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ネコババは窃盗罪か横領罪か? 該当する罪について詳しく説明
道ばたに落ちている物や、公園のベンチなどに置き忘れられた他人の物を、自分の物にしてしまう行為は、俗に「ネコババ」と呼ばれます。「落ちていた物なのだから別にいいだろう」と犯罪の認識がない方もいるかもしれませんが、他人の物をネコババする行為はれっきとした犯罪です。
「誰もみていないはず」と軽い気持ちでした行為でも逮捕・起訴され、有罪になればご自身の人生やご家族に影響を与えることになります。
本記事ではネコババ行為が該当する犯罪について、区別の基準や刑罰、時効を含めて解説します。
1、ネコババ行為は何罪?
他人が落とした物や置き忘れた物を、警察や施設の管理者に届け出ずに持ち去る行為を俗に「ネコババ」といいます。法律にネコババ罪という罪名は規定されていませんが、刑事事件となり次のような罪に問われる可能性があります。
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(1)遺失物等横領罪(刑法第254条)
遺失物や漂流物、その他占有を離れた他人の物を横領することで成立する犯罪です。占有離脱物横領罪とも呼ばれています。刑罰は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」です。
遺失物は「持ち主がなくした物」、漂流物は「水面に浮かぶ物や流れ着いた物など」を指します。横領は、遺失物だと認識していながら不法に自分の物として扱う行為です。道ばたで拾った財布の中身を抜き取る行為や、電車の網棚に置かれた他人の荷物を持ち去る行為が該当します。 -
(2)窃盗罪(刑法第235条)
他人が占有する財物を盗む犯罪です。経済的用法に従って処分する意思(不法領得の意思)をもって、占有者の意思に反して自分・第三者の占有下に移転させると成立します。刑罰は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
万引きや自転車盗、スリなどが典型的な類型ですが、たとえばゴルフ場のロストボールを拾って持ち帰る行為も該当し得るでしょう。ロストボールは本来の持ち主が所有権を放棄した物であり、ゴルフ場の占有下にあると考えられるからです。 -
(3)詐欺罪(刑法第246条)
人を欺き信じ込ませ、財物を交付させる犯罪です。刑罰は「10年以下の懲役」となり、有罪になれば必ず懲役刑を科される重罪です。
ネコババ行為で詐欺罪が成立する場面としては、たとえば店舗で料金を支払った際のおつりが本来の額より多いと気づいていながら、あえて店員に告げずに自分の物にするケースが挙げられます。おつりが多いと告げる義務を果たさずに店員をだましたと考えられるからです。
一方で、おつりを受け取った時点では金額が多いと気づかなかったが後で気づいて申し出なかった場合は、遺失物横領罪に問われる可能性があります。
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2、遺失物横領罪と窃盗罪の区別
遺失物横領罪と窃盗罪は、どちらも他人の物を自分の物にしてしまう犯罪です。しかし両者は刑罰が大きく異なるため、ネコババの行為者にとってどちらの罪にあたるのかは重要な問題でしょう。
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(1)被害者の占有下にあるか否か
どちらの罪にあたるのかは、目的物が被害者の占有下にあるかどうかで区別されます。被害者の占有下にある物を自分の物にすれば窃盗罪、被害者の物だが占有から離れている物を自分の物にすれば遺失物横領罪です。
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(2)占有の有無はどう判断されるのか
ここでいう占有とは、被害者による事実的支配・管理を指します。現に被害者の手元にある場合や被害者の自宅・車の中などに置いてある場合、被害者が物の置き場所を認識している場合などがこれにあたります。
一方で、どのようなケースでも被害者の現実の所持や監視を要するわけではありません。占有があったかどうかについて「一瞬でも被害者の手元から離れたら占有下にない」という単純な判断はできないのです。
たとえば被害者が落とした直後の物を拾って自分の物にした場合は、必ずしも占有から離れたとはいえないため、窃盗罪となり得ます。- 被害者が財物を取り戻すまでの移動距離や要した時間
- 置き忘れた場所の性質
- 対象物の性質(貴重品かどうかなど)
- 不法領得の意思の有無
これらの点を事件の内容と照らし、被害者の占有下にあったか否かが総合的に判断されます。
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3、ネコババ行為の時効
犯罪行為から一定期間が経過すると検察官が起訴できなくなる制度を公訴時効といいます。公訴時効の期間は刑事訴訟法第250条において、刑罰の重さごとに定められています。したがってネコババ行為がどの犯罪にあたるのかによって、公訴時効が成立するまでの期間が異なります。
- 遺失物横領罪:遺失物を横領したときを起算日として「3年」
- 窃盗罪:窃盗行為をしたときを起算日として「7年」
- 詐欺罪:財物の交付がおこなわれたときを起算日として「7年」
公訴時効は進行が停止する場合があります。停止とは、一定の事由が発生することで時効の進行が一時的にストップする制度です。それまでに経過した期間は有効に維持されたまま停止するので、停止事由がなくなればその時点から時効が進行します。具体的には、犯人が国外にいる場合や逃げ隠れしているために起訴状の送達ができない場合、共犯者が起訴された場合などに停止します。
ネコババ行為をしてから3年や7年が経過しても公訴時効は成立していない可能性があるわけです。
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4、ネコババ行為をしてしまった際の対処法
ネコババ行為は現行犯逮捕されなくても、被害届の提出を端緒として捜査が開始され、通常逮捕される可能性があります。もちろんネコババは犯罪ですが、被害が比較的軽いケースも少なくありませんので、しっかりと反省したうえで重すぎる処分を受けないように対応することも必要です。
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(1)警察に届け出る
遺失物法第4条では拾得者について、速やかに遺失者へ返還するか、警察署長あるいは施設の占有者へ提出する義務を定めています。
提出時期に関し、明確にいつまでという基準はありませんが、「速やかに」は「可能な限り早く」という意味です。ネコババ行為をしてしまってから間もない時期であれば、拾得物として届け出ることで解決する可能性はあるといえます。 -
(2)被害者へ弁償する
遺失物横領罪や窃盗罪では、持ち去った金品の弁償をすることが重要です。被害者としては何よりも財産的被害の回復を望んでいるケースが多いため、弁償できれば示談が成立する可能性があります。
被害弁償をした事実が反省の意があるとして評価され、起訴・不起訴および量刑の判断に影響を与える可能性もあります。とくに初犯で悪質性も低く、示談も成立していれば、不起訴処分にも期待できるでしょう。 -
(3)弁護士に相談する
逮捕されれば会社や学校へも行けないなど社会生活へ影響がおよぶため、早急に弁護士へ相談しましょう。悪質性が低い点や十分な反省がみられる点などを弁護士が捜査機関へ訴え、被害者との示談を成立させることで、早期の身柄解放につながります。
また当初は窃盗罪として逮捕されても、弁護士が法的に窃盗罪は成立しない旨を主張することで、窃盗罪ではなく遺失物横領罪の成立が認められる場合もあります。成立する罪が変わることで言い渡される罰が軽くなれば、その分社会復帰も早まります。
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5、まとめ
ネコババ行為は紛れもない犯罪行為です。軽い気持ちであっても窃盗罪や遺失物横領罪などに問われ、罰を受ける可能性があります。本人に罪の意識が薄いケースも少なくありませんが、「自分は悪くない」という態度では今後の処分に影響を与えかねないため、しっかりと反省して被害者への謝罪と弁償をおこなうことが重要です。
ネコババをしてしまい逮捕されてしまった方や、被害者との示談交渉でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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