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詐欺罪の時効は何年? 時効の完成を待てば逃げ切れるのか?
犯罪の認知件数は平成15年ころをピークに減少を続けています。
令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中の全刑法犯の認知件数は前年比マイナス4万6127件を記録しましたが「詐欺罪」の認知件数は3万3353件・前年比プラス2885件と増加を示しました。その反面で、詐欺罪の検挙率は49.6%・マイナス0.6ポイントとなっており、警察が事件を認知しても検挙に至っていない詐欺事件が増えているのが現状です。
警察が検挙に至らないまま時間が過ぎると、いずれは「時効」が成立して犯人は罪を問われなくなります。詐欺事件を起こしてしまった人にとって、詐欺罪の時効は何年なのか、どのくらいの時間がたてば罪を問われなくなるのか、大変気になるところでしょう。
本コラムでは、詐欺罪の時効や、時効の完成によって解決できる可能性について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 詐欺罪の時効が成立するのは何年?
- 時効が成立するまで逃げ切れる可能性はあるのか
- 詐欺事件で逮捕された場合、執行猶予や不起訴となるためにできることは?
1、詐欺罪とは? 犯罪が成立する要件や罪の重さ
詐欺罪とはどんな犯罪なのかを確認しておきましょう。
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(1)詐欺罪とは?
詐欺罪は刑法第246条に定められている犯罪です。
「人を欺いて財物を交付させた者」は、詐欺罪によって処罰されます。
詐欺罪は、その方法に応じて「手口」で分類される犯罪です。
たとえば、銀行や警察を装って「あなたの口座が不正に利用されている」などのうそをつきキャッシュカードをだまし取って現金を引き出すなどの特殊詐欺や、不動産取引を装って現金をだまし取る不動産詐欺、お金がないのに正規の客を装って飲食物などの提供を受ける無銭飲食などがありますが、すべて「詐欺罪」による処罰の対象となります。 -
(2)詐欺罪が成立する要件
詐欺罪が成立するためには「欺罔(ぎもう)・錯誤・交付」という3つの要件を満たす必要があります。
- 欺罔 「欺罔(ぎもう)」とは、うそをついて相手をだます行為を指します。たとえば、実際にはそのような事実も返済能力もないのに「来月には大きな収入があるので必ずお金を返せる」とうそをつき、借金を申し込む行為は欺罔となります。
- 錯誤 欺罔行為を受けて、相手がそのうそを信じ込んだ状態が「錯誤」です。詐欺罪は相手がうそにだまされて信じ込んでいなければ成立しないので、たとえば、うそを見抜いていたものの「かわいそうだから」といった感情からだまされたふりをした場合は錯誤に陥ったとはいえません。
- 交付 「交付」とは、錯誤に陥った相手が自ら金銭などを差し出す行為で「処分行為」と呼ばれることもあります。交付の方法は手渡しだけに限りません。郵送や銀行などの口座への振り込みでも交付となります。
ここまでの欺罔・錯誤・交付がすべてつながり、犯人の手や第三者の手に財物が渡った時点で詐欺罪が既遂となります。
途中で被害者がうそを見抜いて交付に至らなかった、警察が介入して財物が犯人の手に渡らなかったといった状況があった場合は詐欺未遂となり、詐欺罪は既遂に達しません。
ただし、刑法第250条に「未遂は罰する」と明記されているため、未遂でも既遂と同じように処罰されます。 -
(3)詐欺罪で科せられる刑罰
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
罰金などでは済まされず、最大で10年にわたって刑務所に収監される重罪だという点は覚えておいてください。
2、刑事事件における「時効」とは? 詐欺罪は何年で罪を問われなくなるのか?
ドラマなどでは、罪を犯した人が「時効」の成立を目指して捜査の追っ手から逃れようとするシーンがたびたび描かれていますが、時効という制度はフィクションではありません。
事実、昭和50年に起きた「3億円事件」などのように、犯人が逮捕されず時効を迎えて未解決のままで終わってしまった事件も数多く存在します。
では、詐欺罪は何年で時効を迎えるのでしょうか?
