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- 窃盗罪
- 執行猶予がつかない場合
窃盗罪で逮捕されたらどうなる? 執行猶予がつかない場合とは?
刑法によって定められている犯罪のうち、もっとも多く認知・検挙されているのが「窃盗罪」です。令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に全国で38万1769件の窃盗事件が認知され、うち16万1016件が検挙されました。これは、全刑法犯における認知件数の約68%、検挙件数の約60%を占める数字です。
では、窃盗事件を起こしてしまい、警察に逮捕されるとその後はどうなるのでしょうか? 刑事裁判に発展した場合、執行猶予がつく可能性はあるのか、どのようなケースでは執行猶予がつかないのかも気がかりになるはずです。
本コラムでは「窃盗罪」で逮捕された場合の流れや執行猶予がつかず厳しい処分を受けるケースなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、窃盗罪とは? 成立する要件や刑罰
窃盗罪は刑法第235条に定められている犯罪です。
ここでは、窃盗罪が成立する要件や法律が定めている刑罰の重さを確認していきます。
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(1)窃盗罪が成立する要件
刑法第235条によると、窃盗罪は「他人の財物を窃取した者」を罰すると定められています。
「財物」とは、お金や財布・バッグ・商品などの金銭的な価値がある物を指し、データなどの実体をもたない物は含まないと考えるのが原則です。
「窃取」とは、他人の占有下にある財物を、意思に反して自分の占有下に移転させる行為です。他人の物を盗むような典型的な行為だけでなく、たとえば他人のふりをしてATMから現金を引き出す行為なども窃取になります。 -
(2)窃盗罪における手口の種類
窃盗罪は、対象となった財物の種類、盗んだ方法や場所などによってさまざまな「手口」で分類されている犯罪です。
たとえば、スーパーやコンビニなどの小売店で陳列されている商品を盗んだ場合の手口は「万引き」と呼ばれます。
駐車中の車の中から財布などを盗んだ場合は「車上ねらい」、他人が置いたまま忘れたバッグなどを盗めば「置き引き」です。
これらは、不法な侵入を伴わないため大きなくくりで「非侵入盗」と呼ばれます。
一方で、住人が不在にしているすきに家屋内に侵入して金品などを盗む「空き巣」や、閉店後の店舗に侵入して売上金や管理金などを盗む「出店あらし」などを大きくくくるのが「侵入盗」です。
一般的に非侵入盗よりも侵入盗のほうが悪質だと評価されており、厳しい処分を受けやすくなります。
なお、手口による分類は警察が統計や分析に用いるためのものであり、適用される罪名はすべて窃盗罪です。 -
(3)窃盗罪の法定刑
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
この点は、どの手口にあたる場合も同じなので、万引きでも空き巣でも、同じ法定刑の範囲で刑罰が下されます。
軽微な犯罪だというイメージがあるかもしれませんが、最高で10年にわたって刑務所に収監されてしまうおそれもあります。
2、窃盗罪で逮捕される可能性は? 逮捕されるとどうなる?
罪を犯して警察に発覚すると「逮捕される」というイメージがあるかもしれませんが、実は罪を犯しても必ず逮捕されるわけではありません。
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(1)警察における窃盗事件の処理方法
警察における窃盗事件の処理方法は、大きく2つに分かれます。
逮捕を伴う「身柄事件(強制事件)」と、逮捕を伴わず任意の身柄として捜査を進める「在宅事件(任意事件)」の2つです。
ただし、これらの区別は捜査の進め方が違うだけで、どちらが、罪が重い・軽いといった区別はありません。
また、窃盗事件では、犯情が軽微で被害もわずかである場合に限り「微罪処分」を受けるケースもみられます。
微罪処分によって処理された場合は警察限りで捜査が終了するので、刑罰を科せられません。
以前にも同じような事件を起こした経歴があったり、相応の被害が発生していたりといったケースでは適用されず、身柄事件・在宅事件のいずれかによって処理されます。 -
(2)窃盗事件で逮捕される割合
令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に全国の検察庁で処理された窃盗事件の総数は7万6587件でした。
うち、在宅事件として処理されたのは5万1649件、警察で逮捕されてすぐに釈放された者を除き身柄事件として処理されたのは2万3208件で、身柄事件の割合は30.3%となります。
つまり、窃盗事件を起こして逮捕される割合は約30%です。
窃盗事件を起こしても、逮捕される人のほうが少ないという実情があります。 -
(3)逮捕された場合の刑事事件の流れ
窃盗事件の被疑者として警察に逮捕されると、警察の段階で最大48時間、検察官に送致された段階で最大24時間、合計で最大72時間の身柄拘束を受けます。
ここで検察官が「勾留」を請求し、裁判官がこれを認めた場合は、さらに10~20日間にわたる身柄拘束が続くので、逮捕・勾留による身柄拘束の合計は最大で23日間です。
勾留が満期を迎える日までに検察官が起訴・不起訴を判断し、起訴されると拘置所に移送されてさらに被告人としての勾留を受けます。被告人としての勾留は原則として刑事裁判が終了するまで解除されないので、起訴されると社会から長期にわたって隔離された状態が続きます。
刑事裁判では、法律が定める手順に従って手続きが進み、最終回となる日に判決が言い渡されます。
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3、窃盗罪に執行猶予がつく可能性はあるのか?
