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強制わいせつで無罪になるケースとは? 判例や弁護のポイントを紹介
強制わいせつ罪は、その態様から当事者間で「被害に遭った」「無実だ」という争いに発展することがあります。
平成29年9月には、電車内で女性に無理やりキスをした容疑で強制わいせつ罪に問われた男性に無罪判決が言い渡されました。また、令和3年3月には、10代の娘にわいせつな行為をした容疑で50代の男性が強制わいせつ罪などに問われた裁判で、裁判所が無罪判決を言い渡したとも報じられています。
本コラムでは「強制わいせつ罪」が成立する要件や刑罰の内容、具体的な行為の態様などに触れながら、逮捕・勾留される割合、無罪判決が言い渡された判例や、事件の解決に向けた弁護活動などを解説します。
1、強制わいせつ罪とは
まずは「強制わいせつ罪」がどのような犯罪なのかを法的な角度から確認していきましょう。
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(1)「強制わいせつ罪」が成立する要件
強制わいせつ罪は、刑法第176条に定められている犯罪です。条文には「13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者」を罰する旨が明記されています。また、条文の後段には「13歳未満の者に対してわいせつな行為をした者」についても、同じく強制わいせつ罪が成立すると定められています。
対象者、つまり被害者が「13歳以上」であれば暴行や脅迫を用いた場合に限り、「13歳未満」なら暴行や脅迫がなくても本罪の処罰対象です。ここでいう「暴行・脅迫」は、殴る・蹴るといった具体的な暴力や「殺すぞ」といった脅し文句はもちろん、性別や体格の差などを考慮して被害者の抵抗を難しくする程度であれば成立すると考えるのが通説となっています。
「わいせつな行為」とは、性欲を刺激・興奮・満足させ、かつ普通の人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為と定義されています。これらのすべての要件を満たした場合は強制わいせつ罪が成立し、厳しく処罰されます。 -
(2)強制わいせつ罪にあたる行為の例
強制わいせつ罪にあたる行為を列挙してみましょう。
- 衣服のなかに手を差し入れて身体に直接触れる
- 衣服の上から陰部を触る
- 執拗(しつよう)に胸や尻をもんでもてあそぶ
- 無理やりキスをする
- 自らの陰部を相手の身体に押し当てる
これらは、いわゆる「痴漢」にあたる行為でもあります。痴漢にあたる行為は、本罪のほか、都道府県が定める「迷惑防止条例」によって規制されています。
強制わいせつ罪にあたるのか、それとも迷惑防止条例違反になるのかという点について、明確な基準は設けられていませんが、両者を区別する大きなポイントとなるのが「暴行・脅迫の有無」です。各都道府県で多少の差異はありますが、迷惑防止条例では、おおよそ「人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為」をしてはならないと規定しており、暴行・脅迫まで要件に含めていません。
また、行為の態様にも着目する必要があります。
たとえば、衣服の上から胸を触る行為と、衣服のなかに手を差し入れて直接胸を触る行為とでは、被害者が受ける性的羞恥心の強さや恐怖感に大きな差が生じます。触った箇所が同じでも後者は強制わいせつ罪が成立しやすいと考えられます。 -
(3)強制わいせつ罪に関連する犯罪と法定刑
強制わいせつ罪の法定刑は「6カ月以上10年以下の懲役」です。罰金の規定はないので、有罪になれば必ず懲役が下されます。
なお、強制わいせつにあたる行為があった場合、被害者の状態や被害者と加害者の関係などによっては別の犯罪が成立することもあります。ここで挙げる2つの犯罪には、強制わいせつ罪と同じ法定刑が設けられています。● 準強制わいせつ罪(刑法第178条1項)
心神喪失・抗拒不能の状態にある相手にわいせつ行為をはたらいた場合に成立する犯罪です。
● 監護者わいせつ罪(刑法第179条1項)
18歳未満の者の監護者が、その影響力に乗じてわいせつな行為をはたらいた場合に成立します。
また、強制わいせつ罪を含むこれらの罪を犯した際に相手を死傷させると、刑法第181条1項の「強制わいせつ等致死傷罪」となり、無期または3年以上の懲役が科せられます。
2、強制わいせつの具体的な態様とは?
