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弁護士コラム

2020年08月20日
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傷害致死と異なる点は? 遺棄致死や殺人との違いと量刑判断

傷害致死と異なる点は? 遺棄致死や殺人との違いと量刑判断
傷害致死と異なる点は? 遺棄致死や殺人との違いと量刑判断

令和元年7月、北海道で介護職員の男が、介護サービスを受けていた男性に殴る・蹴るなどの暴行を加えて死なせたとして逮捕される事件がありました。

この事件のように、相手に暴力をふるうなどして死なせてしまう犯罪を「傷害致死罪」といいます。また傷害致死罪と同じく人を死なせてしまう犯罪には、遺棄致死罪や殺人罪などの似た犯罪が存在しますが、法律上どのような違いがあるのでしょうか。

本記事では、傷害致死罪の概要を解説するとともに、遺棄致死罪や殺人罪との違い、量刑判断の基準や弁護活動の内容についても触れていきます。

1、傷害致死罪はどのような犯罪か

  1. (1)傷害致死罪の成立要件

    傷害致死罪は、人に傷害を負わせ、よって人を死亡させた場合に成立する罪です(刑法第205条)。

    傷害とは人の生理的機能を害することをいい、外傷を与えるだけではなく、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にさせる、性病に感染させるなども該当します
    傷害を与えるにとどまった場合は傷害罪(刑法第204条)が成立しますが、死亡させた場合は傷害致死罪が成立します。

    傷害致死罪には暴行や傷害の故意が必要です。たとえば相手を「ちょっと痛い目にあわせてやろう」と思って殴り、結果として死亡させれば傷害致死罪にあたります。

    また、傷害行為と死亡の間には因果関係が必要です。たとえば、傷害を与えた相手が死亡したとしても、亡くなった原因が持病など傷害と直接的に関係がなかった場合には、傷害行為と死亡の間に因果関係はありません。この場合は傷害致死罪にはあたらず、傷害罪のみが成立します。

  2. (2)傷害致死罪の刑罰

    傷害致死罪の刑罰は「3年以上20年以下の懲役」です(刑法第205条には「3年以上の有期懲役」としか記載されていませんが、刑法第12条第1項によって、有期懲役の上限は20年以下とされています)。

    罰金刑はないため、執行猶予がつかなければ刑務所へ収監されます

    なお、傷害罪の刑罰は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。傷害致死罪と比較すると、刑の上限・下限と罰金の有無に大きな違いがあります。

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2、傷害致死罪と遺棄等致死罪の違い

「傷害致死罪」のように、結果的に人を死亡させた、という場合に問われる可能性がある犯罪に「遺棄等致死罪」があります。では、両罪の違いはどのような点にあるのでしょうか。

  1. (1)単純遺棄罪・保護責任者遺棄罪とは

    刑法第217条の単純遺棄罪または刑法第218条の保護責任者遺棄罪を犯し、結果的に人を死亡させた場合に「遺棄等致死罪」が成立します(刑法第219条)。

    まずは、単純遺棄罪がどのような犯罪なのかを確認しましょう。
    刑法第217条は「老年、幼年、身体障害または疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、1年以下の懲役に処する」と定めています。

    ここでいう「遺棄」とは、「移置」という意味と考えられており、対象者を安全な場所から危険な場所へ動かす行為を指します。具体的には、介護が必要な親を車いすに乗せ、車通りの多い危険な道路へ連れて行くような行為が該当します。
    なお、何歳だと老年や幼年にあたるのかについては、法律に明記されているわけではありません。また、疾病は身体や精神に疾患があるケースだけでなく、泥酔状態も該当するとした判例があります。
    このように単純遺棄罪の対象となる範囲を明確に示すことは困難であり、個別の具体的な判断を要します。

    一方、保護責任者遺棄罪でいう遺棄は移置だけでなく「置き去り」も含む広い概念です。保護責任者遺棄罪は「保護する責任を負う者」が遺棄した場合のみ成立します。
    たとえば、子どもを保護するべき親が、パチンコや買い物中に子どもを車内に閉じ込めておくような行為は、単純遺棄罪ではなく保護責任者遺棄罪にあたります。このケースで子どもが亡くなると、保護責任者遺棄致死罪が成立します。

  2. (2)遺棄等致死罪と傷害致死罪の相違点

    暴行・傷害や死亡させる故意はなかったものの、単純遺棄罪または保護責任者致死罪を犯した結果、死亡させてしまった場合に遺棄等致死罪が成立します。
    一方、暴行・傷害の意図をもって傷害を負わせたものの死亡させるつもりはなく、結果的に死亡させてしまった場合には傷害致死罪が成立します。

