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弁護士コラム

2022年07月14日
  • 財産事件
  • 横領

横領とはどんな行為? 背任・窃盗との違いや法定刑を紹介

横領とはどんな行為? 背任・窃盗との違いや法定刑を紹介
横領とはどんな行為? 背任・窃盗との違いや法定刑を紹介

令和3年版の犯罪白書によると、令和2年中に認知された「横領」事件は1万5542件でした。うち、検挙されたのは1万2778件で、検挙率は82.2%という高い数字を記録しています。このような統計に注目すると、横領は「検挙されやすい」といえるでしょう。

刑法に定められている「横領」にはいくつかの種類があります。また、背任・窃盗との区別も難しいため、自身の行為がどれにあたるのかを正確に判断するのは難しく感じるかもしれません。

本コラムでは、横領とはどのような行為なのか、横領の種類や背任・窃盗との違いなどを解説します。

1、横領とは

まずは「横領」とはどのような行為なのか、紛らわしい着服・背任・窃盗との違いも含めて確認していきましょう。

  1. (1)「横領」の定義

    横領に関する罪は、刑法第38章に含まれる第252条から第255条までに規定されています。単純には「人の持ち物を横取りする行為」が横領だと解釈されていますが、これを法的に解釈すると次のように定義できます。

    • 横領……委託を受けて自己が占有している他人の財物を、所有者でなければ許されないような方法で処分すること


    たとえば、友人から「預かっておいてほしい」と頼まれたものや会社から貸与されている物品について、あたかも本来の持ち主であるかのように自分のものにしたり、売却したりといった行為が横領の一般的な形態です。財物のかたちは限定されていないので、お金はもちろん、貴金属や車なども対象になります。

    このような行為は一般に「着服」と表現されることも多いです。「横領」は裁判の判決文などでも用いられる法律用語であるのに対して、「着服」は日常的な会話やニュースなどの報道で用いられる一般用語でといえます。とはいえ、刑事裁判で検察官が読み上げる起訴状の記載などでも「売上金を着服した」といった表現が使われたり、ニュースなどで「横領の疑いがもたれている」と報じられたりもするので、厳密な違いはありません。

  2. (2)横領と「背任」の違い

    横領と近い行為に「背任」が存在します。

    背任とは刑法第247条に規定されている犯罪で、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、または本人に損害を与える目的で、その任務に背く行為をして、本人に財産上の損害を与えることをいいます。

    このような目的のことを法律用語で「図利加害(とりかがい)」と呼び、任務に背く行為を「任務違背(にんむいはい)」と呼びます。

    どちらも「相手の信用を裏切る」という点で共通していますが、横領は「財物を勝手に処分する行為」を指し、背任は「委託された任務に背いて自分の利益を図ったり本人に損害を与える行為」を意味する点で区別されます。たとえば、取引先からの便宜を受ける目的で、会社が決めた卸売価格よりもずっと安い金額で取引先に販売したといったケースは背任です

  3. (3)横領と「窃盗」の違い

    刑法第235条の「窃盗」も横領と近い存在とされる犯罪のひとつです。窃盗は、他人が財物に対してもつ支配・管理の権限を排除して、自分のものにしてしまう行為を指します。
    この権利を「占有」といいますが、占有をどのように侵害したのかが横領と窃盗を区別する大きなポイントとなります。

    横領は自己が占有する他人の財物に向けられた行為であるため、すでに委託によって占有が認められている状態です。一方で、窃盗では他人の占有下にある財物を勝手に自分のものにしており、占有の侵害が起きているという点に違いがあります

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2、横領罪(252条1項)

刑法において規定されている横領には3つの種類があります。その基本形となるのが「横領罪」です。

  1. (1)横領罪とは

    自己の占有する他人のものを横領した場合に成立するほか、自己のものであっても公務所から保管を命ぜられた場合においてこれを横領した場合にも成立します(252条2項)。たとえ自分のものでも、裁判所から差し押さえを受けて勝手に処分してはならないと命令されているものを廃棄・売却などすれば横領罪に問われます。

  2. (2)横領罪の法定刑

    横領罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。罰金の規定はないので、有罪となった場合は必ず懲役が言い渡されます。

    なお、犯罪の終了から一定期間が経過しても検察官が起訴しなかった場合は刑事裁判を開くことができない「公訴時効」という制度が存在します。横領罪の公訴時効は5年です。つまり、横領行為があった日から5年が経過すれば、罪を問われることはありません。

