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弁護士コラム

2019年12月05日
  • 財産事件
  • 強盗致傷

強盗致傷とはどんな罪? 減刑および執行猶予となる可能性や弁護活動の内容は?

強盗致傷とはどんな罪? 減刑および執行猶予となる可能性や弁護活動の内容は?
強盗致傷とはどんな罪? 減刑および執行猶予となる可能性や弁護活動の内容は?

強盗をはたらき、人を負傷させると「強盗致傷罪」に問われます。強盗致傷罪は裁判員裁判の対象となる重罪であり、有罪判決がくだれば原則として執行猶予がつかず、重い罰を受けることになります。

犯罪が事実であれば相応の処罰を受けることになりますが、弁護士による適切な弁護活動によって量刑が考慮される可能性もありますので、なるべく早く弁護士に相談された方が良いでしょう。

今回は、強盗致傷罪に着目し、犯罪の概要や刑罰の重さを解説するとともに、減刑や執行猶予となるケース、弁護士が行う活動についても触れていきます。

1、強盗致傷とはどんな罪?

まずは、強盗致傷とはどのような犯罪か、強盗との違いを踏まえて解説します。

  1. (1)そもそも強盗罪とは

    強盗罪は、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取し、あるいは財産上不法の利益を得る犯罪です(刑法第236条)。
    典型的なのは、銀行や住居に押し入り凶器で脅して金品を奪う行為ですが、飲食店で店員を突き飛ばして無銭飲食するような行為も強盗にあたります。
    また、窃盗犯が財物の取り返しや逮捕から逃れる目的で暴行や脅迫をする「事後強盗」、薬などで人を昏睡(こんすい)させて財物を奪う「昏睡(こんすい)強盗」も強盗として扱われます(刑法第238条、239条)。

  2. (2)負傷させると強盗致傷罪になる

    強盗致傷罪は、強盗が人を負傷させたときに成立する犯罪です(刑法第240条)。

    たとえば、次のようなケースが強盗致傷罪にあたります。


    • 通行人に襲いかかり、殴る蹴るなどの暴行を加えて怪我をさせ金品を奪った
    • 万引きを警備員に見つかり、逃げるために警備員を押し倒して怪我をさせた
    • タクシーに無賃乗車しようとし、運転手の首を絞めて怪我を負わせ、料金を払わず逃げた


    強盗致傷罪は、被害者の怪我の程度が軽微であっても成立する可能性があります。仮にかすり傷程度であっても、理論上は強盗致傷罪になりますので、軽く捉えることはできません。
    もっとも、被害者の怪我の程度は量刑判断に影響を与えるため、怪我が重い場合と比較すれば量刑が軽くなる事情にはなります。

    また、強盗致傷罪は、厳密に言うと、相手に怪我を負わせる故意があった場合は強盗傷人罪、故意がない場合は強盗致傷罪と区別されます。
    両者は同じ法定刑の範囲で裁かれますが、人を傷害する故意がある強盗傷人罪の方が、より重い量刑となる可能性が高いでしょう。
    たとえば、強盗をする際に凶器を持っていたようなケースでは故意の存在が認められやすいといえます。

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2、強盗致傷の懲役について

強盗致傷罪の刑罰は、「無期または6年以上の懲役」です。暴行や脅迫を用いて財物を強奪する悪質な行為に加えて相手に怪我を負わせているため、非常に重い刑が設定されています。
減軽されない限りは執行猶予がつかない犯罪ですので、多くのケースで実刑判決が言い渡されています。

一般的に刑事事件では、初犯であることが量刑判断の材料となることが少なくありません。
強盗致傷罪についてもその点は同じですが、そもそも犯罪自体の悪質性が極めて高いため、初犯であっても実刑判決となるケースが大半です。
つまり、起訴され有罪になれば、少なくとも6年という長期にわたり刑事施設へ拘置され、刑務作業に従事することになります。

刑事施設では起床や就寝時間も決められており、他の受刑者と共同生活を送るため、自由がかなり制限されます。ご家族との面会も日時や回数が限られています。
また、刑事施設での暮らしが長く続くと、その間社会から断絶されるため、出所後には身寄りがいなくなる、就職が難しくなるなど、その後の生活へも多大な影響をおよぼします。

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3、強盗致傷で減軽・執行猶予がつく可能性のあるケース

強盗致傷罪を犯すと、基本的に執行猶予は難しくなります。
理由としては、刑法第25条は、刑の執行が猶予されるのは「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」にあたる犯罪だと述べています。
強盗致傷罪は最低でも6年の懲役が用意された犯罪ですので、これを満たしていません。

