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会社の財産を着服してしまった……発覚したらどんな罪に問われるの?
他人の財産を着服する行為は犯罪です。着服事件は全国的に決して少なくない頻度で発生しています。令和2年4月には、神奈川県内にある元新聞販売店の従業員が、集金した購読料を持ち逃げして逮捕される事件がありました。
着服行為は具体的にどのような犯罪にあたるのでしょうか。着服行為が発覚するとすぐに逮捕されてしまうのでしょうか。
本コラムでは、財産の着服にあたる行為や犯罪が成立する要件、事件が発覚してから逮捕・起訴されるまでの流れ、刑罰の内容などを解説します。
1、着服と横領
「着服」とは、一般用語で、「他人の財産を自分のものにしてしまうこと」という意味で使われています。
経理担当者などが、会社のお金を私的に使うために自分の口座へ移動させてしまうケースが典型的です。
着服とよく似た言葉に「横領」がありますが、「横領」は着服と異なり、刑法に規定されている法律用語です。その意味は、他人の物を委託・信任関係に基づいて占有している者が、その委託・信任関係に背いて、その物について権限がないのに、その物の経済的用法に従って、所有者でなければできないような処分をする一切の行為を指します。
ですので、一般的に「着服」という言葉からイメージされる行為のほかに、以下のような行為も「横領」に該当するとされます。
- 友人から預かった現金を使い込んだ
- 管理を頼まれていた知人の不動産を許可なく売却した
- レンタルショップで借りた本やゲームソフトをフリマアプリで売った
- レンタカーを借りて契約期間が過ぎたのに返却しない
- 集金した売上金を会社に少なく申告して差額を自分のものにした
- 成年後見人が成年被後見人の財産を勝手に使った
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2、着服・横領で成立する犯罪
着服・横領はもちろん犯罪です。具体的には刑法の単純横領罪(第252条1項)や業務上横領罪(第253条)に問われる可能性があります。それぞれの犯罪が成立する要件と刑罰の内容を確認しましょう。
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(1)単純横領罪
単純横領罪は、自分の占有する他人のものを横領する犯罪です。
①委託・信任関係にもとづき②自分が占有する③他人のものを④横領した場合に成立します。
委託・信任関係とは、その人を信用して任せることをいい、法律の規定や民法上の契約、取引において一般に認容される慣習などによって認められる関係です。
占有とは対象のものが自分の支配下にあるか、処分できる状態にあることをいい、所持・管理している場合などがこれにあたります。
もともと他人が占有している物を自分のものにする行為は、窃盗罪や詐欺罪など別の犯罪が成立する可能性があります。
単純横領罪の刑罰は「5年以下の懲役」です。罰金刑などは設けられていないので、有罪になれば必ず懲役刑となり、執行猶予がつかない限りは刑務所へ収監されます。 -
(2)業務上横領罪
業務上、自分の占有する他人のものを横領すれば業務上横領罪にあたります。単純横領罪が成立する要件に加えて「業務上」という要件を満たした場合に成立します。
ここでいう業務上とは、他人の財産を管理する事務を反復継続しておこなう立場をいい、職業としてなされるものに限られません。
業務上横領罪の典型は、経理担当者や店長が売上金を私的に使うような行為ですが、PTAや町内会、サークル活動の出納係や会計係が管理するお金を着服した場合にも業務上横領罪が成立する可能性があります。
業務上横領罪の刑罰は「10年以下の懲役」と、単純横領罪よりも重く規定されています。反復継続して他人のものを管理する者は、横領をする可能性が高いために、これを予防する目的で重い責任が課されています。
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3、着服・横領が発覚した後の流れ
ここからは、着服・横領行為が発覚した後の流れを解説します。
もっとも、事件の内容や被害の規模などによって流れが異なるケースもありますので、個別の事件については弁護士に相談するのがよいでしょう。
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(1)被害者と被害弁償について話合う
横領事件では被害者が着服に気づいたことで発覚するケースが少なくありません。その場合には、まず被害者との話合いがおこなわれます。
会社のお金を着服したのであれば被害者は会社です。話合いの相手は会社の経営者や幹部、顧問弁護士などになるでしょう。
話合う内容は着服した財産の弁償方法や金額、会社や組織などからの処分(解雇や脱退)などです。 -
(2)被害届が提出され、逮捕される
横領をしたのに認めない、使い込んでしまって弁償ができないなど、話合いで解決できなかった場合は被害届の提出や告訴がなされる可能性が高いでしょう。警察の捜査によって横領の疑いが生まれれば逮捕される可能性もあります。
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(3)取調べを受け、勾留される
逮捕されると48時間以内に警察官から取調べを受け、検察庁へ身柄と事件の書類が送られます(送致)。
その後は24時間以内に検察官から取調べを受け、引き続き身柄を拘束して捜査する必要があると判断されると勾留にいたります。最長で10日間(延長されるとさらに10日間)の勾留満期までに起訴か不起訴の判断がなされます。 -
(4)起訴の場合は裁判、判決へ
起訴された場合は刑事裁判を待つ身となり、保釈されない限りは引き続き身柄を拘束されます。起訴からおよそ1~2か月後に最初の裁判があり、その後の審理を経て判決が言い渡されます。
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(5)不起訴の場合は釈放される
不起訴になれば即日で身柄の拘束を解かれます。刑事裁判にかけられることはなく自宅へ帰ることができ、前科もつきません。
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4、着服・横領に時効はあるの?
