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盗撮の冤罪被害に遭ってしまった! 対応策と黙秘の有効性について解説
技術の発展には正の面もあれば、負の側面もあります。携帯電話やスマートフォンにカメラ機能が搭載され、日常のシーンを気軽に撮影できるようになった反面、盗撮が行われやすくなるという問題も発生しました。それとともに、何も撮っていないのに盗撮を疑われるという冤罪事件も起きるようになっています。
ここでは、もし自分が盗撮の冤罪に巻き込まれたらどうすればいいのか、また冤罪が起きる原因や疑いをかけられた場合の対処法などについて解説します。
盗撮行為は令和5年7月13日に新設された「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」によって処罰の対象となります。
1、盗撮の冤罪が起きてしまう原因
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(1)盗撮事犯の検挙件数・犯行時間・場所
まずは、盗撮の検挙件数を見ていきましょう。法務省が出している犯罪白書(平成27年版)によれば、平成26年の迷惑防止条例違反の盗撮事犯について、その検挙件数は3265件となっています。
犯行時間ではもっとも多いのが「15時から18時」で27.9%(909件)、次いで「18時から21時」が19.8%(645件)となっており、昼から夜にかけて盗撮が行われやすくなるといえるでしょう。
また、犯行場所は駅構内が最多で32.2%(1049件)、ショッピングモールなど商業施設が28.5%(929件)となっています。駅構内や電車内といった、人通りが多く流動性の高い場所が犯行現場となりやすいのです。
言い換えれば、こういった場所で盗撮の冤罪も起きやすくなるといえます。 -
(2)盗撮の冤罪発生原因:勘違い
盗撮の冤罪が発生する原因として多いのが、勘違いです。誰もがカメラ機能付きの携帯電話やスマートフォンを持ち歩いているため、自分が盗撮されたと思い込みやすくなっているのです。
また、スマートフォンでプレイしているゲーム画面や再生している動画について、スクリーンショットを撮る際にシャッター音が生じ、盗撮の疑いをかけられる原因となる場合もあります。
中には靴ひもを結び直していただけで盗撮を疑われたケースもあり、冤罪の問題は深刻なものとなっています。 -
(3)盗撮の冤罪発生原因:示談金狙い
誤解であれば説明次第でトラブルを回避できるかもしれませんが、示談金目当ての悪質なケースもあります。盗撮の被害者を装う人物が金銭を請求してくるケースのほか、無関係な第三者を装う人物が介入してきて示談を促すというケースもあり、手口は巧妙なものとなっています。
こうした場合、相手は最初から金銭目当てですから、用意周到に準備をしています。誤解を解こうとして弁解をしてみても効果はないでしょう。下手に対応すると「ゆすり」を受けるおそれもあります。
2、これは盗撮? 定義とシチュエーションについて
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(1)盗撮とはどういう行為?
では、盗撮とは具体的にどういう行為を指すのか、定義を確認しておきましょう。
盗撮とは、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、または不安を覚えさせるような下着・身体の撮影をすること、もしくはその常用になることが予想される場所にカメラを設置し、撮影することをいいます。
実は、盗撮罪という名称の犯罪はなく、盗撮行為の処罰にあたっては各都道府県で制定されている迷惑防止条例などが適用されます。そのため、罰則についても都道府県によって異なります。各都道府県の条例の定めにもよりますが、カメラを設置しただけで撮影まではしていないケースでも、設置の正当性が認められないような場合は盗撮にあたる可能性があります。 -
(2)盗撮にあたるシチュエーション
電車内で前に座っている相手の下着などを隠し撮りする行為や、駅の階段で下からスカートの内部などを撮影する行為は、盗撮にあたると考えられます。また、商業施設や学校などの更衣室、トイレに小型カメラを設置する行為も、やはり盗撮と見なされるでしょう。管理者や入浴者の同意なく露天風呂を撮る行為も、盗撮にあたる可能性が高いといえます。
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(3)盗撮にあたらないシチュエーション
海水浴場や祭りの会場など、人の集まる場所で撮影をした結果、同意のない相手が写り込んでしまったという場合は、相手を恥ずかしめたり不安にさせたりするおそれが低いと考えられるため、盗撮にはあたらないものといえるでしょう。
特定の人物ではなく風景が目当てだった場合や、家族・友人を撮ったらたまたま他人も写り込んでしまった場合などは、当然ながら盗撮とは見なされません。
