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大麻と覚醒剤の違いは? 取り締まりの対象行為・法定刑・公訴時効期間
大麻と覚醒剤(覚せい剤)は、いずれもその所持等が法律によって禁止され、刑罰の対象となっています。ただし、覚醒剤の方が大麻よりも依存性が高いため、大麻の所持等よりも、覚醒剤の所持等の方が重く処罰されます。
違法薬物犯罪に手を染めてしまったら、速やかに弁護士へご相談ください。早期に弁護士へ相談することが、重い刑罰の回避につながります。
本記事では、大麻と覚醒剤の違いなどをベリーベスト法律事務所 刑事事件専門チームの弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 大麻・覚醒剤において犯罪とされている行為とは
- 逮捕された場合の刑罰
- 薬物の所持や使用で逮捕されたら弁護士に相談するべき理由
1、大麻と覚醒剤、いわゆる「麻薬」との違いは?
「大麻」とは、アサ(大麻草)の花冠や葉を乾燥・樹脂化・液体化させたものです。「マリフアナ」とも呼ばれます。
そして「覚醒剤」とは、フェニルアミノプロパン・フェニルメチルアミノプロパンおよびその塩類や、それらを含有するものをいいます。
他方で、麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)における「麻薬」とは 、以下の3類型です。
- アセチルメタドール、アルファアセチルメタドール、ベータアセチルメタドール、コカイン、モルヒネなどをはじめとした、麻薬取締法の別表第一で定められている全57種類の成分
- 麻薬取締法の別表第一で定められている全57種の成分と同種の依存性や有害作用があり、法令で定めるもの
- あへんなど一部を除く、麻薬取締法の別表第一で定められている全57種の成分が含まれているもの
大麻と覚醒剤、そして麻薬は、いずれも依存性のある身体に有害な薬物です。使用を続けると、幻覚症状や脳機能の大幅な低下、ひどい身体のしびれなどが発生します。
薬物依存が社会的にまん延すると、治安の悪化や生産性の低下などのさまざまな弊害が懸念されます。そのため薬物乱用防止の目的で、大麻や覚醒剤、麻薬の所持等は法律によって禁止され、処罰の対象とされています。
ただし、覚醒剤の方が大麻よりも依存性や身体への有害性が強いため、覚醒剤の所持等の方が大麻の所持等よりも重く処罰されます。
2、大麻・覚醒剤に関する犯罪と法定刑・公訴時効期間
大麻・覚醒剤について犯罪とされている行為と、大麻・覚醒剤の間での法定刑や公訴時効期間の違いを紹介します。
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(1)大麻に関する犯罪行為
大麻については、主に以下の行為が犯罪とされています。
① 大麻取扱者以外の者による以下の行為
※大麻取扱者=大麻栽培者または大麻研究者
- 大麻の所持
- 大麻の栽培
- 大麻の譲り受け
- 大麻の譲渡
- 大麻の研究のための使用
② 大麻栽培者による以下の行為
- 大麻取扱者以外の者に対する譲渡
- 大麻の栽培地外への持ち出し(都道府県知事の許可を受けた場合を除く)
③ 大麻研究者による以下の行為
- 大麻の譲渡(厚生労働大臣の許可を受けて、他の大麻研究者に譲り渡す場合を除く)
④ 大麻取締法の規定により大麻を所持することができる者による以下の行為
- 大麻の目的外使用
⑤ 以下の行為
- 大麻の輸入、輸出(大麻研究者が厚生労働大臣の許可を受けて行う場合を除く)
- 大麻から製造された医薬品の施用、施用のための交付
- 大麻から製造された医薬品の施用を受けること
- 大麻に関する広告
なお現行法上は、大麻の一般使用行為は処罰の対象外とされています。
しかし、令和5年12月13日に公布された改正大麻取締法により、大麻の一般使用行為も新たに処罰の対象となることが決まりました。改正大麻取締法は、公布日から1年以内に施行される予定です。 -
(2)覚醒剤に関する犯罪行為
覚醒剤については、主に以下の行為が犯罪とされています。
① 一律禁止
- 輸入
- 輸出
② 原則禁止
※厚生労働大臣の許可、医師や覚醒剤研究者による施用などを条件に認められる場合あり
- 所持
- 製造
- 譲渡
- 譲り受け
- 使用
- 施用、施用のための交付
- 広告
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(3)大麻と覚醒剤|法定刑と公訴時効期間の比較
大麻と覚醒剤を比較すると、覚醒剤の方が所持等の犯罪行為が重く処罰されます。また、覚醒剤関連犯罪は法定刑が重い分、大麻関連犯罪よりも公訴時効期間が長くなります。
大麻取扱者や覚醒剤製造業者・覚醒剤研究者などではない、一般の方による大麻・覚醒剤関連の犯罪行為について、法定刑および公訴時効期間の差は下表のとおりです。
犯罪行為の種類 大麻関連犯罪の法定刑 覚醒剤関連犯罪の法定刑 輸入・輸出・栽培・製造 - (a)営利目的がない場合
7年以下の懲役 - (b)営利目的がある場合
10年以下の懲役、さらに300万円以下の罰金が付加される場合あり
- (a)営利目的がない場合
1年以上の有期懲役 - (b)営利目的がある場合:無期または3年以上の有期懲役、さらに1000万円以下の罰金が付加される場合あり
所持・譲渡・譲り受け - (a)営利目的がない場合
5年以下の懲役 - (b)営利目的がある場合
7年以下の懲役、さらに200万円以下の罰金が付加される場合あり
- (a)営利目的がない場合
10年以下の懲役 - (b)営利目的がある場合
1年以上の有期懲役、さらに500万円以下の罰金が付加される場合あり