強制わいせつにあたる具体的な行為態様を、シチュエーションを例示しながらさらに詳しくみていきましょう。
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(1)強制わいせつ罪が成立する行為態様
すでに挙げたとおり、身体を執拗(しつよう)に触る、衣服の中に手を差し入れる、陰部を触るなどというケースは、まさに強制わいせつ罪に問われる典型的な行為態様だといえるでしょう。満員電車での痴漢行為だけでなく、相手を暗がりに連れ込み、無理やり身体を触ったりキスをしたりといった行為も同様です。
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(2)準強制わいせつ罪が成立する行為態様
強制わいせつに関するトラブルのなかでも、特に争いになりやすいのが「準強制わいせつ罪」です。
- 合コンで知り合った女性が泥酔していたので、ホテルに連れ込んで衣服を脱がせて身体をもてあそんだ
- 会社の飲み会の途中で、異性の同僚が寝入ってしまったことに乗じてキスをした
これらのケースは、特に「同意があった」「同意はしていない」という争いに発展しやすい傾向があります。思いがけず容疑をかけられてしまう事例も少なくありません。
また、医療行為やマッサージなどの施術の機会にわいせつな行為をはたらいたとして本罪に問われるケースも目立ちます。
平成28年には、女性患者の右乳腺腫瘍を摘出する手術をおこなった医師が「手術直後に左胸をなめた」という容疑で本罪に問われる事例がありました。被害者の女性が麻酔の影響で幻覚をみていた可能性があるとして無罪を言い渡した一審について、二審は女性の身体から検出された医師のDNA量が多いと判断して有罪を言い渡しています。令和4年2月には、さらに最高裁が「DNA鑑定の審理が尽くされていない」として審理を差し戻したことが報じられており、真相の究明が極めて難しい犯罪であることがわかります。 -
(3)強制わいせつ罪の容疑で逮捕・勾留される割合
令和2年の検察統計から、強制わいせつ罪の容疑をかけられた人が逮捕・勾留される割合をチェックしてみましょう。
- 検察庁が処理した総数……3903人
- 逮捕された人数……………2170人
- 勾留請求された人数………2108人
- 勾留された人数……………1989人
この統計に照らすと、逮捕された割合は55.5%です。刑法犯全体の平均が38.5%なので、強制わいせつ罪は「逮捕されやすい犯罪」だといえます。また、検察官が勾留を請求した場合に許可された割合は94.3%となっており、ほとんどのケースで勾留による身柄拘束を受けている状況がうかがえます。
3、強制わいせつ事件を起こした場合のリスク
強制わいせつ事件を起こしてしまうと、さまざまな不利益が生じます。
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(1)逮捕・勾留によって長期にわたり社会から隔離されてしまう
強制わいせつ罪の容疑で警察に逮捕されると、警察段階で最大48時間、送致されて検察官の段階で最大24時間の合計72時間にわたる身柄拘束を受けます。さらに、検察官の請求によって裁判官が勾留を認めると、最長20日間にわたって身柄拘束が延長されます。
逮捕から勾留満期までの拘束期間は合計で最長23日間になり、この期間は自宅へ帰ったり会社や学校へ通ったりもできません。携帯電話・スマホも一切使えないので連絡も不可能です。自由な生活から一転して厳しい制限を受けることになるため、精神的にも肉体的にも大きな負担を感じることになるでしょう。 -
(2)逮捕が実名で報道されてしまう
容疑者を逮捕した警察は、共犯者の逃亡が予想されるなどの特殊なケースを除いて、その情報をマスコミに提供しています。少年犯罪を除いて原則は実名が提供されているため、報道各社の判断によってはニュースや新聞などで実名報道を受けることになるでしょう。「強制わいせつの容疑で逮捕された」という事実が広く社会に発信されることで、さらなる不利益をまねくことになります。
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(3)家庭崩壊や家族の離散をまねいてしまう
強制わいせつ罪は、ケンカによる傷害事件や金銭苦からの窃盗・詐欺事件などと比べると社会的に強い非難を受ける傾向があります。発覚すれば、家族や親族からの信用を失い、家庭崩壊や離婚・離縁といった家族の離散をまねく危険が高いでしょう。
