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弁護士コラム

2020年03月19日
  • 性・風俗事件
  • 痴漢
  • 不起訴

痴漢で逮捕されても不起訴処分になる? 不起訴の基礎知識と示談交渉の流れ

痴漢で逮捕されても不起訴処分になる? 不起訴の基礎知識と示談交渉の流れ
痴漢で逮捕されても不起訴処分になる? 不起訴の基礎知識と示談交渉の流れ

痴漢で逮捕された場合、取り調べのあとに起訴か不起訴かの判断が行われます。そこで不起訴処分となるかどうかは、その後の社会生活にも関わってくる重大な分かれ目となります。

しかし、不起訴とは具体的にどういうことなのか、不起訴になると何がどうなるのかをきちんと理解できている人は、そう多くないようです。

そこで今回は痴漢で逮捕されたケースを取り上げて、不起訴処分の有する意味や効果、不起訴処分を目指すための方法などについて解説します。

1、痴漢での逮捕要件について

  1. (1)痴漢として逮捕されるケース

    ライブイベントや駅、混み合った電車内など、人の多い場所で相手の胸や下半身に触れたりもんだり、あるいは自分の身体を押し付けたりするのが、痴漢行為の典型です。
    人混みでは加害者が特定しにくいと考えてはいませんか?

    しかし、そうとは限りません。

    他の観客や乗客などに取り押さえられたとすれば、現行犯逮捕となる可能性があります。現行犯逮捕を行うには逮捕状は不要です。警察官に限らず、一般人でも現行犯逮捕をすることが可能です。

    これに対し、犯行がたまたま監視カメラなどで撮られていたとか、目撃者がいたなどの理由で犯人が特定され、犯行後日になってから逮捕状が出されて警察官などに逮捕されることを、通常逮捕といいます。被害者が警察へ申告することで捜査が始まるケースが多いでしょう。

  2. (2)どのような要件を充たせば痴漢で逮捕されるか

    痴漢行為をしたからといって、それだけで直ちに逮捕、つまり身柄拘束がなされるとは限りません。身体の自由は基本的人権として憲法で保障されているためです。

    逮捕の要件には、逮捕の理由と必要性があります。犯罪があったとの嫌疑があること(理由)だけでなく、逃亡や証拠隠滅のおそれなどがあること(必要性)が求められるのです。

    また、30万円以下の罰金・拘留・科料となる罪では、原則逮捕はできませんが、住所不定か理由なく出頭要求に応じない場合は逮捕が可能となります。

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2、痴漢における不起訴処分の理由

  1. (1)起訴・不起訴とは何か?

    わかりやすくいうと、起訴とは刑事裁判にかけられることで、不起訴とは刑事裁判にかけられないことです。起訴するか不起訴とするかの判断は検察官が行います。
    起訴されて刑事裁判にかけられると有罪になる可能性が生じますが、不起訴であればすぐに身柄が解放されます。

    起訴には公判請求と略式請求があり、本格的な裁判を行うときは公判請求、書面のみで短期間かつ簡潔に審理するなら略式請求となります。

  2. (2)不起訴処分となる3つのパターン

    不起訴処分となる主なパターンは3つあります。


      ① 嫌疑なし
      まずは、犯人が別にいたことが判明したなど、疑いが完全に晴れた場合は、当然ながら「嫌疑なし」として不起訴処分となります。

      ② 嫌疑不十分
      また、目撃者の証言が不明確であったなど確実に犯人であるとはいえず、裁判を行っても有罪になる見込みが低い場合は「嫌疑不十分」として不起訴処分となります。

      ③ 起訴猶予
      さらに、痴漢行為の証拠もあるけれども被害者との示談が成立しており犯行の程度も軽く初犯だったなどケースでも、不起訴となることがあります。これらの事情がある場合は「起訴猶予」として検察官の判断で起訴を見送る処分となるでしょう。

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3、痴漢で不起訴処分!その際の前科・前歴・無罪との関係

  1. (1)不起訴と前科・前歴の関係

    不起訴となった場合、前科はつきません。しかし、前歴はつきます。
    前科と前歴の違いは、以下の通りです。


    • 前歴とは
    • 「前歴」とは、前歴とは警察や検察により捜査対象となった事実を指します。
      残念ながら、無実だったとしても前歴はつくのです。再び逮捕されたなどの事態に陥ったとき、過去の情報として確認されることになるでしょう。

    • 前科とは
    • 「前科」とは有罪判決を受けたことを指します。
      略式請求(略式起訴)であっても、有罪判決が下り、刑罰が科されることになるため、前科はつきます。

  2. (2)就職・転職のとき、前科・前歴があると伝える必要はある?

