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強盗罪の量刑は? 家族にできることや執行猶予について弁護士が解説
被害者に対して暴行や脅迫を加えて金品を奪うと、強盗罪に問われる可能性があります。強盗罪は非常に重い犯罪で、初犯でも執行猶予が付かない可能性が十分にあります。
家族が強盗罪で逮捕されてしまったら、刑事弁護について速やかに弁護士へ相談しましょう。
本記事では、強盗罪の量刑や執行猶予が付く可能性、強盗罪で逮捕された後の流れなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、強盗罪の種類|犯行内容によって罪名が異なる
刑法では、強盗に当たるものとして、「強盗罪」以外にもさまざまな種類の犯罪が定められています。犯行の具体的な内容によって、適用される罪名や法定刑が異なります。
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(1)強盗罪
暴行または脅迫という手段を使って、他人の財産や物などを強取した者には「強盗罪」が成立し、5年以上の有期懲役を科されます(刑法第236条第1項)。ただし、2025年6月以降は懲役に代わって拘禁刑が科されます。拘禁刑とは、受刑者が改善更生を図る作業や指導を受ける刑罰のことです。なお、強盗を実行したものの、財物を強取しなかった未遂犯も罰せられます(刑法第243条)。
強盗罪における暴行・脅迫は、被害者が肉体的、もしくは精神的に抵抗できない状態にする程度(反抗抑圧するに足りる程度)のものであると解されています。反抗抑圧に足りる程度の暴行・脅迫が行われたかどうかは、被害者側および行為者側の事情、そして行為の状況などを総合的に考慮して判断されます。
なお、被害者の反抗を抑圧するほどではなかった暴行・脅迫は「恐喝」に当たり、他人を恐喝して財物を交付させた場合は「恐喝罪」が成立します(刑法第249条第1項)。恐喝罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。強盗罪と同じく、2025年6月以降は懲役に代わって拘禁刑が科されます。 -
(2)事後強盗罪
窃盗罪の犯人が、以下のいずれかの目的のために、暴行または脅迫をしたときは「事後強盗罪」に問われます(刑法第238条)。
- 財物を取り返されることを防ぐ
- 逮捕を免れる
- 罪を犯した証拠を隠滅する
事後強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役で、2025年6月以降は懲役に代わり拘禁刑で罰せられます。未遂犯も罰せられます(刑法第243条)。
事後強盗罪における暴行・脅迫も、強盗罪と同様に、被害者が肉体的、精神的に抵抗できない程度のものであることが必要と解されています。
なお、事後強盗罪における暴行・脅迫は、窃盗の犯行現場または窃盗の機会の継続中に行われることが必要です。窃盗が終わった後で暴行・脅迫をした場合は、窃盗罪(刑法第235条)と暴行・脅迫の罪(暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪など)が別々に成立します。 -
(3)昏睡(こんすい)強盗罪
人を昏睡(こんすい)させてその財物を盗取した場合には、「昏睡強盗罪」に問われます(刑法第239条)。昏睡強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役で、2025年6月以降は懲役刑に代わり拘禁刑となります。未遂犯も罰せられます(刑法第243条)。
「昏睡」とは、薬物などによって意識障害が生じている状態です。意識を完全に失っている必要はありません。
昏睡強盗罪が成立するのは、犯人が自ら被害者を昏睡させた場合に限られています。昏睡状態に乗じて財物を盗んだにすぎない場合は、窃盗罪が成立するにとどまります。 -
(4)強盗致死傷罪
強盗罪・事後強盗罪・昏睡強盗罪またはこれらの未遂罪の犯人が、強盗の機会に人を負傷させた場合は「強盗致傷罪」、死亡させた場合は「強盗致死罪」に問われます。強盗致傷罪の法定刑は「無期または6年以上の懲役」、強盗致死罪の法定刑は「死刑または無期懲役」です。(刑法第240条)懲役刑については、2025年6月以降は拘禁刑となります。
なお、傷害の故意がある場合は「強盗傷人罪」、殺人の故意がある場合は「強盗殺人罪」と呼ばれることもありますが、強盗の機会に 人を死傷させた場合と法定刑は同じです。