窃盗罪にあたる行為をはたらいた事実があるなら、刑事裁判で簡単に無罪を期待することはできません。ただし、有罪なら必ず刑務所に収監されるのかといえば、それは間違いです。
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(1)執行猶予とは?
日本における刑罰には「執行猶予」という制度が存在します。
執行猶予とは、懲役・禁錮・罰金について、その刑を直ちに執行せず、1年以上5年以下の期間に限って執行を猶予する制度です。制度上は罰金も執行猶予の対象ですが、罰金に執行猶予が付されるケースはごくまれなので、実質は懲役・禁錮に限って適用されると考えておけばよいでしょう。
判決に執行猶予が付されると刑の執行が猶予されるので、懲役・禁錮の言い渡しを受けても刑務所には収監されずに、社会生活を送りながら更生を目指すことが許されます。新たに罪を犯さずに執行猶予の期間を満了すれば刑の言い渡しの効力が消滅するので、その後も同じ事件を理由として刑務所に収監されることはありません。 -
(2)執行猶予の条件と窃盗罪の関係|執行猶予がつかないケース
執行猶予が適用されるのは、言い渡される刑罰が3年以下の懲役・禁錮、または50万円以下の罰金にあたる事件に限られます。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金であり、懲役では最短で1か月から最長で10年、罰金なら1万円から50万円の範囲内で刑が言い渡されるので、懲役の言い渡しが3年以下に収まる場合は執行猶予の対象です。
一方で、3年を超える懲役が言い渡された場合は執行猶予の対象外なので実刑判決となり、刑務所へと収監されることになります。
また、過去にも刑事裁判で懲役・禁錮の言い渡しを受けて刑務所に収監され刑期を終えた日から5年が経過していない、または執行猶予の期間が満了した日から5年が経過していなければ、執行猶予はつきません。
さらに、これらの条件に該当しない場合でも、執行猶予を付すかどうかは裁判官の判断にゆだねられているので、被害額が大きい、反省がみられないなどの理由で刑務所における改善更生の教育が必要だと判断されれば、執行猶予がつかず実刑判決を受けることになります。 -
(3)窃盗事件で執行猶予が得られる割合
令和2年分の司法統計によると、全国の地方裁判所で開かれた窃盗事件の通常第一審において有罪判決が下されて懲役の言い渡しを受けたのは1万547人でした。
うち、刑の全部執行猶予を受けたのが5081人、一部執行猶予を受けたのが22人だったので、執行猶予を受けた人数の合計は5103人です。
執行猶予を得た人員の割合は約48.3%で、およそ半数の被告人に執行猶予が付された計算になります。
詳しく解説窃盗・万引きで逮捕・起訴・前科をつけたくない
4、窃盗罪を犯して執行猶予を得るためにするべきこと
実際に窃盗罪で刑事裁判に発展したケースをみても、およそ半数の被告人が執行猶予を得ていますが、何の対策も講じずに半々の確率で執行猶予が得られるわけではありません。
執行猶予を得るためには、弁護士のサポートが必須です。
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(1)被害者との示談交渉が執行猶予の可能性を高める
窃盗罪は、犯罪を分類するうえで、金品などの財産を対象とした「財産犯」に属します。
財産犯にあたる犯罪は、財産被害を回復すれば実質的な損害はなかったことになるのが特徴です。
もちろん、損害を回復すればすでに犯した罪が帳消しになるわけではありませんが、真摯(しんし)に謝罪し、賠償を尽くしたという事実は被告人にとって有利な事情となるのは間違いありません。
自らの罪を認めて謝罪と賠償を尽くす機会として、積極的に被害者との示談交渉を進めるべきです。
とはいえ、被害者との示談交渉を進めるのは簡単ではありません。
窃盗事件の被害者のなかには「刑罰によって罪を償うべきだ」と考えて示談交渉を受け入れない者も少なくないので、公平な第三者である弁護士に対応をまかせたほうが安全です。 -
(2)早期の弁護士への依頼は不起訴の可能性も高める
執行猶予を受ければ刑務所への収監は回避できますが、懲役の前科がつく事態は避けられません。窃盗罪を犯したのが事実で、前科がつく事態を避けたいと望むなら、早期に弁護士に依頼して検察官による不起訴を目指すのが最善です。
不起訴を得るには、やはり被害者との示談交渉が欠かせません。
さらに、深い反省や再犯防止に向けた対策を尽くして検察官にはたらきかける必要があるので、窃盗事件の解決実績を豊富にもつ弁護士のサポートは必須です。
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5、まとめ
窃盗罪を犯すと、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
刑事裁判に発展してもおよそ半数には執行猶予が付されていますが、執行猶予の可能性を高めるには弁護士のサポートを受けて被害者との示談交渉を進めるなどの対策が必要です。
窃盗事件を起こしてしまい、執行猶予や不起訴といった有利な処分を得たいなら、刑事事件の解決実績を豊富にもつベリーベスト法律事務所におまかせください。
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