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痴漢したら懲役刑? 懲役の可能性があるケースと逮捕後の流れを解説
ほんの出来心であったとしても痴漢は立派な犯罪です。痴漢がバレてしまうと逮捕・起訴されて、懲役刑が科される可能性もあります。特に、不同意わいせつ罪が成立するような悪質な痴漢であった場合には、法定刑に罰金刑は定められていませんので、起訴されれば懲役刑一択という非常に重い刑罰が科されます。
このような痴漢による懲役を回避するためには、被害者との示談が重要になりますので、早期に弁護士に依頼して、示談交渉に対応してもらうようにしましょう。
今回は、痴漢で懲役の可能性があるケースと逮捕後の流れについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、痴漢で成立する可能性のある犯罪
痴漢で成立する可能性のある犯罪としては、主に以下の3つが挙げられます。
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(1)迷惑防止条例違反
迷惑防止条例とは、各都道府県が公衆に対する以下のような迷惑行為を防止する目的で制定している条例です。
- 公共の場所での痴漢行為
- 公共の場所での卑わいな行為
- 公共の場所での盗撮行為
- つきまとい、待ち伏せ、無言電話などの嫌がらせ行為
迷惑防止条例の内容や罰則は、都道府県によって若干異なりますが、ほとんどの条例では路上や電車内などでの痴漢行為を迷惑防止条例違反としています。たとえば、東京都の迷惑防止条例に違反する痴漢行為をすると、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
なお、迷惑防止条例違反となる痴漢は、一般的に衣服の上から被害者の身体に触るような痴漢行為を対象にしています。 -
(2)不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪とは、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態でわいせつな行為を行うことで成立する犯罪です(刑法176条)。以前は、「強制わいせつ罪」という名称でしたが、令和5年7月の刑法改正により「不同意わいせつ罪」変わりました。
以下のような事情により被害者が同意できない状態にあるときに、痴漢行為をすると不同意わいせつ罪が成立します。
- 暴行または脅迫
- 心身の障害
- アルコールまたは薬物の影響
- 睡眠その他の意識不明瞭
- 同意しない意思を形成、表明または全うするいとまの不存在
- 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕
- 虐待に起因する心理的反応
- 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
不同意わいせつ罪に該当する痴漢行為をすると、6月以上10年以下の拘禁刑に処せられます。
なお、不同意わいせつ罪となる痴漢は、一般的に衣服の中に手を入れて被害者の身体を直接触るような悪質な痴漢行為や、衣服の上からでもまさぐるような態様を対象にしています。 -
(3)不同意性交罪
刑法の改正により、陰部に指を挿入する行為は性交に含まれるようになりました。そのため、痴漢に対する不同意性交罪の適用事例も既に生まれています。5年以上の拘禁刑と法定刑も重いです。
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
2、痴漢で有罪になると懲役刑? 量刑の考慮要素と懲役になる可能性のあるケース
痴漢で有罪になると懲役刑になってしまうのでしょうか。以下では、痴漢の量刑を決める際の考慮要素と痴漢で懲役刑になる可能性のあるケースを説明します。
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(1)痴漢の量刑を決める際の考慮要素
痴漢の量刑を決める際の考慮要素としては、主に以下のような事情が挙げられます。
① 犯行態様
痴漢が以下のような犯行態様であった場合には、悪質な痴漢と評価され懲役刑が科される可能性があります。- 被害者の衣服の中に手を差し入れて直接身体を触る
- 長時間にわたって執拗に身体を触り続ける
- 特定の被害者のみをターゲットにした痴漢
② 被害者の年齢・処罰感情
痴漢の被害者の年齢が低いほど権利侵害の程度が大きくなりますので懲役刑が科される可能性があります。また、痴漢被害者の処罰感情が強い事案では、略式命令請求による罰金刑ではなく、公判請求による懲役刑が選択されやすくなります。
