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温泉での盗撮は何罪になる? 家族が逮捕されたときの対処法
「温泉を盗撮した容疑で逮捕されたら、そのまま刑務所に入れられてしまうのだろうか」「その後の手続きはどのように進むのだろうか」
このように、家族が盗撮を行ったことが明らかになり、不安になっている方もいるでしょう。盗撮はれっきとした犯罪です。
本記事では、家族が盗撮で逮捕されたときにとるべき対処法や、逮捕後の手続きの流れ、盗撮により問われる可能性のある犯罪などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。
この記事で分かること
- 温泉での盗撮で問われる罪とは?
- 家族が盗撮で逮捕された場合に取るべき対応
- 盗撮で後日逮捕される可能性と、逮捕のきっかけになること
1、家族が盗撮で逮捕されてしまったときの対処法
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(1)すぐに弁護士に相談する
家族が温泉などで盗撮をした容疑で逮捕されてしまった場合には、すぐに弁護士にご相談ください。
弁護士は、逮捕された家族の弁護人として弁護活動を行うことが可能です。弁護士に相談・依頼することで、逮捕された家族が早い段階で釈放されたり、不起訴を得られたりする可能性が高まります。
仮に起訴された場合であっても、できるだけ軽い判決となるように弁護活動を行います。早期釈放や不起訴処分獲得を目指す場合は、早期から弁護士に相談することがおすすめです。
特に温泉のある旅行先で逮捕となった場合、現地の警察署に通える弁護士といかに連携を取るかが重要です。 -
(2)被害者との示談交渉を進める
盗撮事件の被害者がいる場合には、被害者との示談を成立させることが何よりも重要となります。示談とは、事件について被害者に真摯に謝罪し、慰謝料や示談金を支払うことで許しを得ることです。
盗撮に遭った被害者は、被疑者(盗撮を行ったと疑われている方)と面識のない他人である可能性が高く、弁護士でなければ、連絡先を把握することは難しいでしょう。
特に性犯罪に関しては、捜査機関は被疑者に被害者の個人情報を教えることはしません。
しかし弁護士に対しては、被害賠償を目的として、連絡先などの個人情報を開示してもらえる可能性が高くなります。
示談が成立した場合には、被害者が被害届や告訴を取り下げたり、「寛大な処分を求める」といった内容の嘆願書の作成に協力してくれたりすることもゼロではありません。また、犯罪の違法性が一定程度軽減されたとして、検察官が不起訴処分(起訴猶予)の判断をする可能性も高まります。
このように、示談成立は被疑者にとって有利な事情として、不起訴や軽い判決となることがあります。したがって、弁護士に早期に依頼して示談交渉に動いてもらうことが何よりも重要です。 -
(3)捜査に協力して反省していることを示す
家族が盗撮行為を認めている場合には、取り調べなどの捜査に協力して、反省の態度を示すように促しましょう。
また、被疑者本人が更生を誓約していたり、親族などの身元引受人がいたりするケースでは、再犯のおそれや逃亡・罪証隠滅のおそれがないと判断され、早期に釈放される可能性もあります。
2、温泉での盗撮を理由に家族が逮捕された後の流れ
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(1)逮捕に引き続き勾留される
盗撮の疑いで逮捕された場合、被疑者の取り調べが行われ、弁解録取書が作成されます。逮捕から48時間以内に、警察官は事件を検察官に送致するか、被疑者を釈放するかを判断することになっています。
警察官が「留置の必要がある」と判断すると、検察官に事件を送致します。検察官は被疑者の身柄を受け取ってから、24時間以内、かつ最初に身体拘束されたときから72時間以内に、引き続き勾留するか、釈放するかを判断しなければなりません。
勾留された場合、そこから10日間の身体拘束が続きます。さらに捜査を進める必要がある際は、追加で10日間を上限として勾留が延長される可能性があります。
逮捕されてから72時間の間は、原則として弁護士でなければ被疑者と接見することができません。接見とは、身体拘束中の被疑者が外部者と直接会い、面会することをいいます。家族であっても、留置所で本人と面会することはできません。
ただし、弁護士を通じてご本人に伝言をすることはできますし、身元引受人として被疑者が釈放された後の監視・監督を捜査機関に申し出ることは可能です。 -
(2)起訴されると刑事裁判が行われる
逮捕・勾留された場合、被疑者は最長23日間の身体拘束を受ける可能性があります。
身柄事件の場合、検察官はこの期間に被疑者の取り調べや必要な捜査を実施し、被疑者を起訴または不起訴にするのかを決定します。
公訴が提起(起訴)された場合、被疑者は被告人の身分となります。
起訴後は、保釈されない限り、裁判まで引き続き身体拘束されることになります。起訴から約1〜2か月後に第1回公判期日が指定され、公判での審理を経て、被告人は判決の言い渡しを受けるという流れです。
最終的な判決は、事案の悪質性や過去の犯罪歴、再犯可能性などを考慮して決定されます。初犯のように犯情が軽い場合では、懲役刑が言い渡される場合であっても、執行猶予付きの判決が言い渡される可能性もゼロではありません。
被告人の家族は、情状証人として刑事裁判に出廷することができます。
情状証人とは、刑事事件の裁判で被告人の量刑を定めるにあたって酌むべき事情を述べる証人のことをいい、被告人の刑の軽減を求めたり、執行猶予付き判決を求めるための証言を行ったりすることが可能です。
<証言を行うときの内容の例>- 犯罪を行う前の被告人の性格や事情
- 判決後の被告人の監視などの誓約
- 実刑判決が被告人の人生に与える影響
注意点として、日本の刑事裁判は、起訴された場合には高い確率で有罪判決を受けることになります。次章では、盗撮行為をした場合、どのような罪に問われることになるのかを解説します。