広告 1年以下の懲役もしくは20万円以下の罰金、またはこれらを併科 3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、またはこれらを併科
犯罪行為の種類 大麻関連犯罪の公訴時効期間 覚醒剤関連犯罪の公訴時効期間 輸入・輸出・栽培・製造 - (a)営利目的がない場合
5年 - (b)営利目的がある場合
7年
- (a)営利目的がない場合
10年 - (b)営利目的がある場合
15年
所持・譲渡・譲り受け 5年 - (a)営利目的がない場合
7年 - (b)営利目的がある場合
10年
広告 3年 3年 - (a)営利目的がない場合
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3、大麻・覚醒剤の所持等で逮捕された後の流れ
大麻または覚醒剤に関する犯罪で逮捕された場合に行われる刑事手続きについて解説します。各段階において弁護士とよく相談して対応し、早期の身柄解放および重い刑罰の回避を目指しましょう。
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(1)逮捕~勾留請求
大麻関連犯罪または覚醒剤関連犯罪の疑いで逮捕されると、警察官および検察官による取り調べが行われます。
取り調べでは被疑事実に関する事情を聴かれますが、被疑者には黙秘権があるので、答えても答えなくても構いません。弁護人と相談して、答えるか黙っているかを決めた上で取り調べに臨みましょう。
逮捕の期間は最長72時間ですが、検察官の請求によって裁判官が勾留状を発した場合には、起訴前勾留に移行して引き続き身柄が拘束されます。 -
(2)起訴前勾留~起訴
起訴前勾留の期間は当初10日間までですが、延長によって最長20日間まで起訴前勾留が認められます。起訴前勾留期間中も、逮捕期間に引き続いて取り調べが行われます。
原則として起訴前勾留への移行後、弁護人以外の者との面会が解禁されます(接見禁止処分が行われた場合を除きます)。1回当たり15分程度に限られますが、家族などとも面会できるようになります。
起訴前勾留期間が満了するまでに、検察官が被疑者を起訴するかどうかを判断します。
大麻関連犯罪・覚醒剤関連犯罪については、被疑者は起訴されるケースが多いです。
重い刑罰を回避するためには、自身がどのように関わっているのかの事実認定に加え、今後どう生活していくのかなどの再犯防止への取り組みも影響してきます。 -
(3)起訴後勾留~公判手続き
被疑者が起訴されると、呼称が被疑者から「被告人」へと変わります。起訴前勾留から起訴後勾留へ移行し、被告人の身柄は引き続き拘束されます。
起訴後勾留への移行後は、裁判所に対して保釈を請求できるようになります。保釈請求が認められると、保釈保証金を預けることを条件に、被告人の身柄は一時的に解放されます。
裁判員裁判となる覚醒剤の営利目的輸入事件でなければ、起訴から1か月程度が経過すると、裁判所において公判手続きが行われます。公判手続きでは、検察官が被告人の犯罪事実を立証します。
被告人は、検察官の立証に事実と異なる部分があれば反論しましょう。犯罪事実をすべて認める場合は、反省の態度を示すなどして情状酌量を求めます。 -
(4)判決~刑の執行
公判手続きにおける審理が尽くされたところで、裁判所が判決を言い渡します。無罪であればその旨が、有罪であれば量刑が判決主文において示されます。
第一審判決に不服がある場合は控訴、控訴審判決に不服がある場合は上告が可能です。
控訴・上告の期間は判決の言い渡し後2週間に限られています。弁護人と相談した上で、控訴・上告をするかどうか早めに判断しましょう。
控訴・上告の期間が経過するか、または上告審判決から一定期間が経過すると判決が確定し、有罪であれば刑が執行されます。
ただし、3年以下の懲役刑については執行猶予が付されることがあります。大麻・覚醒剤の所持については、営利目的の場合を除き、初犯であれば執行猶予が付されることが多いです。
刑の執行猶予が付された場合は、直ちに刑は執行されません。犯罪行為などをせずに執行猶予期間が経過すると、刑の言い渡しは効力を失い、執行されることがなくなります。
4、大麻・覚醒剤を所持・使用してしまったら弁護士に相談を
大麻関連犯罪・覚醒剤関連犯罪について重い刑罰を避けるためには、早い段階で弁護士に相談することが大切です。
弁護士のアドバイスを踏まえて取り調べに臨めば、初期段階から一貫した供述をすることができます。また弁護士のサポートを受けながら真摯な反省の態度を示すことで、情状酌量の余地が広がり、重い刑罰を回避できる可能性が高まると共に、早期の釈放などを得られる機会も増えてきます。
出来心から大麻・覚醒剤などの薬物乱用に手を染めてしまった方は、刑事弁護についてお早めに弁護士へご相談ください。
また、大麻や覚醒剤以外の危険ドラッグなどについても、通称「麻薬取締法」によって所持等が禁止されています。危険ドラッグを乱用してしまった方も、弁護士への相談をおすすめします。
5、まとめ
大麻と覚醒剤、さらには麻薬については、その所持・使用などがいずれも法律によって禁止されています。発覚すれば処罰の対象となるので、絶対に大麻や覚醒剤を所持・使用してはいけません。
もし薬物犯罪に手を染めてしまったら、速やかに弁護士へ相談しましょう。重すぎる刑罰を科されてしまう事態を回避するための弁護活動を行います。
ベリーベスト法律事務所 刑事事件専門チームでは、刑事弁護に関するご相談を随時受け付けております。大麻や覚醒剤に手を出してしまった方やそのご家族は、まずは相談ください。
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