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家族が覚醒剤取締法違反で逮捕! 連絡を受けた後、家族にできること
覚醒剤は高い依存性を持つ薬物です。中毒状態からの回復が容易ではなく、社会におよぼす影響も大きいため、警察は覚醒剤の所持や使用を厳しく取り締まっています。
もしもある日突然、「お宅の〇〇さんが覚醒剤の所持・使用の疑いで逮捕されました」と警察から連絡があったら、家族はどのように対応すべきなのでしょうか。
この記事では、覚醒剤取締法違反事件で逮捕された後の流れや量刑の判断基準、家族にできることについて、弁護士が詳しく解説します。
1、覚醒剤取締法違反事件で逮捕された後の流れ
覚醒剤を所持・使用した疑いで逮捕された場合、覚醒剤取締法違反として罪を問われる可能性があります。ここでは、逮捕後の流れがどのようになるのかを解説します。
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(1)多くの場合、逮捕後は勾留となる
覚醒剤取締法違反事件で逮捕された後には、ほとんどのケースでは、勾留されてしまいます。これは、逮捕後に自由な行動を許してしまうと、関係者(覚醒剤の売人、共犯者)と口裏合わせをしたり、覚醒剤を処分して罪証隠滅を図ったりする可能性があると裁判官に判断されてしまうためです。
勾留は原則10日間ですが、検察官が勾留延長を請求して裁判官がそれを認めた場合には、さらに10日間延長されます。つまり、最長20日間にわたって勾留される可能性があるのです。
逮捕されてから勾留が決定するまでには、最長で72時間かかります。その間は、たとえ家族であっても面会(接見)が許されず、弁護士だけが面会可能になります。共犯者がいたり、組織犯罪が疑われたりする場合には、勾留決定後にも弁護士以外の面会が禁止される(接見禁止決定)可能性があります。勾留決定までのなるべく早いうちに弁護士に相談し、今後の方針を検討することが重要です。 -
(2)その後起訴され、裁判へ
勾留期間が終わるまでの間に、検察官が起訴・不起訴を判断します。勾留期間は原則10日、最長20日間ですので、スケジュールに余裕があるとはいえません。
したがって、不起訴を目指すのか、無罪を目指すのか、それとも執行猶予を目指すのかといった今後の対応について、早期に検討を始める必要があるのです。
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2、覚醒剤取締法違反事件の罰則
覚醒剤取締法違反事件といっても、さまざまな行為態様があり、行為態様に応じて、法定刑が定められています。主な覚醒剤取締法違反事件の法定刑は、以下のとおりです。
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(1)所持
覚醒剤をみだりに所持した場合の法定刑は、懲役10年以下と定められています(覚醒剤取締法第41条の2第1項)。
ただし、覚醒剤を営利目的で所持した場合の法定刑は、懲役1年以上、または情状により懲役1年以上および500万円以下の罰金と定められています(同条第2項)。 -
(2)使用
法定の除外自由がないにもかかわらず、覚醒剤を使用した場合の法定刑は10年以下と定められています(覚醒剤取締法第41条の3第1項第1号、第19条)。
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(3)譲渡、譲受
覚醒剤を譲渡した場合や譲り受けた場合の法定刑は、所持の場合と同様、懲役10年以下と定められています(覚醒剤取締法第41条の2第1項)。
ただし、営利目的で譲渡した場合や譲り受けた場合には、所持の場合と同様、懲役1年以上、または情状により懲役1年以上および500万円以下の罰金と定められています(同条第2項)。
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3、量刑の判断基準
覚醒剤取締法違反の法定刑は、先に述べたとおりですが、実際の量刑は、以下のような基準に基づいて判断されます。
- 薬物に対する依存度 覚醒剤に対する依存度が高いと判断された場合も、量刑が重くなる可能性があります。薬物への依存度は、所持・使用していた量や期間、頻度などから推定されます。
- 薬物犯罪の前科の有無 覚醒剤などの薬物が絡む犯罪は、再犯率が非常に高いことで知られています。以前にも薬物事件を起こしたことがある場合、量刑が重くなる可能性があります。
- 再犯の可能性 出所後に覚醒剤を容易に入手できる環境に置かれると判断された場合など、再犯の可能性が高い場合には、罪が重くなる可能性があります。
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4、初犯の場合、罪は軽くなるのか
上述のとおり、覚醒剤取締法違反事件では前科の有無が量刑に影響します。過去の事例に照らせば、初犯の場合は執行猶予付きの判決が出る可能性があるでしょう。
しかしながら、「初犯ならほとんどの場合は執行猶予が付く」といえるわけではありません。覚醒剤を使うのが初めてでもほかの薬物犯罪で前科がある場合や、営利目的で覚醒剤を所持していた場合や依存度が高いと評価された場合には、初犯でも実刑となるケースがあります。
いずれにしても、前科が付けばその後の人生に大きな影響をおよぼす可能性が高いため、弁護士に相談したうえで適切に対応することが重要です。
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5、覚醒剤取締法違反事件の弁護方針
