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当番弁護士とは? 逮捕後すぐに無料で呼べる? 依頼方法などを解説
警察に逮捕された被疑者は、自由な行動や連絡が大幅に制限されます。『これからどうなってしまうのだろうか』といった不安も強くなるので、精神的なサポートや法的なアドバイスが必要となるでしょう。
被疑者の精神的な不安を解消し、法的なアドバイスを提供する重要な機会として設けられているのが「当番弁護士制度」です。日本弁護士連合会(日弁連)がまとめている統計によると、令和元(平成31)年における利用件数は全国で4万1160件と、積極的に利用されている状況がうかがえます。
本コラムでは、当番弁護士制度の概要や利用の手順、利用にあたっての注意点を解説します。
1、当番弁護士制度とは
まずは、当番弁護士がどのような制度なのかを確認していきましょう。
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(1)当番弁護士制度とは
当番弁護士制度とは、逮捕期間中に1回に限って無料で弁護士が接見に出向く制度です。接見とは、被疑者との面会を意味します。成人だけではなく、未成年の少年でも当番弁護士を頼むことができます。
逮捕された被疑者本人は、なぜ逮捕されたのか、これからどのような刑事手続きを受けるのか、家族や会社にはどうやって現状を伝えれば良いのかといった多くの不安を抱えてしまいます。また、被疑者の家族も、同様の悩みを抱えることになるでしょう。
逮捕直後から勾留が決定するまでの最長72時間の間に、被疑者と接見できるのは弁護士だけです。なお、国選弁護人は、勾留後に選任される弁護人のため、逮捕直後は選任されません。どの弁護士に依頼すれば良いのかわからない、弁護士費用が不安で相談・依頼に踏み出せないという被疑者・家族も少なくないでしょう。
当番弁護士制度を利用すれば、被疑者本人や家族による費用負担なく、弁護士会を通じてあらかじめ登録された当番弁護士が派遣されます。法的なアドバイスの提供によって被疑者本人や家族の不安・悩みを解消できるだけでなく、早い段階で被疑者に保障されている権利を説明してもらえます。そのため、取り調べや留置中の不当な扱いを受ける事態の防止が期待できます。 -
(2)当番弁護士制度の利用条件と利用方法
当番弁護士制度は、被疑者が逮捕されている事件であれば平等に利用できるものです。資力制限など特段の利用条件は設けられていません。
当番弁護士制度は、逮捕された被疑者が留置担当者に依頼するか、あるいは逮捕された被疑者の家族、友人などの関係者が弁護士会に依頼することで利用できます。
難しい手続きは不要で弁護士費用の負担も発生しないので、積極的に活用するべきでしょう。 -
(3)国選弁護人制度との違い
弁護士費用の負担が発生しないという点で、当番弁護士制度と混同されやすいのが「国選弁護人制度」です。
国選弁護人制度とは、弁護士を依頼する資力がない場合に、国が費用を負担して弁護士を選任する制度です。国選弁護士も基本的には無料で依頼できるので、当番弁護士制度とよく似ていますが、次のような違いがあります。● 依頼できるタイミング
当番弁護士制度|逮捕期間中(逮捕後72時間以内)
国選弁護人制度|勾留期間中または刑事裁判にかけられることが決まった後(起訴後)
● 資力制限の有無
当番弁護士制度|逮捕された被疑者であれば無条件で利用可能
国選弁護人制度|資産が50万円未満という資力制限が設けられている
● 活動内容
当番弁護士制度|サポートは1回のみの接見
国選弁護人制度|勾留後・起訴後のすべての弁護活動
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります メールでのお問い合わせ
2、当番弁護士が対応できる範囲
では、警察に逮捕されて当番弁護士を依頼した場合は、具体的にどのようなサポートが得られるのでしょうか。
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(1)1回に限り無料で接見してくれる
当番弁護士は、1回に限り無料で、原則として当日中に逮捕された被疑者と接見します。通常、弁護士に被疑者との接見を依頼すると費用が発生しますが、当番弁護士制度を利用すれば誰でも無条件・無料で弁護士による接見を受けることができます。
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(2)逮捕後の流れを説明してくれる
当番弁護士は、接見において逮捕後の刑事手続きの流れを説明してくれます。逮捕された被疑者は、警察段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内の身柄拘束を受けたのち、勾留によって最長20日間の身柄拘束を受ける可能性があります。さらに勾留が満期を迎える日までに検察官が起訴すれば刑事裁判となり、被告人として罪を問われることになります。
