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電車での盗撮はどんな罪になる? 逮捕・起訴を回避する方法


電車内や駅で盗撮をすると、撮影罪(性的姿態等撮影罪)などによって逮捕・起訴され、刑事罰を受ける可能性があります。有罪判決を受ければ前科がつき、就職や社会生活などにおいて不利益を被る事態になりかねません。
そのため、電車や駅で盗撮をして逮捕された場合は、速やかに弁護士に依頼し、適切な弁護活動を受けることが重要です。
本記事では、電車や駅における盗撮について、成立しうる犯罪の種類や法定刑、刑事手続きの流れ、裁判例などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 電車や駅での盗撮で問われる可能性がある罪
- 盗撮をして逮捕された後の流れ
- 逮捕や起訴・重い処分を回避するためにできること
1、電車や駅での盗撮について成立する犯罪
電車や駅のエスカレーター・ホームなどでの盗撮行為は、「性的姿態等撮影罪」や各都道府県の「迷惑防止条例違反」として、処罰の対象となる可能性があります。
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(1)性的姿態等撮影罪
性的姿態等撮影罪は、性的な部位やわいせつな行為を無断で撮影する行為を処罰するために定められた犯罪であり、電車内での盗撮行為にも適用される可能性があります。
法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です(性的な姿態を撮影する行為等の処罰に関する法律 第2条)。
性的姿態等撮影罪の対象となる行為には、以下のようなものがあります。
① 盗撮行為
正当な理由がないのに、他人の性的な姿態等をこっそり撮影する行為です。
「性的姿態等」とは、以下のいずれかを指します。
- 性器、肛門、その周辺、臀部(でんぶ)または胸部など、性的な部位を直接または下着や衣服越しに写したもの
- わいせつな行為や性交等をしている人物の姿態
② 本人の自発的な同意がない撮影
被写体が撮影を拒否していなくても、暴行や脅迫などによって自由な意思に基づく同意が得られていない場合は、違法とされます。
③ 本人を誤信させたうえでの撮影
「性的な内容ではない」「特定の人しか見ない」などと誤信させて撮影する、またはその誤解に乗じて撮影を行うことも処罰の対象となります。
ただし、①~③いずれの場合も、本人が不特定または多数の人に見られることを承知のうえで、自ら性的な部分を露出したり、自分でその様子を撮影したりしているような場合は、処罰の対象になりません。
④ 性的同意年齢に満たない者の撮影
正当な理由がないのに、13歳未満の者の性的姿態等を撮影する行為は処罰の対象となります。
また、13歳以上16歳未満の者の性的姿態を、本人よりも5歳以上年長の者が撮影する行為も処罰の対象です。
電車や駅のエスカレーター・ホームなどにおける、スマートフォンなどによる動画・画像の盗撮行為は原則として「性的な部分を無断で撮影する行為」として①に該当し、性的姿態等撮影罪による処罰対象となる可能性があります。
なおこの罪は、被害者の性別に関係なく適用される点にも注意が必要です。 -
(2)迷惑防止条例違反
電車や駅のエスカレーター・ホームなどにおける盗撮行為は、各都道府県が定める「迷惑防止条例」にも違反する可能性があります。
たとえば東京都の迷惑防止条例では、正当な理由なく人の下着などを撮影した場合、「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」に処すると定められています(東京都迷惑防止条例 第5条第1項第2号、第8条第2項第1号)。
ただし、令和5年(2023年)7月13日に「性的姿態等撮影罪」が新設されたため、法律として定められて以降は、盗撮行為についてはこの法律に基づいて立件されるケースが多くなっており、条例違反よりも優先して適用されることが一般的です。
盗撮して前科を回避する方法について詳しくは下記をご覧ください。
2、電車や駅で盗撮をすると、逮捕されるおそれがある
電車や駅における盗撮行為は犯罪であるため、現場で発覚した場合は直ちに逮捕されるおそれがあります。
たとえ盗撮の現場から逃げ出したとしても、防犯カメラの映像や目撃証言、交通系ICカードの履歴などから身元が特定され、後日逮捕されるケースも少なくありません。
「逃げ切れたから大丈夫」などと考えるのは非常に危険です。