財物を奪われた被害者以外の者を死傷させた場合でも、その死傷が強盗の機会に生じた場合には強盗致死傷罪が成立します。また、強盗が終わったあとに人を死傷させた場合は、強盗罪・事後強盗罪・昏睡強盗罪と殺人・傷害の罪(殺人罪、傷害罪、傷害致死罪など)が別々に成立します。 -
(5)強盗・不同意性交等及び同致死罪
強盗罪・事後強盗罪・昏睡強盗罪またはこれらの未遂罪を犯し、さらに強盗の現場または強盗の機会において不同意性交等罪またはその未遂罪を犯した場合は、「強盗・不同意性交等罪」が成立します(刑法第241条第1項)。
強盗・不同意性交等罪の法定刑は「無期または7年以上の懲役」です。2025年6月以降は、懲役刑に代わり拘禁刑が科されます。なお、強盗と不同意性交等の両方が未遂である場合は、刑の減軽が認められています(同条第2項)
また、強盗・不同意性交等罪に当たる行為で、人を死なせたときは「強盗・不同意性交等致死罪」が成立します(同条第3項)。強盗・不同意性交等致死罪の法定刑は「死刑または無期懲役」です。2025年6月以降は、「死刑または無期拘禁刑」です。未遂犯も処罰されます(刑法第243条)。 -
(6)強盗予備罪
強盗罪・事後強盗罪・昏睡強盗罪を犯す目的で、その予備をした場合は「強盗予備罪」が成立します(刑法第237条)。強盗予備罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。2025年6月以降は懲役刑に代わり拘禁刑となります。
「予備」とは、犯行の準備を行うことです。犯罪に着手していない段階では予備にとどまり、犯罪行為に着手すると、結果の成否に応じて既遂または未遂となります。
2、強盗罪に対して執行猶予は付く?
過去5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者については、3年以下の懲役・禁錮(2025年6月以降は拘禁)または50万円以下の罰金を言い渡す場合に限り、刑の執行を猶予できるものとされています(刑法第25条第1項)。
しかし強盗の罪については、強盗予備罪を除いて法定刑の下限が5年以上の懲役とされています。以下の事由などによって懲役刑が3年以下に減軽されない限り、執行猶予は付されません。
- 心神耗弱(刑法第39条第2項)
- 自首(刑法第42条第1項)
- 未遂、中止(刑法第43条)
- 従犯(ほう助犯、刑法第63条)
- 酌量減刑(刑法第66条)
犯罪白書によると、令和4年度の地方裁判所における強盗に対する科刑状況は、下表のとおりとなっています。
強盗罪 | 強盗致死傷罪および強盗・強制性交等罪 | |
---|---|---|
無期懲役 | - | 10件 |
懲役25年を超え30年以下 | - | 6件 |
懲役20年を超え25年以下 | - | 2件 |
懲役15年を超え20年以下 | 1件 | 2件 |
懲役10年を超え15年以下 | - | 23件 |
懲役7年を超え10年以下 | 11件 | 30件 |
懲役5年を超え7年以下 | 16件 | 42件 |
懲役3年を超え5年以下 | 50件 | 24件 |
懲役2年以上3年以下 | 実刑:35件 全部執行猶予:71件 |
実刑:4件 全部執行猶予:15件 |
懲役1年以上2年未満 | 実刑:2件 ※執行猶予は0件 |
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総数 | 186件 | 158件 |
※強盗・強制性交等罪は、令和5年7月13日に施行された改正刑法により、強盗・不同意性交等罪に変更されました。
出典:「令和5年版 犯罪白書資料 2-3 地方裁判所における死刑・懲役・禁錮の科刑状況(罪名別)」(法務省)
通常の強盗罪では、執行猶予が付いたのは186件中71件です。強盗致死傷罪または強盗・強制性交等罪(現:強盗・不同意性交等罪)で有罪になると、執行猶予が付いたのは158件中15件に過ぎません。
このような科刑状況を見ると、強盗罪については初犯でも執行猶予がつきにくいのは間違いないです。一方で、法定刑より低い刑になる可能性はそれなりにあるともわかります。特に酌量減軽は多くの事案で適用されているため、諦めるべきではありません。
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、強盗罪で逮捕された後の流れ
強盗罪で逮捕された場合、刑事手続きは以下の流れで進行します。なお、逮捕は住所不定、逃亡や証拠隠滅などのおそれがある場合に、警察などが被疑者を拘束することを指します。そのため、逮捕されずに捜査が進む場合もあります。
