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傷害事件で逮捕されるパターンは2種類。起訴や前科が付く可能性は?
傷害事件を起こすと、その場で逮捕される場合がある一方で、警察に事情を聴かれるも自宅へ帰され、逮捕されない場合があります。逮捕されなかった場合、事件を起こした本人やご家族としては、このまま罪に問われることがないのか、前科も付くことがないのかと気になるでしょう。
傷害事件で逮捕されるパターンは、大きく分けて2つあります。ひとつは「現行犯逮捕」、もうひとつは「通常逮捕」です。また、身柄を拘束されずに捜査を受ける「在宅捜査」となるケースもあります。
今回は、傷害事件における2つの逮捕を解説するとともに、逮捕されなかった場合の在宅捜査や今後の対応についても確認します。
1、傷害罪で逮捕されるときとは?
傷害罪における現行犯逮捕とは、犯人が現に傷害行為をしているとき、または行い終ったときに逮捕されることです。また、その場から立ち去ったとしても、刑事訴訟法212条2項の各号のいずれかに該当する者(犯人として追呼されている者、贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持している者、身体又は被服に犯罪の顕著な証跡がある者、誰何されて逃走しようとする者)が、犯行を行い終わって間もないと明らかに認められる状態であれば、現行犯とみなされます。
たとえば、血のついた凶器を持っている、衣服が血だらけになっている、現場付近にいて警察官から呼び止められたのに逃げた、といった場合です。
刑事訴訟法第213条は「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」としています。したがって、現行犯に限っては、警察官はもとより、一般市民でも逮捕が可能であり、逮捕状も不要です。
傷害事件では、被害者やその連れの人、目撃者などがその場で取り押さえることや、通報によって駆けつけた警察官が身柄を確保するケースがよくあります。
ただし、傷害の加害者として現行犯で逮捕するからには、明らかに傷害事件だと分かる場合に限られます。現場に目撃者がいて犯行や犯人が明らかにされているため、あくまでも例外的に逮捕状なしの逮捕が認められているわけです。
たとえば次のようなケースです。
- 被害者が大きなケガをしている
- 加害者が凶器を持っている
- 人通りの多い場所で殴り合っている
そして、現行犯で逮捕されなくても、後日に逮捕されることがあります。
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2、傷害罪で後日、逮捕されるのはどんなとき?
後になって逮捕されることを、正式には通常逮捕といいます。現行犯逮捕とは異なり、裁判官が発付する逮捕状にもとづいて身柄を拘束される方法です。したがって、一般市民には通常逮捕の権限はなく、主には警察官が行います。
ただし、どのような場合でも通常逮捕されるわけではありません。逮捕の理由と、逮捕の必要性がある場合に限って逮捕状の請求にいたります。
逮捕の理由とは、その人が犯人だと疑うに足る客観的な根拠があることです。
防犯カメラの映像に映っていた、現場に本人を示す証拠が落ちていた、複数の目撃情報から加害者が特定された、といったケースです。
逮捕の必要性とは、身柄を拘束しないと逃走や証拠隠ぺいのおそれがある場合を指します。これは、被疑者の年齢や社会的立場、犯行の内容など、さまざまな事情から判断されます。
たとえば、同居の家族がいたり、社会的な立場が高い人は、その地位を捨ててまで逃亡する可能性が低いため、逮捕されない方向に傾きます。
ごく軽微な傷害事件で被害者が擦り傷程度で済んでおり、加害者も素直に認めて反省している場合なども、事情を聴かれることはあっても逮捕される可能性は低くなるでしょう。
反対に、証拠がそろっているのに容疑を否認している場合や、被害者がひどいケガをしている場合などには、逃亡のおそれがあるため、通常逮捕される可能性が高まります。
共犯者がいる場合にも証拠隠ぺいや共犯者同士での口裏合わせのおそれが強く、逮捕されやすいといえるでしょう。
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3、逮捕されなければ、無罪?
