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いたずらのつもりで物を隠したら器物損壊罪? 窃盗罪との違いとは
学校や職場などでありがちな嫌がらせのひとつに、気に入らない相手の物を隠すという行為があります。物を隠した側からすれば盗んだつもりはまったくなくても、相手からすると自分の物が紛失したわけで、誰かに盗まれたことと変わらない状況です。実はこの場合、窃盗罪が成立する可能性があるとともに、器物損壊罪にあたる可能性もあるのです。
窃盗罪と器物損壊罪といえば、まったく異なる犯罪のように考える方が多いでしょう。しかし、場合によってはどちらが適用されるか判断が難しいケースがあることをご存じでしょうか。刑罰の重さに違いが生じる可能性もあるので、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。
今回は窃盗罪と器物損壊罪がどう違うかを見たうえで、他人の物を隠したことで罪に問われてしまった場合の対処法について解説します。
1、窃盗と器物損壊の違いとは?
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(1)条文の比較
前述のとおり、他人の物を隠したケースなどでは、窃盗罪に問われるケースと、器物破損罪に問われるケースがあります。いずれも刑法に定められている犯罪であることは共通ですが、それぞれの条文は以下のとおりです。
- 窃盗罪 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。(刑法第235条)。
- 器物損壊罪 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。(刑法第261条)。
条文上のもっとも大きな差は、科される刑罰でしょう。主に懲役の年数に大きな差がありますが、これは被害の大きさや悪質性などで科される量刑の内容が左右されることになります。
また、器物損壊罪は、告訴がなければ公訴提起できない親告罪です(刑法第264条)。つまり、被害者からの告訴がなければ罪に問われることはありません。 -
(2)両罪の違い
刑罰以外に異なる点は、やはり各犯罪に該当する要件の部分でしょう。
① 窃盗罪
窃盗罪に規定されている「他人の財物(ざいぶつ)」とは、金銭をはじめ、一般的に財産的価値のある物を指します。「窃取」は他人の占有物を占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転させる行為です。つまり、他人の持ち物などを持ち去る行為をすると、窃盗罪に問われる可能性があるということになります。
② 器物損壊罪
他方、器物損壊罪に規定されている「他人の物」には、動産や不動産も広く含まれます。そして「損壊・傷害」は、物の物理的損壊に限らず、物の効用を害する一切の行為と解釈されています。物を隠されると使えなくなりますから、単に壊すだけでなく、冒頭のように人の物を隠す行為も器物損壊に該当する可能性があるわけです。もっといえば、他人の持ち物を壊す行為だけでなく、他人のペットにケガをさせたり、隠したりした時点で器物損壊罪に問われる可能性があるでしょう。さらには、壁に落書きする、美術館の絵を破く、他人の食器を割るなども器物損壊に問われる可能性があります。
なお、器物損壊罪の条文に記載されている「前三条に規定するもの」とは、刑法第261条の前三条に規定されている公用文書等毀棄、私用文書等毀棄、建造物等損壊及び同致死傷を指します。いずれも他人の物を損壊する行為ですが、損壊する物が特定されていて、それぞれ異なる刑罰が規定されています。 -
(3)窃盗罪と器物損壊罪の分かれ目
刑法上の条文には明記されていませんが、窃盗罪が成立するためには、窃盗の故意に加えて「不法領得の意思」が必要であると解されています。窃盗罪と器物損壊罪の大きな分かれ目が、「不法領得の意思」の有無です。次項で詳しく解説します。
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2、重要なのは不法領得の意思があるかどうか
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(1)不法領得の意思とはなにか
「不法領得の意思」とは、
① 権利者を排除して(排除意思)
② 他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用処分する意思(利用処分意思)
と解されています。
器物損壊罪は、自分の物として利用する意思(利用処分意思)がなくても成立するため、単に他人の物を隠す、または壊す行為は、器物損壊罪にあたるわけです。 -
(2)不法領得の意思の判断基準
では、不法領得の意思の有無はどのような基準によって判断されるのでしょうか。
例として、他人の物を売却するために持ち去ってしまったケースを考えてみましょう。