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(1)逮捕の種類
盗撮事件では、次のいずれかの方法で逮捕されることがあります。
① 現行犯逮捕
盗撮の現場で発覚した場合などに、逮捕状なしでその場で行われる逮捕です。(刑事訴訟法第212条)
警察などの捜査機関だけではなく、一般人(私人)による現行犯逮捕も認められています。
② 通常逮捕
裁判官が発行する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。(刑事訴訟法第199条第1項)
盗撮の現場から逃走した場合や、あとになって証拠が集まった場合などに、後日、自宅や勤務先で身柄を確保されることがあるため、「後日逮捕」とも呼ばれます。
証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されると、通常逮捕が行われる可能性があります。
③ 緊急逮捕
死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があり、急速を要するため逮捕状の発行を請求できない場合に行われる逮捕です。(刑事訴訟法第210条)
緊急逮捕を行った場合、その後直ちに裁判官に対する逮捕状の請求が必要です。
盗撮については、その場で逮捕される場合には現行犯逮捕、後日逮捕される場合は通常逮捕または緊急逮捕となります。ただし、盗撮で緊急逮捕が行われるケースはまれであるため、実際には現行犯逮捕か通常逮捕のいずれかであると理解しておきましょう。
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(2)現場から逃げ出しても、後日逮捕されることがある
盗撮現場から逃げ出したとしても、被害者が被害届を提出すれば、警察は防犯カメラの映像を調べる、目撃者を捜す、交通系ICカードやスマートフォンの利用履歴を調べるなど、身元を特定するための捜査を行います。
その結果、後日、通常逮捕(いわゆる後日逮捕)されるケースも少なくありません。
性的姿態等撮影罪の時効は3年なので(刑事訴訟法第250条第2項第6号)、盗撮行為から3年間が経過するまでは、逮捕される可能性があります。
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- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、盗撮で逮捕されたらどうなる? その後の刑事手続きの流れ

盗撮で逮捕された場合は、刑事手続きによって身体拘束や刑の執行が行われることになります。
逮捕後の刑事手続きの流れは、以下のとおりです。
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(1)逮捕~勾留請求
逮捕されると、まずは警察署の留置場に収容され、最大で72時間まで身柄を拘束されることになります(刑事訴訟法第203条、第208条)。
検察官が身柄拘束を延長すべきと判断した場合には、裁判官に対して勾留請求を行います。裁判官は、住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれのいずれかが認められ、かつ勾留の必要性があると判断した場合には、勾留状を発行します。 -
(2)起訴前勾留
裁判官が勾留状を発行した場合は、逮捕から起訴前勾留へ移行します。起訴前勾留の期間は原則10日間で(刑事訴訟法第208条)、延長された場合は最長20日間です。
起訴前勾留の期間中に捜査が行われ、検察官は被疑者を起訴するかどうか判断します。 -
(3)正式起訴・略式起訴・不起訴の判断
勾留期間が満了するまでに、検察官は以下のいずれかの処分を行います。
・正式起訴
公判手続き(公開法廷における刑事裁判)を通じて、被疑者(被告人)に刑罰を与えることを求める処分です。罰金刑以上を求刑する場合などに行われます。
・略式起訴
簡易裁判所の略式手続きを通じて、100万円以下の罰金または科料を求刑する場合に利用される手続きです。公開の裁判を経ず、書面だけで手続きが完了しますが、前科はついてしまいます。
・不起訴
証拠が不十分、示談成立、前科がないなどの事情から、刑事裁判にかける必要がないと判断された場合は、不起訴となって即時釈放されます。前科はつきません。 -
(4)起訴後勾留|保釈請求が可能
不起訴の場合は直ちに釈放され、略式起訴の場合は罰金等を納めれば釈放されますが、正式起訴の場合は起訴後勾留に移行して引き続き身柄を拘束されます。
