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強制わいせつ罪で起訴される可能性や量刑は? 初犯の場合はどうなる?
平成29年には性犯罪に関する大幅な刑法改正がおこなわれており、性犯罪者への社会の視線はいっそう厳しいものとなっています。
強制わいせつ罪も例外ではありません。実刑判決を受けた際の刑罰は最長で10年と定められている重い罪です。強制わいせつ罪で逮捕されると、起訴される可能性はどのくらいあるのでしょうか。初犯の場合でも起訴されるのでしょうか。
この記事では、強制わいせつ罪と起訴について弁護士が解説します。不起訴処分を得るためにできることもあわせて確認しましょう。
1、強制わいせつとは?
強制わいせつ罪は刑法第176条に規定された犯罪です。まずは罪の概要や刑罰を確認しましょう。
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(1)強制わいせつ罪の成立要件
合意のない13歳以上の者に対し、暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をすると成立します。暴行や脅迫は相手の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度であれば足り、必ずしも激しい暴力や凶器の使用までは求められません。暴力をふるわずとも、わいせつな行為自体が暴行と評価される場合もあります。
わいせつな行為とは、性交、肛門性交、口腔(こうくう)性交を除く、性的羞恥心を害する行為です。下着の中に手を入れる、胸を触る、キスをするといった行為が該当します。
13歳未満の者に対しては暴行や脅迫がなくとも、ただわいせつな行為をすると成立します。わいせつな行為の意味や影響を理解できる年齢に達していないため、合意の有無は関係ありません。 -
(2)強制わいせつ罪の刑罰
刑罰は6か月以上10年以下の懲役刑です。初犯であればこの範囲内で量刑が言い渡されます。罰金刑は設けられていないため有罪になれば最長で10年間、刑務所で労役に服することになります。再犯の場合は刑法第57条の規定により懲役刑の上限が引き上げられるので、さらに長くなる可能性があります。
もっとも、裁判の判決で執行猶予がつけば社会生活の中で更生を目指すことができます。執行猶予期間中に品行方正を心がけ、何ごともなく過ごせば刑務所へ収監されることはありません。 -
(3)準強制わいせつ罪との違い
準強制わいせつ罪とは、13歳以上の者の心神喪失もしくは抗拒不能状態に乗じ、またはその状態にさせたうえでわいせつな行為をする犯罪です。たとえば泥酔して無抵抗の相手にわいせつ行為をするケースが挙げられます。
強制わいせつ罪と違い、暴行や脅迫を要しません。両罪の重さに違いはなく、わいせつ行為の定義も同じです。あくまでも違いは行為様態に集約されます。
なお、13歳未満の者に対しては、わいせつな行為をした時点で強制わいせつ罪に問われます。
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2、強制わいせつで逮捕・起訴されるケース
強制わいせつ罪で逮捕・起訴されるのはどんなときでしょうか。起訴後の流れとともに確認しましょう。
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(1)逮捕されるケース
強制わいせつ罪で現行犯逮捕されるのは、犯行が人目につきやすい場所でおこなわれたケースが考えられます。現行犯逮捕は私人でも可能なので、目撃者に身柄を取り押さえられることはあるでしょう。通報を受けて駆けつけた警察官に逮捕されるケースも考えられます。
通常逮捕では、一般に、被害者からの被害届や告訴状の提出をきっかけに捜査が開始されます。防犯カメラの映像や目撃者証言などの証拠が見つかり、逮捕状が発付されたうえで逮捕されるという流れです。 -
(2)起訴されるケース
平成30年版犯罪白書によると、平成29年における強制わいせつ罪の起訴総数は1295件、不起訴総数は2127件です。約38%と、決して低くない確率で起訴されていることが分かります。
特に悪質性が高い場合や再犯の場合などは検察官の心証に影響するため、起訴される可能性がいっそう高まるでしょう。
罰金の略式命令はないため、不起訴とならない限り公開の場で裁判が開かれることになります。
一方で、証拠が不十分な場合や、証拠はあるが被害者が処罰を望んでいないなどの事情があれば、不起訴となる可能性も残されています。 -
(3)起訴された後の流れ
検察官に起訴されると、およそ1~2か月後に第1回の刑事裁判が開かれます。
通常であれば裁判までの間も勾留されますが、保釈制度によって一時的に帰宅できる場合があります。弁護士や被告人の家族などが保釈請求をおこない、保釈金を納めたうえで身柄の拘束を解かれる制度です。保釈金は裁判へ出廷させるためのいわば担保のようなものなので、被告人に対して一定の負担になる程度の額で決定されます。
保釈された場合でも期日に必ず出廷し、裁判を受けなければなりません。
自宅にいながら起訴される在宅起訴の場合も、同じく裁判所の命令に応じて出廷することになります。
