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強盗致傷の時効は刑事と民事の2つがある! 時効期間や停止・中断について
強盗をはたらいたうえ人を負傷させてしまう強盗致傷は、犯罪の性質からして厳しい処罰が予想されます。そのため、まだ捜査の手がおよんでいない状態においては、時効成立まで逃げるべきか否かと悩むことがあるのかもしれません。
時効という制度については、警察に捕まるまでのタイムリミットとイメージされる方もいるようです。しかし、実際のところ「時効」には、刑事の時効(公訴時効)と民事の時効の2つがあり、その進行は一定の事由によって停止、もしくは中断することがあります。
今回は、強盗致傷事件の時効とはどのようなものか、停止や中断するとどうなるのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。強盗致傷事件を起こしてしまった場合、過剰に重い罪が問われないようにするためにすべきことも知っておきましょう。
1、強盗致傷罪における2つの時効
強盗致傷事件を起こすと、正式には刑法第240条の「強盗致死傷罪」が適用されます。この場合に考慮すべき事項には、刑事の時効と民事の時効の2つあることになります。
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(1)刑事の時効
一般的に刑事の時効といえば、刑事訴訟法第250条に定められている「公訴時効」を指します。
公訴時効とは、犯罪から一定期間が経過すると、検察官が犯人を起訴できなくなる制度です。同じ件で裁判にかけられることも、前科がつくこともありません。なお、強盗致死傷罪の公訴時効は「15年」です。行為が終了した時が起算となり、15年が経過した時点で時効が成立します。
なお、平成22年に施行された改正刑事訴訟法によって、人を死亡させた罪で死刑にあたるものについては、公訴時効は成立しなくなりました。つまり、強盗をして被害者が亡くなっている場合には何年経過しても、逮捕、起訴される可能性が残り続けることになります。 -
(2)民事の時効
ここでいう「民事の時効」とは、民法第724条が定める、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効を指します。
強盗致傷事件では、被害者に経済上および身体上の損害が発生していると考えられます。したがって、被害者は加害者から受けた損害を補塡(ほてん)するため、加害者に対して損害賠償を請求する権利があります。
強盗致傷事件における民事上の時効は、被害者が損害および犯人を知ってから3年、もしくは事件から20年です。これを過ぎると、被害者の「損害賠償請求を行う権利」が消滅します。
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2、公訴時効の停止と民事上における時効の停止・中断とは
公訴時効は「停止」が、民事の時効は「停止・中断」の制度があります。
「停止」はそれまでの時効期間は有効に維持しつつ、進行が一時的にストップすることです。「中断」は、それまでの時効期間がリセットされ、振り出しに戻ることを指します。
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(1)公訴時効の停止事由
公訴時効へのカウントダウンが停止する事由は、主に2つあります。
1つ目は「当該事件についてした公訴の提起(刑事訴訟法第254条第1項)」です。公訴の提起とは、検察官が起訴することを指します。つまり、あなたが強盗致傷罪で起訴されると時効の進行が停止します。なお、共犯がいる場合はそのひとりにされた起訴も停止事由になります(同条第2項)。
2つ目は、「犯人が国外にいる」または「犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかった」場合です(同法第255条第1項)。これらの証明に必要な事項については、裁判所の規則で定められています(同条第2項)。
いずれの場合も、停止事由が消滅すると、停止した時点から、時効期間の続きがカウントされることになります。刑事ドラマなどで「海外へ高飛び」などの展開が起こることがありますが、出国の時点で時効が停止するため、帰国したら逮捕される可能性があると言えるでしょう。 -
(2)民事の時効の停止・中断事由
民事の時効は停止する場合と、中断する場合があります。
停止する場合は、未成年者が法定代理人を欠くとき(民法第158条)などや、天災事変が起きたとき(民法第161条)などです。権利者が自ら中断行為をすることが困難な場合に限り停止するということです。
一方、中断する場合として、民法第147条は次の3つの事由を挙げています。
- 請求
- 差し押さえ、仮差し押さえまたは仮処分
- 承認
たとえば、被害者が訴訟を提起した場合や、加害者が示談金の一部を仮払いしたような場合が該当します。また、仮の時効中断事由として、「催告」もあります。内容証明郵便を送るといった裁判外の請求をすると、6ヶ月以内に訴訟を提起するなどすれば中断効果を生じさせるものです。
なお、令和2年4月施行の改正民法では、中断が「更新」に、停止が「完成猶予」として文言が整理されます。また、生命または身体の侵害による損害賠償請求権は3年から5年へと変更になります。
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3、強盗致傷の刑罰と時効まで待つべきか否か?