③ 常習性
常習性の有無は、痴漢の量刑を判断する際の考慮要素の一つになります。前科・前歴がなかったとしても、痴漢の余罪が複数あるようなケースでは、常習性が高く再犯の可能性があるとして、懲役刑が選択される可能性があります。
④ 前科・前歴の有無
初犯に比べて前科・前歴がある方がより重く処罰される傾向にあります。特に、同種の痴漢の前科・前歴であった場合、再犯のおそれがあるとして情状が悪くなり、罰金ではなく懲役が選択される可能性があります。 -
(2)痴漢で懲役刑になる可能性のあるケース
痴漢で懲役刑になる可能性のあるケースとしては、以下のようなケースが考えられます。
① 痴漢が不同意わいせつ罪や不同意性交罪にあたるケース
不同意わいせつ罪や不合意性交罪は、法定刑に罰金刑が存在しません。不同意わいせつ罪や不同意性交罪で起訴されてしまうと、有罪になれば懲役刑一択となります。
被害者の身体を直接触るような悪質な痴漢行為をすると、不同意わいせつ罪で立件される可能性がありますので、懲役刑になるリスクが高いといえます。
② 常習的に痴漢を行っているケース
常習的に痴漢を行っているようなケースでは、たとえ痴漢の初犯であったとしても、非常に悪質であると評価されてしまいます。そのため、迷惑防止条例違反となるような痴漢であっても、略式命令請求ではなく公判請求が選択されて、懲役刑が科される可能性があります。
③ 過去に痴漢で有罪判決を受けているケース
過去に痴漢で有罪判決を受けた前科があるにもかかわらず、再び痴漢をしてしまうと、再犯のおそれが高いと評価されます。前回が罰金刑で済んだ場合でも、今回は懲役刑が科される可能性が高いでしょう。
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3、痴漢冤罪だった場合の対処法
痴漢をしていないにもかかわらず、痴漢の犯人だと疑われてしまった場合には、以下のような対処法が必要になります。
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(1)その場から逃げない
インターネット上では、「痴漢扱いされたら逃走すべき」といったアドバイスを目にすることもあります。しかし、痴漢が冤罪であるならその場から逃走するのはお勧めできません。
その場から逃走するという行動は逮捕の必要性を生じさせ、身体拘束のリスクを高めます。逮捕勾留されていなければ、様々な選択肢を冷静に考える余裕がある一方、身体拘束に至ると不利益が大きく、判断も慎重に行えなくなります。
運よくその場から逃げ切ることができたとしても、防犯カメラ映像などから特定されてしまい、後日逮捕される可能性もあります。
特に、痴漢現場から逃走する際に無関係の人を突き飛ばして怪我をさせてしまったり、電車の往来を妨害するなどの行為をすると別の罪を犯す可能性もあるため、痴漢ではなく別罪で逮捕起訴されるリスクが生じてしまいます。 -
(2)被害者に対して謝罪しない
被害者から痴漢の疑いをかけられてしまうと、咄嗟に「すみまんせんでした」と謝罪してしまう方もいるかもしれません。
本人は、反射的に口にした言葉であったとしても被害者や周囲の目撃者は、痴漢をしたから謝罪をしたのだと捉えてしまいます。あなたが謝罪したということは、警察での供述調書に残されてしまい、後日の裁判で不利な証拠として扱われてしまいます。
そのため、痴漢の疑いをかけられたときは、毅然とした態度で「痴漢はしていません」と伝えるようにしましょう。 -
(3)家族や職場に連絡する
痴漢が冤罪であったとしても、疑いをかけられた以上、警察を呼ばれて事情聴取を受けることになります。出勤中であれば定時までの会社に行くことは難しくなりますので、あらかじめ会社に欠勤の連絡をしておくとよいでしょう。
また、冤罪であっても警察に逮捕される可能性がありますので、万が一逮捕されてしまった場合にすぐに弁護士に依頼してもらえるよう、家族に現在の状況を詳しく説明しておくことも大切です。
4、痴漢で逮捕された後の手続きと流れ
痴漢で逮捕された場合、以下のような流れでその後の手続きが進んでいきます。
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(1)逮捕
痴漢で逮捕されると、被疑者の身柄は警察署内の留置施設で拘束されます。被疑者は、身柄拘束を受けた状態で、警察による取り調べを受けることになります。
逮捕中は、家族であっても面会することはできず、面会できるのは弁護士に限られます。
なお、逮捕には時間制限がありますので、警察は逮捕から48時間以内に被害者の身柄を検察官に送致しなければなりません。 -
(2)検察官送致