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(1)刑事事件における「時効」の意味
刑事事件における時効には「刑の時効」と「公訴時効」の2種類があります。
刑の時効とは、刑事裁判で有罪判決が下されたものの、執行されないまま一定の年数が経過した場合に刑を執行しないという制度です。
もっとも、有罪判決が下された犯人に刑罰が科せられないまま時間が経過してしまう例はほとんどないので、適用される可能性は極めて低いでしょう。
一般的に、刑事事件における時効とは、後者の「公訴時効」を指します。
公訴時効とは、検察官が裁判所に対して刑事裁判を提起するまでのタイムリミットであり、公訴時効が経過すると検察官は起訴できません。
日本には、公平な裁判手続きを経なければ刑罰は科せられないという決まりがあります。
公訴時効を迎えて起訴できなくなれば刑事裁判も開かれないので、罪を犯したことが事実でも刑罰は科せられません。 -
(2)公訴時効の年数
公訴時効の年数は、刑事訴訟法第250条に定められています。
人を死亡させた罪で禁錮以上の刑にあたるものか、それ以外かで区別し、法定刑の種類や重さによって年数が異なります。
人を死亡させた罪で禁錮以上の刑にあたるもの- ① 無期の懲役または禁錮にあたる罪……30年
- ② 長期20年の懲役または禁錮にあたる罪……20年
- ③ それ以外の罪……10年
人を死亡させた罪で禁錮以上の刑にあたるもの以外の罪- ① 死刑にあたる罪……25年
- ② 無期の懲役または禁錮にあたる罪……15年
- ③ 長期15年以上の懲役または禁錮にあたる罪……10年
- ④ 長期15年未満の懲役または禁錮にあたる罪……7年
- ⑤ 長期10年未満の懲役または禁錮にあたる罪……5年
- ⑥ 長期5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金にあたる罪……3年
- ⑦ 拘留または科料にあたる罪……1年
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(3)詐欺罪の時効年数
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役なので、最大で10年の懲役が科せられることになります。
これを公訴時効の年数に照らすと、人を死亡させた罪で禁錮以上の刑にあたるもの以外の罪のうち④に該当するため、詐欺罪の時効年数は7年です。
なお、公訴時効は犯罪行為が終了した時点から始まり、日で計算します。
たとえば、4月1日に欺罔行為があり、交付を受けたのが4月5日であれば、公訴時効の起算点は詐欺罪が完成した4月5日です。
また、詐欺行為の終了が午後0時だったとしても、当日の午後0時ではなく午後23時59分が過ぎるまで時効は完成しません。 - お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- 警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
弁護士との電話相談が無料でできる
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3、詐欺事件を起こしても時効まで逃げ切ることは可能か?
詐欺事件を起こしてしまっても、7年が過ぎれば罪を問われなくなります。
このように説明すると「7年間逃げ切ればよいのではないか?」と考える人がいるかもしれないが、現実には時効完成を期待しないほうが利口です。
なぜ「時効まで逃げ切る」という選択をしないほうがよいのか、その理由を挙げていきましょう。
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(1)社会生活を送るのが難しくなるから
現代の社会において、時効完成まで逃亡生活を続けるのは極めて難しいというのが現実です。
捜査機関には、捜査の必要に応じて公務所や一般企業に対し情報開示を求めて照会する権限が与えられています。
照会に応じるかどうかは任意で、強制力はありません。ただし、一般的に多くの公務所・企業が捜査機関からの照会にできる限り回答しており、住民登録や戸籍の情報、携帯電話の契約状況、銀行などの預金口座の動き、クレジットカードの利用状況、ハローワークでの求職状況、各種ポイントカードの利用履歴など、あらゆる情報が筒抜けになります。
また、公務所や一般企業が任意の回答を拒んだとしても、捜査機関は被疑者の所在を知るために不可欠な情報であれば裁判所の許可を受けて差し押さえを実施するので、結局のところ、情報を隠し通すことは不可能です。
