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脱法ハーブの所持で逮捕! 知らない場合でも有罪? 罪名や逮捕後の流れ
芸能人やスポーツ選手などの著名人が違法薬物を使用・所持した容疑で逮捕された事例は数多くありますが、依存症状が進むなかで「脱法ハーブ」に手を染めてきたケースもめずらしくないようです。
令和元年11月に麻薬取締法違反で逮捕された有名女優についても、後輩のモデル女性などから脱法ハーブにも手を出していたと証言をされるといった報道があり、世間を驚かせました。
脱法ハーブについて、その呼び名から「違法ではない」というイメージを持っている方も少なくありませんが、使用だけでなく所持していただけでも犯罪となり、逮捕や重い刑罰が科せられることもあります。本コラムでは「脱法ハーブ」の違法性に注目しながら、逮捕後の流れや刑罰の重さを弁護士が解説します。
1、脱法ハーブを所持・使用するとどのような罪に問われるのか
脱法ハーブと呼ばれるものは平成26年、厚生労働省が「危険ドラッグ」という名称に変更しており、決して「適法である」という性格をもっているものではありません。
使用や所持が法律で禁止されているため、逮捕され、刑罰が科せられるおそれもあります。
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(1)医薬品医療機器等法の違反
脱法ハーブは、別名を「合成大麻」ともいい、大麻に含まれるテトラヒドロカンナビノールの効果を模した合成カンナビノイドを含んでいます。
大麻と同様の薬理作用とともに強い有害性をもつ非常に危険な薬物です。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称:医薬品医療機器等法)」における「指定薬物」として規制を受けています。
指定薬物とは、中枢神経系の興奮や抑制、幻覚作用などを起こす薬物です。覚醒剤取締法・大麻取締法・麻薬および向精神薬取締法といった法律で規制されている薬物も、ここでいう指定薬物に含まれています。 -
(2)都道府県の条例などに違反するケースも
脱法ハーブは大麻の薬理作用を模した代替品として開発されてきた経緯もあって、新成分を含んだものが次々と登場しています。
医薬品医療機器等法で規制対象となっていないものは「禁止されていないので合法」と解釈しがちですが、東京都・大阪府・愛知県・新潟県などでは条例による規制が敷かれています。販売のみの規制や所持・使用を禁止するなど都道府県によって内容に差があるので、地域によって違反となる行為に差が生じるという点にはとくに注意が必要です。 -
(3)所持だけでも罰の対象になる
指定薬物に該当する脱法ハーブは、医薬品医療機器等法第76条の4の規定によって、製造・輸入・販売・授与・所持・購入・譲り受け・医療等の用途以外での使用が禁止されています。従来はこれに「所持」が含まれていませんでしたが、平成26年の法改正によって「所持」も禁止対象となりました。
違反すると刑事罰の対象となり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれを併科されるおそれがあります(同法第84条26号)。
違反が発覚すれば警察に逮捕され、刑事責任を問われることになるでしょう。懲役刑も規定されているため、決して軽い罪ではありません。
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2、危険ドラッグと知らなかった場合でも罪に問われる
危険ドラッグとして指定されている脱法ハーブなどは、覚醒剤のように闇の流通ルートだけでなく市中の専門店や露天などでも堂々と販売されていることがあります。店舗側も「これは合法」と説明して販売しますが、安心してはいけません。
法律で規制されているとは知らなかった場合でも、法律で規制されている指定薬物を所持していれば罪に問われるおそれがあります。
故意ではない場合でも、刑法第38条3項は「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない」と規定しています。「法律で禁止されているとは知らなかった」と説明しても疑いは免れず、また実際に違法である認識がなかったとしても刑法の規定では刑罰は免除されません。
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3、脱法ハーブで逮捕された後の流れ
