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家族が万引きで逮捕された! 本人のために家族にできることは?
警視庁の資料「万引きに関する調査研究報告書」によれば、平成30年の万引きによる検挙・補導人員は未成年の少年が1571人、成人が4532人、65歳以上の高齢者が2521人と、幅広い世代において発生している犯罪だとわかります。
もしあなたの家族が万引きをして逮捕されたら、どのような処分を受けるのでしょうか。家族は本人のために何ができるのでしょうか。
本記事では、万引きによる逮捕から起訴までの流れや量刑の判断基準、家族ができることを解説します。
1、万引きは窃盗罪にあたる犯罪行為
万引きは窃盗罪に該当する行為です。刑法第235条において、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています。
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(1)窃盗罪の成立要件
窃盗罪が成立するためには「他人の占有する財物を窃取すること」と「故意と不法領得の意思」が必要です。
財物とは人が占有(所持・管理)している物をいい、万引きの場合は店の商品がこれにあたります。
窃取とは、占有者の意思に反して財物を自己または第三者の占有に移す行為です。窃取には「こっそりと盗みとる」という意味がありますが、たとえばひったくりのように、こっそりとでなくても窃盗罪は成立します。
故意とは万引きをしている自覚(財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことについて認識していること)を指します。たとえば小さな子どもが商品を手に持っているのに気づかず、親が会計をしないで店の外にでてしまった場合、親に故意はなかったので窃盗罪は成立しません。
不法領得の意思とは盗んだ商品を自分の物として好きに扱おうとする意思を指します。
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2、逮捕から起訴までの流れ
万引き行為で逮捕されるパターンや、起訴・判決までの流れを解説します。
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(1)その場で逮捕される現行犯逮捕
万引き事件の多くは現行犯逮捕されます。現行犯逮捕は私人でも可能なので、万引きの様子を店員や警備員に目撃され、その場で身柄を確保されるケースが多いでしょう。その後は通報を受けた警察官に連行され、そのまま留置場に入れられる場合もあります。
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(2)逮捕状にもとづく通常逮捕
万引きは後日に逮捕される場合もあります。店が被害届を提出し、防犯カメラの映像から万引き行為が発覚するケースが典型です。
被疑者として特定され、犯行から数日ないし数か月後に、警察官が逮捕状をもって自宅にやってくるパターンが考えられます。 -
(3)身柄事件と在宅事件
被疑者として特定された場合でも、必ず逮捕されるわけではありません。逮捕は被疑者が逃亡や証拠隠滅をするおそれのある場合になされる身柄拘束の手続きです。逮捕・勾留される事件を身柄事件といいます。
逃亡・証拠隠滅のおそれがない場合には逮捕されず、被疑者は通常の生活を送りながら捜査されます。捜査機関からの呼び出しに応じて取り調べを受けるかたちとなり、在宅事件と呼ばれます。警察から事情聴取を受けた後に自宅に戻された場合は、在宅事件として扱われている可能性が高いでしょう。
身柄事件と在宅事件では、どちらのケースでも起訴され、有罪判決を受ける可能性があります。
一方で、両者には起訴・不起訴の判断がなされるまでの期間に差があります。身柄事件では逮捕から最長で23日以内に起訴・不起訴が決定するのに対し、在宅事件の場合は期間の制限がありません。身体的な拘束を受けない代わりに事件が長期化する場合があり、精神的に不安な状態が長く続く可能性があります。 -
(4)略式裁判と通常裁判
不起訴になると身柄を解放され、前科もつきません。起訴されると略式裁判または通常裁判となります。
略式裁判は100万円以下の罰金または科料に相当する事件について適用される、書面による裁判手続です。罪を認めることが前提となりますが、公開の法廷で裁判が開かれることがなく、罰金の支払いをもって刑罰が終了します。
通常裁判は公開の法廷で開かれる正式な裁判です。再犯や窃盗品が高額で悪質な事件、否認事件などで適用されます。起訴からおよそ2か月後に開廷され、審理期間を経て判決が言い渡されます。
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3、量刑の判断基準