また、たとえ家族が一定の理解を示して支えてくれたとしても、同じ場所に住みにくくなってしまうおそれもあります。SNSなどで住所が特定されてしまい、いたずら電話やいやがらせ行為を受けたり、子どもが学校でいじめに遭ってしまったりといった事態に陥るかもしれません。 -
(4)勤務先から解雇されてしまう
「逮捕された」という事実だけでは、会社が解雇することは許されません。ただし、就業規則などで「罰金以上の有罪判決を受けた場合は解雇」などの条件が明示されていたり、一定の信頼性が求められる職種で逮捕・刑罰を受けた事実が会社の信頼を大きく損なったりするようなケースでは、解雇が妥当と判断されることもあります。また、突然の逮捕・勾留によって長期にわたる無断欠勤が続いた場合も、会社の規則によっては解雇されてしまうおそれがあります。
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(5)前科によるさまざまな制限を受ける
刑事裁判で有罪判決を受けて刑が言い渡されると「前科」がついた状態になり、さまざまな制限を受けてしまいます。たとえば、警備員・保険外交員・士業・公務員などは、禁錮以上の前科があると、少なくとも一定期間その職を離れざるを得ません。また、海外には前科があると入国を拒否する国もあり、海外渡航する機会の多い仕事に就いていると業務に支障をきたしてしまうこともあります。
前科は極めて重要かつ秘匿性の高い個人情報なので、ニュースなどで報じられない限り、一般には公開されません。しかし、個人的な興味から刑事裁判を傍聴した人がネット掲示板や個人ブログ、SNSなどで情報を発信して拡散されてしまうこともあるので、事件が終了し時間がたったとしても悪影響が残ってしまう危険があります。 -
(6)同種のわいせつ犯罪よりも厳しい刑罰が科せられてしまう
都道府県の迷惑防止条例や軽犯罪法と異なり、
強制わいせつ罪で有罪になれば、必ず懲役刑が言い渡され、執行猶予がつかない限り刑務所に収監されてしまいます。
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4、強制わいせつ事件で無罪になるケースとは?
突然、身に覚えのない強制わいせつ事件の容疑をかけられてしまった、同意のうえだと思っていたのに被害を訴えられたといったケースでは「無罪」を主張したいと考えるのが当然です。しかし、わが国の刑事裁判では「ほとんど無罪が期待できない」ともいわれています。一体、どのようなケースなら無罪が期待できるのでしょうか?無罪が期待できなければ刑罰を避ける方法はないのでしょうか?
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(1)わいせつ事件で無罪判決が言い渡される割合
裁判所が公開している司法統計によると、令和2年中に強制わいせつ罪や強制性交等罪を含むわいせつ犯罪について、第一審で判決を言い渡された被告人の数は1360人でした。うち、無罪が言い渡されたのはわずか6人で、割合は0.4%と極めて低く、現実的には「ほぼ有罪」といえるでしょう。
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(2)実際に無罪となった判例
無罪が言い渡される可能性は極めて低いとはいえ、少数ながら無罪になった実例も存在しています。第一審・第二審ともに男性に有罪判決が言い渡されていたものの、最高裁での逆転無罪となった事例もあります。
【平成19(あ)1785 最高裁 平成21年4月14日】
平成18年4月、電車内において17歳の女性客に対し、パンティのなかに左手を差し入れて陰部を手指でもてあそんだ容疑で強制わいせつ罪に問われた男性が、最高裁で無罪判決を言い渡されました。
裁判所は、無罪と判断した理由についていくつかの事情を挙げています。- 男性が当初から一貫して犯行を否認していたこと
- 男性にわいせつ犯罪をおこなうような性向がうかがわれないこと
- 被害を裏付ける証拠は被害者の証言のみだったこと
- 被害者が供述する被害状況に不自然な点があったこと
同じような状況があれば必ず無罪になるとは断言できませんが、無罪判決を目指すうえでは参考になるでしょう。
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(3)無罪になるとその後はどうなるのか?