脱法ハーブを規制する法律の違反が発覚すると逮捕されてしまうこともあります。
警察による逮捕には、逮捕状に基づく通常逮捕、犯行現場で身柄を確保される現行犯逮捕、一定の重大犯罪で逮捕状を請求する時間がない場合に即時身柄を確保するための緊急逮捕があります。
脱法ハーブ事件では、覚醒剤のように現場における簡易検査が確立されていない面もあり、詳しい鑑定が必要となることから、現行犯逮捕よりも通常逮捕されるケースが多いでしょう。
警察に逮捕されると、その時点から自由な行動が制限されます。帰宅・外出はもちろん、外部との連絡も許されません。逮捕されると警察署の留置場で身柄を拘束され、警察官による取り調べを受けます。
警察による初期の取り調べが終了すると、逮捕から48時間以内に検察官へと身柄が引き継がれます。この手続きを送致といいます。
送致を受けた検察官は、さらに取り調べをおこない被疑者を罪に問うべきか、釈放すべきかを24時間以内に判断します。ただし、この段階では捜査が尽くされていないため、脱法ハーブを使用した経緯や入手経路、常習性などが明らかにならないことも多くあります。
そこで、このような場合、検察官は裁判官に対して「勾留」を請求します。薬物事件では身柄の釈放によって証拠隠滅を図るおそれがあるため、勾留を受ける可能性が高いでしょう。
勾留が認められると、原則10日、延長によって最長20日まで身柄拘束が延長され、さらなる取り調べが続きます。勾留期限が満期を迎える日までに、検察官が起訴・不起訴を決定し、起訴の場合は刑事裁判に、不起訴の場合は釈放となります。
刑事裁判では証拠をもとに裁判官が審理し、有罪の場合はどの程度の刑罰が適当であるのかを判断して判決を下します。懲役刑が下されると執行猶予がつかない限り刑務所に収監されることになりますが、罰金刑の場合は罰金を納付することで刑罰が終了します。
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4、逮捕された場合に考えるべきこと
脱法ハーブ事件で警察に逮捕されてしまった場合、本人やその家族はどのような対策をとるべきなのでしょうか?
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(1)早期に弁護士に相談する
脱法ハーブ事件に限らず、警察に逮捕されてしまうと勾留が決定するまでの72時間は家族であっても面会ができません。この期間、逮捕されている本人と面会してこれからの刑事手続きの流れや取り調べに対するアドバイスを与えられるのは弁護士だけです。
脱法ハーブ事件では、悪質性の高さが重要な争点になります。法律で規制されている指定薬物だと知らなかった場合は、刑法の規定によって罪を免れないとしても刑罰の減軽が適用される可能性があります。「知らなかった」という事実を客観的に証明できる証拠を収集する必要があるでしょう。
薬物事件の弁護実績が高い弁護士に依頼することで、刑罰の減軽や執行猶予・不起訴処分の獲得が期待できます。逮捕されている本人は身柄を拘束されているため弁護士を選ぶことができません。弁護士への相談・依頼は、残された家族が尽力するべき作業です。 -
(2)家族や周囲が本人の更生を支える
脱法ハーブ事件をはじめとした薬物事犯では「再犯のおそれ」が重視されます。どのように入手したのか、誰から購入したのかなどの経緯・ルートを包み隠さず供述することで、深い反省を示していると評価されやすくなるでしょう。
また、薬物依存の治療に向けた専門医の受診計画や更生施設への入所といった方法でも、再犯のおそれを否定できます。
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5、まとめ
「脱法ハーブ」はとくに若年層の間で「違法性がない」「依存性が弱い」といった誤解とともに広くまん延しています。新たな薬物が次々と市場に流通するため、捜査機関や法律とのいたちごっこが繰り返されていますが、取り締まりの手は強まっているといえるでしょう。
脱法ハーブの使用や所持で逮捕されてしまった場合は、重い刑罰が下されるおそれがあります。身柄の早期釈放や刑罰・処分の軽減を目指すなら、薬物事犯の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。
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