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強盗傷人と強盗致傷の違いとは? 刑罰や執行猶予はどうなる?
昨今、SNSなどでメンバーを集める「闇バイト」の存在を背景とした悪質な強盗事件が多発しています。強盗事件を起こせば、被害者や目撃者によって身柄を確保されるケースもあります。逮捕・起訴されれば、重い刑罰を言い渡される可能性もあるため、お金欲しさに安易な考えで犯罪に加担してしまえば後悔することになるでしょう。
強盗は刑法に定められている犯罪行為ですが、実際に事件が発生したことや被疑者の逮捕を告げるニュースをみると「強盗致傷の疑い」や「強盗傷人事件」といった用語が登場します。どちらも強盗行為だけでなく人を傷つける行為があったように聞こえますが「強盗致傷罪」と「強盗傷人罪」にはどのような違いがあるのでしょうか?
本コラムでは「強盗致傷罪」と「強盗傷人罪」の違いや罪の重さ、強盗事件にかかわってしまったときの解決策などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、「強盗致傷罪」と「強盗傷人罪」の違い
まずは「強盗致傷罪」と「強盗傷人罪」の違いを確認していきます。
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(1)適用される刑法の条文は同じ
強盗致傷罪と強盗傷人罪は、いずれも刑法第240条前段を根拠とする犯罪です。
刑法第240条前段は「強盗が、人を負傷させたとき」は罰すると定めています。
つまり、強盗致傷罪と強盗傷人罪は、いずれも「強盗」が「人を負傷させた」という結果を生じさせた犯罪です。
なお「強盗」とは、刑法第236条に定められている犯罪で、「暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取した者」を処罰の対象にしています。
暴力や脅しを用いて金品などを奪うことで成立する犯罪ですが、判例では「軽微な傷でも人の健康状態に不良の変更を加えた場合は傷害にあたる」と示しています。
強盗の際に殴る・蹴るなどの暴力を加えた場合は、強盗致傷罪・強盗傷人罪に問われる可能性が高いと心得ておく必要があります。 -
(2)強盗致傷罪とは?
強盗致傷罪とは、強盗を犯した者がその機会に「人を負傷させてしまった」時に成立します。
ここであえて「負傷させてしまった」と表現したのは、強盗致傷罪が成立するのが、傷害の部分に故意がなかったときに限られるからです。
たとえば、強盗をはたらいて逃げようとしたところ被害者が立ちはだかったので逃げるために被害者を押し倒して負傷させた、といったケースでは強盗致傷罪に問われます。 -
(3)強盗傷人罪とは?
強盗傷人罪は、強盗がその機会に「人を負傷させた」時に成立します。
強盗致傷罪との違いは、積極的に傷害を加えたときに成立するという点です。
たとえば、通行人にいきなり殴りかかって負傷させたうえで金品を奪い取ったり、最初から攻撃して身動きを取れなくすることを計画し事前に用意した凶器を使って相手を負傷させたりした場合は、強盗傷人罪となります。
2、強盗致傷罪と強盗傷人罪、罪が重いのはどちらか?
強盗致傷罪と強盗傷人罪の違いをみると、積極的に相手を負傷させているのは強盗傷人罪なので、強盗傷人罪のほうが、罪が重くなるように思えるでしょう。
刑法の定めから、罪が重いはどちらなのかを確認していきます。
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(1)両罪の法定刑は同じ
前述のとおり、強盗致傷罪と強盗傷人罪は、どちらも刑法第240条前段に定められています。
刑法第240条前段の法定刑は「無期または6年以上の懲役」であり、同じ罰条を根拠としているので、どちらが適用されても法律が定める罪の重さは変わりません。
無期懲役とは期間の定めを設けずに刑務所に収容されて、刑務作業という強制労働を強いられる刑罰です。6年以上の懲役とは、最短でも6年、最長では20年の期間を定めて懲役に処される刑罰です。
いずれにしても長期にわたって社会から隔離される事態は避けられない重罪だといえるでしょう。 -
(2)強盗傷人罪のほうが悪質だと判断されやすい
強盗致傷罪と強盗傷人罪の法定刑はどちらも同じですが、この点は「法律が定める刑罰の種類や範囲が同じ」という意味だと理解してください。
つまり、どちらが適用されても同じ程度の刑罰を科せられるわけではありません。
日本の司法制度では、あらかじめ法律で定められている刑罰の種類や範囲にある程度の幅がもたせられており、裁判所にその選択や裁量の余地が与えられています。
強盗致傷罪と強盗傷人罪とでは、傷害をはたらく際の犯意の程度という点で悪質性に差があるため、刑罰の範囲が同じでも、強盗傷人罪のほうが厳しい判断を受けやすくなるでしょう。
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3、強盗致傷罪や強盗傷人罪で執行猶予は期待できる?
強盗致傷罪と強盗傷人罪は、いずれも厳しい刑罰が定められている犯罪ですが、懲役に執行猶予がつく可能性はあるのでしょうか?
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(1)執行猶予とは?