完全に居場所の手がかりを消して社会生活を送るのは極めて困難であり、もし徹底的に居場所を隠すとなれば、働いてお金を稼いだり病気になったら医療を受けたりすることも諦めなければなりません。 -
(2)時効の進行が止まる制度があるから
刑事訴訟法には、一定の条件を満たすと時効の進行が停止する制度が設けられています。
- 検察官が起訴した場合
- 検察官が共犯者のひとりを起訴した場合
- 犯人が国外にいる場合
- 犯人が逃げ隠れしていて有効に起訴状の謄本の送達もしくは略式命令の告知ができなかった場合
警察・検察官が捜査を尽くして被疑が固まり起訴されてしまえば、逃亡している期間は時効の進行が止まってしまうので、逃げ隠れすることの利益はありません。
むしろ「逃亡して罪から逃れようとしており、反省は感じられない」と裁判官の心証を悪くしてしまい、厳しい処分を受ける危険が高まってしまいます。 -
(3)執行猶予を受けられる可能性があるから
詐欺罪には厳しい刑罰が設けられていますが、必ず刑務所へと収監されるわけではありません。
判決が3年以下の懲役なら、一定期間は刑の執行を猶予する「執行猶予」が付される可能性が生じます。
判決に執行猶予が付されると、刑務所に収監されず、社会生活を送りながら更生を目指すことが許されます。前科がついてしまう事態は避けられないものの、家族とともに住むことも、仕事をしてお金を稼ぐことも可能です。
7年間という長きにわたって不自由な逃亡生活を続けるよりも、執行猶予が得られるように対策を尽くしたほうが社会復帰も早まるでしょう。
4、詐欺事件を解決するためには弁護士に相談を
詐欺事件を起こしてしまった場合、時効の完成を待つのではなく、積極的に解決を目指したほうが賢い選択となります。
刑事事件の解決実績が豊富な弁護士に相談のうえ、必要なサポートを受けましょう。
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(1)被害者との示談交渉を通じた解決が期待できる
詐欺事件を穏便に解決できるもっとも有効な方策は、被害者との示談交渉です。
被害者に対して誠心誠意の謝罪を尽くしたうえで、だまし取った財産に相当する金銭と精神的苦痛に対する慰謝料を含めた示談金を支払うことで、被害届や刑事告訴の取り下げを図ります。
被害届や刑事告訴が取り下げられれば、被害者には「犯人を厳しく罰してほしい」という意思がなくなったという評価につながり、検察官が不起訴とする可能性が高まります。
ただし、被害者との示談交渉は簡単なことではありません。
うそをつかれてお金をだまし取られた被害者は、加害者に対して強い怒りを抱いているものなので、示談を申し入れても相手にしてもらえないこともあります。
警戒心の強い被害者に示談を受け入れてもらうには、社会的に信頼度が高く、第三者である弁護士にすべての対応を任せたほうが安全です。 -
(2)有利な処分を目指した弁護活動が期待できる
詐欺罪を犯したのが事実でも、必ず最大限に厳しい刑罰が科せられるとはいえません。
前科・前歴のない初犯で深く反省している、被害者への謝罪や弁済が尽くされている、家族などによる監督強化が誓約されている、誠実な生活を送るために再就職に向けた活動を始めているなどの事情が評価されれば、判決に執行猶予がついたり、懲役の年数が減じられたりする可能性が高まります。
どのような事情があれば有利な処分を得られるのかは、事案の内容や個人がもつ性格や身上などによって異なるため、刑事事件の知識や経験がなければ判断は難しいといえます。そのため弁護士のサポートは必須です。「逃げる」という選択肢を取るよりも、処分軽減を目指した弁護活動を尽くすほうが、社会復帰が早まる可能性も高まります。
詐欺事件を起こしてしまったなら、まずは弁護士への相談を急いだほうがよいでしょう。 - お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- 警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
弁護士との電話相談が無料でできる
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5、まとめ
詐欺罪の時効は7年です。
事件を起こして7年が過ぎれば検察官が起訴できなくなるので、罪を問われません。ただし、7年間という時間は想像を絶するほどに長いので、捜査の手を逃れるのは不可能だと考えてください。
詐欺事件を起こしてしまったら、逃げるよりも弁護士に相談して積極的に解決を図ったほうが賢明です。弁護士のサポートがあれば、執行猶予などの有利な処分を期待できます。
素早い社会復帰を望むなら、刑事事件の解決実績を豊富にもつベリーベスト法律事務所への相談をお急ぎください。
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