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- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、温泉での盗撮行為で該当する可能性がある5つの罪
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(1)性的姿態等撮影罪(撮影罪)
温泉等で盗撮をした場合には、令和5年(2023年)7月13日から新たに施行された性的姿態撮影等処罰法の性的姿態等撮影罪によって処罰されます。
正当な理由なく、ひそかに性的姿態等を撮影する行為は処罰の対象です(性的姿態撮影等処罰法第2条1項1号)。
<性的姿態等の例>- 人の性的な部位(性器、肛門もしくはこれらの周辺部、臀部または胸部)
- 人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられているもの)のうち、現に性的な部位を直接・間接に覆っている部分
- わいせつな行為または性交等がされている間における人の姿態
性的姿態等撮影罪が成立した場合には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます。
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(2)迷惑防止条例違反
各都道府県が定める迷惑防止条例では、盗撮や痴漢、つきまとい行為など、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為を禁止しています。
迷惑防止条例で規制される場所の多くは公共の場所や乗り物が対象でしたが、規制対象を拡大する都道府県が相次いでいます。
迷惑防止条例に違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることが一般的です。 -
(3)軽犯罪法違反
盗撮行為は、軽犯罪法違反に問われる可能性もあります。
軽犯罪法1条23号は、以下のとおり規定されています。
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留または科料に処する
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服を着けないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
したがって、温泉での盗撮行為をすれば、原則としては撮影を前提とする上記犯罪が成立しますが、撮影が立証できない場合でも「のぞき見た者」にあたる可能性があるでしょう。
軽犯罪法違反が成立した場合には、1日以上30日未満の拘留、もしくは1000円以上1万円未満の科料が科されます。 -
(4)建造物侵入罪
他人の住居や施設に入り込み、カメラを仕掛ける手口で盗撮する場合、管理者の意思に反して建造物に侵入することとなるので、建造物侵入罪が成立します(刑法130条前段)。
建造物侵入罪の刑罰は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。 -
(5)児童ポルノ禁止法違反
児童ポルノとは、児童を被写体としたポルノグラフィ(性的な写真や映像など)のことです。
児童ポルノ禁止法では、児童を18歳未満の者と定義し、児童ポルノに関するさまざまな処罰規定等を設けています。
児童ポルノ禁止法第2条3項3号では、児童ポルノについて、下記のとおり規定しています。
衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等もしくはその周辺部、臀部または胸部をいう。)が露出されまたは強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させまたは刺激するもの
温泉などで18歳未満の者が入浴している姿を盗撮した場合には、児童ポルノに該当します。児童ポルノの「所持」「保管」「提供」「陳列」「製造」といった行為についても、処罰対象です。
盗撮はこの「製造」にあたり、児童ポルノの製造罪に問われた場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることになります。
4、これから逮捕されるとしたら、どんなことがきっかけになる?
盗撮の犯人が特定される原因としては、現行犯逮捕、防犯カメラ、目撃証言によるケースが基本です。
被害者本人や第三者によって温泉の盗撮を見られていれば、施設の職員や利用者から現行犯逮捕されているでしょう。
しかし犯行時には逮捕されていないからといって、安心というわけではありません。被害者や第三者がその場では行動していなくとも、目撃証言に基づいて、後日、警察により通常逮捕される可能性があるからです。
人による目撃証言以外にも、防犯カメラの映像によって盗撮犯人が特定されることもあります。
なお、盗撮罪や迷惑防止条例違反、建造物侵入罪などの罪を犯した場合には、3年間は公訴時効が経過しません。時効が完成するまでは、常に逮捕されるおそれがあることに注意が必要です。
5、まとめ
安易な気持ちで行われたものだとしても、盗撮はれっきとした犯罪です。逮捕されれば、いくら家族でも勾留期間中は面会することができません。
家族が盗撮の容疑で逮捕された、または逮捕されるリスクがあるという場合には、速やかに刑事事件の経験豊富な弁護士に対応を依頼しましょう。
ベリーベスト法律事務所には、刑事事件に関する知見・経験豊富な弁護士が在籍しており、遠隔地でもオフィス間の連携をとって対応できますので、ぜひご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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