裁判で審理がすべて終了すると、そこから1~2週間後に判決が言い渡されます。ただし否認事件のように複雑な事案では、おおむね1か月ほどの間隔で、第2回、第3回と裁判が開かれることになります。
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3、強制わいせつ初犯における起訴の可能性と量刑
起訴は検察官が、量刑は裁判官が決定します。その判断は個別の事案によって大きく異なるため、一概に起訴の可能性や量刑を推測することはできません。少なくとも個別の事案について弁護士への相談が不可欠でしょう。
この点をよく理解していただいたうえで、起訴や量刑の一般的な考え方について見ていきましょう。
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(1)初犯でも起訴される可能性はある
強制わいせつ罪は個人の性的自由を侵害する重い犯罪なので、たとえ初犯であっても起訴される可能性は十分にあります。悪質性が高く、被害の程度が甚大な場合は起訴される可能性が高いでしょう。たとえば次のようなケースが挙げられます。
- 抵抗する相手を押さえつけ執拗(しつよう)にわいせつ行為におよんだ
- 被害者が児童である
- 被害者が事件の後に精神的な不安を抱えて生活するようになった
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(2)量刑の基準
裁判官が決定する量刑はさまざまな要素をもとに決定されます。たとえば下記は量刑が重く傾く理由となり得ます。
- 犯行の悪質性が高い······計画性がある、凶器を使って脅した、被害者の年齢が低く抵抗できなかったなど
- 被害の程度が重い······被害者やその家族が受けた精神的苦痛や生活への影響が大きいなど
- 示談が不成立······被害者の処罰感情が高く示談が成立していない、示談は成立したが宥恕(ゆうじょ)意思までは得られなかったなど
- 反省していない······明確な証拠があるのに否認している、悪びれた様子がないなど
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(3)執行猶予について
執行猶予は刑法第25条で条件が定められています。執行猶予は前提として、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金にしかつきません。強制わいせつ罪で懲役3年を上回る判決を受けると執行猶予はつかないわけです。
また、前に禁錮以上の刑に処せられたことがないか、そうでなくても執行の終了または免除の日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないことが必要です。
なお、執行猶予はあくまで「猶予することができる」制度なので、上記に該当しても必ずつくのではありません。
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4、強制わいせつで不起訴処分に向けてできること
不起訴処分を得るには示談成立が重要です。被害者から一定の許しが得られた証しとなるため、検察官もこれを重視するからです。
まずは弁護士を通じて連絡し、誠心誠意の謝罪をおこないます。謝罪を受け入れてもらえない場合もありますが、何度も反省の意思を伝えることが大切です。
ほかにも、被害者と今後一切会わないように配慮する、少しでも被害回復の助けとなるよう慰謝料を支払うといった提案を通じ、被害者の不安を取り除くことが大切です。
示談交渉にあたって、弁護士を介さず、自らや家族が被害者に接触するのは避けるべきです。さらなる恐怖心を与えてしまい、示談が不成立となるだけでなく、やり方によっては別の犯罪で訴えられるおそれもあるからです。
性犯罪の示談は極めて繊細な交渉が求められるため、経験が豊富な弁護士へ委ねるのが最善の方法でしょう。
また、不起訴になるには加害者家族の協力を得て、再犯防止策にも力を入れる必要があります。サポート体制が整っていると再犯のリスクが低く、更生に期待できるとし、不起訴の判断に傾きやすくなるからです。
具体的には、家族が同居して本人の生活を監督する、性犯罪の治療や認知行動療法を受けさせるなどの策が挙げられます。
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5、まとめ
強制わいせつ罪は最長で10年の懲役刑が設けられた犯罪で罰金刑もありません。逮捕された場合は不起訴処分にならない限り、起訴され刑事裁判を受けることになります。実刑になれば前科がつくのはもとより、社会生活と隔離され刑務所に収監されるため、その後の人生に大きな影響を与えるのは必至です。
強制わいせつ罪で不起訴となるか、起訴されても執行猶予判決を得るには、被害者との示談交渉が不可欠です。非常に難しい交渉を要するため弁護士を利用しましょう。ベリーベスト法律事務所でサポートしますのでまずは一度ご相談ください。
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