傷害事件のその場で逮捕されなかったからといって、無罪が確定したわけではありません。
前述した通り、現行犯として逮捕されなかったとしても、被害者が後に被害届を提出し、警察の捜査が開始され、通常逮捕に至るケースがあります。
また、逮捕されずに在宅捜査となる可能性もあります。在宅捜査となれば、身柄の拘束をされないまま警察の取り調べを受けることになります。在宅捜査の場合でも結果的に起訴、有罪になる可能性は残っています。有罪になれば、刑罰を科され、前科がつきます。
在宅捜査の利点は、身柄が拘束されず、自宅で生活できることでしょう。会社や学校も普段どおり通えますので、日常生活への影響は少ないと言えます。
在宅捜査とされるのは一定のケースに限られます。
具体的には、配偶者がいて住所や勤務先も明らかであり、容疑を認めている場合など、逃亡のおそれが低いケースです。
また、単独犯や被害者の傷害の程度が軽い場合には、共犯者と接触することがなく、予測される罰も軽くなるため、証拠隠ぺいする可能性が低いと判断されて在宅捜査になりやすいといえるでしょう。
もっとも、在宅捜査の場合でも、警察からの出頭要請には応じなくてはなりません。むやみに拒否すると逃亡や証拠隠ぺいのおそれありと判断され、逮捕される事態になりかねません。
不起訴処分を目指すのであれば、警察の事情聴取にはしっかりと対応し、罪を認めたうえで、被害者との示談交渉などの対策を講じる必要があります。
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4、傷害事件で逮捕されたら必ず前科が付くの?
傷害事件で逮捕されてしまっても必ず前科が付くと決まったわけではありません。
そもそも「前科」とは、裁判で有罪判決を受け、刑を言い渡された事実をいいます。裁判で有罪となれば、傷害罪の場合は15年以下の懲役か50万円以下の罰金という重い罰を受けることになります。
しかし、逮捕された段階では、事件の被疑者として捜査対象となった事実があるに過ぎず、これは「前歴」と呼ばれます。
逮捕されても不起訴処分や無罪判決となれば、前科は付かず、前歴があるにとどまります。
ただし、裁判にかかると有罪になる確率が極めて高いため、不起訴処分を獲得することが重要です。不起訴とは起訴されないこと、つまり裁判にかけられないで事件が終了します。
不起訴処分はその理由に応じて、主には次の3種類に分けられます。
- 嫌疑不十分······事件の加害者である一定の疑いは残るが、証拠が足りない
- 嫌疑なし······事件の加害者ではないことが明らか
- 起訴猶予······事件の加害者である証明は可能だが、事件の内容や被害の程度、示談の有無、更生の可能性などを総合的に判断し、検察官があえて起訴しない
傷害事件を起こしたのなら、上記のうち起訴猶予を目指すことになります。実際、不起訴処分の多くのケースは起訴猶予です。
厳密にいえば無罪ではありませんが、それとほとんど同じ状態になります。身柄を釈放され、前科も付きませんので、一定の職業や資格に関する制限など、前科があることの不利益を回避できます。
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5、不起訴や減刑を目指すには、弁護士へ相談を
傷害事件を起こしてしまったのなら、速やかに弁護士へ相談するべきです。逮捕の有無にかかわらず、そのメリットは大きいです。
逮捕されていない場合には、弁護士は警察から出頭要請があった際のアドバイスを行います。自白するべきかどうかの判断をし、むやみに否認したりごまかしたりして、不利益を被るリスクを回避できます。
被害者との示談交渉も弁護士の重要な役割です。傷害事件の被害者は相当の苦痛を受けていますので、加害者本人が直接示談交渉しようとしても交渉に応じてくれない可能性が高く、また加害者からの接触によって警察から証拠隠ぺいのおそれがあるとみなされる場合があります。
そのため直接示談交渉することは避け、弁護士を介することが賢明な方法です。
逮捕された場合、少なくとも数日間は本人と外部との面会がかないません。ご家族であっても同様です。
唯一制限なく面会できるのは弁護士ですので、速やかに面会し、取り調べの対応や今後の流れ、見込みを助言します。よく分からないまま取り調べを受け、事実と異なる供述をしてしまうと大きな不利益となりますが、弁護士の面会によってこれを防ぎます。
この場合でも示談成立は不可欠ですので、弁護士が交渉を続けます。
そのほか、目撃者の情報や証拠集めを行う、ご家族の監視体制をつくるなど、本人にとって有利となる事情を積み上げて検察官へ訴え、不起訴処分を目指します。裁判になっても弁護人として出廷し、減刑を求める主張を展開します。
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6、まとめ
今回は傷害事件の逮捕をテーマに解説しました。傷害事件を起こすと、現行犯逮捕されるケースだけでなく、後になって逮捕される通常逮捕もありえます。また逮捕されずとも在宅捜査となり引き続き捜査対象となることもあります。いずれの場合も、起訴され有罪になれば15年以下の懲役か50万円以下の罰金という重い罰を受け、前科も付いてしまいます。
これを避けるためには、できるだけ早いタイミングで対処することが肝心です。ご家族が傷害事件の加害者となってしまい、逮捕や前科が付くことを心配されている方はベリーベスト法律事務所までご連絡ください。これまで多くの刑事事件で加害者弁護を担当してきた弁護士が、ご希望に添った結果となるよう全力でサポートいたします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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