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賄賂とは? 贈る側も受け取る側も罪になる? 賄賂罪にあたる行為
各種事業の許認可や公共事業の入札などをめぐって、関係する公務員の職務権限は一般企業にとって、直接自社の利益につながるため今も昔も重要な関心事です。公務員との会食は禁止されるものではありませんが、単に「有意義な意見交換の場」を超えて、便宜を求めて利益の授受が行われると賄賂罪が成立します。
令和2年版の犯罪白書によると、令和元年中の贈収賄事件の認知件数は32件に対して、検挙件数28件、検挙人員52人、検挙率は87.5%でした。この検挙率は、一般に凶悪犯罪と呼ばれる強盗罪の87.8%に迫る高さです。贈収賄に関する事件を、捜査機関に認知された場合には、高い確率で検挙されると考えていいかもしれません。
この記事では、賄賂罪の概要と賄賂罪にあたる具体的な行為について詳しく解説します。
1、賄賂とは
賄賂(わいろ)という言葉は日常会話の中でも使われていますが、刑法上の賄賂とは、主に公務員に対する、「職務に関する行為の対価として、不法の利益」をいいます。
実際の贈収賄事件では、公共事業を請け負う企業が指名業者に選定してもらう見返りとして役所の担当者に金銭を渡す、過剰な接待を行うなどのケースが考えられるでしょう。
このようなケースでは、賄賂を受け取った側だけでなく、贈った側も賄賂罪(贈賄罪)として処罰されます。
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(1)賄賂罪
賄賂罪は、「収賄罪」と「贈賄罪」の総称です。
通説の立場からすれば、賄賂罪の保護法益は、公務員の職務の公正を保護することだけではなく、公務員の職務の公正に対する社会的信頼を保護することも目的としています。
一見正当な公務の遂行であっても、利益の授受があった場合には、公務は公正であるべきという国民の信頼が損なわれ、公務の円滑な遂行が害されるので社会的信頼もまた保護する必要があるというわけです。 -
(2)収賄罪
収賄罪は、「公務員」が「その職務に関し」て賄賂を収受、または要求、約束することです。 単純収賄罪のほか、受託収賄罪、事前収賄罪、第三者供賄罪、加重収賄罪、事後収賄罪、あっせん収賄罪があります(刑法197条~197条の4)。
収賄罪の主体は公務員です。現職の公務員はもちろんのこと、これから公務員になろうとする者や、国立大学の職員や厚生年金基金の職員など特別法において公務員とみなされる者も収賄罪の主体になります。
「職務に関し」については、公務員がその職務の具体的な権限を有していなくとも、その公務員の一般的な職務権限内であれば足りるとされています。さらに、当該公務員の一般的な職務権限内ではなくとも、それと密接に関連する行為であれば「職務に関し」に該当すると理解されています。
一般人にとって公務員が具体的にどのような権限を持っているか詳しく知らないのが普通であり、一般的職務権限内あるいは職務密接関連行為について利益の授受があったことをもって、職務の公正に対する社会的信頼を損なったと理解されるからです。 -
(3)贈賄罪
贈賄罪とは、公務員に賄賂を供与し、又は申し込み、若しくは約束をすることです(刑法198条)。贈賄罪では収賄罪のような犯罪の主体に限定はなく、民間人・公務員問わず主体となり得ます。
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2、賄賂にあたる行為とは?
具体的にいかなるものが賄賂にあたるのか、説明していきます。
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(1)賄賂の目的物
- 金銭を渡す もっともイメージしやすいのが、金銭の授受です。金銭を渡すことで便宜を図ってもらおうとする側は贈賄罪、受け取る側(公務員)は収賄罪に問われます。
- 商品券や物品を贈る 金銭でなくても、商品券や物品などを贈る行為も、賄賂罪になることがあります。
- 経済的価値を伴わないもの 異性間の情交や芸妓(げいぎ)の演芸、さらには就職のあっせんのように、金銭でも物品でもなく、経済的価値を伴わないものであっても賄賂になることがあります。
ここでのポイントは、受け渡された金銭がその公務員の職務との対価性をもつかどうかです。たとえば、普段から懇意にしている間柄で引っ越しの手伝いをしてもらう謝礼に金銭を受け渡した場合には、職務との対価性が認められず、賄賂にはあたりません。
問題となるのが、中元や歳暮などの社会的儀礼にあたるものです。職務との対価性の有無を、贈与の種類や贈与の程度、人的関係、贈った時期などの具体的事情に照らして判断することになります。
たとえば、慣行的に中元や歳暮を贈っていた場合には対価性は認められない可能性がありますが、一回限りの場合には何らかの見返りを図ったものとして対価性が認められる可能性があるでしょう。
これらは通常、公務員の職務権限に着目して便宜を図ってもらうことを意図して行われるため、多くの場合に対価性が認められています。 -
(2)賄賂罪の行為
収賄する側の行為は「収受、又は要求、若しくは約束をする」こと、贈賄する側の行為は「供与し、又は申し込み、若しくは約束をする」ことです。
- 「収受」 賄賂を自己のものとする意思で現実に取得することをいいます。収受する時期は、職務行為の前後を問いません。
- 「要求」 公務員が賄賂の提供を求めることをいいます。要求行為だけで足り、要求したものの相手が要求されたと認識しなかった場合や、要求には応じなかった場合にも賄賂罪が成立します。
- 「約束」 賄賂提供の申し出に対して公務員が承諾すること、あるいは、公務員からの賄賂の申し出に対して相手が承諾することです。実際に賄賂を渡していなくても、渡す「約束」をしただけで賄賂罪が成立します。したがって、後日約束を破棄したとしても罪の成否には無関係です。
- 「供与」 公務員に賄賂を受け取らせることをいいます。供与に該当する行為があると贈賄罪が成立することになります。
- 「申し込み」 公務員に賄賂の受領を促すことをいいます。申し込んだが公務員が受け取らなかった場合にも贈賄罪が成立します。
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3、まとめ
賄賂罪は受け取る側と贈る側が存在する犯罪です。一般の方にとっては、仕事上の接待などで知らずに贈賄罪を疑われる行為をしてしまうこともあります。そのようなリスクを避けるためには、まず、相手が公務員であるか(みなし公務員を含む)に注意しなければなりません。
また、金銭や物品以外でも賄賂に該当することがあり、さらに社会的儀礼に過ぎないと思われているものでも贈賄罪に問われることがあります。
ご自身の行為が贈賄罪にあたるのではないかとご不安をお持ちの方は、一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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