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友人と大麻を吸引してしまった! 問われる罪や時効・逮捕後の流れ
令和元年版犯罪白書によると、平成30年の大麻取締法違反の摘発者数は3762人と過去最多を更新し、そのうち20代・30代が7~8割を占めています。
若年層への浸透が深刻化している背景には、「依存性がない」「有害ではない」などの誤った情報の浸透や、周囲からの誘い、興味本位など気軽に手を出してしまう人が多いことなどが考えられます。
しかし、大麻は吸引(使用)すれば脳の中枢神経に作用にし、さまざまな健康被害を引き起こす有害性が高い薬物です。また大麻取締法違反として有罪になれば厳しく処罰され、前科もついてしまいます。本コラムでは、大麻吸引によって問われる罪と時効、逮捕後の流れについて解説します。
1、大麻吸引が問われる罪は? 時効についても解説
大麻を吸引するとどのような罪に問われ、時効はいつ成立するのでしょうか。大麻の取り扱いについて定めた「大麻取締法」をもとに確認しましょう。
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(1)大麻取扱法で禁止される行為
日本では大麻の取り扱いは免許制となっており、大麻取扱者以外が大麻を所持、栽培、譲り受け、譲り渡し、研究のために使用することはできません(大麻取締法 第3条1項)。
また一般の人か大麻取扱者かを問わず、大麻から製造された医薬品の施用、施用のための交付、大麻に関する広告が禁止されているほか、大麻の輸入・輸入についても大麻研究者が特別に許可を受けた場合だけに限られています(同法第4条)。
ほかにも、栽培や輸入・輸出の予備、譲り受け・譲り渡しの周旋などが処罰の対象です。
しかし、大麻取締法には、大麻の吸引(自己使用)の罪に関する規定がありません。 -
(2)使用の罪はなくても処罰されることがある
自己使用の罪がないことから、「大麻は吸引しても逮捕・処罰されない」といった間違った情報が流れています。
しかし、そもそも使用したということは、少なくとも所持しているか、誰かから譲り受け、あるいは輸入したなどと考えられます。
したがって、使用の罪が規定されていませんが、所持や譲り受けの罪などが成立し、処罰される可能性が高いでしょう。 -
(3)時効について
大麻取締法違反の公訴時効は、行為によって以下のように異なります。
- 個人目的の栽培、輸入・輸出、所持、譲り受け・譲り渡し:5年
- 営利目的の栽培、輸入・輸出:7年
- 営利目的の所持、譲り受け・譲り渡し:5年
公訴時効が成立すると検察官が起訴できなくなるため、刑事裁判にかけられ処罰されることはありません。
しかし、どの禁止行為に該当し、公訴時効はいつから進行するのかなどは事案によって異なるため、安易な判断はできませんので、注意しておくべきでしょう。
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2、大麻取締法違反で逮捕された後の流れ
大麻取締法違反で逮捕されると、ほかの刑事事件と同じように刑事手続きが進められます。逮捕後の流れや尿検査・毛髪検査が実施されるタイミングを確認しておきましょう。
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(1)逮捕後の流れ
逮捕から警察官による取り調べを受けた後、48時間以内に検察官へ送られます(送致)。検察官は送致から24時間以内に、勾留を請求するかを判断します。
検察官が勾留を請求し、裁判官が勾留を認めた場合は、10日間(延長も含めると最大20日間)の身柄拘束が続きます。
大麻事件の場合、大麻を捨てる、薬物関係者と連絡をとりあうなどして証拠を隠滅するおそれがあるため、事案によりけりですが、勾留される可能性も十分あるでしょう。
その後、検察官は勾留期間の満期までに起訴・不起訴処分を決定します。起訴されると刑事裁判を待つ身となり、保釈されない限り、基本的には引き続き身柄は拘束されます。 -
(2)毛髪検査や尿検査が実施されるタイミング
薬物事件の場合、逮捕の前後には毛髪検査や尿検査が実施されることが考えられます。
ただし、検査が実施されるタイミングは状況によって異なるでしょう。たとえば、職務質問を受け、所持品検査で大麻らしきものが発見されたため、尿の提出を求められるケース、大麻所持の事案で逮捕・勾留されている間に毛髪検査が実施されるなどのケースが考えられます。
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3、どのように量刑が判断されるのか
大麻取締法違反で逮捕・起訴され裁判となった場合、どのくらいの刑が言い渡されるのでしょうか。量刑を左右する要素について解説します。
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(1)大麻取締法違反の法定刑
