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強姦罪から強制性交等罪への法改正による厳罰化のポイントとは
男性が女性をレイプするなどの行為で問われる従来の強姦罪は、法改正にともない名称が変わりました。聞きなれない「強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい)」という罪名には従来の強姦罪も含まれますが、従来の強姦罪と比較すると処罰もより厳しくなっています。
今回は、改正された強制性交等罪ではどのような点が変わったのかについて、4つのポイントを掘り下げて解説いたします。
また、強制性交等罪で訴えられた際に重要となってくる示談交渉をスムーズにすすめるためにポイントについても解説していきます。
令和5年7月13日に強制性交罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
1、強姦罪から強制性交等罪への法改正! 4つのポイント
従来、強姦罪といえば姦淫(かんいん)することを指し、男性が女性に対して暴力や脅迫をもって性行為を強要する犯罪でした。しかし時代の流れと共に性犯罪も多様化しており、被害者となるのが女性だけに限定されなくなってきています。また性犯罪が社会問題となった背景も踏まえ、平成29年7月に大幅な法改正が行われ、その呼び名も強姦罪から強制性交等罪へと変わりました。
主に4つのポイントが大きく変わっています。
処罰の厳格化です。
強姦罪も非常に悪質な犯罪として位置づけられ、重い処罰が科されていました。改正後さらに厳罰化がすすめられました。
② 姦淫の定義の変更
罪に問われる行為の内容がより広いものとなりました。
従来は被害者が女性であることが前提とされていましたが、男性も被害者となりうることから、被害者の定義も広がりました。
③ 監護者の立場を利用して性交した場合は監護者性交等罪として処罰
監護者性交等罪が新しく設けられたことです。
表に出ていないものも含めて、家庭内における性犯罪は決して少なくなかったからです。また養護施設などで子どもをみている監護者も含まれるようになりました。
④ 親告罪から非親告罪へ
親告罪から非親告罪に変わったことです。
被害者からの告訴がなくても警察や検察が捜査に着手し、起訴することが可能となったのです。
2、ポイント① 処罰の厳格化。有罪判決の場合、最低でも5年以上の懲役
では改正点1つ目のポイントである処罰の厳格化について、改正前と比較して解説します。
どのような罰を受けるのかは、刑法177条に定められています。名称や内容が変わった後も、罰金刑といった軽微な処罰ではなく非常に重い刑として規定されています。
強姦罪は「懲役刑3年以上」と規定されていましたが、改正後の強制性交等罪には「懲役刑5年以上」となりました。さらに2年上乗せし厳格化されたわけです。
法改正にともない、同種の犯罪も厳罰化されました。準強姦罪は準強制性交等罪(じゅんきょうせいせいこうとうざい)と名称が変更され、同じく3年以上から5年以上の懲役刑に厳格化されています。従来の強姦致死傷罪は無期懲役もしくは5年の懲役刑であったものが、強制性交等致死傷罪として、無期懲役あるいは6年以上の懲役となり、こちらも刑期がのばされています。
また、懲役刑が5年以上になったことで、強制性交等罪での執行猶予は減刑されない限りは認められません。これは執行猶予が3年以下の懲役刑もしくは禁錮刑、50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたときに認められる制度であるためです。
3、ポイント② 姦淫の定義の変更。口腔性交や被害者が男性の場合も強制性交等罪に
改正ポイント2つ目には、姦淫の定義変更と、被害者定義変更の大きく分けて2つがあります。
まず姦淫の定義変更からみていきましょう。改正前、強姦罪にあたる姦淫とは男性器を女性器に挿入する行為を指していました。しかし強制性交等罪となり、以下の行為も加わりました。
- 口腔による性行為
- 肛門を使った性行為
いわゆるオーラルセックスとアナルセックスです。
これにともない被害者の定義も広がりました。従来は、男性が加害者であり女性が被害者という図式を想定していましたが、改正後は女性が加害者となり男性に同様の行為をする犯罪も成立します。
13歳以上の者に性交をした場合、強制性交等罪が成立する点は変わりません。なお、13歳未満の者に性交等をした場合は同意があったかどうかは関係なく、処罰対象となります。
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4、ポイント③ 監護者の立場を利用して性交した場合は監護者性交等罪として処罰
3つ目の改正ポイントは「監護者性交等罪」が刑法179条2項に新しく規定されたことです。これにより監護監督する立場の人物が、その立場を利用して性行為をした場合、強制性交等罪と同様に処罰されることとなりました。
ここでいう監護者とは18歳未満の子どもを監督・保護している人物を指します。同居している両親はもちろんのこと、親同様に保護・監督している人も含みます。これは生活状況や生活費の負担状況、同居状況などによって判断されます。親以外に監護者となりうる例には、義理の親や養護施設の職員などが該当します。スポーツチームや部活動の監督や教師、雇用者などは監護者にはあたりません。
また、監護者という立場や影響力を逆手に取った犯罪であるため、強制性交罪が成立する要件として刑法に規定されている暴行や脅迫がなくても罪に問われます。処罰も5年以上の有期懲役刑となっています。さらに性行為が未遂に終わったとしても罪に問われます。
5、ポイント④ 親告罪から非親告罪へ
改正ポイント4つ目は犯罪の種類が変更されたことです。
改正前、強姦罪は親告罪に位置づけられていました。被害者が加害者に対して処罰を求め、告訴することではじめて警察の捜査が始まり、起訴が可能となったのです。告訴は、それが受理されれば、捜査機関に捜査を行う義務が生じるという点で、被害届とは異なります。また親告罪においては、犯罪が発覚してから6ヶ月以内の告訴という期限が定められていました。
これに対して改正後の強制性交等罪では非親告罪となりました。従来はデリケートな犯罪であることからプライバシーを守る意味合いで親告罪とされていました。しかし告訴することで、加害者からさらに嫌がらせや報復行為を受けるのではと恐れ、泣き寝入りする被害者がいることが問題視されていました。
こうした点を踏まえ、強制性交等罪へと改正されたことを機に、告訴がなくても警察が捜査に着手でき、起訴も可能とする非親告罪へと変更されました。
6、強制性交等罪の相談はできるだけ早めに弁護士へ
解説してきたとおり、強姦罪から強制性交等罪への改正にともない、犯罪としてより厳罰化されたものとなりました。また非親告罪へと変わったことにより、被害者が告訴をしなくても起訴される可能性が高くなりました。
起訴されると高い確率で有罪となり、実刑判決を受ける恐れがあります。初犯であったとしても、処罰が重い犯罪であることから執行猶予がつくことにも期待できません。いずれにしても、まずは起訴を避けるのが先決です。そのためには、被害者と早期に示談を行うことが重要となります。
犯罪の性質からすれば、すべてのケースでスムーズに示談が成立するのは難しいでしょう。しかし、加害者が本当に深く反省し謝罪することで被害者の気持ちが多少なりともおさまり、加害者を処罰してほしいという感情が抑えられたような場合には、起訴を免れるケースも少なくありません。
とはいえ、被害者感情を考えると、加害者本人やその家族とは会いたくないのが実情でしょう。冷静に話をするには第三者が入ることが賢明です。強制性交等罪で訴えられてしまった場合は、弁護士に相談することが重要です。
7、まとめ
解説してきたとおり、強姦罪は処罰が厳重化された強制性交等罪へと変わりました。処罰対象となる行為や被害者の範囲も拡大されたことで、女性から男性および同性間でも成立しうる犯罪となりました。さらに監護者の立場を利用した性交等も対象とされ、非親告罪となったことから起訴される可能性が高くなりました。
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