  3. (3)遺棄等致死罪の罰則

    遺棄等致死罪が成立した場合の刑罰は、次のように定められています。

    傷害の罪と比較して、重い刑により処断する(刑法第219条)。

    つまり遺棄等致死罪の刑罰は、傷害致死罪と単純遺棄罪又は保護責任者遺棄罪を比較して、刑の上限・下限ともに重いほうが適用されます。単純遺棄罪の結果、人を死亡させた場合の刑罰は以下のとおりです。


    • 傷害致死罪の刑罰:3年以上20年以下の懲役
    • 単純遺棄罪の刑罰:1年以下の懲役


    したがって、遺棄致死罪の刑罰は「3年以上20年以下の懲役」となります。

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3、傷害致死罪と殺人罪の違い

殺人罪は故意に人を死亡させる犯罪です(刑法第199条)。殺害行為と死亡との間に因果関係があると殺人罪が成立します。

傷害致死罪と殺人罪は、いずれも加害者の行為によって人を死亡させている点では共通しています

  1. (1)殺意の有無

    両罪が明確に違うのは殺意の有無です。暴行や傷害の故意があったが殺意まではなかった場合は傷害致死罪、殺意をもって人を死亡させた場合は殺人罪に問われます。
    殺意の有無については、創傷の部位や凶器の有無、犯行後の行動や動機などの客観的状況を総合的に検討し、判断されます。

  2. (2)刑罰の違い

    傷害致死罪の刑罰は「3年以上20年以下の懲役」です。
    一方、殺人罪の刑罰は「死刑又は無期もしくは5年以上の懲役」です。

    法定刑が異なる点以外にも、執行猶予がつくかどうかの点にも違いがあります。
    執行猶予は「3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金」を言い渡す際に、くむべき情状があり、過去5年間に禁錮以上の刑を受けたことがない場合に付されるものです。

    傷害致死罪の刑の下限は3年なので執行猶予がつく可能性がありますが、殺人罪の刑の下限は5年なので原則として執行猶予はつきません。

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4、傷害致死事件の量刑判断

裁判で実際に被告人に言い渡される刑(宣告刑)を法定刑の範囲内で裁判所又は裁判官が決定する作業を量刑と言います。傷害致死事件は裁判員裁判の対象なので、一般市民である裁判員の量刑判断も含まれます。

傷害致死罪の量刑は、法定刑の懲役3年から20年の間で決まりますが、事件の内容に応じて総合的に判断されます。量刑判断の基準となるのは次のような要素です。

  • 犯行の悪質性や計画性
  • 犯行に至った動機
  • 被告人の犯行後の行動
  • 同種の前科の有無
  • 被告人の性格や生活環境
  • 被告人の反省の有無、度合い
  • 被害者遺族への謝罪、示談の有無


たとえば執拗(しつよう)に暴行を加えた、犯行後に直ちに救急車を呼ばなかった、逮捕後にも反省の態度がまったくみられないなどの場合は、量刑が重くなる可能性があります

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5、傷害致死事件における弁護活動

傷害致死事件をおこし、逮捕される可能性があるときは、速やかに弁護士へ相談しましょう。また、ご家族が逮捕された場合は、ご本人が弁護士を探すことは困難です。ご家族が、刑事事件の対応実績が豊富な弁護士を探し、依頼する必要があります。

依頼を受けた弁護士は、直ちに被疑者と面会し、取り調べのアドバイスをおこないます。捜査機関に対しては、被疑者にとって有利になること、たとえば初犯でかつ罪を認めて反省している、家族の監督を期待できるため再犯のおそれがないなどを主張するほか、意見書の提出をおこないます。

平行して、被害者遺族と示談交渉を進めます。
遺族から許しを得て示談が成立すれば量刑判断で考慮され、執行猶予がつく可能性があります。起訴前の示談成立であれば、不起訴処分となる可能性も残されるでしょう。
ただし、被害者が亡くなっている以上、示談交渉は困難を極めることが予想されます。できるだけ早期に弁護士を介入させ、示談交渉に着手することが重要です。示談が成立しない場合でも、遺族へ謝罪文を送る、贖罪(しょくざい)寄付をするなどの方法で、深い反省と謝罪の意思を示せば、量刑において少しは考慮される可能性があります。

また、裁判においては裁判員へわかりやすい言葉で訴えかけるなど、最後までサポートを続けます。

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6、まとめ

人を死亡させるという結果が生じた場合、傷害致死罪や遺棄等致死罪、殺人罪が成立する可能性があります。故意の有無などによって、どの罪に該当するのかは異なります。事件の状況や被害者と加害者の関係性などを考慮したうえで、法的に判断することが必要となります。
そのため、できるだけ早く、弁護士のサポートを得るのが最善の方法でしょう。
事件をおこし不安を抱えている方や、ご家族が逮捕された方は、刑事事件の実績が豊富なベリーベスト法律事務所が力を尽くしますので、まずはご連絡ください。

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監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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