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弁護士コラム

2021年04月20日
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令和2年、密漁の罰則が強化。 アワビ、ナマコを捕ると罰金3000万円!?

令和2年、密漁の罰則が強化。 アワビ、ナマコを捕ると罰金3000万円!?
令和2年、密漁の罰則が強化。 アワビ、ナマコを捕ると罰金3000万円!?

漁業法の改正によって、令和2年12月から密漁に対する罰則が大幅に強化されています。レジャー感覚でアワビ、ナマコなどを採捕すると最大で3年以下の懲役または3000万円以下という重い罰則を受ける可能性があります。

本記事では改正漁業法の内容や規制の範囲、そして、密漁で逮捕された場合の流れなどについて、弁護士が詳しく解説します。

1、密漁の罰則が強化された理由とは?

  1. (1)密漁は全国的に増加している

    日本は海に囲まれており、水産物は日本人にとって重要な資源です。しかし、近年、全国的に水産物の密漁が増加しており、大きな問題になっています。
    特に、アワビやナマコなどの海産物は、高度な技術がなくても比較的簡単に採捕できるうえ、高値で取引されるため、密漁の対象とされやすいのです。

    実際、最近では、組織的な密漁が横行しており、被害が深刻化しています。平成30年の密漁による検挙件数は1569件、そして、漁業を専門とする業者による密漁は減少傾向にありますが、漁業者以外の一般人や密漁組織による密漁が増加しています。

  2. (2)密漁は重大な違法行為

    密漁は、水産資源の確保や、漁業による生産活動そのものに深刻な影響を与えるものであり、決して許されません。

    なお、一般人の場合は、単にルールを知らずに、気軽な気持ちで採捕してしまったというケースもあります。
    しかし、法律は知らなかったでは済まされません

    密漁の増加に伴い、令和2年には罰則が強化されています
    アワビなどは、漁業関係者が長年の努力の結果、養殖技術を高めて稚貝を放流して育てている地域もあります。
    こうした地域で密漁者が横行すると、日本の漁業自体が成り立たなくなります。
    罰則が強化された背景には深刻な被害の蓄積があります。
    安易な気持ちで漁業関係者の権利を侵害してはなりません。

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2、密漁に対する罰則内容とは?

密漁と一言でいっても、漁業法、水産資源保護法などによるさまざまな規制があります。どのような行為が密漁にあたるのか確認しておきましょう。

➀ 特定水産動植物の採捕違反
アワビ、ナマコ等の特定水産動植物に指定されたものを許可なく採捕することは禁止されています。採る数量や場所に関係なく一律に禁止されています。
違反した者には3年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科されます

➁ 密漁品流通の禁止
密漁が増加するひとつの要因は、これらを高値で買い受ける市場があるという点です。
こうした密漁ルートを断ち切ることも密漁の防止には不可欠なことです。

そこで、違法に採捕されたものだと知りつつ、これらを運搬、保管、取得、または処分の媒介・あっせんをした者についても、3年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科されます
つまり、密漁をした本人と同じ重さの刑罰が用意されているのです。

③ 無許可操業等の禁止
許可を受けずに一定の漁業(潜水器漁業、底びき網漁業等)を営むことも禁止されています。
罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

④ 漁業権侵害
漁業権の対象となる水産動植物を権限なく採捕した者にも罰則があります。
罰則内容は、100万円以下の罰金です。

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3、密漁はどこから? どのような生物が対象なの?

では、具体的に禁止されている生き物にはどんなものがあるのでしょうか。
水産物採取のうち、特に貝類の採取は手軽にできる行為ですが、第一種共同漁業権に注意が必要です

漁業権とは、一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利です。
一定の魚介類や定着性の水産物が第一種共同漁業権として指定しており、第一種共同漁業権の設定された場所で、無断で対象水産物をとると、密漁になってしまいます。

第一種共同漁業権の対象となるものには、次のような生き物があります。

  • アワビ
  • アサリ
  • しじみ
  • イセエビ
  • ウニ
  • サザエ
  • わかめ


また、令和2年の改正で、ナマコやアワビなどの「特定水産動植物」について、原則としてすべての地域で採捕禁止となっています(漁業法施行規則第41条)
場所も量も関係なく、一律に禁止されていますので注意が必要です。

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4、釣りや磯遊びの延長でも罰則対象になるの?