大麻取締法違反による主な法定刑は、次のとおりです。
前述したように、大麻吸引は直接的には違反行為に該当しません。そのため、事実関係を明らかにした上で、どの行為に該当するかが判断されます。
- 個人目的の栽培、輸入・輸出:7年以下の懲役
- 上記が営利目的の場合:10年以下の懲役、または情状により300万円以下の罰金を併科
- 個人目的の所持、譲り受け・譲り渡し:5年以下の懲役
- 上記が営利目的の場合:7年以下の懲役、または情状により200万円以下の罰金を併科
裁判で実際に言い渡される刑(量刑)は、法定刑の範囲で裁判官が決定します。
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(2)量刑を判断する要素
裁判官は、次のような要素をもとに量刑を判断します。
- 初犯かどうか 初犯であり、大麻依存の度合いが弱く、社会の中での更生に期待できるような場合は、判決に執行猶予がつく可能性があります。執行猶予がつけば直ちに刑務所に収監されることはなく、猶予期間中に再び罪を犯さない限り、刑の効力は失われます。
- 大麻の所持量 大麻の所持量が多いほど依存性、常習性が認められやすいため、量刑が重く傾きます。
- 違反行為におよんだ目的 個人使用が目的の場合、初犯で所持量も少ないなどの事情があれば、執行猶予の可能性が十分あります。
- 反省の度合い 自身が犯したことと向き合い、深く反省している場合には社会の中での更生に期待できるため、刑が減軽されることがあります。
再犯の場合は、依存の度合いが強く、前回の事件を反省していないと考えられるため、実刑判決となる可能性が高くなるでしょう。
一方、所持していたのが微量の場合には執行猶予つき判決となる可能性がでてきます。
初犯で深く反省しているなどの事情も加われば、裁判になる前の段階で不起訴処分が下されることも一応ありえます。
営利目的の場合、個人目的と比べて法定刑自体が重いことに加え、流通のおそれや社会への影響から悪質性が高いと判断されるため、量刑が重く傾くでしょう。実刑判決も覚悟しなくてはなりません。
ただし、口先だけの反省ではなく、具体的な再犯防止策を講じ、更生の意欲が高いと認められなければ、説得力がありません。
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4、逮捕されたときにとるべき対応
大麻取締法違反で逮捕された際に、どのような対応が必要になるのかについて解説します。
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(1)弁護士に相談
まずはできるだけ早く弁護士へ相談しましょう。逮捕後の取り調べでは、捜査員からの厳しい追及に耐えきれず自身に不利になる発言をするおそれがあります。不利な供述調書を作成されてしまうと、後から覆すのは難しいでしょう。
弁護士が逮捕直後に面会し、取り調べで何を供述し、どのように振る舞うべきかをアドバイスします。
また身柄拘束期間が長引くと会社や学校に通うことができず、日常生活に大きな影響が生じます。
弁護士は、検察官や裁判官に対し、証拠隠滅のおそれがないため勾留の必要性がないことを訴えるなど、早期の身柄釈放に向けた活動をおこないます。 -
(2)再犯防止策を講じる
大麻事件では再犯防止策をしっかりと考えることが非常に大切です。
本人の更生・社会復帰につなげるのはもちろんですが、更生の期待が高い点を示すことにもなり、結果的に処分や刑の減軽を得られる可能性もあります。
再犯防止策としては、専門機関で依存症の治療を受ける、更生プログラムに参加する、薬物仲間との縁を切るための具体策を講じるなどの活動が必要です。
また、再犯防止のためには家族の理解と協力は不可欠です。家族のサポートを得られるかも、重要なポイントになるでしょう。 -
(3)起訴後の保釈請求の準備
起訴されてしまった場合、裁判までは身柄拘束が続くため、心身の負担は非常に大きくなります。そこで必要なのは保釈です。
弁護士ができるだけ早い段階から保釈請求の準備を進めることで、起訴後すぐに保釈が認められる可能性が高まります。
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5、まとめ
大麻取締法に大麻吸引(自己使用)の規定はありませんが、使用に関連する所持や譲り受けなどの罪で逮捕・処罰される可能性もあるでしょう。
一度でも大麻に関わってしまったのであれば、まずは弁護士へ相談し、今後どのような対応をとるべきかアドバイスを受けるのがよいでしょう。薬物問題の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所がサポートしますので、まずはご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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