起訴後勾留の期間中、被告人は弁護人と相談しながら、公判手続きに向けた準備を整えます。また、起訴後勾留に移行した後は、裁判所に対して保釈請求が可能です(刑事訴訟法第89条、第90条)。
保釈が認められた場合は、保証金(いわゆる保釈金)を納めることで、一時的に身柄の拘束が解かれます。 -
(5)公判手続き・判決・刑の確定および執行
公判手続きでは、検察官が被告人の犯罪事実を立証し、被告人側がそれに対して反論や弁明を行います。
被告人としては、罪を認めて情状酌量を求めるか、または犯罪事実そのものを争って無罪を主張するかの2通りの方針があります。弁護人と相談して、どのような方針で公判手続きに臨むかを決めましょう。
公判手続きの審理が終わると、裁判所が判決を言い渡します。
判決に不服がある場合は、高等裁判所に対する控訴、さらに最高裁判所に対する上告が認められています(刑事訴訟法第374条・第405条など)。
最終的に判決が確定し、有罪判決の場合は刑が執行されます。
ただし、有罪判決に執行猶予が付けられた場合には、刑の執行が一定期間猶予され、その間に再犯がなければ刑は執行されません(刑法第25条)。
4、盗撮について、逮捕・起訴や重い刑事処分を回避する方法
盗撮をしてしまった場合に、逮捕・起訴や重い刑事処分を回避するには、早い段階で弁護士に相談し、適切な対応をとることが重要です。
主に以下のような方法があります。
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(1)情状や身柄に関する良い事情を集める
不起訴に向けた弁護活動や公判手続きにおける情状弁護を依頼すれば、逮捕・起訴や重い刑事処分を回避できる可能性が高まります。
たとえば、安定した住居があることや、家族による監督体制が整っていることなどは、良い情状として考慮されます。 -
(2)早期の自首を検討する
盗撮が発覚していない段階で、自ら警察に出頭して事実を認めた場合は、「自首」として刑の減軽や不起訴処分の可能性が高まることがあります(刑法第42条)。
ただし、出頭のタイミングや内容によっては自首が認められない場合もあるため、事前に弁護士の助言を受けることが望ましいです。 -
(3)被害者との示談を目指す
被害者が判明している場合、弁護士を通じて謝罪や賠償を行い、示談が成立すれば不起訴となる可能性が高くなります。
ただし、被害者感情が強い場合や、未成年者が被害者の場合は交渉が難航することもあるため、専門的な対応が求められます。
逮捕や起訴を回避できれば、前科がつくことを避けられるだけでなく、家族や職場への影響も最小限に抑えることができます。
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(4)できるだけ早く弁護士に相談する
盗撮をしてしまった方のために弁護士ができることは、刑事手続きの段階によって異なります。まだ警察に盗撮が発覚していない段階では、相談者の状況を整理し、万が一警察から連絡があった場合にどう対応すべきか、事前のアドバイスや準備を行うことができます。
すでに盗撮が発覚して取り調べを求められている場合、弁護士が弁護人として正式に就任し、法的なサポートを行うことが可能です。
取り調べの前には、どのような心構えで臨むべきか、言ってはいけないこと・伝えるべきことの整理などを行い、被疑者の権利を守りながら不利益な扱いを受けないよう支援します。
また、勾留や起訴を回避するために、有利な事情(反省、示談、再発防止策など)を警察や検察に主張する活動も行います。
このように、弁護士が早期に関与して適切に弁護活動をすることで、不起訴や執行猶予付き判決となる可能性を高められるのです。
5、電車内での盗撮などの判例・裁判例
電車内での盗撮などで逮捕され裁判になった場合、どのような判決が下されているのでしょうか。電車内での盗撮などに関する判例・裁判例をいくつかご紹介します。
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(1)執行猶予期間中に再度盗撮した事例
本件は、被告人が電車内で17歳の女子高生2名に対し、スマートフォンを用いてスカート内を盗撮したとして、福島県迷惑行為等防止条例違反で起訴された事件です。
被告人は「意図的ではなかった」と主張したものの、保存された動画の内容や撮影方法から故意があったと判断されました。
被告人は以前にも同種の盗撮で有罪判決を受けており、さらに執行猶予期間中の再犯であったことから、裁判所は懲役10か月の実刑判決を言い渡しました。(検察側の求刑:懲役1年)
※令和3年6月9日 福島地裁判決 -