売却利益を目的として他人の物を持ち去る行為は、他人の物を自己の所有物として処分行為(売却)をするという目的があることから、利用処分意思があり、不法領得の意思があるとみなされます。
他方、他人の物を廃棄(破損)するために持ち去った場合はどうでしょう。
この場合には、当初から、その物を自己の所有物として利用する意思はないことから、利用処分意思がなく、不法領得の意思がないと判断されます。
ただ、後ほど「器物損壊と窃盗の判断の境目があいまいな事例」で紹介するように、不法領得の意思があるかどうかが不明瞭なケースも存在するので注意が必要です。また、犯行当時における被害者との関係性や、犯行後の行動、事実に対する合理的な理由の存否などもポイントになります。
不法領得の意思の有無によって器物損壊罪か窃盗罪かが変わり得るということは、不法領得の意思の有無が不明瞭な場合、両罪の区別もあいまいになるということです。次項では、そのような事例をいくつか紹介します。
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3、器物損壊と窃盗の判断の境目があいまいな事例
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(1)携帯電話の持ち去り
通話やメール、アプリの利用など、携帯電話を使用する目的で持ち去ったのであれば、不法領得の意思がみとめられ、窃盗罪が成立します。これに対して、いたずらや嫌がらせ目的で持ち去ったり、別の場所に移動させたりするだけであれば、器物損壊罪となります。
しかし、単に携帯電話を使用するというのではなく、特定の相手の携帯電話からデータを盗んだ場合は、不正アクセス禁止法違反など、さらに異なる罪に問われる可能性があります。 -
(2)破壊目的での持ち去り
物の破壊は、本来、所有者でなければ勝手に行えない行為です。そのため、破壊目的であれば不法領得の意思があるようにも思えます。しかし、不法領得の意思の定義には「物の経済的用法に従い」という一節があります。単なる破壊は経済的用法にはあたらないため、不法領得の意思があると判断はされにくいでしょう。
したがって、破壊のみを目的としていれば、器物損壊罪が成立する可能性が高いと考えられます。
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4、窃盗や器物損壊の罪に問われたら早期に弁護士に相談をすべき理由
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(1)より軽い罪として主張できる可能性が高まる
窃盗罪にせよ器物損壊罪にせよ、逮捕されるかもしれない行為をした場合、または逮捕されてしまった場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
特に、窃盗罪に問われるのか、器物損壊罪に問われるのか判断が難しいケースで考えてみましょう。最終的に起訴されてしまうことを考えると、より刑罰が軽い器物損壊罪として判断された方が、重すぎる罪に問われてしまう可能性を回避できることになります。しかし、両罪の区別は時にあいまいです。そのため、正しい立証が行えず、本当は器物損壊罪なのに窃盗罪として立件されてしまう可能性は否定できません。
弁護士がサポートすることで、不法領得の有無を主張し、適切に取り扱ってもらえるよう働きかけることができるでしょう。 -
(2)早期の示談交渉が期待できる
器物損壊罪は、前述のとおり親告罪です。逮捕され足り取り調べを受けることになる前に被害者と示談を成立させることができれば、被害届を出されることなく、刑事事件化しない可能性もあります。
また逮捕されたとしても、起訴される前に示談をまとめることで、不起訴処分を受けられる可能性が高くなります。 -
(3)逮捕後も適切な助言を受けられる
弁護士は、被疑者に取り調べの際のアドバイスをしたり、警察や検察官へ主張をしたり、被害者との示談交渉などを行うことで、被疑者が適切な扱いを受けるよう働きかけます。
また、起訴されて刑事裁判にかけられたとしても、示談が成立していれば量刑判断において減刑や執行猶予つき判決が期待できます。
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5、まとめ
今回は、窃盗罪と器物損壊罪の違い、その判断基準や、罪に問われた際の対処法を説明しました。窃盗罪は、不法領得の意思があるかないかが大変重要視されます。また窃盗罪と器物損壊罪は、刑罰の重さや親告罪か否かという違いがあり、どちらの容疑がかけられるかは重要です。
逮捕される不安がある、もしくは逮捕されてしまった際には弁護士のサポートが力になるでしょう。ひとりで不安を抱え込まず、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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