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覚醒剤で逮捕されたらどうなる? 逮捕後の流れや量刑判断のポイント
覚醒剤(覚せい剤)の所持などは覚醒剤取締法違反に当たり、逮捕される可能性があります。もし覚醒剤取締法違反によって逮捕されたら、できる限り早期の身柄解放を目指すため、速やかに弁護士へ相談しましょう。
本記事では、覚醒剤取締法違反によって逮捕され得る行為や、逮捕後の刑事手続きの流れなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 覚醒剤取締法で禁止されている行為とは?
- 覚醒剤の所持や使用などで逮捕された場合の刑罰
- 逮捕~判決・刑の執行までの流れ
1、覚醒剤取締法による規制の内容
覚醒剤取締法は、覚醒剤に関するさまざまな行為を規制する法律です。覚醒剤の所持などは覚醒剤取締法違反に当たり、発覚すれば犯罪として処罰される可能性があります。
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(1)覚醒剤とは
覚醒剤とは、以下のいずれかに該当する物をいいます(覚醒剤取締法第2条第1項)。
- ① フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパンおよび各その塩類
- ② ①の物と同種の覚醒作用を有する物で、政令で指定するもの
- ③ ①または②の物のいずれかを含有する物
覚醒剤は、麻黄(まおう)という植物から抽出されるエフェドリンなどを原料として、化学的に合成して製造されるのが一般的です。「シャブ」「S(エス)」「スピード」などと呼ばれることもあります。
覚醒剤は強い依存性を有し、使用者に強烈な快楽をもたらす一方で、その身体に対して著しい悪影響を及ぼすことで知られています。
そのため、社会における生産性や治安を維持する観点から、覚醒剤の所持や使用などは薬物犯罪として禁止されています。 -
(2)覚醒剤取締法によって禁止されている行為
覚醒剤取締法では、主に以下の行為を禁止しています。
① 覚醒剤の輸入・輸出(同法第13条)
覚醒剤の輸入および輸出は、一律で禁止されています。
② 覚醒剤の所持(同法第14条)
法令で定められている正当な事由による場合を除き、覚醒剤を所持することは禁止されています。
③ 覚醒剤の製造(同法第15条)
厚生労働大臣または都道府県知事によって指定されている覚醒剤製造業者と、厚生労働大臣の許可を受けている覚醒剤研究者を除き、覚醒剤の製造は禁止されています。
④ 覚醒剤の譲渡・譲受(同法第17条)
覚醒剤製造業者による譲渡、覚醒剤使用機関や覚醒剤研究者による覚醒剤製造業者からの譲受、その他ごく一部の例外を除いて、覚醒剤の譲渡および譲受は禁止されています。
⑤ 覚醒剤の使用(同法第19条)
覚醒剤製造業者・覚醒剤使用機関・覚醒剤研究者などの一部の例外を除き、覚醒剤を使用することは禁止されています。
2、覚醒剤取締法に違反した場合の刑罰
覚醒剤取締法に違反した場合は、刑事罰の対象となります。覚醒剤取締法違反の法定刑および実際の量刑の判断基準・相場は、以下のとおりです。
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(1)覚醒剤取締法違反の法定刑
覚醒剤取締法違反に当たる行為については、その行為類型に応じて、以下のとおり法定刑が定められています。
違反行為の内容 法定刑 覚醒剤の輸入、輸出、製造 ① 営利目的の場合
無期または3年以上の懲役(情状により、1000万円以下の罰金が付加される場合あり)(同法第41条第2項)
② 営利目的以外の場合
1年以上の有期懲役(法第41条第1項)覚醒剤の所持、譲渡、譲受 ① 営利目的の場合
1年以上の有期懲役(情状により、500万円以下の罰金が付加される場合あり)(同法第41条の2第2項)
② 営利目的以外の場合
10年以下の懲役(同法第41条の2第1項)覚醒剤の使用 ① 営利目的の場合
1年以上の有期懲役(情状により、500万円以下の罰金が付加される場合あり)(同法第41条の3第2項)
② 営利目的以外の場合
10年以下の懲役(同法第41条の3第1項)
なお、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、法人の業務に関して営利目的で上記の違反行為をした場合には、法人に対しても各本条の罰金刑が科されます(同法第44条)。
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(2)覚醒剤取締法違反による量刑の判断基準・相場
覚醒剤取締法に違反した者に対して実際に科される量刑は、以下の要素などを考慮して判断されます。
- 使用回数(常習性の程度)
- 関与した覚醒剤の量
- 入手経路、入手のきっかけ
- 営利目的の場合、事業上の役割の重要性
- 反省の程度、更生の可能性
- 初犯か再犯か
営利目的ではない覚醒剤の所持・使用については、初犯であれば執行猶予がつくこともあります。
これに対して、高度の常習性が認められる場合には量刑が加重されるほか、営利目的の場合は初犯であってもその刑の重さから法律上も執行猶予がつけられず、実刑となる可能性が高いです。
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3、覚醒剤取締法違反で逮捕された場合の流れ
