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強姦罪(強制性交等)などの性犯罪に問われた家族がまず行うべきこととは
ご家族が性犯罪の容疑で警察に逮捕された場合、早急に対応する必要があります。
性的な加害行為を働いたのが事実だとしても、対応の仕方によっては起訴されるかどうかの判断、あるいは罪名や罪の重さが変わってくる可能性があるためです。適切な対応をしていれば不起訴で済むところ、対応を誤って事態を悪化させてしまうこともないとは言えません。
ここでは、強姦罪(強制性交等罪)の内容や罰則と、逮捕後にご家族としてできることやすべきことについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、強姦罪(強制性交等罪)をはじめとする性犯罪は厳罰化の流れに
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(1)平成29年の刑法改正による厳罰化
もともと刑法上の強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい)は強姦罪という名称であり、被害者の性別は女性に限定されていました。さらに、処罰される行為も性交だけでした。
しかし平成29年に刑法が一部改正され、男性も被害者として扱われるようになったほか、処罰対象となる行為は肛門や口腔での性交も含むものとされました。
また、改正前の性犯罪は親告罪、つまり被害者などからの告訴がなければ起訴することができなかったのに対し、告訴不要の非親告罪となっています。
法定刑も引き上げられており、旧強姦罪は3年以上の有期懲役だったのが、強制性交等罪では5年以上となりました。 -
(2)現在の刑法上の性犯罪
現行の刑法で性犯罪として規定されているのは、強制性交等罪(第177条)のほか、準強制わいせつおよび準強制性交等罪(第178条)、監護者わいせつおよび監護者性交等罪(第179条)です。未遂罪も定められています(第180条)。
これらに加え、強制わいせつ罪(第176条)や強制わいせつ等致死傷罪(181条)が規定されています。
2、性犯罪で身内が逮捕されたときに家族がまずすべきこと
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(1)一刻も早く弁護士へ相談を
性犯罪の容疑で逮捕されると、取り調べが開始されます。本来は起訴されて有罪判決が下るまでは被疑者、つまり疑いをかけられている状態に過ぎず、あたかも犯罪者のように接することは許されません。
しかし、警察や検察では真実を明らかにすることへの熱意が高じて被疑者を犯罪者扱いし、弁解を聞き入れてくれない場合もあります。周囲に味方がいないまま身柄を拘束され、強制的な取り調べを受け続けていると、精神的に追い詰められ、やっていないことまで供述してしまうことすらあるのです。
こうした事態を防ぐには、法的なサポートだけではなく、追い詰められる前に被疑者の味方として寄り添うことが重要です。その役目を家族が担えればよいですが、残念ながら逮捕された被疑者は身柄を拘束されているため、身内であっても自由に会うことはできません。
そこで、原則として面接する権利が認められている弁護士についてもらうことで、取り調べの心構えや注意点に関するアドバイスやサポートが可能となるのです。 -
(2)弁護士がいることで何が変わるのか
容疑を否認したり、あいまいな供述をしたりすると、取り調べは加熱します。その結果、実際は軽い刑に当たるような行為だったとしても、重い刑として受け取られる可能性が出てきます。たとえば、比較的程度の軽い痴漢行為を働いたケースだと、迷惑防止条例違反として処罰される場合は主に6か月以下の懲役か50万円以下の罰金となりますが、強制わいせつ罪としての処罰だと6か月以上10年以下の懲役となります。罰金刑のみで済む可能性があったのに、懲役刑となってしまうのです。
弁護士が味方につくことで、身柄の早期解放を目指せるだけでなく、不当に重い罪を課せられないように働きかけることができます。
3、反省の意を被害者に伝え、示談交渉を行う
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(1)性犯罪の非親告罪化と示談交渉
改正前の刑法では、強姦罪をはじめとする性犯罪は親告罪だったため、被害者の告訴意思を左右する事情として、示談は非常に重要でした。ならば非親告罪となった現在では示談交渉が不要なのかと言うと、そうではありません。
やはり被害者の「許そう」という意思(寛恕意思と言います)は、検察による強制性交等罪の起訴判断にも影響を及ぼします。逆に被害者の処罰感情が強い場合、起訴される可能性が高くなると考えられるでしょう。
さらに、起訴された後の量刑判断にも被害者の意思は影響するため、示談交渉は今なお重要と言えます。 -
(2)繊細な示談交渉が求められる
ただ、性犯罪は被害者のプライバシーに密接に関わるため、起訴、不起訴の判断は非常に微妙なバランスの上に成り立ちます。示談交渉も同様にデリケートな問題であることから、被害者の心情にも配慮しながら慎重に行わなければなりません。
身柄拘束されている加害者が、直接被害者と交渉するわけにはいかないため、反省や謝罪の意思は弁護士を通じて間接的に伝えることになります。つまり、弁護士がどのような交渉を行うかによって、被疑者の行末は少なからず左右されるのです。
もちろん、犯罪行為そのものをした事実がなければ反省や謝罪の必要もありませんが、容疑が事実ならば真摯(しんし)に反省すべきでしょう。
また、交渉にあたっては単に反省や謝罪だけではなく、今後被害者に危害を加えたり不安を与えたりしないようにするにはどうするかという具体的な方策を考えておく必要もあります。
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4、再犯防止策を考える
性欲や性衝動というものは本能に根ざした欲求であるため、性犯罪は犯罪の中でも再犯率の高いものとされています。
再犯の場合、起訴もされやすくなり、量刑も重くなりがちです。それだけ社会復帰も遠のくため、本人だけでなく管理監督する責任のある家族も、真剣に再犯防止策を考える必要があります。 また、どのように再犯を防止するか、具体的に対策を講じることは、被害者との示談交渉を行う上でも重要です。再犯の可能性が高いと思われた場合、被害者の心情からも示談に応じるのが難しくなるでしょう。
たとえば、家族や親族がきちんと管理監督を行うだけでなく、性障害を治療する専門クリニックの受診や、カウンセリングの受診、性犯罪被害者による講演の聴講など、性犯罪の再犯防止策はさまざまに考えられます。
刑務所の中でも「性犯罪再犯防止指導」と呼ばれる治療プログラムが実施されており、グループワークなどが行われます。
他方、再犯防止には本人だけではなく、家族の意識改革も重要です。加害者の家族に向けたセミナーもあるので、管理監督の方法を知り、罪を犯した本人とどう関わっていくかを見つめ直すのも有効でしょう。
本人が欲求に押し流され、新たな被害者を生むことのないように、しっかりとした協力体制を取ることが重要です。
5、まとめ
平成29年の刑法改正における性犯罪の処罰対象拡大や厳罰化は、性犯罪に対する世間の厳しいまなざしを反映したものと言えます。
起訴・不起訴や量刑の判断には被害者の寛恕意思が影響し、そのためには罪を犯した本人の真摯な反省が不可欠です。加えて、再犯をしないためにはどうするか、被害者にどう償うのかという具体的なビジョンも示さねばなりません。
性犯罪は再犯率の高いものですが、再犯となれば罪も重くなり、社会復帰も困難となってしまいます。取り調べの対応も、再犯防止策の検討も、できるだけ早めに行う必要があるでしょう。
もしご家族が性犯罪の容疑で逮捕されてしまったら一刻も早くベリーベスト法律事務所までご相談ください。弁護士が親身になってサポートいたします。
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