このような刑事手続きの流れを正確に理解している被疑者は、決して多くありません。『これからどうなってしまうのか』『一体いつまで身柄拘束を受けるのか』といった不安を抱えるケースが多数でしょう。
当番弁護士に逮捕の状況や容疑の内容、事実の認否などを詳しく説明すれば、勾留・起訴を受ける可能性や釈放される見込みがあるかなど、今後の見通しについての具体的な展望を知ることができます。場合によっては、裁判官の勾留質問に対する回答についてアドバイスを受けることができるかもしれません。 -
(3)取り調べに対するアドバイスをもらえる
逮捕された被疑者は、警察官や検察官による取り調べを受けることになります。厳しく事実を追及されるので、強い圧力に屈してしまい、実際にはしていない事実を認めてしまう危険性もあります。
当番弁護士に依頼すれば、接見の機会を通じてどのように取り調べに対応すれば良いのかのアドバイスが得られます。被疑者に認められている黙秘権(供述拒否権)の意味や行使の方法、不当な取り調べへの対抗方法を知ることができるでしょう。 -
(4)家族などへの伝言を依頼できる
逮捕直後から勾留が決定するまでの72時間は、たとえ家族や親しい関係にある者でも、被疑者との面会は認められません。逮捕された被疑者には、どのような容疑をかけられて逮捕されたのか、会社や学校にはどのように伝えれば良いのかなど、家族に伝えたいことがあったとしても、面会はおろか連絡をとることさえ認められないのです。
当番弁護士に依頼すれば、会社や学校への欠勤・欠席連絡や留置生活のために必要な物品、今後の見通しなどを家族に伝えることができます。
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3、当番弁護士に依頼する際の注意点
当番弁護士制度は、逮捕された被疑者に法的なサポートを無料で提供する制度ですが、当番弁護士制度によって得られるサポートの範囲は極めて限定的です。依頼するにあたって、注意するべき点を知っておきましょう。
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(1)無料で接見できるのは1回だけ
当番弁護士による接見は、1回限りです。2回目以降の接見を希望しても、当番弁護士では対応できません。また、当番弁護士が対応できるのは接見のみなので、被害者との示談交渉、勾留を阻止して早期釈放を目指す活動、不起訴処分を目指した活動、刑事裁判における弁護活動なども対応の範囲外です。
当番弁護士は、あくまでも逮捕直後の被疑者の不安を少しでも解消し、今後の手続きに備えるための制度であり、継続的な弁護活動を無料で提供するものではないことを理解しておく必要があります。 -
(2)弁護士は選べない
当番弁護士による接見を依頼した場合、派遣される弁護士を選ぶことはできません。当番弁護士として派遣されるのは、あらかじめ弁護士会に当番弁護士として登録した弁護士ですが、輪番制で派遣されるため、どの弁護士が派遣されるのかはわかりません。
そのため、刑事事件の対応実績が豊富な弁護士が派遣されるとは限らないという点は心得ておく必要があります。 -
(3)逮捕されないと利用できない
当番弁護士制度を利用できるのは、逮捕された被疑者本人またはその家族などです。事件を起こしても逮捕されず任意のまま在宅事件としての捜査を受ける場合は、当番弁護士制度は利用できません。
たとえば、万引きをして警察署で取り調べを受けたものの、在宅事件扱いとなり自宅へと帰されたようなケースでは、逮捕されていないので当番弁護士制度の対象外です。このようなケースでは、当番弁護士ではなく「私選弁護人」に相談したうえで弁護活動を依頼することになります。
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4、当番弁護士に引き続き弁護を頼む方法
当番弁護士制度は、逮捕直後に1回に限って弁護士が接見する制度であり、その後の接見や弁護活動を依頼できるものではありません。しかし、なかには当番弁護士として接見した弁護士に、引き続き弁護活動を依頼したいと考えるケースもあるでしょう。
当番弁護士に引き続き弁護活動を依頼する方法は、次の2つです。
● 国選弁護人になってもらう
それぞれの方法について、依頼の手順を確認していきましょう。
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(1)私選弁護人として依頼する
容疑をかけられている被疑者本人や、その家族などからの依頼で選任された弁護士のことを「私選弁護人」といいます。私選弁護人は、何度でも接見することができるほか、被害者との示談交渉、不起訴処分を目指した弁護活動などのすべてを依頼することが可能です。
当番弁護士に引き続き私選弁護人としての弁護を依頼するには、接見の際に私選弁護人として依頼したい旨を伝えるだけで済みます。当番弁護士がその場で受任すれば、私選弁護人として2回目以降の接見や弁護活動を進めてもらえます。 -
(2)国選弁護人になってもらう
