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窃盗罪とは? 構成要件や刑罰、窃盗未遂の場合についても解説
令和5年版の犯罪白書によると、令和4年中の窃盗罪の認知件数は40万7911件で、全刑法犯の中でもっとも認知件数が多く全体の約68%を占めています。窃盗罪には、ニュースなどでよく耳にする万引きから、車上荒らしなども含まれます。
窃盗罪が成立するには、3つの要件があり、これを構成要件といいます。では、具体的にどのような行為をすると窃盗罪が成立し、処罰の対象になるのでしょうか。
本コラムでは、窃盗罪が成立する構成要件について具体的な例をあげながら、弁護士が解説します。万が一、窃盗罪に問われた場合の量刑や、窃盗が未遂に終わった場合についても参考にしてください。
1、窃盗罪の構成要件
窃盗罪とは刑法第235条に規定されている犯罪で、他人の財物を自分の物にするために盗み取ることです。
窃盗罪が成立するための構成要件は以下の3つです。これら3つをすべて満たすと窃盗罪としてみなされます。
- ①窃取した物が他人の占有する財物であること
- ②不法領得の意思のもと行われたこと
- ③窃取の事実があること
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(1)窃取した物が他人の占有する財物であること
「財物」とは基本的に有形物を指しますが、他に気体や液体、電気なども含みます。
「占有」とは財物を事実上支配・管理している状態のことです。そのため、自分の所有物を他人に貸した、もしくは預けたあとは他人の占有下にある財物とみなされ、以下のようなケースは、窃盗罪にあたる可能性がある行為となります。
①盗まれた物を盗み返したケース
もちろん本来は自分の持ち物ですが、窃盗罪にあたる可能性がある行為です。
たとえ自分の持ち物であっても、相手の占有下にあれば「他人の占有する財物」に該当します。したがって、自分の物であってもそれを盗む行為は窃盗罪に抵触してしまうのです。
たとえば、盗まれた自転車を路上で発見したとしても、無許可で持ち帰らないほうがよいでしょう。実際に目の前にある自転車が本当に自分の物であるという証拠はどこにもありません。この場合、まずは警察に通報する必要があります。
②他人に貸している自分の物を勝手に持ち出したケース
このケースでも、前項同様、窃盗罪にあたる可能性があります。いずれも本来は自分の物なのになぜそれを取り返す、持ち出す行為が窃盗罪にあたるのか、という疑問を抱くことでしょう。しかし、窃盗罪においては、財物の「本来の所有者」よりも、「現在の占有者」を重視するように考えられています。
たとえば、貸した自転車をなかなか返してもらえないとき、勝手に持ち帰りたいと思うこともあるかもしれません。しかし、あなたが許可を出して貸し出している以上、その自転車の「現在の所有者」は相手にあります。したがって、自転車を貸していた相手の許可を得ず、黙って持ち帰ってしまえば、窃盗罪に抵触する可能性が高いと考えられます。 -
(2)不法領得の意思のもと行われたこと
「不法領得の意思」とは、他人の占有物を自らの物として経済的用法に従って利用処分しようとする意思を指します。したがって、相手の了承を得ずに持ち帰ったとしても、盗もうと思っていなければ「不法領得の意思」は成立しない可能性があります。
ここでポイントとなるのは、「持ち出した目的」です。持ち出した目的が、質屋に売ろうとしたなど利益目的の場合、「不法領得の意思」があるとみなされるでしょう。
たとえば、駐輪場の他人の自転車に乗って帰ったというケースについて考えてみましょう。乗って帰った理由が自分の自転車と似ていたために取り違えたのであれば「不法領得の意思」はないと考えられます。しかし、他人の物であると知りつつ自分の物にしようという意思があれば窃盗にあたるでしょう。
また、少し使用したあとに返す目的で他人の自転車を使用した場合は「不法領得の意思」はないと考えられ、窃盗罪には抵触しません。さらに、嫌がらせで相手の自転車を持ち出したなどの目的があるときは、「不法領得の意思」はないといえるでしょう。ただし、いずれも他の罪に問われる可能性があります。