(2)盗撮の通報を恐れて傷害事件に発展した事例
本件は、電車内で女性の下半身を盗撮した被告人が、携帯電話を見せた際に盗撮が発覚。通報しようとした女性に暴力をふるい、さらに助けに入った男性にもけがを負わせた事件です。
裁判所は、盗撮自体が迷惑防止条例違反にあたり、さらに暴力行為が強盗傷人罪に該当すると認定しました。
ただし、「自分の携帯電話を取り戻すためだった」という事情や、前科がなかったこと、示談が成立していたことなどを考慮し、懲役3年・執行猶予3年、罰金20万円の判決が言い渡されました。(検察側の求刑:懲役5年および罰金30万円)
※平成26年4月25日 仙台地裁判決 -
(3)下着を盗撮していないが実刑になった事例
本件は、店舗内で、女性客のスカート近くにカメラを向けた行為が問題となったケースです。一審は「下着が写っていない」などの理由で無罪としたものの、控訴審と最高裁は行為自体が社会通念上の「盗撮」といえるとして、懲役8か月の実刑を認定しました。
裁判所は「結果(写ったかどうか)」ではなく、「行為の態様(どう見えるか)」を重視した判断を示しています。(検察の求刑:懲役10か月)
※令和4年12月5日 最高裁決定 -
(4)再犯・他の犯罪も併発すると、実刑になりやすい
これらの判例からわかるように、盗撮行為は単体であれば略式起訴や執行猶予が付くケースもありますが、再犯や他の犯罪(暴行・脅迫など)と併発した場合には、実刑判決となる可能性が高まります。
特に執行猶予期間中の再犯や、未成年に対する盗撮は、悪質とされる傾向にあります。
弁護士による早期対応により、示談や反省の意志を適切に示すことが、刑事処分の軽減につながる重要な要素です。
6、電車内での盗撮にまつわるQ&A
電車内で盗撮をしてしまった方や、そのご家族からよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。刑事処分や今後の対応について、不安を感じている方は参考にしてください。
(Q1)電車内の盗撮は初犯でも有罪になる?
A:はい、初犯でも盗撮行為が確認されれば、有罪となる可能性は十分あります。
ただし、示談の成立や深い反省が認められた場合は、略式起訴で罰金処分や、執行猶予付きの判決となることもありますし、事情次第では不起訴になることもあります。
(Q2)盗撮での示談金の相場はどのくらい?
A:被害の程度、撮影された内容、拡散の有無、被害者の心理的ダメージなどによって示談金の相場は大きく変動します。
未成年者が被害者の場合はさらに高額になる傾向があります。
示談が成立すると不起訴となる可能性が高まるため、弁護士を通じて適切な交渉を行うことが重要です。
(Q3)顔や服装を撮っただけでも盗撮になる?
A:顔や服装のみの撮影でも、撮影状況や意図によっては盗撮として摘発されるリスクがあります。被写体が不快に感じる形でしつこく撮影する行為は、各都道府県の迷惑防止条例に抵触する可能性もあります。
撮影の目的が性的好奇心を満たすためと判断された場合、顔や服装のみの撮影でも「盗撮」として扱われることは少なくありません。
(Q4)未成年(少年)がいたずら目的で盗撮した場合は?
A:未成年者がいたずら目的で盗撮した場合でも、基本的に法的責任を問われます。
ただし、成人とは異なり少年法の適用を受け、保護処分の対象となることが一般的です。
深刻なケースでは保護観察や少年院送致となることもあります。親権者も監督責任を問われ、損害賠償を求められる可能性があるため、弁護士による早期対応が望ましいといえます。
7、電車内での盗撮で前科がつく前に、弁護士に相談を
電車や駅での盗撮行為は、「性的姿態等撮影罪」や迷惑防止条例違反として処罰の対象となる重大な犯罪です。初犯であっても逮捕・起訴される可能性はあり、有罪となれば前科がつき、社会的信用や仕事、家庭にも大きな影響を及ぼします。
もし盗撮をしてしまったら、逮捕・起訴や重い刑事処分を回避するため、速やかに弁護士へ相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、刑事弁護に関するご相談を受け付けております。
弁護士費用についてもわかりやすくご説明いたしますので、安心してご依頼いただけます。
盗撮をしてしまい、逮捕されるのではないかと不安に感じている、警察から連絡がきている、家族が盗撮の疑いで逮捕されたなどの場合には、お早めに刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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