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(1)逮捕~起訴前勾留|身柄を拘束されて取り調べを受ける
強盗罪により逮捕された後は、逮捕と起訴前勾留を合わせて最長23日間にわたり、警察署の留置場などで身柄を拘束される可能性があります。ただし、起訴前勾留については、検察官によって勾留請求がなされ、裁判官が勾留の理由や必要性を認めた場合だけ、なされます。勾留理由としては、住所不定、逃亡や証拠隠滅のおそれがあることなどが挙げられます。
逮捕、もしくは起訴前勾留で身柄拘束を受けている間、被疑者は警察官や検察官の取り調べを受けます。被疑者には黙秘権があるので、取り調べに対しては答えなくても構いません。
また、家族の面会は原則として、逮捕から起訴前勾留へ移行してから可能となります。起訴前勾留に移行する時期は、逮捕後72時間以内です。ただし、共犯者がいる場合などには「接見禁止処分」がなされ、家族の面会が認められないケースもあります。なお、起訴前勾留への移行前や、接見禁止処分中でも、弁護士は被疑者に面会可能です。逮捕された家族に伝えたいことがあれば、弁護士に頼みましょう。 -
(2)起訴~起訴後勾留|公判手続きの準備をする
起訴前勾留の期間が終わる前に、検察官が被疑者の起訴・不起訴を判断します。不起訴になった場合は、被疑者の身柄が解放されます。起訴された場合は、被疑者から「被告人」へと呼称が代わり、起訴後勾留によって、引き続き身柄が拘束されます。起訴された場合は、起訴後勾留中に、弁護人と相談しながら公判手続き(刑事裁判)の準備を整えましょう。
なお、被告人は起訴後に保釈請求を行うことができます。強盗罪については裁判所が適当と認める場合に限って保釈が許可されます(刑事訴訟法第89条第1項第1号、第90条)。
実際には、保釈が許可されないケースが多くなっています。 -
(3)公判手続き~判決|検察官の立証に対して反論する
被告人の有罪・無罪および量刑は、裁判所で行われる公判手続きによって審理されます。
公判手続きでは、検察官が、証拠の提出や証人尋問をして、被告人が犯罪をしたことを立証しようとします。し。それに対し被告人は、罪を否認して争うことも、罪を認めて情状酌量を求めることも可能です。どちらの方針をとるかは、弁護人と話し合って決めましょう。
審理が十分になされた段階で、裁判所が判決を言い渡します。犯罪要件がすべて立証された場合に限り、有罪判決が言い渡されます。 -
(4)控訴・上告~判決の確定|実刑判決なら刑が執行される
第一審判決に不服がある場合は、高等裁判所に控訴(もう一度裁判をするよう上級裁判所に申請すること)ができます。さらに、控訴審判決に対して不服がある場合は、最高裁判所への上告が可能です。控訴・上告の期間はいずれも、判決の言い渡しを受けてから2週間とされています。
控訴・上告の手続きを経て判決が確定し、実刑判決なら刑が執行されます。
強盗罪については、起訴されて公判手続きにかけられると、実刑判決を受ける可能性が極めて高くなります。しかし、犯行の態様や共犯関係における関与の程度などの事実関係の評価に加え、 被害者との間で示談が成立するなどの 事情があることにより、執行猶予が付されることもありえます。そのためには、家族と弁護士が協力して、被告人本人をサポートすることが必要不可欠です。
4、家族が強盗罪の疑いで逮捕された場合にできること
家族が強盗事件で逮捕された場合には、面会や差し入れなどを通じて精神的にサポートすることが可能です。しかし、強盗罪の被疑者については、接見禁止処分が行われ、家族の面会も認められないケースが多くなっています。
一方、弁護士はいつでも被疑者と面会できるため、被疑者本人と家族の窓口になることが可能です。また、弁護士は起訴の前後を通じて弁護活動を行い、不当に重い刑事処分を避けられるように尽力いたします。
強盗罪の疑いで逮捕された家族のために何かしたいと考えている方は、お早めに弁護士へご相談ください。
5、まとめ
強盗罪で起訴されると、初犯でも実刑判決を受ける可能性が高くなります。家族のサポートや適切な弁護活動がなされれば、不当に重い罪を課されるのを避けることもできるでしょう。
ベリーベスト法律事務所は、刑事事件の弁護に関するご相談を随時受け付けております。強盗罪の疑いで家族が逮捕されてしまった方は、当事務所へご相談ください。
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