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危険ドラッグの所持や使用はどんな犯罪になる? 交通事故の罰則は?
ハーブやアロマといった名称で販売されてきた危険ドラッグは、覚せい剤などと類似の作用があり、人体に悪影響をおよぼす危険性の高い薬物です。
安易な気持ちから手を出したことで、その中毒性から抜け出せなくなったり、錯乱状態になって交通事故を起こしたりする事例が多発しています。危険ドラッグの服用が原因となって起こった交通事故により、被害者が死亡した事例も少なくないのです。
本コラムでは、危険ドラッグに関わることで起こる犯罪や刑罰について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、危険ドラッグに分類されるもの
「危険ドラッグ」の具体的な定義について、解説します。
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(1)「危険ドラッグ」とは
危険ドラッグとは、法律で「規制薬物」や「指定薬物」とされている薬物に化学構造が類似した薬物、のことを指します。
規制薬物の具体例は、覚せい剤や大麻、向精神薬やアヘンなどです。
指定薬物とは、規制薬物の化学構造の一部を変えたものであり、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「医薬品医療機器等法」といいます。)においた規定された薬物です。
危険ドラッグとは、規制薬物や指定薬物に似た作用を持つ薬物のこととなります。 -
(2)危険ドラッグが「危険」な理由
危険ドラッグの作用や副作用は、厳密に解明されているわけではありません。人体に使用したときにどのような症状があらわれ、どのような悪影響がおよぼされるのかも、詳しくは解明されていないのです。
そのため、服用すると予期せぬ作用や副作用が発言して、深刻な悪影響が生じる可能性がある点が、危険だといえます。
また、安価に購入できる危険ドラッグを軽い気持ちで試したことをきっかけにして、覚せい剤や向精神薬などの規制薬物の使用に移行してしまう…という「ゲートウェイ・ドラッグ」としての側面があることも、危険性といえます。 -
(3)危険ドラッグの名称の変遷
危険ドラッグは、平成12年ごろまでは「合法ドラッグ」と呼ばれていました。
しかし、この名称はまるで違法ではないかのようなイメージを与えることから、その後は「脱法ドラッグ」や「違法ドラッグ」という名称が定着しました。
そして、平成26年に、厚生労働省と警察庁が「危険ドラッグ」という名称を発表したのです。
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2、危険ドラッグによる影響
危険ドラッグを服用したときに発症する症状としては、以下のようなものがあります。
- 幻覚、幻聴:実在しないものが見えたり聞こえたりする
- 集中力や判断力の低下:持続的な活動ができなくなる
- 倦怠感:激しいだるさを感じる
- 興奮作用:気持ちがひどく高ぶる
- けいれん:けいれん症状がおこる
いずれの症状も心身に、大きな影響を与えるものです。また、危険ドラッグを使用していない間におこる「禁断症状」も、深刻なものである場合が多いです。
症状の程度が重い場合には、錯乱して交通事故や人命に関わる問題を起こしてしまうこともあります。
平成26年には、危険ドラッグを原因とする交通事故が相次いだことから、警察が「危険ドラッグ使用の疑いがある場合は事故の有無にかかわらず現行犯逮捕する」という方針を定めました。
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3、危険ドラッグ使用による罰則
先述した通り、危険ドラッグとは規制薬物や指定薬物には化学構造が類似した薬物のことですが、指定薬物そのものが危険ドラッグという体裁で流通していることも多いです。そのため、危険ドラッグのつもりで服用した薬物が指定薬物であった、という場合もあるでしょう。
使用した危険ドラッグが指定薬物であった場合には、「医薬品医療機器等法」に違反して、該当の法律に基づいた罰則がくだされる可能性があります。
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(1)指定薬物とは
医薬品医療機器等法第2条第15項では、「中枢神経系の興奮もしくは抑制または幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物」が指定薬物であるとされています。つまり、神経系に作用して興奮・幻覚などの症状をもたらし、人体に悪影響を与える危険性が高い薬物が、指定薬物とされているのです。
具体的な物質名は、厚生労働省令によって定められています。また、医薬品医療機器等法では、規制される物質は厚生労働大臣による「指定」によって定められるとされています。そのため、現時点では指定薬物になっていない危険ドラッグであっても、将来的に指定薬物に定められる可能性があるのです。 -
(2)医薬品医療機器等法の罰則
医薬品医療機器等法では、指定薬物の製造、輸入、販売、授与、所持、購入、譲受、医療用途以外の用途での使用が禁止されています(同法第76条の4)。
また、営利目的で販売するなどした場合には、その社会的な影響の大きさから特に厳しく罰せられることになります。