  3. (3)横領罪で逮捕・起訴されやすいケース

    横領罪にあたる行為があったからといって、必ず逮捕・起訴されるわけではありません。被害の程度が軽微であったり、すでに被害者への謝罪・弁済が尽くされていたりするケースでは、逮捕・起訴されない可能性があります。

    一方で、ここに挙げるようなケースでは、逮捕・起訴されるおそれが高まります

    • 被害額が甚大で、弁済による被害回復ができない場合
    • 被害者が示談交渉を拒み、警察への被害届の提出や刑事告訴を行った場合
    • 動機が悪質で、犯行の手口も巧妙であり、常習的な横領であると疑われた場合


    また、これらのケースに該当しなくても、警察からの出頭要請に応じない、出頭期日に出頭せず行方をくらませているといった場合は、逮捕の要件である「逃亡・証拠隠滅を図るおそれ」を満たすため、逮捕される危険が高まります。

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3、業務上横領罪(253条)

ニュースなどで横領事件が報じられるケースとしても代表的なものが「業務上横領罪」です。

  1. (1)業務上横領罪とは

    業務上横領罪は、刑法第253条に規定されています。「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」に適用されます。

    ここでいう「業務」とは、人が社会生活上の地位にもとづいて反復・継続しておこなう事務と定義されています。会社の仕事などはもちろんこれに含まれますが、営利・非営利を問わないため、たとえばボランティア活動や自治会などの会計事務なども業務に含まれると考えるのが妥当です。

    なお、業務上横領罪と成立が争われる犯罪のひとつに刑法第246条の「詐欺罪」があります。たとえば、銀行員が顧客の預金を着服したケースでは、犯行の態様によって、業務上横領罪が適用されるケースと、詐欺罪が適用されるケースに区別されます。

    行為者が顧客から預かった預金をそのまま懐に入れれば業務上横領罪となるのは当然です。一方で、顧客からの依頼があったと装って窓口係員を欺罔(ぎもう)し、不正に預金を引き出したといったケースは詐欺罪となります。

  2. (2)業務上横領罪の法定刑

    業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。「業務」のうえで託された信頼を裏切っているという点に強い任務違背が認められるため、横領罪と比較すると、法定刑の上限が2倍に加重されています。

    公訴時効は7年です。横領行為から7年が経過すれば罪に問われることはありませんが、社内の監査や帳簿整理などで不正が見抜かれてしまうおそれが高く、時効成立まで発覚を免れるのは困難でしょう。

  3. (3)業務上横領罪で逮捕・起訴されやすいケース

    業務上横領罪は、ほかの横領罪と比べると逮捕・起訴されやすい傾向があります。ここで挙げるようなケースでは、逮捕・起訴の危険が高いと考えるべきです

    • 会社側から全額弁済を求められているが、横領額が多額であり弁済不能である
    • 公務員による業務上横領であり、被害を受けた官公庁に告訴・告発義務が課せられている
    • 大企業における業務上横領で、コンプライアンス規定によって刑事告訴・被害届をすることが定められている
    • 役職・経理担当者などによる犯行である
    • 長年にわたって業務上横領を繰り返していた
    • 郵便切手の管理者が使用済みと偽って換金するなど、計画性・悪質性が高い犯行である
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4、遺失物等横領罪(254条)

横領罪の3つの類型のうち、日常生活においてもっとも身近なものが「遺失物等横領罪」ではないでしょうか。

  1. (1)遺失物等横領罪とは

    遺失物等横領罪は刑法第254条に規定されています。「遺失物、漂流物、その他占有を離れた他人の物を横領した者」が処罰の対象です。「占有を離れた他人の物」という点に注目して「占有離脱物横領罪」とも呼ばれます。

    落とし物を拾ったにもかかわらず警察に届け出をせずに自分のものにする、いわゆる「ねこばば」と呼ばれる行為が典型例でしょう。

  2. (2)遺失物等横領罪の刑法定

    遺失物等横領罪の法定刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」です。科料とは1000円以上1万円未満の金銭徴収を指します。横領罪・業務上横領罪と比較すると、法定刑は格段に軽いといえるでしょう。

    これは、対象となっている財物がすでに本来の占有者の支配下から離れており、占有を侵害したとはいえないためです。法定刑が軽いため、公訴時効も3年と比較的短くなっています。