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3、盗撮の冤罪被害に巻き込まれてしまったときの対処法
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(1)盗撮をしていないことの主張
まずは相手や警察に対し、盗撮はしていないとの主張をきちんと行いましょう。このとき、なるべく動揺せずに正々堂々と訴えるのが大切です。また、自らで主張するだけではなく、たとえば電車内であれば周りの乗客に不審な動きはなかったことの証言をしてもらうなど、周囲の協力を得るのも有効です。つり革やかばんで両手がふさがっていたなど、スマートフォンやカメラを構えられる態勢ではなかったといった状況の証言が得られれば、盗撮の疑いも晴れやすくなります。
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(2)データの開示
盗撮をしていれば、撮影した画像や動画のデータがあるはずです。スマートフォンやカメラのデータを相手や警察に開示し、盗撮行為がなかったことを確認してもらうといいでしょう。
ただし、下手にスマートフォンやカメラを操作すると、後から証拠隠蔽(いんぺい)のためにデータを消したのだと言いがかりをつけられるおそれがあります。したがって、盗撮の疑いをかけられた場合、スマートフォンを用いた職場や家族への連絡はなるべく控え、無実の主張を優先させるのが無難です。 -
(3)弁護士への相談
問題は、無実を主張してもデータを開示しても、なお相手が退かなかった場合です。単に引っ込みがつかなくなっているにせよ、最初から示談金目当ての冤罪だったにせよ、問題が大きくなれば、疑いをかけられた側にも不利益が生じてしまいます。
そこで、もし相手が疑いを解かない場合には感情的に反論するのではなく、交番へ同行してもらうなどして、客観的な第三者の意見を交えるようにしましょう。
それにもかかわらず示談金などを請求してくるようであれば、弁護士に相談することをおすすめします。示談金目当てで訴えてきたなら、虚偽告訴罪として法的処置を取ることもできますし、話し合いをする際にも事態をこじらせずに収めやすくなります。
4、盗撮の冤罪で逮捕された場合は黙秘で不起訴になるのは本当?
冤罪にもかかわらず盗撮の容疑で逮捕された場合、どうすれば良いのでしょうか。冤罪ならば、黙秘していれば不起訴になるのでしょうか。
黙秘権や取り調べの対応について確認しておきましょう。
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(1)法で認められた権利としての黙秘権
捜査機関の取り調べや法廷で、不本意な供述を強いられない権利を黙秘権といいます。沈黙し、陳述を拒むことは、質問の無視ではなく、憲法や刑事訴訟法で認められている正当な権利です。
したがって、盗撮の疑いをかけられたとしても、黙秘を続けることは可能です。 -
(2)証拠不十分と黙秘
証拠画像や証言など、盗撮の証拠がない場合、黙秘を続けることで証拠不十分として不起訴になる可能性はあります。「疑わしきは被告人の利益に」といわれるように、犯罪が行われたか不明な場合は、無実として扱われるのが原則だからです。
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(3)黙秘することの問題と対処法
問題は、実際の盗撮犯だったとしてもやはり黙秘する可能性が高く、警察や検察側には被疑者が無実なのか犯人なのかの区別がつかないという点にあります。黙秘さえすれば不起訴になるのだとすれば、罪を犯した人間を裁くことができなくなってしまいます。そのため、黙秘を続けることで、取り調べがより厳しくなることが予想されます。黙秘を貫くには覚悟が必要です。
そこで、真実を明らかにするという観点から、黙秘ではなく積極的に無実を主張するという選択肢もあります。ただし、無罪を主張するのであれば、発言は慎重に行わければいけません。具体的な状況によって、どちらを選択すべきか変わる可能性もあるため、詳しくは弁護士に相談するといいでしょう。
5、まとめ
今回は、盗撮の冤罪被害に遭ったときの対処法について説明しました。
盗撮の冤罪においては、自身の証言によって自らを不利な状況に追い込まないことが重要です。してもいない罪に問われれば、誰しもが冷静ではいられないでしょう。不安や怒りから不要な発言をしてしまうことも考えられます。まずは落ち着いて冷静に話すこと、逮捕された場合は黙秘権を行使して不利になる発言は控え、弁護士に相談するのが最善の対応といえます。
盗撮の冤罪は、個人で対応すると不利な状況に陥りかねません。もしいわれのない盗撮の疑いをかけられてお困りであれば、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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