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強姦(強制性交等罪)の加害者になったら示談金が必要? 示談の流れを解説
強姦(強制性交等)の容疑で逮捕されてしまったら、1日も早く被害者との間で示談を成立させることをおすすめします。
刑事事件において、被害者との示談が成立したかどうかは、非常に重要な意味を持ちます。示談が成立することによって、起訴されずに不起訴になったり、たとえ起訴されたとしても執行猶予がついたりする可能性が出てきます。
しかし、刑事事件における示談を成立させる方法や、そもそも示談金額の決め方などがわからない……という方が多いのではないでしょうか。そこで本コラムでは、示談の手続きや示談内容について詳しく解説します。ご家族が強姦(強制性交等)によって逮捕されてしまった方は、ぜひ参考にしてください。
令和5年7月13日に強制性交罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
1、示談金とは? 慰謝料との違いを解説
あなたの家族が強制性交等罪容疑で逮捕された場合、1日でも早く被害者との示談を成立させる必要があります。示談を成立させるためには、示談交渉をまとめ、示談金を支払う必要があるでしょう。被害者に対して支払う金銭で「慰謝料」もありますが、示談金とは意味合いが異なります。ここでは、示談金と慰謝料の違いを解説していきます。
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(1)示談金とは?
示談金とは、文字通り示談を成立させるための金銭です。そもそも「示談」とは、被害者と加害者との間の紛争を両者の合意によって解決するための手段です。
示談を成立させるためには、加害者は被害者に対する損害賠償責任を果たす必要があります。一般的に、示談の金額は被害者と加害者両者の話し合いによって決定するものです。具体的には、病院の診療費や破れた衣服代などの財産的損害に加えて、被害者が受けた精神的苦痛を賠償するための金銭である慰謝料の額も併せて算出されます。つまり、慰謝料は示談金の一部という関係にあります。 -
(2)慰謝料とは?
上記の通り、慰謝料とは被害者が受けた精神的苦痛を賠償するための金銭です。個別に慰謝料の金額が決まっているわけではなく、通常、示談金を決める際に、その一部として、被害者が受けた精神的苦痛を賠償するに足る金額を加害者と被害者両者の合意によって決定します。被害者が受けた精神的苦痛の程度や、あるいは加害者の収入や状況によって支払うべき慰謝料の金額は大幅に変動します。
2、強姦の刑罰軽減のために示談が重要な理由
示談成立の有無は、起訴または不起訴の判断の際や、裁判での判決の際にも非常に重要になります。ここでは、示談の成立がもたらすメリットや影響、その理由について解説します。
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(1)有罪の場合の刑罰
強制性交等罪で有罪になった場合は、5年以上の懲役刑が科されます。懲役とは、刑務所で服役することです。
なお、執行猶予がつくのは3年以下の懲役の場合に限られます。懲役の年数は暴行の内容やその他酌量すべき内容があるかどうかで決定するでしょう。つまり、強制性交等罪で起訴されたのち、裁判で減刑が認められなければ、強制性交等罪は高確率で実刑が確定するということです。 -
(2)法改正により非親告罪に変更
強制性交等罪は、かつて「強姦罪」と呼ばれる犯罪でした。平成29年の刑法改正によって、名称やその内容が改正されています。
たとえば「強姦罪」のころは親告罪だったのですが、改正に伴い「強制性交等罪」と名称が変わり、非親告罪となりました。また対象となる行為が、女子に対する姦淫行為から、被害者の性別を問わず、姦淫行為だけでなく肛門性交や口腔性交も含まれるようになり、広がりました。さらに、法定刑も3年以上の有期懲役から5年以上の有期懲役に引き上げられました。
なお、「親告罪」とは検察が起訴する際に被害者からの告訴が必要になる犯罪を指します。つまり、強姦罪だった時代は、被害者が告訴しなければ罪に問われることがなかった犯罪でしたが、「強制性交等罪」となった今、検察は被害者の告訴がなくても起訴できるようになりました。 -
(3)示談は不起訴や執行猶予には必須
刑事事件において、被害者との間で示談を成立させるということは重要な意味を持ちます。
なぜならば、示談の成立の有無を、裁判所や検察、警察は非常に重視するためです。検察が起訴するかどうか判断する際には、被害者との間で損害賠償などの民事責任を果たしたかどうかが判断材料のひとつとなります。さらに、被害者が加害者から十分な賠償を受けたうえで「加害者を許す」などの「宥恕(ゆうじょ)の意志」を示していれば、情状酌量の材料にもなります。
つまり、被害者との間で示談が成立済みであれば、検察が不起訴を決定する可能性が高まり、裁判に発展せずに済むかもしれません。仮に裁判に発展しても、示談が成立していれば、執行猶予がつき実刑を免れる可能性もあります。
3、示談の流れと示談内容について
被害者との示談は、しっかりと手順を踏んで臨まなければ、交渉が破綻して加害者にとって不利な結果になってしまいかねません。ここでは、被害者との示談交渉の流れを解説します。
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(1)被害者への謝罪
まず行うべきことは被害者への謝罪です。
しかし、加害者本人が逮捕されている場合は、物理的に謝罪へ行くことはできません。また、相手が知り合いでもない限り、警察が被害者の個人情報を教えてくれることは通常ありません。つまり、加害者や加害者家族が謝罪に行くこと自体が難しいのです。
たとえ被害者が知り合いであっても、加害者やその家族が直接謝罪をしようと試みることは避けたほうがよいでしょう。場合によっては逆効果になってしまう可能性もあるためです。
謝罪をしたいと考えたときは、弁護士に間に入ってもらうことをおすすめします。弁護士であれば、被害者の個人情報を警察から聞き出し、謝罪に向かうことができるケースが多々あります。 -