  3. (3)遺失物等横領罪で逮捕・起訴されやすいケース

    遺失物等横領罪が適用されるのは、次のようなケースです。

    • どこかで盗まれた自転車が駅の駐輪場に放置されており、その放置自転車を自分のものにして乗り回していた
    • 路上に落ちていた財布を拾ったが、拾得物として届け出をせずに自分のものにした
    • 買い物の際にレジ係員が誤って多めにお釣りを手渡してしまい、その場を離れたあとで「お釣りが多い」と気づいたが申告せず自分のものにした(手渡された時に気づいていた場合は詐欺罪に当たる可能性が高いです)


    遺失物等横領罪は数ある犯罪のなかでも軽微なものとして扱われているため、逮捕・起訴される事例は多くありません。ただし、たとえ軽微な犯罪でも、逃亡・証拠隠滅を図るおそれがあると判断されれば逮捕され、悪質だと評価されれば起訴されて罪を問われる事態は避けられないでしょう。

    • 容疑をかけられて出頭要請を受けたが無視した
    • 定まった住居をもたない「住居不定」の状態である
    • 放置自転車に乗っていて警察官による職務質問を受けた際に、怖くなって逃げた


    このようなケースでは、任意の取り調べが難しいと判断されやすくなるため、逮捕される危険が高いでしょう。

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5、横領してしまったらまずは弁護士へ相談を

横領にあたる行為をはたらいてしまった場合は、逮捕や厳しい刑罰を受ける危険があります。大きな不利益を受けるおそれもあるため、まずは弁護士に相談しましょう

  1. (1)横領が成立するのかを正確に判断できる

    弁護士に相談し、トラブルの内容を詳しく説明すれば、自身の行為が横領罪に問われるのかどうかを正確に判断できます。

    横領罪の成立は避けられず、刑事責任の追及は免れられない状況なら、直ちに示談交渉などの対策に乗り出すなど、アクションを起こす必要があります。反対に横領罪が成立しない可能性がある場合でも、相手方への合理的な主張や捜査機関への説明など、疑いを晴らすための対策を講じなくてはなりません。

    今後の対応方針を決めるにあたって、弁護士の判断が重要な道しるべとなるでしょう

  2. (2)懲戒解雇などの不利益処分を回避できる可能性がある

    横領容疑で警察に逮捕されると、逮捕から勾留が決定するまで、最長で72時間にわたる身柄拘束を受けます。検察官からの請求を裁判官が認めて勾留が決定してしまうと、その後さらに最大20日間にわたって身柄を拘束されてしまう危険があるので、できる限り社会生活への影響を抑えたいなら、逮捕から3日以内に「勾留の回避」を目指した対策を尽くさなくてはなりません。

    勾留を回避するには、裁判官が勾留を決定するまでに被害者との示談を成立させて、刑事告訴・被害届を取り下げてもらうのが最善策です。万が一、拘留されてしまっても、示談の成立は、被害が回復されたこと、被害者が謝罪を受け入れ処罰感情が軽減されたこと、等を示す効果があり、検察官にとって終局処分を考える上で大きな考慮要素となります。検察官が不起訴処分とすれば直ちに釈放されることとなるため、身柄拘束の期間を最小限に抑えられ、懲戒解雇などの不利益処分を回避できる可能性も高まるでしょう。

    また、事実ではないのに業務上横領の疑いをかけられてしまった場合は、不当解雇を受ける危険もあります。弁護士が会社側と交渉しながら不当解雇がないかを監視することで、大きな不利益を被る事態も回避できるでしょう

  3. (3)有利な証拠の収集・提出が期待できる

    横領額が多額で弁償による解決が不可能、被害者などが告訴・告発義務を負うといったケースでは、事件化を避けるのは困難です。検察官が起訴に踏み切るおそれも高く、穏便なかたちでの解決は難しいでしょう。

    ただし、刑事裁判ではさまざまな事情が考慮されたうえで実際の量刑が言い渡されます。被告人にとって有利となる事情があれば執行猶予つき判決も期待できるので、弁護士に相談し、証拠の収集や検察官・裁判官への提出を依頼しましょう

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6、まとめ

横領罪には、その態様や行為者の立場などに応じて横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪の3つの種類があります。それぞれ法定刑が異なるため、自身がどの罪に問われるのかは重大な問題です。

横領事件の加害者が逮捕による身柄拘束を避けるためには、弁護士のサポートが欠かせません。不当な解雇などの不利益を避けるためにも、弁護士の助けは必須です。

横領の疑いをかけられてしまった場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務にご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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