海釣りが趣味という方も多いものですが、海釣り禁止区域で釣りをする行為は違法です。
また、地域によってはトロールなど一定の漁法が禁止されている場合もあるため、釣りに出る場合は、事前に調べて適法な範囲にとどめましょう。

また、磯遊びとして潮干狩りでアサリなどを取ったり、海に潜ってワカメをとるくらいは許されると考えている方も多いかもしれません。もちろん、潮干狩りなどが許可された特別な地域では適法ですが、その区域以外では密漁となる恐れがあるので十分に注意しましょう。

そして、以前は適法だった範囲が、知らぬ間に違法となっていることもあります。
実際に、子どものころに無邪気にアワビをとった経験があったとしても、現在では逮捕されて刑事罰を受ける行為になっている可能性もあるわけです。

法律の改正は自分たちが気づかない間に行われていることもありますので、水産物をとることは常に違法になるリスクがあることを覚えておきましょう。

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5、密漁で逮捕されるケースと逮捕後の流れ

  1. (1)密漁で逮捕されるケース

    密漁はバレにくいと思っている方も多いでしょう。しかし、悪質な密漁者の増加にともない、海上保安官、警察官、漁業監督官、漁業監督吏員といった専門の取締官による監視が強化されています

    密漁で被害を受けている業者からの通報や、密漁の網や装置が見つかるケース、防犯カメラのデータ、そして、密漁品が市場に出回って足がつくケースなど、逮捕のきっかけはたくさんあります

    では、もしも密漁で逮捕された場合は、どのような手続きが行われるのでしょうか。

  2. (2)逮捕・勾留

    逮捕されると警察で取り調べが行われます。そして、逮捕後48時間以内に検察官に送致するかどうか決定されます。送致とは、その事件を検察官に引き継ぐことをいいます。

    検察に送致され、さらに検察によって勾留が決定されるとそのまま身柄が拘束されます。
    警察の留置施設などに入れられて、取り調べが続くのです。

    勾留は原則10日、最長で20日続きます。勾留されている間は、自由に外に出ることはできません
    もちろん仕事にも行けません。携帯電話も取り上げられるので、自分の意思で家族や知人と連絡することもできなくなります。

  3. (3)起訴か不起訴かの決定

    取り調べが終わると、検察官は、事件の内容を見ながら、起訴するか、または、不起訴として釈放するかどうかの判断を行います。起訴の決定が出されると、そのまま勾留が続くのが原則です。
    なお、起訴されたとしても、保釈請求が通れば、保釈金を払って外に出られることもあります。

  4. (4)海上での密漁なら海上保安庁による取り調べも

    密漁が海上で行われていた場合は、海上保安庁が管轄となり、逮捕や取調べも海上保安庁が担当することが多いです。
    海上ではなく、地上(磯場・砂浜・港などの岩礁帯)で発生した事件については、事件の管轄警察が捜査を行います。

  5. (5)起訴されたら

    起訴されると、刑事裁判が行われます。起訴とは、検察官が裁判所に対して、裁判を提起する手続きです。

    刑事裁判は公開されることが原則として決まっています。したがって、起訴されたら誰でもその裁判を傍聴することができ、報道されることもあります。

    起訴されたら、公判の日に被告人という立場で裁判所に出頭し、罪を認めるかどうかを聞かれます。これを罪状認否といいます。
    そして、検察官が犯罪の証拠を提出し、弁護人側は情状を求めるなどして、審理が進められます。

    審理の中では、被告人質問や証人尋問なども行われます。
    これらも全て公開の手続きです。
    そして、裁判所が、有罪なのか無罪なのか、有罪であれば、どのような刑罰を科すべきかを判断します。

    なお、起訴されると、起訴にかかる事実についての取り調べは、なるべく避けなければならないとされています。
    そのため、勾留の場所が警察の留置施設から拘置所という場所に移動することが一般的です。
    保釈されなければ、拘置所に移動した後も、外に出ることはできず、外部と自分から連絡を取ることもできません。

  6. (6)判決

    裁判所で審理が終わると、判決が言い渡されます。
    日本の刑事裁判では、起訴された際の有罪率は99%を超えています。したがって、起訴されたら高い確率で有罪判決が下り、何らかの罰を受けることになる可能性が極めて高いと言えます。
    執行猶予判決が付けば自宅に帰ることができますが、執行猶予が付されなければ実刑判決となり、刑務所に収監されることになります。
    罰金刑であれば、指定された金額を検察庁に納めることになります。

  7. (7)前科が付く

    懲役であろうが、罰金であろうが、刑事裁判で有罪を言い渡されると前科が付きます
    逮捕されただけでも前歴という履歴が付きます。

    前科は一般には公開されませんが、就職の時などに申告しなければならないこともあり、不利に働く可能性があります。職業によっては資格制限の対象となることもあります。
    また、有罪判決を受けると、現在の勤務先から懲戒などの処分を受ける可能性もあります。

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6、まとめ

「知人に誘われて、つい……」などの軽い気持ちで海産物を採ってしまうと、密漁者として逮捕されるリスクが十分にあります。そして、密漁の罰則は重く、取り締まりも年々強化されています。
法律は知らなかったでは済まされませんし、やってしまった行為は後から取り消すことができません。漁業の許可などを受けていない一般の方は、うかつに手を出さないことが肝心です。

万が一、自分や家族が密漁をしてしまったかもしれないという場合は、早めに弁護士に相談して最善の対処方法を考えましょう。ベリーベスト法律事務所では、密漁に関する法改正や刑事弁護についても詳しい弁護士がご相談に対応しています。不安な気持ちの方はいつでもご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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