- 性・風俗事件
- 強制性交等罪
- 時効
強制性交等罪の時効は何年? 後日逮捕の可能性と時効を待つリスク
犯罪には「時効」が存在します。ドラマや映画などフィクションの世界では、被疑者が時効成立まで逃亡する姿がたびたび描かれますが、実際に時効が成立するケースが存在するのは確かです。
たとえば、平成14年には、昭和62年に発生した新聞局襲撃事件について、被疑者が不明のまま時効を迎えました。散弾銃で複数の記者を死傷させた事件ですが、たとえ今この事件の被疑者が発見されたり、自ら名乗り出たりしても、罪を問われることはありません。
では、いわゆるレイプ行為などに適用される「強制性交等罪」も、やはり時効を待てば逮捕や刑罰を避けられるのでしょうか? 本コラムでは、強制性交等罪の時効について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
令和5年7月13日に強制性交等罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
1、強制性交等罪とは? 処罰の対象となる行為や罪の重さ
強制性交等罪は、平成29年の刑法改正によって登場した犯罪です。
刑法第177条に定められており、改正前は「強姦(ごうかん)罪」という名称でした。
ここでは、強制性交等罪が成立する要件や刑罰の重さ、旧強姦罪との違いなどを確認していきます。
-
(1)強制性交等罪とは? 成立の要件
刑法第177条の条文によると、13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いて性交・肛門性交・口腔(こうくう)性交をした者を強制性交等罪とすると明記されています。
保護の対象は「13歳以上の者」なので、満13歳以上であれば男女の区別はありません。
では「13歳未満が相手なら強制性交等罪は成立しないのか?」という疑問が生じるかもしれませんが、13歳未満が相手となった場合は、お互いが同意していても本罪の処罰対象です。
「暴行または脅迫」とは、殴る・蹴る・脅すといった行為に限らず、相手の犯行を著しく困難ならしめる程度であればよいとされています。つまり、具体的な暴力や脅しは必ずしも必要としないというのが法律の考え方です。
年齢・体格差・場所や状況などによっては、相手が無抵抗でも「抵抗できなかった」と主張することで本罪が成立する可能性もあります。
「性交・肛門性交・口腔性交」とは、男性の陰茎を女性の膣(ちつ)・肛門・口腔に挿入する行為を指します。 -
(2)強制性交等罪の刑罰
強制性交等罪の法定刑は、「5年以上の有期懲役」です。
原則として執行猶予が付されません。
有罪判決が言い渡されればほぼ確実に刑務所へと収監されてしまう重罪だと心得ておきましょう。 -
(3)強姦(ごうかん)罪との違い|なぜ強制性交等罪へと強化されたのか?
旧強姦罪が処罰の対象としていたのは「性交」のみで、肛門性交・口腔性交は罪の軽い強制わいせつ罪に問われるだけでした。
また、処罰の対象を男性に限定しており、たとえば女性が恨みのある女性への嫌がらせなどで男性の協力を得て強姦させたといったケースでは、強姦をそそのかした教唆犯にはなり得ても、本犯にはなり得ません。
さらに、旧強姦罪は被害者の告訴がなければ加害者を刑事裁判にかけることができない「親告罪」であったため、捜査や刑事裁判で被害体験を想起してしまうなどの二次被害を懸念し、告訴を断念する被害者も少なからず存在していました。
しかも、旧強姦罪の法定刑は3年以上の懲役であり、執行猶予が得られる余地も十分にあり、「刑罰が軽い」という指摘も多かったという背景があります。
このような問題点から、強姦罪の厳罰化と処罰される行為の拡大を求める社会の声が高まり、平成29年の改正に至ったのです。処罰の対象から男女の区別を撤廃し、処罰される行為を拡大したうえで、法定刑を引き上げて非親告罪とすることで、加害者により厳しい刑罰が科せられる法体制が整備されています。
2、強制性交等罪の時効は何年? 時効完成まで逃げることは可能か?
強制性交等罪にも「時効」が存在します。
では、何年たてば強制性交等罪を犯しても刑事責任を問われずに済むのでしょうか?
-
(1)刑事事件における時効の考え方
刑事事件における時効とは、主に「公訴時効」を指して用いられます。
公訴時効とは、検察官が刑事裁判を提起するまでのタイムリミットです。
公訴時効が完成すれば検察官が起訴できなくなるので、刑事裁判が開かれません。
日本の法律では、公平な裁判を経なければ刑罰を科せられないので、公訴時効が完成すれば刑事裁判が開かれず、刑罰も受けないのです。 -
(2)強制性交等罪の公訴時効
公訴時効は、犯罪ごとに定められている法定刑に応じて決まります。
刑事訴訟法第250条2項によると、最長で15年以上の懲役・禁錮にあたる罪の公訴時効は10年であり、強制性交等罪はこの規定に該当します。
つまり、強制性交等罪の公訴時効は10年です。
強制性交等罪にあたる事件を起こしても、その日から10年が経過すれば刑罰は科せられません。
3、強制性交等罪で後日逮捕される可能性は?