刑事裁判で無罪判決が言い渡されると、被告人としての勾留が解除され、直ちに釈放されます。刑罰は科せられないので万事解決と考えたいところですが、現実はそう甘くありません。
刑事裁判で無罪になっても、社会には「強制わいせつ罪で逮捕された」という記憶が残っています。冒頭で紹介した電車内で女性に無理やりキスをした容疑をかけられたものの無罪になった男性は、判決後の取材で「勾留中に仕事をなくして家も追い出された、元の生活に戻りたい」と苦しい胸中を語ったそうです。無罪になったとしても、失われた社会的な信用や地位を取り戻すことは容易ではありません。 -
(4)無罪が期待できない場合は「不起訴処分」を目指すべき
わが国の司法制度では、無罪判決を望むのは困難です。しかし、容疑をかけられたとしても必ず有罪になるわけではありません。検察官が起訴しなければ刑事裁判は開かれないので、有罪になることも、前科がつくこともないのです。強制わいせつ罪の容疑をかけられてしまい、厳しい刑罰を回避したいと望むなら、弁護士に依頼して不起訴処分を目指すのが最善策だといえます。
5、強制わいせつ事件における弁護活動
弁護士に強制わいせつ事件の弁護を依頼すると、どのような活動が期待できるのでしょうか?
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(1)犯行を認める場合の弁護活動
実際に強制わいせつ罪に該当する行為をはたらいていたとしても、「刑罰は避けられない」と考えるのは早計です。
罪を認めているなら、示談交渉の場を設けて真摯(しんし)に謝罪し、賠償を尽くしましょう。被害者との示談が成立し、被害者から「加害者を許す」という意向を得れば、検察官が不起訴処分を下す可能性は大いに高まります。
ただし、強制わいせつ事件の被害者は、加害者に対して強い怒りや嫌悪の感情をもっているものです。保身ばかりを考えて強引に示談交渉を進めようとすると、被害者の反感を強めてしまうかもしれません。被害者の心情を最大限に配慮できる弁護士が代理して交渉を進めるのがもっとも安全です。 -
(2)犯行を否認する場合の弁護活動
無実であるのに疑いをかけられてしまった場合は、当然、無罪を主張していくことになるでしょう。容疑をかけられた以上は厳しい取り調べを受ける事態は避けられませんが、取調官の圧力に屈することなく犯行を否認しなくてはなりません。
もし犯行を認めるような供述をしてしまうと、供述調書にその旨が録取され、その後の証拠にされてしまいます。どちらとも解釈できるようなあいまいな供述も危険です。必要となれば黙秘権を行使して一切の供述を拒み、安易な供述を避けるといった対応も有効でしょう。 -
(3)無罪判決を目指すなら弁護士選びが重要
厳しい取り調べに対応しながら、自らの無実を証明するために有効な証拠を収集するためには、弁護士のサポートが必須です。ただし「弁護士なら誰でもいい」というわけではありません。刑事事件を解決するには、借金問題や離婚問題などの民事的なトラブルとはまったく違った視点に立った弁護活動が必要です。
特に強制わいせつ罪は事実の争いが起きやすい犯罪で、無罪判決を目指すには検察官が証明しようとする事実に対抗するための証拠を収集しなくてはなりません。弁護士自身の知識と経験が問われるため、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士を選ぶことが極めて重要です。
6、強制わいせつ事件で示談交渉が重要な理由
強制わいせつ事件で早期解決を望むなら、被害者との示談交渉が重要です。被害者との示談成立が重視されるのは、ここで挙げるような理由があります。
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(1)不起訴処分の可能性が高まるから
検察官が起訴・不起訴の決断を下すよりも前に被害者との示談が成立すれば、不起訴処分の可能性が高まります。強制わいせつ罪は、検察官の起訴にあたって被害者の告訴を要しない「非親告罪」であるため、被害届や告訴の取り消しがあっても必ず起訴を回避できるとは断言できません。しかし、謝罪と賠償を尽くし、被害者が「加害者を許す」という意思を示していれば、検察官が「刑事裁判を開いて罪を問う必要はない」と判断しやすくなります。
不起訴処分は「刑罰を下す必要はないので刑事裁判は開かない」とする検察官の決定です。
刑事裁判が開かれなければ、当然、有罪判決を受けることもないので、厳しい刑罰を回避でき、前科もつきません。 -