着服行為をしてしまったがまだ事件が発覚していない場合、時効について気になる方もいらっしゃるでしょう。時効についても確認しましょう。
時効には刑事上の時効と民事上の時効があり、両者はまったく別のものです。
刑事上の時効を公訴時効といい、検察官が起訴できなくなるまでの期間を指します。
単純横領罪の公訴時効は5年、業務上横領罪の公訴時効は7年です。横領をしてから5年または7年が経過していれば起訴されないため、刑事責任を問われることはありません。
ただし公訴時効の進行は国外への逃亡など一時的に停止するケースがあり、時効の成立時期についての安易な判断はできません。
民事上の時効とは、被害者の損害賠償請求権が消滅するまでの時効(消滅時効)を指します。
着服行為は民法上の不法行為(他人の権利や利益を違法に侵害する行為)にあたるため、被害者から不法行為による損害賠償を請求される可能性があります。
損害賠償請求権の消滅時効は被害者が損害および加害者を知ってから3年です。不法行為から20年間、被害者が損害賠償請求権を行使しなかった場合も同様に消滅します。
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5、着服・横領が発覚した場合に弁護士へ相談すべき理由
着服行為が発覚した後の示談交渉や逮捕から裁判にいたるまでの段階で、状況に応じたサポートができるのは弁護士だけです。
逮捕前のはやい段階で弁護士に相談しておけば弁護活動の選択肢が広がり効果も高まるので、早期の相談をおすすめします。
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(1)被害弁償の交渉をサポート
着服事件における被害者のもっとも大きな望みは、被害に遭った財産を返してもらうことです。
弁償さえしてくれれば刑罰までは必要ないと考える被害者は多いため、被害弁償を含む示談交渉は、加害者の今後を左右するといえるほど重要な話合いとなります。
しかし着服をされた被害者は怒りの感情をもっており、着服をした加害者を信用していないものです。加えて、加害者がすでにお金を使っていて全額の弁償が難しいケースも少なくないため、交渉は難航すると予想されます。
そのため、着服事件の示談交渉は弁護士を介入させるケースが大半です。はやい時期に弁護士が入れば、事件化される前に示談が成立して逮捕や起訴が回避できる可能性も生じます。 -
(2)逮捕から裁判にいたるまでの弁護活動
逮捕・勾留によって長い間身柄を拘束されると、日常生活への影響が避けられないため、早期に身柄を釈放される必要があります。
しかし逮捕された本人やそのご家族がいくら釈放してほしいといっても通るものではありません。
弁護士であれば検察官や裁判官に対して、証拠隠滅や逃亡のおそれがない点を客観的な証拠にもとづいて主張できるため、早期の身柄釈放につながる可能性があります。
裁判になった場合も被害者との示談の状況や本人の反省、ご家族の監督体制など具体的な事実をもとに刑の減軽を求めます。
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6、まとめ
他人の財産を無断で自分のものとして処分すると、横領の罪に問われる可能性があります。「少しずつなら分からないだろう」と犯行を重ねてしまうと、事件が発覚する頃には横領の額が膨れ上がり、弁償できない状況になるでしょう。そうなれば示談の成立が難しく、悪質性も高いとして厳しい刑を言い渡される可能性が高まります。
もし着服行為をしてお悩みであれば、できるだけ早くに弁護士へ相談しましょう。刑事事件の弁護や示談交渉の経験が豊富なベリーベスト法律事務所がサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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