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痴漢事件の保釈について解説。保釈金の決定要素や保釈がもたらす影響は?
家族が痴漢事件を起こして逮捕されると、あっという間に刑事手続きが進められることになり、一刻を争う事態になります。手続きがどの段階にあるのかによって残されたご家族ができることも変わっていくため、状況を冷静に整理しなくてはなりません。
現時点ですでに起訴されている場合は、ご家族は保釈請求を行うという選択肢があります。保釈が認められるとその後の裁判に備えることができ、最終的な結果が変わる可能性もでてくるでしょう。
ただし保釈は、ドラマやニュースなどを通じて抱いておられるイメージとは違うと感じられることが多いようです。そこでまずは、保釈の概要や痴漢事件で認められる可能性、保釈による影響などを知っておくべきでしょう。今回は痴漢事件の保釈について解説します。
1、そもそも保釈とは何か?
まずは保釈とは何かについて基本的な点を中心に説明します。
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(1)保釈とは
保釈とは、裁判所に許可を得て、被告人の身柄拘束を解いてもらう措置を指します。
被疑者の時点における身柄解放をする「釈放」とは異なり、保釈は起訴後、つまり被告人になってからしか請求できません。保釈には、一定の事由に該当しない限りは認められる「権利保釈」と、権利保釈の要件を満たさない場合でも裁判所の裁量で認められる「裁量保釈」とがあります。どちらの場合も定められた保釈金を支払うことはもちろんのこと、裁判所から保釈をするリスクがないと判断されなくてはなりません。
たとえば、罪を認めて捜査に協力的なケース、定まった住所があり家族と同居しているケースなどで保釈が認められやすいといえます。反対に、被告人が被害者や証人に接触して脅すおそれがある場合や逃亡または罪証隠滅のおそれがある場合には認められにくくなります。 -
(2)保釈金の金額はどのように決まる?
保釈の手続きに必要な保釈保証金は、一般に保釈金と呼ばれます。
保釈金の額は裁判官の裁量で決定されますが、事前に弁護士がある程度の金額を提示し、裁判官と交渉するケースもあります。痴漢といっても内容は事件ごとに異なるため、悪質な痴漢事件ほど保釈金も上がる可能性があるでしょう。また、被告人が何とか支払える金額で、かつ身柄解放中の約束を反故にさせないだけの金額が必要です。ここでいう約束とは、逃亡や証拠隠滅をしない、裁判に必ず出席するといったものです。約束を破ると保釈が取り消されて身柄を拘束され、保釈金も没収されます。
したがって、犯行内容や保有財産、職業などを踏まえつつ、それなりにまとまった額を用意しなくてはなりません。収入や資産が多いほど、保釈金の額も上がりやすくなります。 -
(3)保釈金を支払えない場合の対処法
裁判が終わって判決がでると、保釈決定の際に提示された約束を守ったことを条件に保釈金が返金されます。
しかし一時的にせよ支払う必要があるため、本人やご家族に資力がなく保釈金の支払いができないケースもあるでしょう。親族など事情を知っている方からの借り入れがひとつの方法ですが、難しいケースも多いはずです。
その際は、たとえば一般社団法人 日本保釈支援協会の立て替えシステムや、弁護士協同組合の保釈保証書発行事業などを利用する方法があります。弁護士に相談のうえ、適切な事業者を選定しましょう。
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2、痴漢で逮捕された後の流れ
痴漢事件を起こして逮捕された後、裁判にいたるまでの流れを確認しましょう。
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(1)逮捕~勾留
痴漢事件では、被害者や目撃者、通報を受けて駆けつけた警察官に身柄を確保されるといった現行犯逮捕が多いと考えられます。しかし、防犯カメラの映像などから被疑者が特定され、警察から事情聴取などの呼び出しを受けて事件化したり、逮捕状が発行されて通常逮捕されたりするケースもあります。
いずれにせよ、逮捕されると留置場で拘束され、外部との一切の接触が遮断されます。なお、逮捕とは処罰の一種ではなく、捜査上の必要性を踏まえて行われる手続きです。痴漢事件においては、逃亡や証拠隠滅などの可能性がなく、悪質性も低いと判断されれば、逮捕されないケースもあるでしょう。それでも、警察からの連絡を無視し続けたり、犯行が明らかであるにもかかわらず否認したり、住所や職業が不明で身元引受人がいないなどのケースで逮捕されてしまう可能性があります。
逮捕から72時間以内に勾留請求され勾留が決定すると、原則10日、最長で20日間、引き続き身柄を拘束されます。勾留期間が満了するまでに、検察官が起訴あるいは不起訴の判断を行います。なお、逮捕されてから勾留が決定するまでの72時間のあいだは、家族や友人などと連絡を取ることはできません。この期間、唯一制限なく本人と面会できるのは依頼を受けた弁護士だけに限られます。 -
(2)起訴~裁判
取り調べの結果、検察官によって起訴が妥当だと判断されると、その後は公開による裁判へと移行します。起訴された後は被疑者から被告人へと呼び名が変わり、保釈請求するタイミングとなります。
なぜなら本来であれば、起訴から公開された刑事裁判が終了するまでのあいだは、引き続き身柄を拘束されることになるためです。しかし保釈されると一時帰宅が許され、裁判に向けて弁護士と念入りに打ち合わせすることも可能となります。
