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家族が詐欺で有罪判決! 仮釈放は刑務所へ行ってすぐに申請できる?
刑事裁判で懲役の実刑判決を受けた場合でも、判決で下された刑期を満了する(満期)まで出所できないとは限りません。
令和元年度の犯罪白書によると、平成30年中に出所した受刑者のうち58.5%にあたる1万2299名が満期を迎える前に出所しているという事実があります。これは「仮釈放」の制度によるものです。
仮釈放が認められた場合、刑期が満了する前に出所が認められます。身柄の解放による早い社会復帰が期待できる制度ですが、もちろん、誰にでも認められるわけではありません。
本コラムでは、詐欺事件の被告人として懲役刑を受け、刑務所に収監されてしまった場合に、いつ、どのようなタイミングで仮釈放が認められる可能性があるのかを解説します。
1、詐欺罪と刑期
詐欺罪とは、他人を欺いて金品などの財産をだまし取る犯罪です。結婚詐欺・不動産詐欺・オレオレ詐欺・無銭飲食・無賃乗車などは、それぞれ詐欺罪の手口のひとつであり、事件としてはすべて「詐欺事件」として扱われます。
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(1)詐欺罪の法定刑
刑法第246条の規定によると、詐欺罪を犯した場合は「10年以下の懲役」に処されます。ほかの犯罪では懲役刑だけでなく罰金刑も設けられていることがありますが、詐欺罪では懲役刑しか規定されていません。
つまり詐欺事件では、有罪判決を受けると必ず懲役刑となり、執行猶予の付かない実刑判決が言い渡された場合、刑務所に収監されることになります。 -
(2)詐欺事件の量刑
刑事裁判で実際に下される刑罰を「量刑」といいます。詐欺事件の量刑は、刑法で規定されている範囲、つまり1か月以上10年以下の範囲で量刑が下されることになります。
具体的な期間は、被害額や犯行の悪質性・計画性、被告人の前科・犯罪経歴、示談の有無などによって総合的に判断されます。これまでに刑罰を受けたことがない初犯の場合は執行猶予付きの判決が下される可能性が高まりますが、初犯だからといって必ずしも実刑判決を回避できるわけではありません。
執行猶予付きの判決を得るためには、被害者との示談を含めた弁護士による刑事弁護が必須です。
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2、仮釈放の定義
懲役の実刑判決を受けてしまった場合でも「仮釈放」されることで満期を迎える前に釈放される可能性があります。
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(1)仮釈放とは
仮釈放とは、刑事裁判で言い渡された刑期を満了するよりも前に、条件付きで刑務所から釈放される手続きをいいます。「仮出所」と呼ばれることもありますが「仮釈放」が正しい名称です。
仮釈放は、刑務所での生活において反省や更生が認められた受刑者について、一般社会のなかで更生させていくためのものです。仮釈放を受けたからといって残りの刑期が免除されるわけではなく、厳しい条件を付されたうえでこれに反する行為があった場合は取り消されてしまいます。あくまでも「仮」の釈放であるという点には注意が必要です。 -
(2)ほかの制度との違い
仮釈放と間違いやすいほかの制度について、それぞれ概要をみていきましょう。
【釈放】
刑期を満了して刑務所から出所することをいいます。また、逮捕された被疑者が身柄拘束を解かれる手続きも「釈放」と呼ばれます。
【保釈】
刑事事件の被告人として起訴された場合、身柄の拘束が続くことがあります。しかし、保釈を申請したうえでこれが認められ、保釈保証金(いわゆる保釈金)を支払うことで裁判中は身柄拘束を解いてもらえるという制度です。
【執行猶予】
刑事裁判で言い渡された刑罰の執行を一定期間、猶予する制度です。執行猶予期間中に新たに罪を犯すなどの事態が起きなければ、刑務所に収監されることはありません。
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3、仮釈放が認められる条件
仮釈放は、裁判官に言い渡された懲役刑が満期を迎える前に一般社会への復帰が許される制度です。当然、なんら条件や制限が付されることもなく認められるわけではありません。
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(1)刑法が示す条件
「仮釈放」についての条件は、刑法第28条に規定されています。
具体的には、懲役または禁錮に処された者に「改悛(かいしゅん)の状」が認められた場合で、次の条件に合致すれば仮釈放が認められる可能性があります。
- 有期刑の場合 刑期の3分の1が経過している
- 無期刑の場合 10年を経過している
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、刑法が示す条件に照らせば刑期の3分の1が経過したところから仮釈放が認められる可能性があります。 -
(2)「改悛の状」が認められる条件
「改悛の状」とは、罪に対して深く反省し、更生が認められることをいいます。ただし、いくら刑務官に「反省している」と言葉にしていても、それだけで改悛の状が認めてもらえるわけではありません。