これらを総合的に考えると、盗むつもりがなく持ち帰ったケースは、窃盗罪に問われる可能性は低いと考えられます。しかし、窃盗の疑いで取り調べを受けたり裁判になったりしたとき、窃盗にあたらないと主張しても認められるかどうかはまた別の話です。まずは弁護士に「不法領得の意思」に該当するのかなどを相談することをおすすめします。
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(3)窃取の事実があること
「窃取」とは、他人が占有する財物を占有者の意思に反して、自分または第三者の占有に移転させることです。
また、窃盗にあたるのは相手に見つからないようにこっそり盗み取る行為だけのように考えるかもしれませんが、こっそりでなくても窃盗は成立します。たとえば、「ひったくり」は被害者から無理やり金品を奪うことですが、これも窃盗罪のひとつの類型です。
他にも、以下のような行為は窃盗罪として罪に問われる可能性があります。
- 空き巣、事務所や店舗荒らし、車上荒らし
- 万引き
- ひったくり
- 置き引きなど
- 無断の充電
2、窃盗はうまくいかなくても窃盗未遂として罪になる
窃盗をはたらこうとしたが被害者の抵抗にあうなどしてうまくいかず未遂に終わるケースもあるでしょう。その場合、前述した窃盗の3つの構成要件のひとつである「窃取の事実」は成立していませんが、未遂罪(刑法243条)に抵触するため、未遂の場合も罪に問われることになります。
たとえば、病院の待合室のソファに置いたままのカバンから財布を盗み取ろうとしたが、カバンの持ち主が戻ってきて相手に捕まりとがめられた場合、窃盗未遂罪として罪に問われる可能性があります。
窃盗未遂罪は、このあと説明する窃盗罪の量刑に比べ、一定の条件を満たせば量刑が軽くなる可能性がありますが、犯罪行為であることには変わりないため、有罪となれば前科がつくことは間違いありません。
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3、窃盗罪の量刑とは
窃盗罪と判断された場合、以下のいずれかの刑罰が科されます(刑法第235条)。
- 10年以下の懲役刑
- 50万円以下の罰金刑
具体的な量刑については、盗み取った物の内容や犯行の状況、前科の有無、示談が成立しているかどうかなどによって変わります。
また、窃盗罪の時効は7年です。この期間を経過すると検察官が公訴する権限は消失します。
なお、窃盗罪を犯した者が未成年の場合は、少年法に基づき処分が決まります。一般的に、14歳以上の未成年は警察などの取り調べを受けたあと、家庭裁判所に送られることになります。最終的には状況などを顧みて少年審判によって判断され、保護観察や少年院送致、不処分などの処分が下されることとなります。したがって、窃盗のみであれば刑事裁判にかけられ、成人が受ける刑罰を受けるケースはほとんどないでしょう。その場合、前科がつくことはありません。
もし、窃盗を行った者が14歳未満だった場合、刑事責任を問えないため逮捕されることはありません。ただし、何も起こらないわけではなく、警察は罪を犯した可能性がある子どもを保護して、児童相談所へ送る可能性があります。
4、窃盗罪の疑いで逮捕されたら弁護士に相談を
窃盗は、いうまでもなく犯罪です。逮捕・起訴されれば、有罪となり前科がつく可能性があります。前科がつけば、日常生活で不利益を被る可能性が高く、さまざまな影響を受けてしまいかねません。
窃盗罪で逮捕されたときは、弁護士に依頼しスピード感を持って対応することによって、将来に至るまで受ける可能性がある影響を最小限に抑えることができます。タイミングを逃さないよう弁護活動をスタートし、示談を成立させることによって、過剰に重い罪に問われること回避できる可能性もあります。そのためにも、できるだけ早いタイミングで弁護士を頼ることをおすすめします。
5、まとめ
万引きや空き巣、ひったくりなどいずれも窃盗罪に問われます。また盗んだ本人が故意ではなく持ち帰った場合でも、盗まれたと被害者が主張するケースなどもあり得るでしょう。
さらに窃盗未遂も犯罪であり、同様に罪に問われます。有罪になれば前科がつくことになり、人生にも大きな影響を及ぼす可能性は否定できません。
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