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万引きで逮捕! 余罪があると罪は重くなる? 余罪はなぜ発覚する?
日本でもっとも多く発生している犯罪は「窃盗」です。
令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に全国の警察が認知した刑法犯事件は56万8104件でした。そのうち窃盗事件が38万1769件で全体の67.2%を占めました。手口別にみると「万引き」は8万6237件で、手口分類のうえでは自転車盗に次いで2番目に多い数字となっています。
一方で、手口別の検挙率をみると万引きが39.4%を占めており、ほかの手口と比較しても圧倒的に多いという結果になりました。つまり、万引きは「検挙されやすい犯罪」だといえます。
万引きは軽い犯罪だというイメージが強いかもしれませんが、一度でも成功してしまえば何度も繰り返してしまう傾向が強く、癖になってしまうとなかなかやめられません。警察に逮捕されてしまえば、ほかの「余罪」も含めて厳しく追及されることになるでしょう。
本コラムでは、万引きの被疑で逮捕された場合に余罪があると罪が重たくなるのか、なぜ余罪が発覚するのかなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、「万引き」とは? 問われる罪と刑罰
まずは「万引き」がどのような犯罪なのか、法律上はどのような罪にあたり、どの程度の刑罰が科せられるのかを確認していきます。
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(1)万引きとは?
万引きとは、スーパーやコンビニなどの小売店で陳列されている商品を盗む犯罪です。
商品を「間引く」という意味が変化して「万引き」と呼ばれるようになったというのが通説で、江戸時代の末期ころにはすでに使われていたといわれています。
商品を盗む手口を指すので、たとえば店に掲示されているポスターや非売品のディスプレーなどを盗む行為は万引きとは呼びません。もっとも、これらの行為なら罪にならないわけではなく、万引きではない別の手口に分類されます。 -
(2)万引きは「窃盗罪」にあたる
刑法をはじめ、どの法律をみても「万引き」という罪名は存在しません。
万引きは、刑法第235条の「窃盗罪」にあたります。
窃盗罪は、「他人の財物を窃取した者」を罰する犯罪です。
小売店で陳列されている商品は「店の物」であるため、「他人の財物」となります。そのためこれを、代金を支払わずに持ち帰れば「窃取」になるので、窃盗罪に問われます。 -
(3)窃盗罪の法定刑
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
そもそも窃盗罪は「お金がないので盗む」という性質が強かったため、罰金の規定は存在しませんでした。
しかし、代金を支払うだけの余裕があるのにスリルを求めて盗む事例や、認知能力の低下による万引きが増加したなどの問題を受けて、平成18年の改正で罰金が新設されたという経緯があります。
2、万引きの「余罪」とは? なぜ余罪がバレてしまうのか?
ニュースなど、犯罪の被疑者が逮捕されたという報道では「余罪も含めて捜査を進める方針」といった表現を耳にすることが多くあります。
ここでは、万引き事件における「余罪」とはどのような意味なのか、そもそもなぜ余罪がバレてしまうのかを考えていきましょう。
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(1)万引き事件における「余罪」の意味
余罪とは、まだ警察などの捜査機関に発覚していない犯罪を指します。
万引き事件でいえば、すでに発覚している犯行だけでなく、ほかの日に同じ店で犯した万引きや、別の店で犯した万引きが余罪になると考えておけばよいでしょう。 -
(2)余罪がバレる理由の多くは「自白」
余罪がバレてしまう最大の理由は、被疑者自らの「自白」です。
本題になっている事件の取り調べを通じて、過去の万引きや別の店における万引きを自ら白状することで、警察が裏付け捜査を進めて立件に至るのが一般的な流れとなります。
このように説明すると「言わなければバレない」と考える人がいるかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。 -
(3)自白のほかに余罪がバレる理由
自白せず隠し通そうとしても、余罪が発覚してしまうケースもあります。
たとえば、すでに別の店から被害届が提出されており、目撃状況や防犯カメラの映像、指紋などの鑑識資料などから被疑者として特定されたといった状況なら、自白しなくても余罪が立件されるかもしれません。
また盗んだ商品がマンガ・ゲームソフト・カメラなどの電子機器・小型の家電商品などのように中古品の流通が盛んな物なら、古物商の台帳やフリマアプリなどの販売履歴をたどって発覚する流れも考えられるでしょう。
3、万引きで逮捕された! 余罪がある場合の刑事手続きの流れ
万引きの疑いで逮捕された場合、その後はどうなってしまうのでしょうか?