強制性交等罪は、事件を起こしてもすぐに逮捕されるとは限りません。
被害に遭った女性が当日あるいは翌日以降に警察へと被害を申告し、発覚後も事件としてすぐに動くこともあれば、そもそも事件性の有無について慎重に吟味する場合もあるので、逮捕の可能性は相当期間つきまといます。
-
(1)強制性交等罪で逮捕される割合
令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に全国の検察庁で処理された強制性交等罪事件は1500件でした。
うち、逮捕を伴ったのは864件なので、逮捕された割合を指す身柄率は57.6%となります。
この数字だけをみれば、逮捕の可能性は半々程度だといえるでしょう。 -
(2)「逮捕されない=罪を問われない」と考えるのは間違い
逮捕は、被疑者の逃亡・証拠隠滅を防いで正しい刑事手続きを進めるために身柄を拘束する強制処分のひとつです。
つまり「逮捕=刑罰を受ける」というわけではありません。
強制性交等罪の身柄率は57.6%でおよそ半々ですが、同じく令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に全国の警察が認知した強制性交等罪事件の数は1388件で、うち1330件が検挙に至っています。検挙率は95.8%で、殺人や強盗といった凶悪犯罪に迫る高さです。
これは、強制性交等罪事件の多くが、友人や知人、会社の同僚、元交際相手など、顔見知りの関係において起きやすく、加害者が特定されやすいという特徴が影響していると考えられます。
逮捕されなかったとしても、身柄を拘束しない任意の在宅事件として取り調べを受けることになり、検察官が起訴に踏み切って刑事裁判で有罪判決が下されると刑罰が科せられるので、逮捕されなかったからといって安心してはいけません。
弁護士との電話相談が無料でできる
刑事事件緊急相談ダイヤル
- お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- 警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
4、強制性交等罪の被疑をかけられたら弁護士に相談を
実際に強制性交等罪にあたる行為があった、あるいは同意のうえだと思っていたのに相手から「訴えてやる」などと言われている状況なら、弁護士への相談を急いでください。
-
(1)素早い示談交渉で刑事事件化の回避が期待できる
強制性交等事件をもっとも穏便なかたちで解決できる方法が、被害者との示談による和解です。
被害に遭わせたことを真摯(しんし)に謝罪したうえで、被害者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料や病院の治療費・検査費などをあわせた示談金を支払うことで、警察への被害届や刑事告訴を取り下げてもらえる可能性が高まります。
早い段階で示談が成立すれば、警察に事件のことを認知されないまま解決できる可能性もあるでしょう。
ただし、強制性交等事件の被害者の多くは、加害者に対して強い怒りや恐怖を抱いているため、示談交渉をもちかけても断られてしまうかもしれません。
断られているのにしつこく示談交渉をもちかけていると「脅されている」といった誤解を与え、トラブルがさらに大きくなってしまう危険もあるので、示談交渉は弁護士にまかせたほうが安全です。 -
(2)逮捕や厳しい刑罰を避けるための弁護活動が期待できる
警察に逮捕されてしまうと、逮捕の段階で最大72時間、勾留されると最大20日間にわたる身柄拘束を受けます。
家庭・会社・学校といった社会生活から完全に隔離されてしまうので、身柄拘束が長引けば長引くほど、社会復帰は難しくなるでしょう。
さらに検察官が起訴に踏み切ると、ほぼ確実に有罪判決が言い渡されてしまいます。
強制性交等罪は法定刑が5年以上の有期懲役で、原則として執行猶予がつかないので、刑務所へと収監されてしまう事態を覚悟しなければなりません。
弁護士に相談すれば、逮捕や厳しい刑罰を回避するための弁護活動が期待できます。
被害者との示談交渉によって早期に和解できれば、逮捕を避けられる可能性が高まるだけでなく、事件化されても不起訴処分が得られるかもしれません。
そもそも、強制性交等事件はほかの目撃者などが存在しにくく、被害者の供述に偏りやすい犯罪です。
起訴までに被害者との示談が成立すれば「刑事裁判の過程で被害を想起させるなど被害者が精神的苦痛を受けるかもしれない」といった観点から、不起訴処分になる可能性も高まります。
また、刑事裁判の場で深い反省や性的な習癖の治療に取り組む姿勢などが認められれば、法律の定めによる「減軽」が得られて判決に執行猶予が付される可能性も生じます。
どのような対策が有利な結果をもたらすのかを判断するのは難しいので、経験豊富な弁護士のサポートは必須です。 -
(3)冤罪に対しては毅然と対処することも重要
一方で、男女の関係に基づくトラブルは、行為後の事情によって生じる場合もあります。浮気交際相手にバレた、示談金がとれるかもしれないと知人に唆された、性行為後の対応が相手を傷つけた、そのような事後的な事情で、強制性交を訴えられることもあります。
この場合は、穏便におさめようと取ったちょっとした対応の誤りから、犯罪として捜査されてしまうこともあるため、罪を否定するための作法を意識する必要があります。
この様な場合も、弁護士に依頼することで致命的なミスを回避することができ、有益です。
5、まとめ
強制性交等罪の時効は「10年」です。
事件発生から10年が経過すれば刑事裁判が開かれないので刑罰も科せられません。
ただし、10年にわたって警察から逃れる生活を送るのは容易ではないので、素早い社会復帰を望むなら、弁護士に相談して被害者との示談交渉を進めるなど、積極的に解決を図るべきです。
強制性交等事件の解決は、ベリーベスト法律事務所におまかせください。
刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、被害者との示談交渉などの弁護活動を通じて逮捕・刑罰の回避や処分の軽減を目指します。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。