覚醒剤取締法違反事件においては、逮捕後のなるべく早い時期に弁護方針を決めることが大切です。弁護士は状況に合わせて次のような活動を行います。
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(1)不起訴を目指す
覚醒剤取締法違反事件には被害者がいないため、示談ができません。そのため、「被害者の処罰感情が和らいだ」と主張することも不可能であり、情状酌量による不起訴を目指すのが難しい犯罪です。
しかし、覚醒剤取締法違反事件で不起訴になる可能性はゼロではありません。たとえば、覚醒剤が本人のものではなく、覚醒剤とは知らずに所持していたケースなどでは、不起訴を目指せる可能性もあります。
この場合、弁護士と綿密な打ち合わせを行ったうえで、自分の認識を正確に主張したり、誤った情報を伝えないよう黙秘したりする必要があります。覚醒剤の所持や使用に心当たりがないときには、なるべく早期に弁護士との相談を開始することが重要です。 -
(2)起訴後の迅速な保釈
起訴をされてしまった場合、保釈請求が可能になります。保釈とは、勾留されている被告人を、保釈保証金を担保にして暫定的に釈放する制度です。身柄を解かれることで身体的・精神的な負担が軽減され、弁護士との意思疎通もスムーズになるでしょう。また、覚醒剤の所持・使用を認めている場合には、更生に向けての活動を早期に開始できるというメリットもあります。
保釈されるためには、保釈保証金を納める必要がありますが、家族が協力して支払うケースが多くなります。また、保釈後の住居が指定されることが多く、たいていは家族の住居が指定されます。保釈が許されるかどうかの判断においては、家族の受け入れ態勢も影響することになるでしょう。弁護士と相談しながら、保釈の許可が得られやすい態勢を整えていくことが有効です。 -
(3)裁判で減刑を勝ち取る
起訴された場合には、裁判を受けることになります。本人が罪を認めている場合には、執行猶予付判決や、できるだけ期間の短い刑を目指す方針になります。
覚醒剤取締法違反事件の量刑は、所持や使用のあり方によってさまざまです。初犯であれば、自らの罪を反省し、再犯防止に全力を尽くす姿勢を的確に伝える必要があります。また、薬物犯罪の前科がある場合には、これまでどのように再犯防止に取り組んできたかを伝えることが重要になります。裁判官に理解してもらえるよう、自らの考えを的確に伝えるためには、これらの活動も弁護士と協力しながら行うことが大切です。
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6、逮捕連絡を受けた家族にできること
家族が覚醒剤取締法違反事件で逮捕されてしまった場合、身内にできることは多くあります。大切な家族がなるべく早く立ち直れるよう、サポートに努めましょう。
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(1)早期に弁護士を依頼する
逮捕から勾留までの期間には家族であっても面会が許されません。そのため、本人は精神的な支えも専門知識もなく、さまざまなことにひとりで対応することになります。このような状況で捜査官の誘導や圧力を受けると、やってもいない罪をやったと供述してしまうリスクもあります。
逮捕後、早期に弁護士を依頼すれば、弁護活動はもちろん、精神的なサポートを行うことができます。不本意な供述によって不利になることを防ぐためにも、早めの相談が重要です。 -
(2)更生施設を利用する
覚醒剤は依存性の高い薬物です。自分の意志だけで使用への衝動を断ち切るのが難しいため、周囲のサポートが大切になります。とはいえ薬物依存の問題は、家族や周囲の人だけで解決することが困難です。
そこで効果的なのが、更生施設の利用です。薬物を専門に扱う更生施設には、「どうすれば薬物依存から立ち直れるのか」というノウハウが蓄積されています。医療機関や回復施設、自助グループなど、薬物からの更生を目的とする施設やグループは複数ありますので、状況に応じて参加を検討してみましょう。 -
(3)相談窓口を利用する
各自治体では「精神保健福祉センター」「こころの健康センター」などの施設内に、薬物依存を専門とする相談窓口を設置しています。地域の医療機関や自助グループの情報が提供されているほか、多くのセンターで、回復プログラムや家族用の心理教育プログラムなどが実施されています。
特定の更生施設や自助グループを選ぶのが難しい場合には、こうした相談窓口を活用して情報を集めるとよいでしょう。
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7、まとめ
本記事では、覚醒剤の所持・使用の疑いで家族が逮捕された際にどのような処分を受けるのか、また量刑判断の基準を説明しました。
覚醒剤取締法違反事件では示談ができないなどの性質から刑が重くなる傾向があります。早期に弁護士へ相談・依頼することで、不起訴が認められたり、起訴後に保釈となったりと、本人の社会復帰や家族が受ける影響を最小限に抑えることを目指した弁護活動が可能になります。
もし、家族が覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されてしまった場合には、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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