします。

本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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