余罪がある場合も含めて、刑事手続きの流れを確認していきます。
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(1)逮捕本件を理由とした最大23日間の身柄拘束を受ける
万引きの疑いで逮捕されると、直ちに警察署へと連行されて48時間以内の身柄拘束を受けます。
さらに検察官へと送致されて24時間以内の身柄拘束を受けますが、ここで検察官が勾留を請求し裁判官が許可すると10日間の勾留による身柄拘束へと移行します。
10日間では捜査が遂げられなかった場合、一度に限り10日間以内の延長が可能なので、勾留期間は最短で10日間、最長で20日間です。
逮捕・勾留を合計すると、48時間+24時間+20日間=最大23日間となり、長期にわたって社会から隔離された状態が続きます。 -
(2)余罪分で再逮捕される可能性がある
余罪が発覚した場合は、最初の逮捕による勾留が満期を迎えるまでに「再逮捕」される可能性があります。
再逮捕とは、ひとつ目の事件による身柄拘束に引き続いて、ふたつ目以降の事件を理由に逮捕する手続きです。「ひとつの被疑について何度も逮捕される」という意味ではありません。
再逮捕されると、再び逮捕・勾留による刑事手続きが最初から始まります。
ひとつの事件では最大23日間の身柄拘束を受けるので、再逮捕されれば23日間×2回=最大46日間の身柄拘束を受けるおそれがあります。しかも、余罪分による再逮捕の回数には制限がないので、法的には余罪の数だけ再逮捕を繰り返すことも可能です。
ただし、実際には複数の余罪があってもまとめて取り調べなどの捜査が進められるケースが多いので、余罪が複数でも再逮捕が繰り返される可能性は低いでしょう。 -
(3)余罪も含めて有罪になると刑罰が加重される
勾留が満期を迎えるまでに、検察官が起訴・不起訴を決定します。
起訴されれば刑事裁判へと移行しますが、不起訴なら刑事裁判が開かれないので刑罰を受けることはありません。
余罪がある場合に大きなポイントとなるのは、「余罪も含めて起訴されるかどうか」です。
余罪も含めて起訴されると複数の事件が「併合罪」の関係となり、余罪分も有罪判決を受けた場合には刑の上限・下限がそれぞれ加重されます。
懲役は1.5倍に、罰金はそれぞれの合計額に加重されるので、万引きで余罪も含めて有罪判決を受けた場合の刑罰の上限は、15年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
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4、余罪がある万引き事件を穏便に解決するために弁護士ができること
万引きが発覚し余罪も含めて厳しく追及されている、あるいは万引きを繰り返しており余罪も含めて処分を受けるかもしれないと不安を感じているなら、弁護士への相談を急いでください。
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(1)余罪も含めて自白すべきかどうかのアドバイスが得られる
万引きを繰り返していた場合、警察に余罪も含めて正直に自白すべきかどうかという点が非常に難しい問題になります。
白状しなければ発覚する可能性がなかった余罪まで自白によって立件され、刑が加重されてしまう事態はできれば避けたいと考えるでしょう。
そもそも、目撃の証言や防犯カメラなどに頼るところが大きい万引き事件において、発覚していない余罪分を白状しても、すでに時間がたっていれば証拠が失われており警察が裏付けを取ることができず立件できないかもしれません。
一方で、たとえ被疑者が特定できていなくても商品管理システムなどの情報から万引き被害の疑いがあれば被害届を提出するといった対応をとる店舗もあり得ます。すでに警察が把握しており所要の捜査が終了している事件なら、すすんで自白したほうが、手続きが簡潔に済む可能性も否定できません。
余罪を自白すべきかどうかを個人がひとりで判断するのは困難です。
どのような余罪があるのかを含めて、刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士に相談してアドバイスを受けたほうがよいでしょう。 -
(2)処分の軽減に向けた弁護活動が期待できる
たとえ余罪があったとしても、必ず刑が加重されるわけではありません。
問題になっている本件を含め、余罪分も被害者との示談を成立させれば、検察官が不起訴の判断を下す可能性も高まります。不起訴になれば刑事裁判が開かれないので刑罰を受けず、身柄拘束の必要もなくなるので、早期釈放も実現しやすくなるでしょう。
起訴が避けられない状況でも、被害者に対して謝罪し、弁済を尽くしたという事実は高く評価されます。執行猶予や罰金といった処分を受ける可能性を高めたいなら、被害者との示談交渉は必須です。
とはいえ、示談交渉を進めるにあたり、万引きの加害者やその家族などの関係者からの連絡では、強く警戒されたり、相手にしてもらえなかったりする展開も考えられます。
または「この件もあなたの犯行だろう?」などと別の犯人による万引き被害まで疑われてしまい、不利な立場であるため反論もできず、無用な負担が増えてしまうかもしれません。
このような事情を考えると、被害者との示談交渉は、弁護士を代理人として進めたほうが安全です。 -
(3)抜本的な解決を考えられる
万引きをしてしまう人は、普段の日常生活における職場や育児などで強いストレスを受けていることも多いです。弁護士が仲介して、普段の生活との上手な折り合い方を見つけて行くことも、再犯防止という観点から軽視できません。そのような努力も、時には評価されることがあります。
5、まとめ
「万引き」は刑法の窃盗罪にあたる行為です。これまでに何度も万引きを繰り返しており「余罪」がある場合は、厳しい追及を受けることになるでしょう。
とはいえ、余罪があるからといって必ず刑罰が重くなるわけではありません。捜査のきっかけになった本件だけでなく、余罪分も含めて被害者との示談交渉を進めれば、処分の軽減を実現できる可能性が高まります。
余罪の有無にかかわらず、万引き事件を穏便に解決したいと望むなら、刑事事件の解決実績を豊富にもつベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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