覚醒剤取締法違反で警察に逮捕された場合、その後はどのように手続きが進むのでしょうか。ここでは、逮捕後の刑事手続きの流れを解説します。
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(1)逮捕~勾留請求
覚醒剤取締法違反の疑いで警察に逮捕された後は、警察官および検察官の取り調べを受けることになります。被疑者には黙秘権が認められているため、取り調べにおける質問には答えなくても構いません。
逮捕の期間は最長72時間で(刑事訴訟法第205条第2項)、その間に検察官が身柄拘束を延長すべきかどうかを判断します。引き続き身柄拘束が必要と判断された場合、検察官は裁判官に対して勾留請求を行います。 -
(2)起訴前勾留~起訴・不起訴
勾留の理由(住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれ)および必要性があると認めた場合、裁判官は勾留状を発します(刑事訴訟法第207条第1項)。勾留状が発せられない場合、被疑者は釈放されます(同条第4項)。
勾留状が発せられた場合、被疑者の身柄拘束は逮捕から勾留に切り替わります。勾留期間は当初10日間、延長された場合は最長20日間です(同法第208条)。
勾留期間中も、被疑者は警察官や検察官による取り調べを受けます。また、並行して捜査が進められ、検察官は被疑者を起訴するかどうかを判断します。
被疑者が不起訴となった場合、その時点で刑事手続きは終了し、被疑者は釈放されます。
被疑者が起訴された場合には、呼称が「被告人」へと変更され、被告人は公判手続きにかけられることになります。 -
(3)起訴後勾留・公判手続きの準備
起訴された被告人は、起訴後勾留によって引き続き身柄が拘束されます。起訴後勾留の期間は当初2か月間で、1か月ごとの更新が認められています(刑事訴訟法第60条第2項)。
なお起訴前勾留とは異なり、起訴後勾留期間中は保釈請求が可能です(同法第89条、第90条)。
起訴後勾留の間に、公判手続き(刑事裁判)の準備を行う必要があります。
覚醒剤事件では、被告人は罪を認めるケースも多い一方で、「覚醒剤だとは知らなかった」「気づかないうちに荷物に覚醒剤を入れられた」などと罪を否認するケースもあります。身に覚えがない場合などにおいては否認していかなければなりませんので、弁護人と相談して、どのような主張を行うのかなどを決めましょう。 -
(4)公判手続き・判決
公判手続き(刑事裁判)では、被告人の有罪・無罪および量刑が審理されます。
犯罪要件のすべてを検察官が立証し、被告人はそれに反論する形で審理が進みます。審理が終了すると、裁判所は判決を言い渡します。 -
(5)控訴・上告
判決に不服がある場合は、高等裁判所に対して控訴することができます。控訴審判決に不服がある場合は、さらに最高裁判所に対する上告も認められています。
控訴・上告の期間は、いずれも判決の言い渡し日の翌日から起算して14日以内です(刑事訴訟法第373条、第414条)。 -
(6)判決の確定・刑の執行
控訴・上告の手続きを経て、公判手続きにおける判決が確定します。実刑判決の場合は刑が執行され、執行猶予つき判決の場合は刑の執行が猶予されます。
4、覚醒剤取締法違反で逮捕された被疑者のために弁護士ができること
覚醒剤取締法違反によって逮捕されてしまったら、早期の身柄解放および重い刑事処分の回避を目指して、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は、覚醒剤取締法違反で逮捕された被疑者のために、主に以下のサポートを行っています。ご自身やご家族が覚醒剤取締法違反を疑われた場合には、弁護士にご相談ください。
勾留の理由や必要性がないことを主張し、裁判所に対して勾留処分の取り消しを求めます。
② 不起訴に向けた弁護活動
被疑者に否定すべき事実がある場合、何を捜査機関に話すかを、身柄解放と罪の否認との優先順序を勘案しながら助言します。
③ 保釈請求
起訴された被告人の身柄を解放するため、裁判所に対して保釈請求を行います。
④ 公判手続きにおける弁護
被告人に重い刑罰が科されることを回避するため、公判手続きにおいて被告人の無罪または情状酌量を訴えます。
⑤ 家族などとのやり取り
身柄拘束中の被疑者・被告人と、家族などとのやり取りを仲介します。
弁護士にサポートを依頼することで、早期の身柄解放や処分の軽減につながる可能性が高まります。そのため、覚醒剤事件を起こしてしまった場合には早急に弁護士に依頼することが重要です。
5、まとめ
覚醒剤をみだりに所持・使用すると、覚醒剤取締法違反によって罰せられます。もし覚醒剤取締法違反の疑いをかけられたら、速やかに弁護士へ相談して弁護活動を依頼しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、刑事事件に関するご相談を随時受け付けております。ご自身やご家族が覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されてしまったら、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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