刑法には「執行猶予」という制度が設けられています。
3年以下の懲役・禁錮、50万円以下の罰金の言い渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部または一部の執行を猶予できる制度です。
通常、刑が確定すると直ちに刑罰が執行されますが、判決に執行猶予が付されるとその執行は一定期間にわたって猶予されます。
執行猶予が付されるのは主に懲役・禁錮ですが、刑務所に収容されず、社会生活を送りながら更生を目指すことが許されるという点は、罪を犯してしまった人にとって大きな利益となる制度です。 -
(2)執行猶予がつく条件と強盗致傷罪・強盗傷人罪の関係
執行猶予が付されるには、過去に禁錮以上の刑罰を受けた経歴がない、過去に禁錮以上の刑を受けたことがあっても刑期を終えて出所したり執行猶予の期間を満了したりして5年以内に禁錮以上の刑を受けていない、などの条件を満たす必要があります。
さらに重要な条件が「3年以下の懲役・禁錮」という条件です。
強盗致傷罪・強盗傷人罪の法定刑は「無期・6年以上の懲役」なので、最短でも6年の懲役が科せられます。つまり、強盗致傷罪・強盗傷人罪は、法律の定めに照らすと3年を超える懲役が科せられるので執行猶予の対象にはならず、有罪判決が言い渡されれば刑務所への収容は免れられないのが原則です。酌量減軽などによって、懲役3年にまで下げることにより、ぎりぎり初めて、執行猶予がつけられるようになります。
4、強盗致傷罪・強盗傷人罪で処分を軽減することはできる?
強盗致傷罪・強盗傷人罪は、そもそも強盗罪がほかの犯罪と比べると悪質だと評価されるうえに、さらにその機会に被害者を負傷させたという点で厳しい処分は免れられない犯罪です。両罪は原則として執行猶予の対象外ですが、弁護士にサポートを依頼すれば処分の軽減が期待できます。処分が軽減されれば、執行猶予がつく可能性も考えられます。
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(1)被害者との示談成立による不起訴や減軽が期待できる
刑事事件を起こしてしまっても、必ず厳しい刑罰を科せられるわけではありません。
日本の法律では、刑事裁判を経て有罪判決を受けない限り刑罰は科せられないのが大原則です。つまり、検察官による起訴を防ぎ、刑事裁判が開かれなければ、刑罰を回避できる可能性があります。
検察官の不起訴を得るもっとも有効な手段は、被害者との示談です。
加害者が被害者に対して真摯(しんし)に謝罪し、弁済を尽くすことで、被害者から許しを得て被害届や刑事告訴の取り下げが実現できれば、不起訴の可能性は大いに高まります。
ただし、強盗に遭ったうえで負傷させられている被害者の怒りは強く、示談交渉を申し入れても相手にしてもらえないかもしれません。またそもそも被害者の連絡先を知らなければ、示談交渉を進めることはできません。加害者やその家族による直接交渉は難しいので、公正な第三者である弁護士が代理人として交渉を進めるほうが安全でしょう。また弁護士であれば、捜査機関を通じて被害者の連絡先を入手できる可能性があるため、示談交渉を進められる可能性が高まります。 -
(2)「減軽」による執行猶予が期待できる
強盗致傷罪・強盗傷人罪に問われると、原則として執行猶予を受けられませんが、刑事裁判において「減軽」が認められた場合は執行猶予の可能性が生じます。
「減軽」とは、刑法第66条に規定されている制度で、犯罪の情状に酌量すべきものがあるときに法定刑を減じたうえで刑罰を科す制度です。
有期懲役を減軽する場合は、その上限・下限が2分の1に減じられます。強盗致傷罪・強盗傷人罪の法定刑は無期・6年以上の懲役です。
すると、有期懲役が選択されて減軽を受けられれば、もっとも軽い場合の刑罰は3年の懲役となり、執行猶予の対象に含まれます。
ただし、減軽を適用するかどうかは裁判官の裁量に委ねられています。
加害者自身の深い反省だけでなく、犯行の内容、被害者への謝罪や弁済を含めた事件後の対応、再犯防止対策の内容など、被告人にとって有利な事情を集めて裁判官に示さなければ、減軽は得られません。
法的な知識だけでなく、刑事裁判の弁護経験も問われる対応になるので、実績豊富な弁護士のサポートは必須です。 -
(3)致傷や傷人を外すことができる
執行猶予が困難になるのは、結局、強盗致傷・強盗傷人の法定刑が重いからです。ただ、逮捕時点では致傷・傷人の事案であっても、全ての事件が致傷・傷人として起訴されているわけではありません。事案を分析し、検察官とやり取りし、起訴内容を強盗に変えることができれば、それだけでも刑務所に行かない可能性は広がってきます。
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5、まとめ
強盗致傷罪・強盗傷人罪は、どちらも非常に厳しい刑罰が定められている犯罪です。
原則として執行猶予の対象外であり、有罪判決を受ければ刑務所への収容を免れるのは難しくなりますが、早い段階で弁護士にサポートを求めれば、適切な弁護活動によって、検察官の不起訴や減軽による執行猶予つきの判決が得られるかもしれません。
刑事事件の解決はスピードが大切です。強盗事件の発生を認知した警察は徹底した捜査を尽くすので、驚くほど早く被疑者として特定され、逮捕される可能性があります。
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