強盗致傷で有罪になったら、どのような刑罰を受けるのでしょうか。時効成立まで待つべきかどうかについても解説します。
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(1)強盗致傷の刑罰
強盗致死傷罪(刑法第240条)の刑罰は次のとおりです。
- 人を負傷させたとき······無期または6年以上の懲役
- 人を死亡させたとき······死刑または無期懲役
強盗致傷は、非常に悪質性が高い重罪であると判断されます。そのため、最低でも6年の懲役刑が設けられ、罰金刑の設定がありません。原則、有罪になれば刑務所に収監されることになります。また、未遂であっても罪に問われ、同じ法定刑が適用されます。
もっとも、執行猶予がつけば、猶予期間中に罪を犯さない限り、刑の執行が猶予されます。
ただし、執行猶予がつくための条件のひとつとして「3年以下の懲役」の判決を受ける必要があります。しかし、上記のとおり強盗致傷は懲役の下限が6年ですので、この条件を満たしません。情状酌量などがなされない限りは、有罪になれば刑務所に入ることになります。 -
(2)酌量減刑によって執行猶予がつく可能性
ただし、たとえ決定刑が最低でも懲役6年であっても、情状が酌量されると判決では減刑され、執行猶予付き判決が下る可能性はあります。なぜなら、刑法第66条では「犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。」としているためです。これを、「酌量減刑」と呼ばれています。
酌量すべき犯罪の情状には、犯行の動機や更生の可能性、示談の成立など、被告人に有利となるさまざまな事情があります。酌量減刑が認められると、刑の下限を2分の1にすることができるため、強盗致傷罪では下限が3年になります。つまり、減刑され懲役が3年以下になれば、執行猶予がつく可能性が生じるということです。 -
(3)時効まで待つより自首もしくは出頭を
自らが犯人だと発覚する前に捜査機関へ自首すると減刑されることがあります(刑法第42条)。
ただし、すでに捜査機関から犯人だと知られている場合は、自首にはあたらず出頭と呼ばれます。出頭は減刑事由として定められていませんが、自身の犯した罪を素直に認めて反省しているひとつの証しになります。したがって、情状のひとつとして考慮され、酌量減刑が認められる可能性もでてくるでしょう。
時効が成立するまで待つより、自首や出頭を含め、減刑となる材料を増やすほうが賢明な選択となるケースもあります。ひとりで出頭、自首することに不安がある場合は、弁護士に相談することを強くおすすめします。
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4、困ったときには法律事務所へ
強盗致傷事件を起こしてしまったとき、弁護士を依頼するメリットについて解説します。
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(1)自首や出頭の判断および同行
事件を起こしてしまうと大半の方が、何がご自身にとって正しい選択か、冷静な判断ができなくなるケースがほとんどです。気が動転してしまい、誤った判断をしてしまうケースは少なくありません。
しかし、弁護士であれば客観的な視点から自首や出頭するべきかどうかを判断できます。自首や出頭を行う際には同行し、不当な逮捕(身柄の拘束)を防ぎ、警察や検察官への対応を行うこともあります。さらに、取り調べの際の注意点や適切な対応についてもアドバイスしますので、精神的な不安も軽減されるでしょう。 -
(2)被害者との示談交渉
刑事事件における示談では、被害者へ謝罪を行い、被害金の弁済や怪我の治療費や慰謝料などを支払うとともに、被害者から罪を問わないなどの言葉(宥恕文言)をもらうことを目指します。
この示談を成立させることは、刑事事件において非常に重要なことです。なぜなら、被害者の処罰感情の有無は量刑判断で考慮され、減刑される可能性が生じるためです。
ただし、犯罪の性質上、ご自身やご家族が示談を持ちかけても拒絶されるおそれがあります。もちろん、被害者の処罰感情が薄まらなければ、宥恕文言を入れたうえでの示談成立は難しいでしょう。しかし、弁護士ならば慎重に被害者感情を考慮した交渉を行うため、突破口を開ける可能性があるでしょう。 -
(3)裁判になったときの対応
強盗致傷では起訴され裁判になることも覚悟しなくてはなりません。しかし、実刑を免れ、執行猶予がつく可能性も残されています。そのためには。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士の知見が必要不可欠となるでしょう。
逃亡を図ったり、証拠隠滅を考えたりする前に、少しでも早く弁護士へ相談することで、過剰に重い罪に問われないように対応することをおすすめします。
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5、まとめ
時効は公訴時効と民事の時効の2つがあります。それぞれに停止や中断事由が定められているため、時効成立の判断をご自身で安易に行うことはできません。時効成立まで待つという考えそのものに、大きなリスクが伴います。
強盗致傷では重い刑罰が用意されていますが、くむべき事情があれば減刑の可能性もあります。そのために何をするべきなのかは弁護士へ相談しましょう。自首や出頭の判断も含め、ご自身にとって最善の結果となるよう、アドバイスやサポートを行います。
ベリーベスト法律事務所には、刑事事件に対応した豊富な知見があります。時効について知りたい、自首するべきか迷っているなどのご相談にも応じます。まずはお気軽にご一報ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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