被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、被疑者の取り調べを行います。取り調べの結果、引き続き身柄拘束を続ける必要性があると判断すると、裁判官に勾留請求を行います。
なお、勾留請求は、被疑者の送致から24時間以内に行わなければなりません。 -
(3)勾留、勾留延長
裁判官が勾留を許可すると、原則として10日間の身柄拘束が行われます。逮捕中とは異なり、勾留中であれば家族などとの面会が可能になります。
また、検察官が勾留延長をして、裁判官がそれを許可するとさらに最大で10日間の身柄拘束が行われます。
逮捕から合計すると23日間にも及ぶ身柄拘束を受けることもありますので、被疑者にとっては大きな不利益といえるでしょう。 -
(4)起訴または不起訴
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に、起訴または不起訴の判断を行います。
痴漢事件が不起訴になれば、前科が付くこともなく、そのまま釈放となります。痴漢事件を起こしたのが事実であっても、被害者との示談などの事情を考慮して、起訴猶予(不起訴)になる可能性もあります。
5、被害者との示談が重要! まずは弁護士に相談を
痴漢事件を起こしてしまったときは、被害者との示談が重要になりますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
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(1)被害者との示談の重要性
痴漢事件で起訴されてしまうと、ほとんどのケースで有罪となり前科が付いてしまいます。日本の刑事司法では起訴された事件の99%以上が有罪になりますので、前科を回避するには不起訴処分を獲得することが重要になります。
検察官は、痴漢事件で示談が瀬率すれば不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。そのため、痴漢事件を起こしてしまったときは、すぐに被害者との示談交渉を開始するようにしましょう。 -
(2)痴漢事件を弁護士に依頼するメリット
痴漢事件を弁護士に依頼するメリットには、以下のようなものがあります。
① 被害者との示談交渉を任せられる
痴漢事件では、被害者との示談交渉が重要になりますが、加害者本人では被害者に接触しようとしても拒まれてしまうケースが多いです。性犯罪としての性質上、被害者が加害者本人と交渉したくないというのも当然の感情といえるでしょう。
このような状況で示談交渉を進めるには弁護士のサポートが不可欠となります。弁護士に依頼すれば弁護士が代わりに被害者との示談交渉を行うことができますので、被害者としても安心して交渉に臨むことができるといえます。
② 取り調べに関するアドバイスができる
痴漢の疑いをかけられると、警察による取り調べを受けることになります。警察の取り調べで話した内容は後日の裁判での証拠になりますので、警察の取り調べは慎重に対応する必要があります。
弁護士に依頼すれば、取り調べに対するアドバイスを受けられますので、初めての取り調べでも適切に対応することが可能です。特に、痴漢冤罪事件では、安易な自白は自分の首を絞めることになりますので、誤った対応をしないためにも早めに弁護士の相談することが大切です。
③ 早期釈放や不起訴処分を獲得できる可能性が高まる
痴漢により逮捕されてしまうと、その後の勾留を合わせると合計で23日間にも及ぶ身柄拘束となります。長期間の身柄拘束になれば仕事や日常生活への影響も大きくなりますので、早期に釈放してもらうことが重要になります。
弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉や検察官・裁判官への働きかけなどにより早期の身柄解放を実現してもらうことができます。また、不起訴処分の獲得に向けたサポートもしてくれますので、少しでも有利な処分を獲得した位という場合は、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
6、まとめ
痴漢は、初犯であれば略式命令請求により罰金刑で終わることが多いですが、痴漢の態様が悪質であると評価されれば、初犯であっても懲役になる可能性があります。痴漢で懲役になるのを回避するには、早期に被害者との示談を成立させることが必要になりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
痴漢事件を起こしてお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
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