もっとも、起訴といってもすべてのケースで公開の裁判となるのではありません。書面上の簡易的な手続きで済ませる略式命令となるケースもあります。略式命令は100万円以下の罰金、科料に相当する事件で適用できるため、初犯であったり示談が成立していたり悪質性がそれほど高くない痴漢事件であれば略式命令となる可能性があるでしょう。この手続きでは、迅速な書類手続きにより刑事裁判における判決と同じ効果を持つ処罰が決定します。そして早期に帰宅ができるため、保釈金を払う必要がありません。ただし略式命令でも刑罰が下る以上前科がつきます。
もちろん、前科がある、痴漢行為を過去から繰り返していた、着衣の中に手を入れていたなどのケースであれば、公開された刑事裁判が開かれる可能性が高くなるでしょう。特に痴漢行為が強制わいせつ罪にあたる場合には、そもそも罰金刑が規定されていないので略式命令とはなりません。あくまで痴漢行為が迷惑防止条例違反にあたる場合に、罰金刑が規定されているので略式命令になる可能性がでてくることになります。
公判請求の場合、起訴から初回の裁判までの期間はおおむね1か月程度かかります。裁判がいつ終了するかは、事件内容によって大きく異なることになるでしょう。保釈が認められるかどうかによって、生活が大きく変わることになります。 -
(3)判決
裁判の結果、有罪か無罪の判決が言い渡されます。検察官は相当の根拠をもとに起訴していますので、起訴された以上は、かなりの高い確率で有罪になると覚悟する必要があるでしょう。
有罪であれば量刑が言い渡されます。たとえば東京都の迷惑防止条例違反にあたる痴漢の場合、罰則は「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」ですので、この範囲の懲役刑か罰金刑を科されることになります。他方、強制わいせつ罪にあたる痴漢の場合、罰則は「6か月以上10年以下の懲役」となり罰金刑がありません。したがって、執行猶予がつかない限りは刑務所に収監されます。
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3、痴漢事件で保釈を目指す際、弁護士に依頼したほうがよい理由
保釈の請求は被告人本人やご家族でも可能とされていますが、弁護士に依頼したほうがよいといえるでしょう。その理由を解説します。
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(1)逮捕後に想定される影響
痴漢事件を起こして逮捕されると、本人にはいくつもの影響が想定されます。たとえば、勾留期間が長引いたり、実名報道されたりして痴漢の事実が周囲に知られるケースです。性犯罪に対する世間の目は厳しいため、これまで親しくしていた人たちが離れてしまう可能性は否定できないでしょう。
昨今は事件報道がインターネットで公開されるケースが少なくないため、実名が半永久的に残るリスクも存在します。さらには、会社や学校への影響も懸念されます。「逮捕=直ちに退職・退学」ではないものの、本人がいづらくなり辞めざるをえなくなることは考えられるでしょう。裁判の結果、有罪になれば就業規則や学校規則などにもとづき解雇、退学となる可能性があります。
前科がつけば一定の職業に制限がかかりますし、そうでなくても社会復帰までの期間が長引くほど、再就職への影響も考えられます。被害者と示談できなければ民事上の損害賠償を請求されるリスクもあるため、賠償金の支払いで経済的に困窮する可能性もでてきます。 -
(2)弁護士ができること
逮捕後速やかに弁護士に依頼すれば、早期の身柄釈放が期待できる場合もあります。早期に示談が成立し、数日で釈放されれば逮捕の事実が会社や学校、あるいは友人・知人に知られずに済む可能性があるでしょう。
起訴された段階においても、保釈されれば裁判までを自宅で過ごすことができ、本人の精神的負担が軽減されます。早期の社会復帰も可能となり、将来への影響を抑えやすくなります。
裁判官に保釈の必要性や相当性を説き、適切な額を提示して交渉するのも弁護士の役目です。同種の事件や被告人の状況からして説得的な説明をするのは弁護士が適任でしょう。
また保釈手続きにおいても相場と呼ぶべき適切な額を提示すれば、その金額はある程度認められやすいといえますが、保釈金の相場観も専門家でなければわかりいくいものです。したがって、ご家族は保釈の請求権者ではあるものの、事実上は弁護士でなければ保釈の請求が難しいといえるでしょう。
できる限り早い段階で刑事事件の解決実績がある弁護士に相談することが大切です。
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4、まとめ
身近な方が痴漢事件を起こして起訴されたのであれば、保釈請求を検討する余地があります。裁判官に保釈が認められ、かつ一定の保釈金を支払えば、裁判までのあいだや裁判中でも自宅で過ごすことができ、本人は心身の負担が大幅に軽減されます。社会復帰も早まるため、事件の影響を最小限に抑えやすくなるのも保釈のメリットでしょう。
保釈請求はもちろん、示談交渉などの弁護活動においては弁護士の力が必要といえるでしょう。早いタイミングで保釈を求めたい旨を弁護士へ伝え、保釈金の額も含めて相談してください。
痴漢事件による逮捕や保釈の件でお困りであれば、ベリーベスト法律事務所までご連絡ください。わいせつ行為による刑事事件に対応した実績豊富な弁護士が、力を尽くしてサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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