(2)示談の条件を交渉
謝罪を行うとともに、示談交渉の要となる損害賠償金の額や支払い方法などの条件を決めます。場合によっては、二度と被害者と顔を合わせることがないよう、通勤経路の変更などを求められることがあります。
加害者側は、「加害者を許した」「処罰は求めない」などの「宥恕(ゆうじょ)の意志」を組み込んでもらえるように交渉するケースがほとんどです。
示談は、双方が納得できる内容でなければ成立しません。高すぎると感じる要求をされることもあると思いますが、弁護士であれば適切な金額を提示して交渉を行うことができます。 -
(3)示談書の作成
示談内容を記録に残すために示談書を作成します。
示談書を作成する際には、損害賠償金額や支払い方法、さらに清算条項などを記載します。宥恕の意志を受けているときは、必ず宥恕文言を入れ込むようにします。 -
(4)示談内容を履行
示談書が完成したら、示談書に記載のある内容を実行します。具体的には被害者に対しての損害賠償金の支払いなどを行うことになります。
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(5)示談成立を関係機関へ報告
示談が成立したら、示談が成立したことを関係機関へ報告します。関係機関とは、逮捕されたあとは、警察や検察ですが、起訴されれば裁判所となります。そのため、示談が成立した段階によって、報告すべき機関は変わります。
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(6)示談金の決め方
刑事事件のトラブルに関する示談金には明確な決まりはありません。被害者と加害者双方が協議しあった結果決定するものです。
示談金の相場について知りたいと考える方は多いものですが、犯行内容や計画性の有無、加害者の収入レベルなど、さまざまな事情によって、支払うべき示談金額は大幅に変動します。高すぎる示談金でのちのち苦しまずに済むよう、まずは弁護士に相談することが得策でしょう。
弁護士との電話相談が無料でできる
刑事事件緊急相談ダイヤル
- お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- 警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
4、示談交渉は弁護士へご相談を
実際に強制性交等を犯してしまった場合、警察や検察の取り調べや裁判への対応、さらに被害者との示談交渉など、行うべきことは多岐にわたります。多くの場合、加害者は逮捕されているため動くことはできません。とはいえ、加害者の家族が行うのは非常に困難を伴います。
そこで、家族が事件を犯してしまったら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。ここでは、弁護士に相談するメリットや、実際に行えるサポートについて解説します。
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(1)弁護士に相談するメリット
弁護士は、被害者との示談交渉や取り調べを受ける上でのアドバイスなどを行います。特に逮捕から勾留までの最長72時間のあいだは家族でも面会できない時間が存在します。勾留後であっても共犯者がいる可能性がある事件などは、面会を制限される可能性があるでしょう。
しかし、弁護士であれば自由な接見が職権として認められています。面会ができるだけでなく、洋服やお金、手紙などを差し入れることもできます。取り調べ中、孤独に陥りがちな加害者の精神的不安を和らげることができるよう、サポートします。 -
(2)何よりも示談を優先に
強制性交等などの事件を犯してしまった場合、まずは被害者との示談が最優先です。一刻も早く被害者に謝罪し示談を成立させるために、まずは弁護士に相談してください。その理由は、前項の「(1)被害者への謝罪」で述べたとおりです。
被害者との交渉を弁護士に一任することによって、加害者の家族だけではまったく示談交渉そのものができないような状態であっても、事態の進展が期待できる場合もあります。 -
(3)弁護士から専門的なアドバイスを受けるメリット
強制性交等容疑で逮捕されると、警察による取り調べから検察の捜査に進み、起訴されれば刑事裁判に発展します。検察は、確実な証拠があるなどのケースでなければ起訴しません。したがって、起訴されれば99.9%の確率で有罪判決となります。3年を超える懲役刑を言い渡された場合は執行猶予が付かないため、直ちに刑務所へ収監されることになるでしょう。
罪を犯したことが確かであっても、過剰に重い罪を科せられないようにすることこそ、弁護士にとって欠かせない業務のひとつです。必要に応じた書類を提出するなど捜査機関へ働きかけるだけでなく、取り調べの受け方や、被害者への謝罪方法などのアドバイスを行うこともあります。
5、まとめ
強制性交等は、刑法改正によって犯罪に該当する行為の範囲が広がりました。また、親告罪から非親告罪に変わったことで、被害者の告訴なしで起訴できる犯罪になっています。加えて、減刑されない限りは原則的に執行猶予がつきません。
そのため、加害者にとっては1日も早く被害者との間で示談を成立させることが非常に重要です。示談が成立し、被害者からの宥恕文言があれば、できる限り早いタイミングで日常生活への復帰できる可能性が出てくるでしょう。さらに、不起訴になれば前科もつかないため、その先の人生に与える影響を最小限にとどめることができるはずです。
もしあなたの家族が強姦(強制性交等)罪に手を染めてしまったら、嘆いている時間はあまりありません。逮捕された本人を社会復帰させるためにも、ひとりで抱え込まず、できるだけ早くベリーベスト法律事務所へご相談ください。性犯罪に対応した実績が豊富な弁護士が、早期に被害者と示談が成立できるよう力を尽くします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
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