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密漁の罰則が強化! アワビ、ナマコを採ると罰金3000万円!?
漁業法の改正によって、アワビ、ナマコなどの特定水産動植物を採捕する(自然界の動植物をとる)と、逮捕され、最大で3年以下の拘禁刑または3000万円以下という重い罰則を受ける可能性があります。
違法と知らずに潮干狩りや磯遊びで採取した場合でも、密漁とみなされるおそれがあるため注意が必要です。
本記事では、漁業法・密漁の法的ルールについて、弁護士が解説します。
1、密漁の対象になる場所と生き物
密漁にあたるかどうかは、「何を」「どこで」採るかによって決まります。
特に注意すべきは、次の2つのルールです。
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(1)漁業権が設定された区域で、採取してはいけない生き物
日本の沿岸部の多くには、第一種共同漁業権が設定されています。
これは、特定の魚介類などを地域の漁業者が排他的に漁獲できる権利で、一般人は勝手に採ってはいけません。
採取をすると、共同漁業権の侵害となります。
第一種共同漁業権の対象となる主な水産物は、以下の通りです。
第一種共同漁業権の対象となる主な水産物
- アサリ
- マダコ
- サザエ
- ハマグリ
- ワカメ
- ウニ
- コンブ
- イセエビ
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(2)全国一律でNG!場所に関係なく密漁になる生き物
また、令和2年の改正で、一部の生物は「特定水産動植物」に指定されました。
以下の水産物は、場所も採った量も関係なく、一律に禁止されていますので注意が必要です。
特定水産動植物
- アワビ
- ナマコ
- シラスウナギ(13cm以下のウナギの稚魚)
2、釣りや磯遊びの延長でも、罰則対象になるの?
「海釣り」や「潮干狩り」などのレジャーも、場所や方法を誤ると密漁とされる可能性があります。
昔は問題ではなかった行為でも、現在の法律では違法と判断されるケースもあります。
特に以下のような状況には注意が必要です。
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(1)禁止区域での海釣り・違法漁法
海釣りが趣味という方も多いものですが、海釣り禁止区域で釣りをする行為は違法です。
また、地域によってはトロールなど一定の漁法が禁止されている場合もあるため、釣りに出る場合は、事前に調べて適法な範囲にとどめましょう。 -
(2)許可区域以外での潮干狩り
潮干狩りなどが自治体や漁協の許可区域で行われていれば適法ですが、その区域以外では「第一種共同漁業権」により保護されている可能性が高く、無断採捕は漁業権侵害=密漁となります。
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、どんな行為が密漁になる? 罰金は?
密漁に関する罰則は、対象となる行為や関与の仕方によって異なります。
代表的な違反行為と、適用される罰則は以下の通りです。
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(1)特定水産動植物の無許可採捕
アワビ、ナマコ、シラスウナギについては「特定水産動植物」に指定されており、許可なく採捕することは一律に禁止されています。
採る数量や場所に関係なく、たった1匹でも処罰対象になる可能性があります。
罰則 3年以下の拘禁刑または3000万円以下の罰金(または併科)
(漁業法 第189条第1号、194条) -
(2)密漁品の流通への関与
違法に採捕されたものだと知りつつ、それを
・運ぶ
・保管する
・買う
・売る
・仲介する
といった行為についても、同様に処罰される可能性があります。
採った本人でなくても同じ重さの刑事責任を問われる点に注意が必要です。
罰則 3年以下の拘禁刑または3000万円以下の罰金(または併科)
(漁業法 第189条第2号、194条) -
(3)無許可で漁業をする行為(操業違反)
たとえば「潜水器漁業」や「底びき網漁業」など、一定の漁業には都道府県知事の許可が必要です。
許可を得ずに操業をした場合は刑事罰の対象となるおそれがあります。
罰則 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(または併科)
(漁業法 第190条第3号) -
(4)漁業権の侵害行為
たとえ少量でも、漁業権が設定された区域で、対象の水産物を無断で採ると密漁になります。第一種共同漁業権に指定されたアサリ・サザエ・ウニなどは要注意です(漁業法 第195条2項)。
※親告罪のため、漁業権者(漁業協同組合等)からの告訴が必要です。
示談が成立し告訴が取り下げられれば、起訴されることはありません。
罰則 100万円以下の罰金
(漁業法 第195条1項)
4、密漁の罰則が強化された理由とは?
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(1)密漁の被害が深刻化したから
近年、全国的に組織的な密漁が横行しており、被害が深刻化しています。
令和5年の密漁による検挙件数
1653件(うち漁業者125件、漁業者以外1491件)
漁業を専門とする業者による密漁は減少傾向にありますが、漁業者以外の一般人や密漁組織による密漁が増加しています。
参考:「密漁を許さない~沿岸密漁の対策について~」(水産庁パンフレット)
令和2年の漁業法改正では、アワビやナマコといった高級食材の密漁が後を絶たない状況を受けて、罰則が大幅に強化されました。 -
(2)「密漁のつもりはなかった」では、通じないケースも
アワビなどの水産物は、漁業関係者が長年の努力の結果、養殖技術を高めて稚貝を放流して育てている地域もあります。その努力を台無しにするような密漁行為は、地域経済や日本の漁業全体に深刻な影響を与えるものです。
「知らなかった」「レジャーのつもりだった」という言い訳は通用せず、初犯でも刑事罰の対象となる可能性があります。
5、密漁で逮捕されるケースと逮捕後の流れ
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(1)密漁で逮捕されるきっかけ
密漁はバレにくいと思っている方も多いでしょう。
ですが、逮捕のきっかけはたくさんあります。
以下のようなきっかけで逮捕されるケースがあります。
- 密漁で被害を受けている業者からの通報
- 密漁の網や装置が見つかる
- 防犯カメラのデータ
- 密漁品が市場に出回って足がつく
悪質な密漁者の増加にともない、海上保安官、警察官、漁業監督官、漁業監督吏員といった専門の取締官による監視が強化されているためです。
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(2)逮捕後の流れ
密漁で逮捕されると、その後は以下のような手続きが進んでいきます。
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(3)海上保安庁への出頭の場合がある
海上での密漁の場合は、逮捕や取り調べは海上保安庁が行います。
その場で逮捕されなかった場合でも、管轄の海上保安庁において捜査を受けることになるでしょう。
一方、漁港・砂浜・磯場などの岩礁帯での事件であれば、管轄の警察によって捜査が行われます。 -
(4)在庁略式になることも
漁業法違反をはじめとした密漁事件では、検察庁に出頭した際にそのまま罰金刑が確定する「在庁略式」という手続きが取られることがあります。
これは、事件が海上で発生しているため、裁判所の管轄権の判断が難しいという事情によるものです。
正式な刑事裁判を経ることなく罰金刑が確定するため、被疑者にとっても利便性が高いように感じられるかもしれません。
しかし、在庁略式を受け入れた場合は、その場ですぐに前科がついてしまいます。
反論や主張がある場合には受け入れるべきでないということは心にとめておきましょう。
6、密漁で逮捕・訴えられそうな場合は、弁護士に相談を
万が一、自分や家族が密漁をしてしまったかもしれないという場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
漁業協同組合との示談交渉や勾留・裁判に関する弁護活動により、不起訴や早期釈放の可能性を高めることができます。
ベリーベスト法律事務所では、刑事弁護について実績豊富な弁護士がご相談に対応しています。お悩みの方はいつでもご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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