私選弁護人を選任して弁護活動を依頼すると、弁護士費用が発生します。契約内容にもよりますが、弁護士費用には、着手金や成功報酬としての報酬金のほか、接見費用や弁護士の交通費などが含まれるため、費用の総額は決して安くありません。
経済的に困窮していて弁護士費用の支払いを負担できないという場合は、「国選弁護人制度」の利用を検討することができます。当番弁護士による接見の際に、国選弁護人として選任したい旨を伝えれば、必要書類が差し入れられます。
国選弁護人も当番弁護士と同様に、あらかじめ弁護士会に登録している弁護士から選任されるのが一般的です。当番弁護士として派遣された弁護士が、国選弁護人としても弁護士会に登録しており、資力制限などの条件を満たしている場合は、そのまま国選弁護人として選任される可能性があります。
ただし、国選弁護人制度では原則として弁護士の指定は認められないので、必ず当番弁護士を担当した弁護士が選任されるとは限りません。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
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5、私選弁護人に頼んだ方が良い場合
刑事事件の被疑者として逮捕された場合は、弁護士のサポートが欠かせません。当番弁護士制度を利用すれば逮捕直後の不安がある程度は解消されるものの、その後のサポートという点では不十分でしょう。
日常生活への悪影響を抑えたい、不当に厳しい刑罰を回避したいと希望するなら、私選弁護人の選任が最善策です。
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(1)早期釈放を目指したい場合
刑事事件の被疑者として逮捕されると、検察官が起訴するかどうかの判断をするまでに最長23日間にわたる身柄拘束を受けます。自宅へは帰れず、会社や学校に通うことも許されないため、社会生活への影響は計り知れません。
早期の釈放を目指すには、勾留の回避が不可欠です。定まった住居地で家族とともに暮らしている、定職に就いているといった環境が整っており、身元引受人がいる、証拠隠滅ができない場合には、勾留の要件である逃亡・証拠隠滅のおそれが否定されやすくなります。
私選弁護人を選任すれば、家族のサポート体制を整える、検察官や裁判官に意見書を提出するなどの弁護活動を行うことができるので、勾留請求の回避または却下されることが期待できるでしょう。
勾留されなければ、逮捕から72時間以内という早い段階での釈放が実現します。当番弁護士は早期釈放に向けた弁護活動は行わないため、素早い社会復帰を目指すのであれば私選弁護人の選任は欠かせません。 -
(2)示談成立による不起訴を目指したい場合
窃盗や詐欺、暴行、傷害、名誉毀損などのように被害者が存在する事件では、被害者との示談を成立させることは、重要な意味を持ちます。
謝罪の意思を伝えたうえで慰謝料や賠償金を含めた示談金を支払い、被害者の宥恕(ゆうじょ=許すという意味)を得られれば、検察官が不起訴と判断する可能性が高まります。
しかし、逮捕されている被疑者本人が被害者との示談交渉を進めることは物理的に不可能です。また、被疑者の身内が示談交渉を進めるのは、新たなトラブルに発展する可能性も高いため、避けるべきといえるでしょう。被害者の警戒心を強めてしまい、交渉のテーブルについてもらうことさえかなわないケースも少なくありません。そもそも、捜査機関が被害者の情報を被疑者側に教えないこともあります。被害者の中には、弁護人には連絡先を教えることはいいけれど、被疑者には知らせないでほしいといった要望も多く見受けられます。
示談交渉は弁護士に一任するのが最善策ですが、前述したように示談交渉は当番弁護士のサポート範囲外です。被疑者の代理人として被害者と示談交渉を進めてもらうためには、私選弁護人への依頼が必要です。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
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6、まとめ
刑事事件の被疑者として逮捕された場合は、無料で1回限りの接見をしてくれる「当番弁護士制度」の利用が可能です。逮捕直後の精神的な不安を解消するためには非常に有益な制度で、実際に多くの被疑者が活用していますが、継続的な弁護活動は期待できないという欠点もあります。
早期の身柄釈放や不起訴獲得を目指すのであれば、継続的な弁護活動を依頼できる私選弁護人の選任は欠かせません。
刑事事件の被疑者として逮捕される可能性がある場合やご家族が逮捕されてしまった場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、全力でサポートします。
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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