改悛の状が認められるための条件としては「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」によってさらに詳しく規定されています。同規則の第28条によって示されている仮釈放を認める基準は次の5点です。
- 悔悟(かいご)の情が認められる
※悔悟の情:自身の悪行を悟り、後悔して改めようとする気持ち - 更生の意欲が認められる
- 再犯のおそれが認められない
- 保護観察に付することが改善更生のために相当である
- 社会の感情が仮釈放を是認すると認められる
つまり、単に反省しているだけでなく、更生意欲が旺盛で再犯防止にむけた教育も真摯に受け止め、刑務所内での受刑態度も良好であることが「改悛の状がある」と認められる条件となります。
また、仮釈放を被害者や一般社会が許さないような悪質な犯行によって刑罰を受けているのであれば、いくら受刑態度が良好でも仮釈放は認められにくくなります。 - 悔悟(かいご)の情が認められる
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(3)明文化されていない基準
法令などで明文化されてはいませんが、仮釈放を認めるには次の基準も考慮されます。
- 適切な身元引受人がいる 更生を進めるためには出所後に安定した生活を送ることができる環境が整っている必要があります。つまり、責任をもって身柄を引き受けたうえで、生活や行動を監督できる身元引受人が存在しないケースでは、保釈が認められる可能性が下がってしまうといえるでしょう。
- 本人が仮釈放を望んでいる 仮釈放の可否は受刑者本人の意思も大きく関係します。本人が望まなければ、仮釈放が見送られることもあるでしょう。
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4、仮釈放が認められるまでの流れ
仮釈放が認められるまでの流れを解説します。
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(1)保護観察所の事前調査
受刑者本人が仮釈放を望んでいれば、予定されている身元引受人の所在や適正、出所後の就職先などを保護観察所が事前に調査します。本人が出所後に更生を目指すことができる環境が整備されているのかを確認する必要があるためです。
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(2)面接
仮釈放を審理するにあたって、2度の面接が行われます。保護観察官による予備面接と地方更生保護委員会による本面接の結果は、仮釈放の可否に大きな影響を与えます。
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(3)身元引受人への通知連絡
仮釈放が決定すると、身元引受人に決定の通知連絡が入ります。身元引受人への通知には、当日に出迎えは可能なのかなどを回答する必要があります。
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(4)仮釈放までの期間
仮釈放が決定すると、受刑者本人は犯罪更生プログラムや就労支援の集まりに参加するなど、仮釈放にむけた教育が始まります。また、仮釈放が直前に迫ると、生活上の制限が緩やかな仮釈放準備寮に移り、再犯防止にむけた教育が施されます。
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(5)仮釈放
仮釈放の当日は、出所式が開かれます。晴れて一般社会への復帰となりますが、仮釈放されたらまず保護観察所に向かう必要があります。
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5、仮釈放にむけて弁護士ができること
弁護士のサポートが活きるのは、逮捕直後や刑事裁判の場だけではありません。弁護士に相談することで、仮釈放にむけて、適切な身元引受人の選定や仮釈放審理への対応など、さまざまなアドバイスが得られます。
また、仮釈放の条件として「社会の感情が仮釈放を是認すると認められる」という点もあるので、被害者の反感を買ってしまうようでは仮釈放が認められないおそれもあります。被害者の処罰感情が強い場合は、弁護士に依頼して受刑者本人の反省や更生の状況を伝えてもらうことで、理解を求めましょう。
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6、まとめ
詐欺事件を起こして実刑判決を受けても、仮釈放が認められれば刑期が満了する前に釈放される可能性があります。受刑者本人のできるだけ早い社会復帰を目指すのであれば、弁護士に相談して仮釈放にむけたサポートを受けましょう。
ご家族が詐欺事件を起こしてしまい、実刑判決を受けそうなときは、重すぎる処罰を回避できるよう対応する必要があります。また、結果的に刑務所に収監されてしまったら、仮釈放にむけたサポートを受けることをおすすめします。おひとりで悩まず、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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