ただし、情状酌量が認められると減軽されたうえで執行猶予がつく可能性も生じますので、以下に解説します。

  1. (1)被害者との示談

    被害者へ真摯に謝罪し、示談が成立していると、減軽される可能性が生じます。懲役3年まで減軽されると執行猶予がつく場合もあります。
    裁判官は被害者の処罰感情も考慮しますので、被害者が重い処罰を望まないのであれば量刑が考慮される可能性があります。
    示談の成否に際しては、被害額の弁済も重要です。被害が回復し、受けた損害に対する賠償金も支払われると、被害者が示談に応じる可能性を高めるでしょう。

  2. (2)犯行動機

    犯行におよんだ経緯や動機にくむべき事情があれば、減軽される可能性があります。
    一概にはいえませんが、たとえば遊ぶお金を得る目的で計画的に行った犯行と、経済的に困窮し家族の生活を支える目的で突発的に行った犯行では、後者の方が刑が軽くなる可能性はあるでしょう。

  3. (3)更生の可能性

    罪を認めて深く反省している、被害者への謝罪を何度も口にしているといったケースでは、更生の可能性があるとして有利にはたらく材料となり得ます。また、前科があるよりは初犯、年齢が高いよりは低い方が、更生の可能性があると判断されやすくなります。

  4. (4)被害の大小

    強奪した金品の額が少ない、被害者の怪我が軽微な場合などの場合は減軽される可能性があります。
    結果としての大小にとどまらず、被害額が少なければ弁済が容易になる、怪我が軽微であれば被害者の処罰感情が弱まるなど、示談がしやすくなるという観点からも重要です。

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4、強盗致傷で弁護士に弁護活動を依頼するメリット

ご家族が強盗致傷の容疑で捜査対象となっている、あるいはすでに逮捕された場合は、なるべく早く弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士は具体的には次のような活動を行います。

  1. (1)強盗致傷罪の不成立を証明する

    弁護士が事実関係を整理し、適切な主張を行うことで、強盗致傷罪の不成立を証明できる可能性があります。
    逮捕容疑は強盗致傷罪であっても、その後の弁護活動によって「窃盗罪と傷害罪」「暴行罪と脅迫罪」など別の罪名に切り替わることで、適用される刑罰が軽くなる場合があるのです。
    結果として不起訴処分や減軽、執行猶予となる可能性を高めます。

  2. (2)無罪の主張

    犯行の事実がない場合には、不起訴処分や無罪を主張します。
    強盗致傷罪は重罪であるため、捜査機関は厳しい態度で取り調べを行い、逮捕された本人がやってもいないことを認めてしまうおそれがあります。
    弁護士がついていれば取り調べに対応するためのアドバイスを行うほか、犯行時のアリバイなどの証拠を集めることができます。

  3. (3)示談交渉

    犯行が事実であれば速やかに罪を認め、被害者と示談を成立させることが極めて重要です。ただし、加害者側の立場であるご家族が示談を求めても、被害者の方から拒否される可能性があります。
    当然、逮捕された本人が被害者と接触することなどできませんし、仮に逮捕前であっても被害者を怖がらせて別の問題を生じさせるだけなのでやめておくべきです。
    弁護士を介入させればスムーズな示談交渉につながります。

  4. (4)刑事裁判における弁護

    強盗致傷罪は起訴される可能性が高いため、罪を犯した以上は刑事裁判になることも覚悟しなくてはなりません。刑事裁判となった場合、弁護士がどのような弁護を行うのかによって量刑が大きく変わる可能性があります。
    弁護士であれば、事実を把握し適切な弁護を行うことができます。
    裁判までに引き続き示談成立に向けて動く、謝罪文を提出する、くむべき事情がある資料を集めるなど、あらゆる弁護活動を行い、少しでも刑が軽くなるように尽力します。

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5、まとめ

今回は強盗致傷罪について解説しました。
強盗に際して相手を負傷させると強盗致傷罪が成立します。金銭が絡むうえに人の身体を傷つけるため、強盗罪以上に重い罰を受けることになり、原則として執行猶予もつきません。
事件によっては示談の成立や情状が考慮され、減軽されて執行猶予となる可能性も残されていますが、ご家族の方のみで対処することはなかなか難しいでしょう。なるべく早い段階で弁護士にご相談いただき、適切な弁護活動を行うことが重要となります。

身近な方が強盗致傷を疑われている、逮捕されてしまったといった場合、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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