違反した場合の罰則は、以下の通りです。
- 非営利目的:3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科(同法第84条)
- 営利目的:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科(同法第83条の9)
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4、危険ドラッグを使用しての運転も罪に問われる
先述した通り、危険ドラッグが原因の交通事故は、特に問題視されています。
そのため、危険ドラッグを使用した状態で自動車やバイクなどを運転した場合にも、罪に問われることになります。
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(1)道路交通法違反
道路交通法第66条では「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」としています。
危険ドラッグを使用すれば運転中にどのような症状がでるのかわからず、重大な事故を引き起こすおそれが高いでしょう。そのため、実際に事故を起こしていない場合や、人身事故ではなく物損事故であった場合にも、同条違反で処罰される可能性があります。
罰則は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(同法第117条の2の2)。また、行政処分として、運転免許取り消し処分となります。 -
(2)危険運転致死傷罪
危険ドラッグを含む薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて、人を負傷または死亡させた場合は、危険運転致死傷罪に問われる可能性があります(自動車運転処罰法第2条)。
危険ドラッグによる影響や危険性を認識していながら自動車を走行させ、かつ人を死傷させるという重大な結果を引き起こす犯罪であるため、極めて重い罰則が設けられています。人を負傷させた場合が「15年以下の懲役」、人を死亡させた場合が「1年以上20年以下の懲役」となります。また、運転免許も取り消されます。
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5、危険ドラッグが原因で交通事故を起こしてしまった場合の対応
家族が危険ドラッグを服用して事故を起こしてしまった場合、すぐに弁護士へ相談しましょう。また、危険ドラッグをはじめとする薬物は依存性が高いため、社会復帰のためにも更生プログラムを受けるなどの活動が求められます。
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(1)弁護士に弁護活動を依頼する
危険ドラッグを使用した状態で事故を引き起こした場合は証拠隠滅などのおそれがあるため、逮捕・勾留される可能性が高くなります。また、逮捕後の72時間はご家族であっても面会できません。勾留の段階に入っても、接見禁止が付されて、面会できない場合があります。
しかし、弁護士であれば、面会の制限はありません。逮捕直後から本人と面会して、取調べ対応のアドバイスをすることができます。これにより、逮捕された本人が精神的な動揺などから不用意な供述をして、今後の刑事手続で不利になる供述調書を取られる事態を回避することができるのです。
また、もし不当な取調べがおこなわれた場合には弁護士がただちに抗議して、逮捕された方の人権を守ります。
弁護士による面会では捜査官の立会いや日時制限なく話すことができるため、今後の対応の方向性やご家族との連絡事項について意思疎通を図ることも可能です。
また、検察官や裁判官に対して、ご家族が監督できる状況にあること、薬物治療を開始したことなどを示して、早期に釈放されるようはたらきかけることもできます。同時に、被害者の方への謝罪や被害弁償、示談交渉などのサポートもいたします。 -
(2)薬物治療、更生プログラムへの参加
危険ドラッグは依存性が高いものが多く、自分の力だけではなかなか依存から脱却することができません。そのため、再び事故や事件を引き起こしてしまうおそれが高く、本人の心身への影響も長期間続いてしまうことになる場合が多いのです。
ドラッグ依存から脱出するためには、薬物治療の専門施設で治療を受けたり、薬物依存の更生プログラムを受けたりするなどして、根本的な解決を図る必要があります。
依存状態からの治療や更生には、ご家族の協力が不可欠です。また、危険ドラッグを服用していた本人とご家族とが一丸となって更生に取り組んでいる事実を裁判で示すことで、量刑が軽減される可能性もあります。
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6、まとめ
薬物に起因する犯罪や交通事故などは、刑事罰を科すだけで解決できる問題ではありません。
危険ドラッグも同様で、捜査に積極的に協力することはもちろん、自ら薬物を断つための取り組みに参加するなどして、心からの反省と二度と繰り返さない強い意志を見せることが重要です。
もし家族が危険ドラッグによる事故を起こしてしまったら、薬物問題の解決実績を多く持つベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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