実際に言い渡される刑(量刑)は、法定刑の範囲で裁判官が決定します。窃盗罪は10年以下の懲役か50万円以下の罰金という幅の中で、次のような基準をもとに総合的に判断されます。
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(1)初犯か再犯か
万引きの初犯であれば、更生の可能性があると評価されるための情状になります。余罪もなく、深く反省していて被害額も少ない場合には不起訴処分や執行猶予つき判決の獲得に期待できるでしょう。
再犯の場合は社会生活の中での更生は困難だとの判断に傾きます。起訴され、実刑判決を受ける可能性が十分にあります。 -
(2)被害金額
万引きをした金額が高いほど、悪質だとの判断に傾き、量刑にも影響します。初犯であっても悪質性が高いとして執行猶予がつかない実刑判決となる可能性もあります。
ただし少額なら必ず量刑が軽くなるわけではありません。少額の万引きを繰り返しているような場合には再犯リスクが高いとみなされ、量刑が重くなりやすいでしょう。 -
(3)被害者と示談が成立しているか
万引きの被害者である店側と示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性が高まります。示談は被害者が許し、処罰を望まないひとつの証となるため、検察官や裁判官もこれを重視します。
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4、精神疾患の可能性にも注意
悪いことだと自覚していて万引きをやめたい気持ちがあり、お金に困っているわけでもないのに、万引きをやめられない人がいます。クレプトマニアや窃盗癖などと呼ばれる、精神疾患の一種です。
衝動的に何度も万引きを繰り返してしまうので、再犯率が高く、結果として刑罰も重くなっていきます。
精神疾患なので治療が必要ですが、それにはご家族の理解や協力が不可欠です。もし本人がクレプトマニアの症状に悩んでいるのなら専門機関への相談も検討しましょう。クレプトマニアの人が逮捕された場合は治療の必要性を訴えるなど弁護方針にも影響するため、弁護士にも相談してください。
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5、家族にできること
家族が窃盗罪で逮捕された場合に、残された家族ができることを解説します。
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(1)弁護士に相談
まずはなるべく早く弁護士へ相談されることをおすすめします。逮捕から72時間はご家族でも本人との面会・連絡ができませんが、弁護士だけは制限なく面会できます。
弁護士は、被疑者に取り調べの対応をアドバイスするほか、初犯で悪質性がないなどの情状を捜査機関へ主張するなどし、事件の早期解決に向けて動きます。
被害者との示談交渉でも弁護士のサポートが必要です。万引きによる経営上の被害が甚大であることから、昨今は「万引き事件では示談に応じない」との姿勢を示す店も少なくありません。こうした難しい状況の中でも、法的知識をもつ弁護士であれば示談成立の糸口をみつけられる可能性が高まります。 -
(2)社会復帰後のフォロー
逮捕されると会社や学校へ通えず、無断欠勤・欠席となれば何らかの処分を受けるリスクがあります。そうなれば最終的に不起訴処分や執行猶予つき判決を得たとしても、社会復帰が難しくなるでしょう。
ご家族が本人の勤務先や学校へ事情を説明するなどして、スムーズに社会復帰ができるようにフォローすることが大切です。 -
(3)身元引受人になる
身元引受人とは、身柄拘束を解かれた本人の生活や行動を監督する方です。適切な身元引受人がいると再犯リスクが低いと判断され、処分が軽くなる可能性や、起訴後に保釈が認められる可能性が高まります。同居のご家族であれば身元引受人として認められやすいでしょう。
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6、まとめ
万引きはちょっとした出来心で犯行に手を染める人も多く、身近な犯罪だといえます。逮捕されると時間的な制限の中で刑事手続はあっという間に進んでいきます。何もしなければ厳しい処分となる可能性があるため、ご家族の迅速な対応が求められます。
ご家族にできることは多数ありますが、まずは弁護士へ相談されることをおすすめします。万引き事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が全力でサポートしますので、おひとりで悩まずご連絡ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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