    気になるのは、「前科や前歴を履歴書の賞罰欄に書いたり面接で申告したりする必要があるのか」ではないでしょうか。

    結論から言えば、以下の通りです。


    • 前科:申告しなければならないことがあるでしょう
    • 前歴:記載·申告不要です


    ただし、前科は原則申告が必要でも、すでに刑が消滅していれば履歴書への記載は不要との裁判例があります(仙台地方裁判所 昭和60年9月19日判決)。
    刑が消滅するのは、禁錮刑以上であれば執行・免除後10年、罰金刑以上の刑に処せられないで5年経過したときです(刑法第34条の2第1項)。

    なお、前科がある場合、再犯として罪が重くなる可能性が高まります。たとえば強制わいせつ罪での前科があると、性犯罪での再犯は厳しく判断されることとなるでしょう。

  3. (3)不起訴と無罪との関係

    無罪は裁判を経た上で罪がないことが確定したという意味であり、不起訴は単に有罪・無罪が判断されなかったという意味です。
    前述のとおり、嫌疑が晴れたケースもありますし、有罪にできるほどの証拠がないケースも不起訴となります。

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4、痴漢事件で不起訴処分になるためにすべきこと

  1. (1)無実なら否認を貫く

    被疑者として逮捕した以上、警察や検察では「犯人ではないか」との強い疑いをもって取り調べが行われます。犯人を逃がさないという思いから取り調べにも熱が入りますし、かなり厳しい取り調べが行われることも珍しくありません。

    しかし、厳しい取り調べ屈し、何もやっていないのに犯行を認める発言をしてしまうと、そのまま調書を作成されて起訴されてしまう可能性があります。いわゆる冤罪被害者となりかねません。

    無実であるなら、負けることなく否認を貫くべきです。その際には早めに弁護士のサポートを受けるとよいでしょう。

  2. (2)罪を認めるなら示談をする

    逆に痴漢行為を働いたことが事実であれば、下手に否認をすると悪質性が高いとみなされ、罪が重くなるおそれがあります。この場合は素直に犯行を自白し、取り調べにも協力的な態度をとるほうが賢明でしょう。

    また、それに伴って示談をすることも重要です。
    示談とは被害者と話し合うことで謝罪の意を伝え、被害者が受けた被害を賠償することを指します。大抵は示談金を支払い、被害者から「許す」もしくは「処罰は望まない」などの約束をしてもらうことになるでしょう。

    なぜ示談を行うのかといえば、警察や検察、裁判所は、被害者の処罰感情を非常に重視するためです。示談が成立することによって、不起訴処分となりやすくなったり、起訴されても減刑され、執行猶予がつきやすくなったりします。

    したがって示談の成立は起訴判断の前か、遅くとも裁判が行われるまでに目指すべきです。

  3. (3)痴漢事件の弁護活動内容

    犯行を認めるにせよ否認するにせよ、弁護士のサポートがあるのとないのでは、取り調べへの対応や身柄の早期解放などに雲泥の差があるケースがほとんどです。

    被害者と示談をしたいとお考えであれば、痴漢事件のような性犯罪は加害者やその家族が直接出向くとトラブルのもととなりかねないため、弁護士が代わりに交渉するほうが話もまとまりやすくなります。

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5、痴漢事件における示談交渉の流れ

  1. (1)痴漢事件での示談金額の決まり方

    金額は基本的に被害者との協議で決まります。
    ただし、当然のことながら、最終的な決定権は被害者にあることを知っておきましょう。

    とはいえ、まったく基準がないわけでも青天井となるわけではありません。
    犯行内容や被害者の状況などに応じた一定の目安はあります。加害者側がそうした目安をもとに金額を提示し、被害者側とのあいだで調整をしてゆくというのが一般的な金額の決め方といえます。

    弁護士が交渉を対応することで、不当に高すぎる示談金となることや、長期にわたり慰謝料や損害賠償を請求される危険性は回避できるでしょう。

  2. (2)交渉のタイミング

    示談交渉のタイミングにはいくつかの段階がありますが、もっとも重要なことは、起訴される前までに成立させることです。

    たとえ、逮捕されず在宅事件扱いとなったケースであっても同様です。起訴処分の前に示談を成立させ、被害者に許すという意思(宥恕意思)を示してもらうことで、不起訴処分となる可能性がでてきます。

    ただし、起訴までに示談が成立しなくても、示談することに意味がないわけではありません。仮に起訴されたとしても示談の成立が減刑や執行猶予につながることがありますし、刑を受けたあとに莫大な慰謝料を請求される事態を防ぐこともできます。

    罪を犯した方にとって、被害者との示談は重要な意味を持つのです。

  3. (3)弁護士を介した際の交渉の流れ

    痴漢事件では、加害者側から被害者を特定しにくいこと、被害者が直接加害者と顔を合わせての交渉を望まないのが通常です。
    したがって、加害者や加害者家族が直接示談交渉をするケースはほとんどありません。無理に個人で示談交渉を行おうとすると、さらなるトラブルとなる可能性が高いため、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

    依頼を受けた弁護士は、痴漢被害に遭った被害者の精神的ダメージや、それによる不利益などにも配慮して、示談金額の提示や謝罪方法の提案を行っていくことになります。

    たとえば示談金の支払いのほか、謝罪の手紙などを書くように依頼されることもあるでしょう。特に、被害者側が弁護士をつけている場合、お互いに弁護士を介した交渉を進めていくことを強くおすすめします。

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6、まとめ

今回は痴漢で逮捕された場合における不起訴処分の意味や効果、示談交渉について説明しました。

痴漢で逮捕されたとしても、悪質性が低く初犯で示談が成立しているなどの事情があれば、不起訴になる可能性はあります。不起訴となれば前科はつきません。痴漢事件は罪を認める場合でも冤罪の場合でも、弁護士のサポートが必要となります。

特に示談交渉は通常、加害者と被害者のあいだで行われないため、弁護士に依頼して早急に進める必要があります。

痴漢事件で逮捕されてしまった方は、ベリーベスト法律事務所にぜひご相談ください。
重すぎる罪に問われないよう、力を尽くします。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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