(2)刑事裁判の判決に大きく影響するから
示談交渉が難航して検察官が起訴するまでに示談が成立しなくても、示談成立の効果が失われるわけではありません。被害者に対して真摯(しんし)に謝罪し、賠償を尽くしているという事実は、深い反省を示す材料として高く評価されます。検察官の起訴を避けられず、刑事裁判が開かれたとしても、裁判官が量刑を判断するにあたって有利な事情として扱われます。
強制わいせつ罪の法定刑は6カ月以上10年以下の懲役です。最短なら6カ月、最長では10年の懲役なので、どの程度の量刑が言い渡されるのかによってその後の生活や社会復帰の難易度は大きく変わるでしょう。
裁判官が量刑を判断する際には、さまざまな要素が総合的に考慮されます。とりわけ、被害者に対する謝罪の意思や賠償の有無は、本人の反省の程度を示す重要な材料となるので、たとえ有罪判決を避けられない状況でも被害者との示談交渉は積極的に進めるべきです。
7、強制わいせつ罪で無罪を主張するなら弁護士に相談を
強制わいせつ罪に限らず、刑事事件の容疑者となった場合に無罪を主張するのは容易ではありません。無罪の主張には弁護士のサポートが必須です。
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(1)冤罪(えんざい)の回避が期待できる
無実であるのに刑事裁判で有罪判決を受けて刑罰が科せられることを「冤罪」といいます。強制わいせつ事件における無罪の割合は0.4%と極めて低い数字ですが、有罪となった被告人のなかには、無実であるにもかかわらず主張が認められないまま有罪となってしまった人が存在するかもしれません。しかし、冤罪は決してあってはならない事態です。
弁護士のサポートがあれば、無罪を主張し、検察官が証明しようとしている事実に対抗するための証拠収集が期待できます。 -
(2)早期にサポートを得れば逮捕の回避も期待できる
強制わいせつ罪にあたる行為があり、被害者が「警察に届け出をする」と述べている段階であれば、弁護士のサポートはさらに効果を増します。まだ警察が事件を認知していない段階なら、被害者との示談を成立させることで、被害者の提出や告訴を回避できるかもしれません。すでに警察が事件を認知していても、逮捕状請求に至っていなければ被害届・告訴の取り下げによって事件が終結する可能性が高まります。
早期の示談成立は、逮捕の回避につながります。警察に逮捕されれば、起訴・不起訴の判断までに最長23日間にわたる身柄拘束を受けるおそれがあるため、逮捕の回避がもたらす利益は極めて大きいでしょう。無罪判決を得るには高いハードルを越えなければなりませんが、早期に事態を収拾することで無罪以上の解決効果が期待できます。 -
(3)早期釈放や不起訴処分などの有利な処分も期待できる
警察に逮捕されてしまうと、社会から隔離された状態が続きます。解雇や退学、家族の離散といった不利益を避けるためには早期釈放が欠かせません。弁護士のサポートを得れば、捜査機関へのはたらきかけによる勾留の回避、勾留決定に対する不服申し立てである「準抗告」や「抗告」、起訴後の一時的な勾留解除である「保釈」といった制度を活用した早期釈放が期待できます。
また、検察官が起訴を決定するまでに被害者との示談を成立させれば、不起訴処分が下されて刑事裁判を回避できる可能性も生じます。早期釈放による社会的な影響の軽減と不起訴処分による刑事裁判の回避は、無罪判決を目指すよりも堅実な解決策だといえるでしょう。
8、まとめ
強制わいせつ罪は6カ月以上10年以下の懲役が科せられる重罪です。容疑をかけられてしまうと高い割合で逮捕されるだけでなく、刑事裁判で無罪判決が得られる割合は0.4%と極めて低いという現実があります。一人で無罪の主張を貫いたり、被害者との示談交渉を行ったりすることは容易ではありません。特に、このような事件類型で、容疑者本人やその家族が示談交渉を進めようとするのは、とてもハードルが高いと言わざるを得ません。
無実であるのに容疑をかけられている、実際に強制わいせつ罪にあたる行為があり今後の手続に不安があるという方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が全力でサポートします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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